インキュバス化と異界の来訪者
現在地-ダダイル-宿屋
……妙だ。
早朝に起きてから体と言うか…なんだかおかしい。
こう…なんと言うか満たされてはいるんだけど妙に違和感を感じる。
そう言えば昨日は激しかった。
特にポップがまあ健気で…。
それはともかく…。
「どうなってるんだ?病気か?」
体調はおかしい所は何もないんだがな。
「む、兄様起きていたのじゃな」
コロナか。
「なぁコロナ、少し体調がおかしいんだが…」
「何!?兄様…!すぐに病院に行くのじゃ!」
「あ、いやそうじゃなくて…なんだか体に違和感を感じてな…こう、満たされているんだが微妙におかしいと言うか…」
「ふむ…」
コロナは考えるように手を顎に添える。
「もしかしたらそれは兄様がインキュバス化したのかも知れぬ」
「インキュバス?サキュバスの男版みたいなものか?」
「平たく言えばそう言う事になるのう。魔物と交わり続けると魔力の影響を受けてインキュバスになってしまうのじゃ」
なるほど…そんなもんか。
「で、人間の頃と何か変わるのか?見た目は変わらんが…」
「うむ、サキュバスのように性欲が高まったり…精力が人間の頃とは桁違いになる程度じゃ」
それじゃあ、枯れる事は無いな。
「それなら大丈夫そうだな。この違和感にもすぐ慣れるだろ」
「うむ、そうじゃろうな…じゃがインキュバスは魔物とも分類さるので教団に見つかると拙いので気をつけて欲しいのじゃ」
「ああ、了解だ。だけど見た目は変わってないしよっぽどの事が無けりゃ分からないだろう」
「まあ魔具を使われなければ大丈夫じゃろうな」
「じゃ、飯にするか…皆を起こすぞ」
そんなこんなで、俺のインキュバスとして人生が始まった。
現在地-ダダイル-ギルド
「では、センのインキュバス化を祝して…」
「「「「「「「「「「カンパーイ!」」」」」」」」」」
ギルドの酒場で酒の入ったジョッキ、水の入ったコップを持って打ち付ける。
「いやー、センも漸くインキュバスになったね」
「もう少し早くなっても良かったと思うんですけどね〜」
「ま、なんにしても我が夫もこれからより激しくヤれるという事だな」
好き勝手言うなよ…てかこれで宴会とかっていいのか?
また昨日稼いだばかりの金が消えちまいそうだが…ま、飲むんだったらとことん飲むか。
といっても今日は水だが。
酒は嫌いじゃないが、二日酔いは嫌いだからな。
「ゴクゴクゴク…プハッ!いやー…兄貴もインキュバスになるし、ジパングも近づいてきたし、旅も順調だよな」
「だよなー」
「そうね。でも、ジパングに着いて何をするつもりなのセン?」
パノとキャノは水だが、ヴェロニカは酒を飲んでいる…ってか何をするかなんて考えてなかったな。
「んー、傭兵団の名前を売って…美味い飯でも食って…」
「里帰りはしないのか?故郷なんだろう?」
アーリアのツッコミが痛い…どう言い訳するかな…。
皆仲間だし、もう異世界から来たって言っていいかもしれないが…言い出しにくい。
「ま、別にいいさ。男は此処に故郷があればいいのさ」
自分の胸を指してそう言う。
ヤベッ、超クサイ台詞だったな今の。
「主が、そう言うなら…私達も…構わない」
「そうだニャ…そう言えば傭兵団の名前を売り込むのニャら団の名前を決めておいた方がいいんじゃニャいかニャ?」
あー、そういえばそうだな。
いざって時に団名とかあると呼びやすいかもしれないしな。
「皆何か案はあるか?」
「やっぱり団長のセンの名前を取ってセン傭兵団でいいんじゃないかしら?」
「それは安易過ぎると思うが…」
ヴェロニカの出した案にアーリアが意を唱える。
「アーリア!貴様ご主人様の名前に文句があるのか!」
クーが食って掛かるが、正直俺も安易過ぎと思う。
「そうではないが…私ならばそうだな…飛地減残(ふちげんめつ)団!とかはどうだ?」
「「「…うわぁ」」」
「な、なんだその反応は!?」
今の発言に何人かは引いていた…少し良いと思ったのは黙っておこう。
「僕はセンさんの足刀に因んで白と黒の刃とか良いと思うけどな」
「へえ、結構いいかもしれないな」
「それはそれで安易だニャー」
う〜ん、結構決まらない物だな…。
てかぶっちゃけ名前なんてなんでもいいんだけども。
ふと脇腹を突かれたのでそちらを見ると、シャナが自分を指差していた。
「お、シャナも案があるのか?」
「ん」
コクコクと頷きながら返事をする。
すると椅子の上に立って口を俺の耳元まで持ってくる。
いや皆の前で言ってくれよ。
「sans rival(サンリヴァル)団…」
sans rival…どういう意味だ?
「何処かの言葉で…敵無し…」
ほう…そりゃあ良い!
てかシャナにこんなネーミングセンスがあるとは思わなかったな。
「はいはい!シャナの案のsans rival団!どっかの言葉で敵無しらしいが…意義のある奴はいるか?」
「へぇ、良い名前じゃないかい」
「格好良いです〜」
「ですー!」
「ふむ…私達にぴったりではないか」
皆も意義は無さそうだな。
「じゃ、これから俺たちはsans rival団だ…いいな?」
「「「「「おー!」」」」」
こうして俺たちはsans rival団と名乗る事になった…。
「じゃあ、今日も仕事探すぞ」
そう言って酒場のカウンターの横にあるボードの前に来て張られている依頼書を見る。
このボードはクエストボードという依頼書が張られるボードで、依頼はびっしりとある。
この中から4つほど依頼を選ぶか。
「ん〜、今日はこれをやるかな」
俺が選んだのは倉庫の掃除の依頼と、近場の森にある薬草を取ってくる依頼と、海まで行って漁を手伝う依頼と、山に最近落ちてきた隕石の調査の手伝いの依頼。
皆の席に戻り、依頼書を置く。
「さーて、この依頼をするメンバーを決めるぞ」
このメンバー決めは、本人達の意思を取り入れながら俺が決める事になっている。
「まず倉庫掃除の依頼はティピとパノとポムとミスティ、ミンな」
選ばれた皆は不満そうな顔をする。
「そんな顔するなって…次は良い依頼を回してやるから」
苦笑してそう言うと、漸く納得してくれた。
「で、薬草取りの依頼はアーリア、ヴェロニカ、コロナ、イズマ、ポップな」
「む…セン、私やアーリアは戦士なのだから薬草取りは…」
イズマが反論しようとしてくるが、ちゃんと理由がある。
「此処の森、奥の方には魔力の影響を受けた魔樹があるからそれが攻撃してくるんだと…その先に薬草があるからお前達を選んだんだ」
「しかし…ポップは?」
「体は小さいし、飛べるだろ?偵察とかに使えると思ってな」
イズマは納得した顔になり、下がった。
「で、漁の手伝いの依頼はシャナ、アノン、キャノ、シャムな」
「…じゅるり」
「シャムはこっそり魚を食わないようにな」
「ニャニャ!?ニャんで分かったニャ!?」
いや今涎垂らしてただろ。
「で、最後に隕石調査は俺とイオとウトとクー…以上だが何か意見はあるか?」
誰も意見は無く、チーム決めは終わった。
「おーし、じゃあ皆気をつけて依頼に臨むように!解散!」
現在地-山-麓
俺たちは街に住む学者の男に連れられて近くにある山の麓にいた。
学者の男はグルグルの眼鏡をかけていて白衣を着ているいかにもな男だ。
名前はベック・マーカスと言うらしい。
「ブツブツ…ブツブツブツ」
なにかメモのような物を書きながらブツブツ言いながら書いている。
「…なんだか変な人ですね」
ウトが変なものを見る目になっている…まあ変な奴だけどさ。
「ベックさん、そろそろ行かないか?」
「…そうだな、では落下地点は山頂付近だから…そこまで頼むよ」
今眼鏡越しに見えた目の色が…その…まあヤバかった。
「…なんだか妙だだな…隕石というのも気になるし、気をつけろセン」
「ああ」
イオも警戒してるな…俺も警戒するに越した事はないか。
ともかく俺たちは護衛のようなものなのでベックの後を付けていく。
山は草木は少ないので迷う事は無いだろうが、足場には石がゴロゴロ転がっていて足場が悪いので少し歩き辛い。
だが少しずつ山頂に向かって足を進めている。
「なあベックさん、何で隕石の調査なんかするんだ?」
黙って歩いているのも気まずいのでベックさんに気になった事を聞いてみる。
「…昔から隕石が落ちる場所には異界からの来訪者が現れるという逸話がある…俺はそれを解明する研究をしているんだ」
…それって俺も入るのか?
「…そう言えばセンと出会う前日に私の住処からも隕石が落ちるのが見えたぞ」
もしかしたら俺と同じ世界から来た奴かもな。
そうこうしている内に山頂に到着した。
だがそこには何もなく、クレーターとかも無かった。
「隕石が落ちた跡も何もないぞ?」
クーも不思議そうに辺りを見渡している。
「2日前に此処に落ちたのは確かだ…」
ベックさんはこの場所に落ちたことに確信を持っているらしい。
「2手に分かれて辺りを散策してみるか。ベックさんと俺とイオで、ウトとクーに分かれよう」
皆コクリと頷いて今言ったチームに分かれて辺りの散策をする。
特に何の変哲も無いが、足元を良く見ると妙な足跡がある。
「セン、この足跡は…?」
この世界にある靴の足跡じゃない…ふと後ろから気配を感じ、その場から素早く離れる。
次の瞬間、さっきまで俺がいた場所に木造の刀…木刀が叩きつけられる。
「セン!?」
「チッ…誰だ!?」
「うっせえ寝てろ!」
振り向き際に木刀が振り下ろされるが、それを腕を交差させて防ぐ。
そして攻撃してきた本人を見ると、どう見てもこの世界には無い服…学ランだった。
「学ラン…!?」
「っ!?テメェこの服が分かるのか!?」
「一応な…!」
そう言い切ると同時に木刀を押し返して相手を後退させる。
「っと…丁度良かった、テメェに聞きたい事が…」
「貴様!センに手を出すのは許さんぞ!」
奴が何か聞こうとしていたが、後ろからイオがその腕で奴の首を掴んで押さえ込んだ。
「うがっ!?」
「貴様…我が夫に斬りかかるとは生かしておかんぞ!」
「ま、待てイオ!そいつを放せ」
イオの力じゃ押し潰れて死ぬかもしれん!
「し、しかしコイツはいきなり攻撃してきたんだぞ?」
「大丈夫だ…放してくれ」
そう言うと、イオはしぶしぶとだが奴を放した。
「くっそ!痛てえなこのトカゲ女!」
「と、トカゲだと!?」
イオはトカゲと言われたのがよっぽど腹が立ったのか、顔を真っ赤にしている。
「落ち着けイオ…俺が話しをする」
「ぐ、ぐぅ…!」
俺がいなかったら既に殺してるだろうな。
「怪我は無いか?」
「有るに決まってるだろ!ったく…んでテメェに聞きてえんだが…此処は何処だよ?」
「…此処は中庸の街、ダダイルの近くにある山だよ」
俺がそう言うと、奴はキョトンとした顔になった。
「それ何処の国だ?俺は日本の古書店にいたはずなんだが…」
「日本なんて国は無いよ…所で君は異界から来たのか?」
さっきまで黙っていたベックさんが急に話しに割り込んできた。
「い、異界だと…!?てか日本が無いって…」
「事実だ…ジパングならあるがな」
「ジパング…!?もう何がなんだか…」
どうも混乱しているな…とりあえず腰を落ち着けて話すか。
「ともかく、俺の仲間を呼んで落ち着いて話そう…ウト!クー!こっちに来てくれ!」
そう叫ぶと、近くにいたのかすぐさまウトとクーがやって来た。
「どうしました?」
「ご主人様…その男は?」
どうやら2人共コイツの事が気になるようだが、とりあえず落ち着ける。
「落ち着け…これからコイツと話すんだ。とりあえず座れよ」
そう言うと、皆足元の石を払って座った。
「じゃあまず…君の名前はなんだい?」
「杉野一真…」
やっぱり日本人名か。
「ジパング風の名前だね…」
「ジパングって言うか日本だよ日本…ったく」
「では君は古書店に居たと言っていたね?何故此処に?」
続けて質問をするベックさんだが、杉野という男は不機嫌そうに答える。
「だからよ、古書店で妙な本を見つけたからそれを見てたら光に飲まれて…気がついたら此処にいた」
「どれぐらい前から?」
今度は俺が質問する。
「2日前だよ…なんだってこんな所に…今度はあの女を…」
「ん?なんか言ったか?」
「何も言ってねえよ」
ペッと唾を俺の方へ吐き出して答える…コイツ態度悪いな。
しかし次の瞬間、杉野の首にはイオの爪、クーの杖が当てられていた。
「う、うおっ!?なんだテメェ等!?」
「我が夫に対してこの後に及んでよくそんな態度が取れるものだな…!」
「ご主人様は貴様の事を心配して聞いているのだぞ…!」
イオとクーは結構喧嘩早いな。
てか早い所止めないとな。
「イオ、クー、これじゃ何時まで経っても話が進まないだろ…ちょっと黙っててくれ…」
「「ぐ…!」」
2人はかなり不満そうな顔をして後ろに下がった。
「…なぁ、さっきから気になってたんだがそこの女共は…」
「魔物だよ」
「魔物って…獣人とかじゃなくてか?」
「元々魔物は異形の姿をしていたが、現サキュバスの魔王の影響で皆女の姿になった…ってのが通説だ」
すると杉野はイオとクーとウトをジロジロと見る。
「な、なんだ?」
「よく見りゃ良い女じゃねぇか?」
じゅるり、という音が聞こえたような聞こえなかったような…。
「こ、こっちを見るな変態!」
「さっきと態度が逆転してるじゃないか!」
「う…今…僕全身に悪寒が…」
しかもすげぇ言われよう。
「…チッ、所でお前、聞きたい事がある」
俺をビシッと指差してくる杉野…大体予想はつく。
「その服を何故知ってるかだろ?まあ、知っているからとしか言えないが」
別に話してもいいが説明が面倒だしな…。
「…まあいい、近くに街ないか?2日も此処にいて腹減ってるんだ」
木刀を肩に担いで立ち上がる杉野。
「ま、放っておく訳にもいかんし、とりあえずダダイルに戻るか」
「そうですね…ベックさんもそれでいいですか?」
「街に戻ったら彼に幾つか質問をさせて欲しい…それが終われば依頼は終了でいいだろう」
俺たちはとりあえずダダイルに戻ることにした。
現在地-ダダイル-ギルド
街に戻った俺たちは、他の皆に合流して料理と酒を頼んでいる。
「では君は剣術をしていたんだね?」
「ああ、地元じゃ敵無しだったぜ」
「「「「「………」」」」」
だが場所の中心にいる男…杉野一真が原因で場は微妙な雰囲気だ。
ベックさんも質問をするためにこの場所にいる。
「なるほど…異界人はある程度戦闘能力を持つ者も少なくない…協力ありがとう…これで私の研究はまた1歩進んだ」
「別に…じゃあ飯食うぜ!」
質問を終えたベックさんは用が済んだのか、俺に向けて報奨金の入った袋を差し出した。
「ん…依頼完了だな」
「ああ、礼を言う…君が居なかったら彼とまともに話せなかっただろうからね…彼の事は悪いが君達に任せるよ。では…」
そう言い残してベックさんはギルドから出て行った。
「さて、結構美味そうな飯だな」
ナイフとフォークを使って俺たちが頼んだ料理を食べていく。
「あの〜…貴方は何方ですか〜?」
「て言うかそれ私が頼んだ料理なんだけど…」
ポムとティピも気になるようで質問している。
「ん?俺は杉野一真…こっち風に言うとカズマ・スギノ…これから仲間になる事にしたからよろしくな〜」
「「「「「………」」」」」
そんな事、俺は一言も聞いてないし許可した覚えは無いぞ。
「セン…アンタこんな奴仲間にしたのかい?」
「した覚えは無いぞ…」
「かっかっか!これからアテもねぇし厄介になるぜ?sans rival団!」
まあこうして、元の世界の人間…カズマが仲間に(ほぼ無断で)加わった。
現在地-ダダイル-裏路地
side???
此処はダダイルの裏路地…。
地面に血を流して横たわるのは今日山に行って隕石の調査をしてきた学者…確かベックとかいう男が倒れている。
「…魔物を許すな」
「…魔物を許すな」
「…魔物を許すな」
我等が灰色のローブを纏った同士達を引きつれ、私はこの街にある拠点に戻ることにした。
……妙だ。
早朝に起きてから体と言うか…なんだかおかしい。
こう…なんと言うか満たされてはいるんだけど妙に違和感を感じる。
そう言えば昨日は激しかった。
特にポップがまあ健気で…。
それはともかく…。
「どうなってるんだ?病気か?」
体調はおかしい所は何もないんだがな。
「む、兄様起きていたのじゃな」
コロナか。
「なぁコロナ、少し体調がおかしいんだが…」
「何!?兄様…!すぐに病院に行くのじゃ!」
「あ、いやそうじゃなくて…なんだか体に違和感を感じてな…こう、満たされているんだが微妙におかしいと言うか…」
「ふむ…」
コロナは考えるように手を顎に添える。
「もしかしたらそれは兄様がインキュバス化したのかも知れぬ」
「インキュバス?サキュバスの男版みたいなものか?」
「平たく言えばそう言う事になるのう。魔物と交わり続けると魔力の影響を受けてインキュバスになってしまうのじゃ」
なるほど…そんなもんか。
「で、人間の頃と何か変わるのか?見た目は変わらんが…」
「うむ、サキュバスのように性欲が高まったり…精力が人間の頃とは桁違いになる程度じゃ」
それじゃあ、枯れる事は無いな。
「それなら大丈夫そうだな。この違和感にもすぐ慣れるだろ」
「うむ、そうじゃろうな…じゃがインキュバスは魔物とも分類さるので教団に見つかると拙いので気をつけて欲しいのじゃ」
「ああ、了解だ。だけど見た目は変わってないしよっぽどの事が無けりゃ分からないだろう」
「まあ魔具を使われなければ大丈夫じゃろうな」
「じゃ、飯にするか…皆を起こすぞ」
そんなこんなで、俺のインキュバスとして人生が始まった。
現在地-ダダイル-ギルド
「では、センのインキュバス化を祝して…」
「「「「「「「「「「カンパーイ!」」」」」」」」」」
ギルドの酒場で酒の入ったジョッキ、水の入ったコップを持って打ち付ける。
「いやー、センも漸くインキュバスになったね」
「もう少し早くなっても良かったと思うんですけどね〜」
「ま、なんにしても我が夫もこれからより激しくヤれるという事だな」
好き勝手言うなよ…てかこれで宴会とかっていいのか?
また昨日稼いだばかりの金が消えちまいそうだが…ま、飲むんだったらとことん飲むか。
といっても今日は水だが。
酒は嫌いじゃないが、二日酔いは嫌いだからな。
「ゴクゴクゴク…プハッ!いやー…兄貴もインキュバスになるし、ジパングも近づいてきたし、旅も順調だよな」
「だよなー」
「そうね。でも、ジパングに着いて何をするつもりなのセン?」
パノとキャノは水だが、ヴェロニカは酒を飲んでいる…ってか何をするかなんて考えてなかったな。
「んー、傭兵団の名前を売って…美味い飯でも食って…」
「里帰りはしないのか?故郷なんだろう?」
アーリアのツッコミが痛い…どう言い訳するかな…。
皆仲間だし、もう異世界から来たって言っていいかもしれないが…言い出しにくい。
「ま、別にいいさ。男は此処に故郷があればいいのさ」
自分の胸を指してそう言う。
ヤベッ、超クサイ台詞だったな今の。
「主が、そう言うなら…私達も…構わない」
「そうだニャ…そう言えば傭兵団の名前を売り込むのニャら団の名前を決めておいた方がいいんじゃニャいかニャ?」
あー、そういえばそうだな。
いざって時に団名とかあると呼びやすいかもしれないしな。
「皆何か案はあるか?」
「やっぱり団長のセンの名前を取ってセン傭兵団でいいんじゃないかしら?」
「それは安易過ぎると思うが…」
ヴェロニカの出した案にアーリアが意を唱える。
「アーリア!貴様ご主人様の名前に文句があるのか!」
クーが食って掛かるが、正直俺も安易過ぎと思う。
「そうではないが…私ならばそうだな…飛地減残(ふちげんめつ)団!とかはどうだ?」
「「「…うわぁ」」」
「な、なんだその反応は!?」
今の発言に何人かは引いていた…少し良いと思ったのは黙っておこう。
「僕はセンさんの足刀に因んで白と黒の刃とか良いと思うけどな」
「へえ、結構いいかもしれないな」
「それはそれで安易だニャー」
う〜ん、結構決まらない物だな…。
てかぶっちゃけ名前なんてなんでもいいんだけども。
ふと脇腹を突かれたのでそちらを見ると、シャナが自分を指差していた。
「お、シャナも案があるのか?」
「ん」
コクコクと頷きながら返事をする。
すると椅子の上に立って口を俺の耳元まで持ってくる。
いや皆の前で言ってくれよ。
「sans rival(サンリヴァル)団…」
sans rival…どういう意味だ?
「何処かの言葉で…敵無し…」
ほう…そりゃあ良い!
てかシャナにこんなネーミングセンスがあるとは思わなかったな。
「はいはい!シャナの案のsans rival団!どっかの言葉で敵無しらしいが…意義のある奴はいるか?」
「へぇ、良い名前じゃないかい」
「格好良いです〜」
「ですー!」
「ふむ…私達にぴったりではないか」
皆も意義は無さそうだな。
「じゃ、これから俺たちはsans rival団だ…いいな?」
「「「「「おー!」」」」」
こうして俺たちはsans rival団と名乗る事になった…。
「じゃあ、今日も仕事探すぞ」
そう言って酒場のカウンターの横にあるボードの前に来て張られている依頼書を見る。
このボードはクエストボードという依頼書が張られるボードで、依頼はびっしりとある。
この中から4つほど依頼を選ぶか。
「ん〜、今日はこれをやるかな」
俺が選んだのは倉庫の掃除の依頼と、近場の森にある薬草を取ってくる依頼と、海まで行って漁を手伝う依頼と、山に最近落ちてきた隕石の調査の手伝いの依頼。
皆の席に戻り、依頼書を置く。
「さーて、この依頼をするメンバーを決めるぞ」
このメンバー決めは、本人達の意思を取り入れながら俺が決める事になっている。
「まず倉庫掃除の依頼はティピとパノとポムとミスティ、ミンな」
選ばれた皆は不満そうな顔をする。
「そんな顔するなって…次は良い依頼を回してやるから」
苦笑してそう言うと、漸く納得してくれた。
「で、薬草取りの依頼はアーリア、ヴェロニカ、コロナ、イズマ、ポップな」
「む…セン、私やアーリアは戦士なのだから薬草取りは…」
イズマが反論しようとしてくるが、ちゃんと理由がある。
「此処の森、奥の方には魔力の影響を受けた魔樹があるからそれが攻撃してくるんだと…その先に薬草があるからお前達を選んだんだ」
「しかし…ポップは?」
「体は小さいし、飛べるだろ?偵察とかに使えると思ってな」
イズマは納得した顔になり、下がった。
「で、漁の手伝いの依頼はシャナ、アノン、キャノ、シャムな」
「…じゅるり」
「シャムはこっそり魚を食わないようにな」
「ニャニャ!?ニャんで分かったニャ!?」
いや今涎垂らしてただろ。
「で、最後に隕石調査は俺とイオとウトとクー…以上だが何か意見はあるか?」
誰も意見は無く、チーム決めは終わった。
「おーし、じゃあ皆気をつけて依頼に臨むように!解散!」
現在地-山-麓
俺たちは街に住む学者の男に連れられて近くにある山の麓にいた。
学者の男はグルグルの眼鏡をかけていて白衣を着ているいかにもな男だ。
名前はベック・マーカスと言うらしい。
「ブツブツ…ブツブツブツ」
なにかメモのような物を書きながらブツブツ言いながら書いている。
「…なんだか変な人ですね」
ウトが変なものを見る目になっている…まあ変な奴だけどさ。
「ベックさん、そろそろ行かないか?」
「…そうだな、では落下地点は山頂付近だから…そこまで頼むよ」
今眼鏡越しに見えた目の色が…その…まあヤバかった。
「…なんだか妙だだな…隕石というのも気になるし、気をつけろセン」
「ああ」
イオも警戒してるな…俺も警戒するに越した事はないか。
ともかく俺たちは護衛のようなものなのでベックの後を付けていく。
山は草木は少ないので迷う事は無いだろうが、足場には石がゴロゴロ転がっていて足場が悪いので少し歩き辛い。
だが少しずつ山頂に向かって足を進めている。
「なあベックさん、何で隕石の調査なんかするんだ?」
黙って歩いているのも気まずいのでベックさんに気になった事を聞いてみる。
「…昔から隕石が落ちる場所には異界からの来訪者が現れるという逸話がある…俺はそれを解明する研究をしているんだ」
…それって俺も入るのか?
「…そう言えばセンと出会う前日に私の住処からも隕石が落ちるのが見えたぞ」
もしかしたら俺と同じ世界から来た奴かもな。
そうこうしている内に山頂に到着した。
だがそこには何もなく、クレーターとかも無かった。
「隕石が落ちた跡も何もないぞ?」
クーも不思議そうに辺りを見渡している。
「2日前に此処に落ちたのは確かだ…」
ベックさんはこの場所に落ちたことに確信を持っているらしい。
「2手に分かれて辺りを散策してみるか。ベックさんと俺とイオで、ウトとクーに分かれよう」
皆コクリと頷いて今言ったチームに分かれて辺りの散策をする。
特に何の変哲も無いが、足元を良く見ると妙な足跡がある。
「セン、この足跡は…?」
この世界にある靴の足跡じゃない…ふと後ろから気配を感じ、その場から素早く離れる。
次の瞬間、さっきまで俺がいた場所に木造の刀…木刀が叩きつけられる。
「セン!?」
「チッ…誰だ!?」
「うっせえ寝てろ!」
振り向き際に木刀が振り下ろされるが、それを腕を交差させて防ぐ。
そして攻撃してきた本人を見ると、どう見てもこの世界には無い服…学ランだった。
「学ラン…!?」
「っ!?テメェこの服が分かるのか!?」
「一応な…!」
そう言い切ると同時に木刀を押し返して相手を後退させる。
「っと…丁度良かった、テメェに聞きたい事が…」
「貴様!センに手を出すのは許さんぞ!」
奴が何か聞こうとしていたが、後ろからイオがその腕で奴の首を掴んで押さえ込んだ。
「うがっ!?」
「貴様…我が夫に斬りかかるとは生かしておかんぞ!」
「ま、待てイオ!そいつを放せ」
イオの力じゃ押し潰れて死ぬかもしれん!
「し、しかしコイツはいきなり攻撃してきたんだぞ?」
「大丈夫だ…放してくれ」
そう言うと、イオはしぶしぶとだが奴を放した。
「くっそ!痛てえなこのトカゲ女!」
「と、トカゲだと!?」
イオはトカゲと言われたのがよっぽど腹が立ったのか、顔を真っ赤にしている。
「落ち着けイオ…俺が話しをする」
「ぐ、ぐぅ…!」
俺がいなかったら既に殺してるだろうな。
「怪我は無いか?」
「有るに決まってるだろ!ったく…んでテメェに聞きてえんだが…此処は何処だよ?」
「…此処は中庸の街、ダダイルの近くにある山だよ」
俺がそう言うと、奴はキョトンとした顔になった。
「それ何処の国だ?俺は日本の古書店にいたはずなんだが…」
「日本なんて国は無いよ…所で君は異界から来たのか?」
さっきまで黙っていたベックさんが急に話しに割り込んできた。
「い、異界だと…!?てか日本が無いって…」
「事実だ…ジパングならあるがな」
「ジパング…!?もう何がなんだか…」
どうも混乱しているな…とりあえず腰を落ち着けて話すか。
「ともかく、俺の仲間を呼んで落ち着いて話そう…ウト!クー!こっちに来てくれ!」
そう叫ぶと、近くにいたのかすぐさまウトとクーがやって来た。
「どうしました?」
「ご主人様…その男は?」
どうやら2人共コイツの事が気になるようだが、とりあえず落ち着ける。
「落ち着け…これからコイツと話すんだ。とりあえず座れよ」
そう言うと、皆足元の石を払って座った。
「じゃあまず…君の名前はなんだい?」
「杉野一真…」
やっぱり日本人名か。
「ジパング風の名前だね…」
「ジパングって言うか日本だよ日本…ったく」
「では君は古書店に居たと言っていたね?何故此処に?」
続けて質問をするベックさんだが、杉野という男は不機嫌そうに答える。
「だからよ、古書店で妙な本を見つけたからそれを見てたら光に飲まれて…気がついたら此処にいた」
「どれぐらい前から?」
今度は俺が質問する。
「2日前だよ…なんだってこんな所に…今度はあの女を…」
「ん?なんか言ったか?」
「何も言ってねえよ」
ペッと唾を俺の方へ吐き出して答える…コイツ態度悪いな。
しかし次の瞬間、杉野の首にはイオの爪、クーの杖が当てられていた。
「う、うおっ!?なんだテメェ等!?」
「我が夫に対してこの後に及んでよくそんな態度が取れるものだな…!」
「ご主人様は貴様の事を心配して聞いているのだぞ…!」
イオとクーは結構喧嘩早いな。
てか早い所止めないとな。
「イオ、クー、これじゃ何時まで経っても話が進まないだろ…ちょっと黙っててくれ…」
「「ぐ…!」」
2人はかなり不満そうな顔をして後ろに下がった。
「…なぁ、さっきから気になってたんだがそこの女共は…」
「魔物だよ」
「魔物って…獣人とかじゃなくてか?」
「元々魔物は異形の姿をしていたが、現サキュバスの魔王の影響で皆女の姿になった…ってのが通説だ」
すると杉野はイオとクーとウトをジロジロと見る。
「な、なんだ?」
「よく見りゃ良い女じゃねぇか?」
じゅるり、という音が聞こえたような聞こえなかったような…。
「こ、こっちを見るな変態!」
「さっきと態度が逆転してるじゃないか!」
「う…今…僕全身に悪寒が…」
しかもすげぇ言われよう。
「…チッ、所でお前、聞きたい事がある」
俺をビシッと指差してくる杉野…大体予想はつく。
「その服を何故知ってるかだろ?まあ、知っているからとしか言えないが」
別に話してもいいが説明が面倒だしな…。
「…まあいい、近くに街ないか?2日も此処にいて腹減ってるんだ」
木刀を肩に担いで立ち上がる杉野。
「ま、放っておく訳にもいかんし、とりあえずダダイルに戻るか」
「そうですね…ベックさんもそれでいいですか?」
「街に戻ったら彼に幾つか質問をさせて欲しい…それが終われば依頼は終了でいいだろう」
俺たちはとりあえずダダイルに戻ることにした。
現在地-ダダイル-ギルド
街に戻った俺たちは、他の皆に合流して料理と酒を頼んでいる。
「では君は剣術をしていたんだね?」
「ああ、地元じゃ敵無しだったぜ」
「「「「「………」」」」」
だが場所の中心にいる男…杉野一真が原因で場は微妙な雰囲気だ。
ベックさんも質問をするためにこの場所にいる。
「なるほど…異界人はある程度戦闘能力を持つ者も少なくない…協力ありがとう…これで私の研究はまた1歩進んだ」
「別に…じゃあ飯食うぜ!」
質問を終えたベックさんは用が済んだのか、俺に向けて報奨金の入った袋を差し出した。
「ん…依頼完了だな」
「ああ、礼を言う…君が居なかったら彼とまともに話せなかっただろうからね…彼の事は悪いが君達に任せるよ。では…」
そう言い残してベックさんはギルドから出て行った。
「さて、結構美味そうな飯だな」
ナイフとフォークを使って俺たちが頼んだ料理を食べていく。
「あの〜…貴方は何方ですか〜?」
「て言うかそれ私が頼んだ料理なんだけど…」
ポムとティピも気になるようで質問している。
「ん?俺は杉野一真…こっち風に言うとカズマ・スギノ…これから仲間になる事にしたからよろしくな〜」
「「「「「………」」」」」
そんな事、俺は一言も聞いてないし許可した覚えは無いぞ。
「セン…アンタこんな奴仲間にしたのかい?」
「した覚えは無いぞ…」
「かっかっか!これからアテもねぇし厄介になるぜ?sans rival団!」
まあこうして、元の世界の人間…カズマが仲間に(ほぼ無断で)加わった。
現在地-ダダイル-裏路地
side???
此処はダダイルの裏路地…。
地面に血を流して横たわるのは今日山に行って隕石の調査をしてきた学者…確かベックとかいう男が倒れている。
「…魔物を許すな」
「…魔物を許すな」
「…魔物を許すな」
我等が灰色のローブを纏った同士達を引きつれ、私はこの街にある拠点に戻ることにした。
11/08/22 11:37更新 / ハーレム好きな奴
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