連載小説
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お祭り騒ぎと酒の街
現在地-祭りと酒の街バッカス-ギルド

馬車と荷車で揺られてあれから2日、俺たちは何とか次の街に辿り着いた。

「いやー、漸く着いたね」

馬車を門の所へ預け、皆でギルドで酒を飲む。

此処の街は名の通り酒が大量に取れる街で、酒が水代わりらしい。

だが何故かイズマは酒を飲もうとしない。

「何でイズマは酒を飲まないんだ?」

「酒は嫌いなんだ…私に構わず皆飲め」

「じゃあお構いなく…カンパーイ!」

「「「「「「カンパーイ!」」」」」」

グラスやジョッキを打ちつけて僅かに酒が零れるが大して気にならない。

皆で一気に飲んだりしてワイワイ騒ぐが、俺はあんまり強くないのでちびちび飲んでいく。

「お前等、言っとくが明日からこのギルドで仕事だから控えめにしとけよ」

えー、と一部で不満の声が出るが仕方が無い。

二日酔いで働けないなんて事になったら面倒な事この上ないからな。

「幸い、この街は仕事が多い割りに人手が足りてないんだ」

「何でですか?」

俺がさっき聞いた情報をウトは気になったのか、聞いてきたので話してやることにした。

「さっきも言った通り、この街は酒で稼いでる…だが酒を作る人員は多いんだが酒を運ぶ人員は少ないんだとさ…だから明日からは皆酒の運送の仕事をいくつもやってもらうからそのつもりでな!」

「「「おー!」」」

ゴブリン達はちびちび飲んでいるウト以外は既に潰れている。

ティピ、コロナ、ミスティ、シャナも眠っている。

「コイツ等は弱いけどお前等は結構強いんだな」

そう、パノ、キャノ、ポム、ティピ、コロナ、ミスティ、シャナなどのちびっ子組はすぐに酔いつぶれたが大人組は全然酒に強い。

あ、そう言えばシャナの壷の水を入れ替えないとな。

あんまり同じのを使い続けると水が汚れて健康に悪いからな。

「アタシは酒は大好物だよ…ほらセンも飲みな!」

アノンに酌をされて俺も飲み進めていく。

「せ、セン…恩人の君には私が酌をしようと思うのだが…」

「フフ、センよ…街に着いたら私に構ってくれるのではないのか?」

「いにゃ、まだ入ってるからいいよ」

既に寄っているのか、顔が赤くなっているアーリアとイオが俺に迫ってくるがのらりくらりとかわしていく。

「……(ゴクッ)」

唾を飲み込む音が聞こえたので、そっちを見るとイズマが酒を見ながら首を横にブンブン振っていた…なにしてるんだ?

「なあイズマ、この酒はタダだから飲みたいなら飲んでいいんだぞ?」

「……い、いや…私はいらん…いらんと言ったらいらんのだ!(ゴクッ)」

また涎を飲み込むような音が聞こえた。

多分すっごく飲みたいんだろうなぁ…明日仕事が終わったら少し高めの酒をおごってやるかな。

それで少しでも打ち解ければ◎って事で。

「ま、無理にとは言わないし…それじゃ俺は飲むか!」

こうなったらイズマの分まで飲もうと俺も杯を仰いだ。



現在地-バッカス-大通り

「おら!退いた退いた!」

「オメーが退け!」

「さぁ!ウチの酒は他より安いよー!」

「こっちは質の良い酒を入れた!買っていきな!」

このバッカスは酒飲みが多く、荒くれ者も多い…大通りは人で溢れかえりマッチョなおっさんも多い。

そして荷車に酒樽を大量に乗せ、それを思いっきり引いていた。

「退け退け退け退け!」

俺も前に見える人や魔物に声をかけて突き進んでいくと、地図を確認しながら配達先を確認する。

「こっちだ!コロナにミスティ!ちゃんと押せよ!」

「うにゃー!?速すぎるのじゃー!?」

「せ、センさん待って下さーい!」

俺が荷車を引き、コロナとミスティが荷車を押している。

「到着!」

ブレーキをかけて倉庫の前に止まる。

「おい爺さん!頼まれた酒運んできたぞ!」

俺が引き受けた仕事は、酒場の倉庫に酒を運んでくる事だった。

倉庫番の爺さんに声をかけると、千鳥足で倉庫から出てきた。

「ウィ〜…おう若いの、思ったより早かったのう…」

「もう酔ってんのか爺さん」

俺たちが此処を出て行く前は普通の爺さんだったな。

「それより頼まれた酒だ…今度はどうすればいい?」

「ウェッヘッへ…倉庫の奥を空けておいたからそこへ酒を入れておくれや…わしはもう一杯やってくるわい」

そう言って爺さんは何処かへ行ってしまった…。

「コロナ、ミスティ、荷車は倉庫の中には入れないから酒樽を1つずつ入れていくぞ」

「わ、分かったのじゃ…」

「ふぇ…」

2人は荷車の後ろで目をグルグル回してグロッキーになっていたが、暫くして復活した。

俺は酒樽を肩に担いで倉庫に入るとそこは少し狭いが、びっしりと酒樽が積まれて置いてあった。

転がり落ちないようにロープで固定されている。

「酒臭っ…!」

酒の臭いが強く、あまり強くない俺にとってはけっこうキツイ。

「うぅ…なんでワシがこんな事を…」

「コロナ様…旅賃の為です…頑張りましょう」

2人共小さい体で酒樽を抱えて俺の後をついてくる。

俺は大丈夫だが、小さい体では支えられなかったのか、コロナがフラフラとふらついて積んであった酒樽に背中を打ち付ける。

「うにゃっ!」

「おいおい大丈夫か?」

しかし次の瞬間、酒樽を束ねてあったロープが古かったのか、ブチッとロープが千切れる。

しかも丁度そのままコロナとミスティの方へ崩れてくる。

「へ…?」

「こ、コロナ様っ!?」

ガタガタと崩れていく樽を見て、俺はコロナとミスティに向かって駆け出した。

俺の脚力でコロナとミスティに覆いかぶさり2人を守る。

ゴゴゴッと背中と後頭部に鈍い痛みが奔る。

「あがっ…!」

2人を守る為に2人を強く抱き寄せて守る。

「ぐぅっ…!」

「な…せ、セン…!」

「センさん…!」

そして全てを背に受けた後、俺は2人の無事を確認して意識を手放した…。



現在地-バッカス-酒屋倉庫

sideコロナ

た、助かったのじゃ…センが後一歩遅かったらワシとミスティは押しつぶされておったの…。

「センさん!大丈夫ですか!?」

ワシ等はセンに抱き寄せられており、動きにくいがとにかく肩を揺らしてみるのじゃ。

「セン!起きよ!」

2人で必死に揺らすが反応は全く無い…。

「コロナ様、取り合えず抜け出しましょう」

「そうじゃな」

センの下からモゾモゾもがいて出ると、センを仰向けにする。

「だ、大丈夫かの…?魔物の体ならともかく、センは唯の人間じゃからもしかして…」

「大丈夫ですよ、頭を強く打って気絶してるだけです」

「死んでおらんか…?」

「大丈夫ですって…そんなに心配なら自分で確かめたらどうですか?」

ミスティがセンに手を向ける。

ワシはまず左胸に耳を当てる。

うむ、ちゃんと心音が聞こえてくるの…大丈夫そうじゃ。

しかし、ワシの心音も少し早くなっておる…如何したのじゃ?

「とにかく回復魔法をかけてお医者に診せましょうか」

「そうじゃな」

ワシの兄様は、センのように強く、逞しく、優しい男が良いのう。



現在地-バッカス-宿屋

sideセン

「すまんな皆、迷惑かけたな」

「そんな事ないですよ〜、ご無事でなによりです〜」

あの後、皆は俺の事を聞きつけてお見舞いの為に仕事を切り上げてきたらしい。

もうすっかり夜になってしまい、残っている仕事は明日に持ち越しするらしく、迷惑をかけてしまった。

「フン、その程度で気絶するとは…鍛え方が足りんな」

いや、流石に後頭部鍛えろってのは難しいだろ。

するとチャキと鉄の擦れる音が聞こえた。

「貴様、私の恩人をそれ以上悪く言うと許さんぞ…」

「仮にも継承者の一族の末裔だと言うのにその態度は何だ!」

アーリアは剣を、クーは杖をイズマに向けて険しい顔をしていた。

「何だ?やると言うのか?」

「貴様がその態度ならば何時でもな…」

「止めろ!」

一触即発の空気を断ち切る為に、俺は声を張り上げた。

「イズマにはイズマの意思がある…掟だからと言って俺に媚びるような態度をとらせるつもりは無いし、必要も無い…イズマはイズマの好きにすればいい」

「せ、セン…」

「ご主人様…」

「フ、では私は稽古をするから町外れに行ってくる…明日の朝には戻る」

勝ち誇った顔をしながら、イズマは部屋を出て行った。

「いいんですかセンさん?」

心配そうな目をして俺に寄ってくるウト……健気だな。

「まあ、皆が皆俺の事を好きって訳じゃないだろうし…構わないだろ」

そうさ、俺にだって好きな奴がいれば嫌いな奴もいる…イズマにとって、俺は気に食わない存在なんだろう。

「俺も少し外を歩いてくるよ、じゃ」

そう言って俺も部屋を出た。

しかしこれから旅をするならできるだけ良好な関係でいたいってのはあるよな。

どうすればいいかな…そう考えながら宿を出て、適当な酒場に入る。

カウンター席に座って、辺りを見渡すと、中々良い雰囲気の店だ。

「マスター、適当な酒を頼む」

白髪に白い髭というどこかで見た事のあるようなマスターに頼むと、マスターはグラスに酒を入れて俺に出してくれた。

「マスター、なんか適当な情報無いか?」

「……最近教団による魔物狩りが行われている」

「魔物狩り?」

「罪の無い魔物を無理矢理捕まえて…在るか無いかも分からない監獄に投獄している…という噂がある」

またそんな事を…やっぱり、俺は教団は好きになれないなぁ。

「そして極最近、この街の離れでも教団騎士を見かけたと言う噂があるが…この親魔物領の街中では騒ぎは起こさないだろうが街から離れると危ないかもしれないな…」

…なんだかすっげー嫌な予感がするな。

そう思った俺は酒を一気に飲み干し、金をカウンターに置いて席を立った。

「ありがとな、酒代と情報料金だ…じゃあな」

俺は急いで店を出ると、人混みを避けながらイズマが向かったであろう方向へと走り出した。



現在地-バッカスの離れ-草原

sideイズマ

「フンッ!ハァッ!」

私は腰の剣を抜いて素振りをしている。

ケンタウロスという種族は、剣を使う時は常に人間で言う騎馬兵のような存在なので普通の人間より有利になる。

人間とは…センとは鍛え方も才能も違うのだ。

しかし突然私の後ろから足音が聞こえる…それも複数だ。

後ろを振り返ると、そこには白いローブを身にまとい、フードで顔を隠した人間が8人ほどいた。

「何者だ?私に何か用か?」

剣を握り締め、警戒する。

こんな怪しい奴等の前で油断するほど私は甘くない。

「…やれ」

男の1人が合図すると、7人の男は私を囲むように素早く動いた。

「…フン、人数が多ければ私に勝てると思うなよ」

どうやらやる気らしいので、まずは手近な奴に向けて走り出そうとしたその時、後ろから何かが投げつけられて足に絡まった。

「なっ!?」

それは、先が輪にされたロープ…これが私の足に絡まっていた。

しかしこれでは動けん…!

仕方が無い、弓でロープを握っている奴を先に始末するか。

そうして弓を取り出そうとするが、左右にいる奴も先が輪になっているロープを投げてきて、両腕に絡まってしまう。

「チィ!」

他の奴も次々にロープを投げつけてきて、足や体、腕に首に絡み付いてきた。

更に奴等は私を中心にグルグル周りを回ると、私の体は雁字搦めにされてしまい、殆ど動けなくなってしまい、地面に倒れる。

「ぐっ…!は、放せ卑怯者め!」

ロープで縛られた私は、奴等を罵倒するが、奴等は聞く耳持たずに私に近づき剣を振り上げる。

私は…死ぬのか…?

死にたくない…まだ世界を何も見ていないのに……あの森から出てまだ何もしていないと言うのに?

自然と涙が出てくる…振り上げられた剣が鈍く輝き、妙に不気味に思える。

「嫌だ!死にたくないッ!」

初めてそこまで迫る死の恐怖に、思わず目を瞑る。

次に聞こえたのは、肉が斬られ、血が飛び散る音。

ああ、死ぬと言うのはあまり痛いものではないのだな。

「ハァハァ…間に合って良かった…」

だが次に聞こえたのは、私が妙に気に食わないあの男の声。

そして、ドサリと何かが地面に倒れる音。

恐る恐る目を開けると、そこにはやはり、妙に気に食わないあの男がいた。

「何故…?」

「ん?」

「何故此処に…?いやそれよりも何故私を助けた?」

私は、あれほどお前を邪険に扱っていたと言うのに…。

「そりゃ仲間だからだろ」

「仲……間…?」

「ああ、掟だろうがそうでなかろうが、お前が俺たちに付いて来るってなら、お前は俺の仲間だ」

また涙が流れる……今度は、さっきの涙とは違う暖かい涙。

「それじゃあ、俺は残りのゴミ掃除を…って逃げ足の速い…」

キョロキョロと辺りを見渡すセンにつられて、私も周りを見ると、そこには私の動きを封じていた男達が全員血を流して倒れていた。

「お、お前…あの一瞬で7人を倒したのか…?」

「まあな、本気になれば8、9人は瞬殺できる」

あ、ありえん…私達魔物ですらそんな事はできんと言うのに……。

センは…本当に人間なのか…!?

「ほら、ロープは解けるだろ?立てるか?」

「…あ、ああ」

ロープを解き、立ち上がる。

巻かれていた場所が少しヒリヒリするが、それ以外には特に何もなかった。

「1人に逃げられたが…まあ何とかなるか。じゃあ皆の所に帰ろうぜ」

笑いながら、街へと向かって歩いていくセン。

「…お、おいセン!」

「ん?」

思わず声を張り上げるが、何を言っていいのか分からない…。

な、何故こんなにも心臓の音が大きくて早いんだ!

えと……何て言おう?

そ、そうだ!助けて貰ったのだから礼を言おう!

「あ…その、助けてもらって………何だ、感謝している」

少し驚いた表情になったが、すぐに笑顔になり、センはこう言った。

「どういたしまして」

その笑顔にまた少しドキッとした。

「その…今まですまなかった…皆にも謝りたいから、今日の夕飯代は私が持とう…」

「気にすんなよ…でも晩飯代は助かるな、そっちは頼んでもいいか?」

「だからそう言っているだろう…任せておけ」

しかし飲みすぎないようにしないとな…。

そう思いながら、私とセンは街へと戻っていった。



現在地-バッカス-宿屋

sideセン

「あ〜、飲んだ食った…」

俺たちはイズマの奢りで飯や酒をご馳走になった…だがちびっ子組はすぐに潰れ、イズマも飲みに飲んで最終的には暴れていた。

そして俺は今、酒で潰れたコロナとミスティをベッドに寝かせた。

「うおいっ!センッ!」

だがドアを勢いよく開けて中に入ってきたのは、酔って少し乱暴になったイズマだった。

「ど、どうしたイズマ…?」

「フフフ………この際はっきり言わせてもらうぞ…」

な、何だ?

「好きだぁあああああああああああ!」

そう言うと同時に、俺に飛びかかってくるイズマに、反応できず、ベッドに押し倒される。

「お、おいイズマ!ちょっと待て!」

「無理だ!待てん!今すぐ犯す!」

「いやいやいや!コロナとミスティも寝てるんだから静かに…!?」

のそりと起き上がるような音が聞こえ、そちらを見てみると、そこにはポーッとしたコロナとミスティが…。

「なんらか気持ちいいのじゃ〜…もっと気持ちよくなりらいのじゃ〜」

「あ〜!男のひろらぁ…わたひのお兄ふぁんになってくらさ〜い…」

そう言ってイズマ同様に、俺の上に乗ってくる2人。

「お、おい!待てって!絶対に酔ってるだけだから!一時の気の迷いだ!後悔したくないなら3人とも降りろ!」

しかし3人は止まらず、俺のズボンを脱がし始めた。

「ちょっ…!待て待て待て待て待ってくれー!」




アーッ!?
11/06/27 23:53更新 / ハーレム好きな奴
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■作者メッセージ
そんなこんなでめでたく更に3人GET!

ぶっちゃけ酔った勢いですが…。

さて、次は何にしましょうか…海沿いに進んで行っているって設定だしそろそろマーメイド種にも手を出してみましょうか?

マーメイドかシービショップか…それともメロウか…。

個人的にはシービショップが好きだけど此処はマーメイドにしますかな?

あ、それから傭兵団の名前を募集したいと思いますのでどうかご協力下さい。

ではまた次回。

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