連載小説
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遺跡と謎かけと包帯と管理犬
現在地-アルトリア砂漠-詳細不明

おっす皆、センだ。

現在皆で砂漠を歩いているがただひたすら歩き続けて2日…何も見えない。

元々砂漠を渡るのには数日かかる予定だったのだが4日もかかると食料も心もとなくなってきている。

「つーか後どれぐらいかかるんだよ?」

この砂漠出身のヴェロニカに聞いてみると…

「この調子なら明日の夕方には街に着けるわよ…でもこの方角に進むと確か…」

随分軽い調子で答え、今度は考え込んでいる。

「このまま進むとどうなるんです?」

「最近この辺に来てなかったから記憶が曖昧なんだけれど確か古い遺跡があったのよね…」

ウトの問いに答えると、俺は内心テンションが上がっていた。

「遺跡か…良し、そこ行くぞ」

「あら?いいのかしら?古い遺跡と言っても罠も健在だしその遺跡を守る番人もいるし…」

「番人?」

「詳しい事は知らないわ。記憶が曖昧なのよ」

…これはまた面白い事になりそうだ!

「良し!その遺跡絶対に行くぞ!」

「全く、なんでそういうトラブルの起こりそうな場所に行きたがるのか分からないね…」

アノンに呆れられているが面白そうな場所には行くのさ。

「もしかしたら金銀財宝とかもあるかもしれないし…これで億万長者目指すぞ!」

「おおっ!流石兄貴だぜ!遺跡を探検するぞー!」

「私も行く〜」

ポムとパノは賛成だな。

他の奴を見ると他の皆は取り合えず異論は無さそうだ。

「じゃあこのまま進んで遺跡を目指すか」

そして灼熱の太陽の下、俺たちは先に進んでいく。



現在地-アルトリア砂漠-古代遺跡前

「おぉ…でっけーなー」

「でっけーなー」

俺が思わず漏らした声をキャノが真似る。

そう、遺跡はとても大きく…まあよくありそうなベタな遺跡だった。

「こんな大所帯で入ると罠にかかったら一網打尽だから二手に分かれるのが定石だが…どうする?私はセンに任せるが」

「じゃあ分かれるか」

アーリアの提案を受け、二組に分かれるはずだったが…

「じゃああたいは兄貴と一緒だ!」

「ちょっと待ちな、アタシもセンと行くよ」

「恩人を放って別行動をする訳にはいかない」

などと言い出して全員で論争になっているのを、数歩下がって見ている事にした。

暫く待っていると、上からひゅるるるるる〜、と何か落ちてくる音がしたので見上げてみる。

そしてズドォオオオオオオン!と大きな音と砂埃を立ててそれは地面に降り立った。

「ニャンニャニャーン!遺跡の番人、スフィンクスの参上ニャ!」

………いや、まあ着地地点が悪かったんだろうな。

着地した砂場が柔らかかったらしく、腰の辺りまで砂で埋まってしまっていた。

俺たちは全員、冷ややかな目で見てやった。

その魔物の姿は褐色肌の猫娘。

さっき本人が言っていた通りならばスフィンクスだろう。

「おっと、失敗失敗…」

落ち着いて砂場から抜け出して改めて俺たちの前で仁王立ちした。

「この遺跡に入りたければ我が問いに答えるニャー!相手はそうニャ…そこの人間、お前ニャ!」

「俺?」

どうやら指名されてしまったようだ。

「我が3つの問いに答えるニャ、もし答えられニャかったら魅了の呪いが襲い掛かるニャ、その後は遺跡のニャかで私と添い遂げるニャ!」

うおっ!?この言葉の後に後ろの皆から絶対に答えろっていうオーラが!?

「答えたら入れてくれるのか?」

「そうニャ!もし答えれたら魅了の呪いは私に跳ね返ってくるのニャ……それでは第1問ニャ!」

天に向けてモフモフの指を向ける…こいつも結構テンション高いな。

「上は洪水、下は大火事、これなーんだ!」

バカにしてるのか?

「上は洪水で下は大火事!?何かわかるかい皆?」

「んーと、んーと…」

「私は分からないわ…水に着けたら火は消えるから大火事ってのが分からないし…」

「どっかで聞いた事があるような…?」

後ろで皆がコソコソ相談しているが…マジかお前等、こんなの今時小学生でも答えられるぞ。

…………………………えー、皆さんご一緒に。

「風呂」

「ぬぬぅ!?正解なのニャ…うぅ、ちょっと疼いてきたのニャ…。では第2問!」

僅かに頬を赤らめて俺に指差してくるスフィンクス。

「パンはパンでも食べられないパンはな〜んだ!」

「フライパン」

即答だ。

「ニャニャニャ!?この問題を此処まですぐに答えたのはお前が始めてニャ……うぅ…アソコが熱いのニャ…さ、最終問題ニャ」

顔を更に赤くし、モジモジしながらアソコを抑えるスフィンクスだが、果敢に問題を出してくる。

「入り口1つに出口が2…」

「ズボン」

「にゃああああああああああ!?」

はいスピード記録。

自分を抱きながら地面に倒れてゴロゴロ悶えまくっているスフィンクス。

「も、もう我慢できないのニャ〜!」

砂から起き上がるといきなり俺に飛び掛ってくる。

所謂、ルパ○ダイブだ。服は脱げてないけど。

「「「させるかぁー!」」」

「うニャあああああああああああああああああああ!」

しかしスフィンクスの顔面にアノンとパノとアーリアの跳び蹴りが叩き込まれ、数メートル吹き飛んだ。

あ、口から魂っぽいものが出てるのが見える…。

「まあいいや、それじゃ入るか」

とにかく、最初の番人であるスフィンクスをあっさり倒し、俺たちは先に進んだ。

「うニャ…待つニャ……犯させてくれニャ……」

無視無視。



現在地-アルトリア砂漠-古代遺跡内部

内部は薄暗かったので、松明を持って先に進む事にした。

因みにさっき言ってた組み分けはこうだ。

Aチーム・俺、アーリア、キャノ、ヴェロニカ。

Bチーム・ポム、パノ、ウト、アノン。

というチームになり、俺たちは正面にあるなんだかよく分からない石像の左右にある扉からそれぞれ奥に進んでいった。

俺たちの方の先頭はアーリア、次に俺と肩車してるキャノ、最後尾はヴェロニカだ。

最初は俺が一番前に行こうとしたのだが、アーリアが…

「恩人のセンを先に行かせる訳にはいかない。罠があるかもしれないからまずは私が行く」

と言って聞かなかった。

そしてそのまま進んでいくと、細い道が続いていたので歩き続ける。

「思ったより狭いわね…私には進み辛いわ」

「アラクネ種で横幅が大きいからだろうね。それにしてもこの道は中々怪しいな…」

「怪しいー!」

確かにアーリアの言うとおり、こういう一本道には必ずなにかあるだろう。

「足元にあったスイッチ踏んだら後ろからでっかい岩が転がってきたりして♪」

カチッ

「「「カチ?」」」

「かちー!」

俺の足元に違和感を感じる…。

ガコン…!

「「「え?」」」

「えー?」

音がしたので後ろを振り返ると、天井が開いて大きな岩が落ちてきた。

そして俺が言ったとおりこの通路ぎりぎりの大きさの岩がゆっくりとこっちに転がり始めていた。

「これは…」

「ちょっと…」

「走れ!」

「走れー!」

俺たちはそのまま前に向かって猛ダッシュした。

岩はゆっくりと、だが確実に速度を上げて此方に転がってきている。

「何でこっちに転がってくるのよ!?地面は平らなんだから向こうに転がりなさいよ!」

「…いや、この床はほんの僅かにだけど斜めになってきてるな…このままだとかなりの速度になって転がってくるぞ」

「冷静に分析してないで何とかしなさいよアーリア!」

「残念だが無理だ!」

どんどん速度を上げて此方に転がってくる岩を横目で確認しながら走るが…

「い、行き止まりよ!?」

「ヤバい!?」

足元はもう完全に坂道になっており、ゴロゴロ転がる岩の音。

「どうするんだ!?」

「抜け道的なものないか?」

壁に辿り着くと壁は床を調べる。

「駄目だ!何もない!」

「……仕方がないな」

ふぅ…と息を吐いて足に力を込め、石の壁を思い切り蹴る。

その鋭い一撃で石壁を打ち砕いた。

「オラオラオラ!」

そのまま連続蹴りで周りの石壁も蹴り砕いていく。

壁がある程度通れそうになると、向こう側を見た。

下は広場っぽいし、そんなに段差はないな。

「降りるぞ!」

そこから飛び降りて着地する。

上からアーリアとヴェロニカも飛び降りてきた。

「さ、今のうちに逃げるぞ」

俺の言葉に2人は頷き、すぐにその場から離れた。

そしてその数秒後に、上から壁を破って岩が落ちてきた。

「なんとか助かったね…」

「そうだな、所で此処は何処なんだ?」

松明を掲げてみると周りが見えてくる…。

「これは…棺ね」

ヴェロニカが言うと、よりはっきり見えてきたが、どうやら幾つか棺桶が置かれているようだ。

だがよく見ると1つを除いて全て開いており、中身は空っぽだ。

「どうするんだい?この最後の1つ…」

「開けてみるか」

「開けるー!」

ゆっくりと棺桶を開けると、松明の光りで中が照らされてきた……

「こ、これは…」

その中にあったのは…

「怪我人?」

包帯で体中グルグル巻きだが、顔の部分だけ見えており、どう見ても女だ。

しかも胸を上下させて…寝てる。

「…違うわ、これは魔物よ」

「なんて魔物だ?」

「確かマミーとか言うはずよ」

マミーか、確かに包帯だらけの魔物だったよな。

「ま、元に戻しとくか」

そして棺桶の蓋を閉めようとするが…

「う、うん…何事…?」

あ、目を覚ました…ってか目が合った。

「「………」」

ジッと見られているが、何時までもこうしていると気まずいな。

「失礼しました」

バタンと蓋を閉めて何故か床に落ちていたロープで棺桶をグルグル巻きにしておく。

「…し、侵入者!皆起きる!」

慌てて身体を外に出そうとしたのか、棺桶が倒れる。

「あうっ…あ、開かない……?皆起きる!ミン助ける!」

地面に倒れたまま、棺桶がガタガタ揺れるが残念ながら俺がさっきロープでぐるぐる巻きにしたので出られないようだ。

「あぅ…出られない…暗い所怖いぃ………ぐすん」

じゃあ何でこんな暗い部屋で棺桶なんかで寝てるんだよ。

「怖い…出すー!ミンを出すー!うぇぇぇぇ…」

泣いたよコイツ。

「どうするのアレ?」

「何だか私は微妙に罪悪感を感じるんだが…」

「…まあ話だけしてみるか」

棺桶の傍まで歩いてノックしてみる。

「っ!?だ、誰!?」

「あー、さっきの侵入者だよ。聞こえてるな?」

「………ん」

「出れないのは俺がロープで巻いてるからだが…皆ってどういうことだ?」

「……………………他の棺桶ある、その中身、ミンの仲間」

俺が問うと、暫く間が開いたが、何とか答えてくれた。

てか他の棺桶って…。

「全部空っぽだぞ?」

「!?」

「いや、ホントホント」

棺桶に巻いておいたロープを解いて蓋を開けてやると、慌てて出てきて周りを見渡す。

「…い、いない」

「……まあどんまい」

「どんまいー!」

ズーンと暗くなり、orz状態だ。

「しかし何で1つだけ残ってたんだ…?」

「セン、棺桶かっらは出したんだからもう行きましょう」

「ちょい待ってくれ…なあお前、この遺跡の管理者の場所まで案内してくれなか?」

マミーの隣に座ると、頭を撫でてやる。

「…?」

「別にお前やその管理者をどうこうしようって訳じゃないさ、でもそいつに聞けば仲間がいない理由が分かるかもしれないだろ?」

マミーは暫く考えていたようだが、他に案も思い浮かばなかったのか素直に頷いてくれた。

「おし、じゃあ行くか…なんだお前等その目?」

「別に…私の恩人は随分とスケコマシなのだと思ってな」

「あら?私も何でもないわよ…?」

「…なんで怒るんだよ?慰めただけだろ?」

「「フン!」」

駄目だコリャ。



現在地-アルトリア砂漠-古代遺跡の部屋

sideアノン

「この部屋も行き止まりだね」

「またですか?」

何だかよく分からないパズルを解いてようやく部屋の中に入れたって言うのに中には開かない箱が1つで、行き止まりだった。

「この箱どうする?少し重いけどあたいでも持てるよ?」

「一応持って帰っておこうよ〜」

そう言うと、パノが箱を肩に担いだ。

「とにかく一旦戻ろうよ」

ティピの提案で取り合えず部屋を出ようとするが…

ズドン!

部屋の入り口が閉まってしまい、出れなくなってしまう。

「なっ…罠かい!?」

アタシがそう言った次の瞬間、横の壁に少し穴が開いてそこから水が流れ込んできた。

「こ、このままじゃ溺れちゃうよ!?」

「出口をさがすんだよ!」

慌てて皆で壁や床を触ってみるが出口や抜け道らしき物はなかった。

「わ〜!このままじゃ死んじまう!」

「諦めるんじゃないよ!」

アタシ達は、必死で出口を探したのだった。



現在地-アルトリア砂漠-古代遺跡中心部

sideセン

「此処か」

俺たちがマミーのミンの案内で辿り着いた遺跡の中心部…そこは松明が燃えて明るく、広く、大きな壁画が描かれている場所だった。

壁画には、左端には1人の男が書かれており、その後ろをあらゆる魔物達が付いて行っている…宛ら百鬼夜行だ。

「…侵入者は貴様等か」

そして、壁画の下にあった王座のような椅子に座っているのは、黒いウルフ種…。

「アレ何?」

「多分アヌビス…此処の遺跡の管理者だと思うわ」

ヴェロニカに教えてもらうと、改めて向き直った。

「この遺跡に何の用だ?」

「いや、別段意味は無いけど…ぶっちゃけ唯の探検」

「ふざけるな、此処はわらわの先祖が住んでいた神聖な神殿…どうせ宝が狙いなのだろう?」

まあ、あれば貰おうとか思ってたけど。

「最近も下種な人間が墓荒らしに来るし…ここで見せしめに犯しておくか?」

「それ俺とは関係ないし…てゆーか用があるのはコイツな」

親指を立ててミンを指すとアヌビスは目を見開いて驚いていた。

「ミン…お主残っておったのか…!」

「気がついたら仲間がいなかったんだと。何か知らないか?」

「………此処にいたマミーは数ヶ月前に教団の人間共に連れて行かれてしまったのだ。私はそのマミー達に助けられ難を逃れたのだが…お主は運が良かったのだな」

ったく、また教団かよ……あのワーウルフの件と言い、俺あんまり教団の事好きになれんな。

けど向こうにも譲れないものがあるのだから真っ向から否定はしないけど。

「ふぅん……結構複雑そうな心境ね」

「下手に刺激しないでこのまま帰る方がよさそうだが…どうするセン?」

「ま、俺も他人の傷口抉る趣味は無いし帰るか。その前にBチーム探さないとな」

じゃあなー、と言ってこの広場の出口に向かう。

「………ちょ、ちょっと待て!何もしてゆかんのか!?」

アヌビスが驚いたように問いかけてきたので振り返って答える。

「だから最初から探検しに来ただけって言ってるだろ?じゃあ失礼するぜ」

呆然とするアヌビスを余所に今度こそ出口に向かおうとすると、突然聞いたことの無い声が響いた。

「おっと!ちょっと待って貰おうか!」

俺たちが向かったこの部屋の出口に、私いかにも盗賊やってます的な服装のおっさんが立ちふさがった。

「………誰?」

「俺はトレジャーハンターのグランツだ…此処にアヌビスはいるよな?」

「貴様は…!」

グランツとか言うおっさんは、アヌビスを見ると舌なめずりをした。

「よう、前回は追い出されちまったが今回はそうはいかねえぞ?」

「フン、私に手も足も出なかった貴様が何を言う。確かに開錠術とその道具は素晴らしいが戦闘能力がゼロでは話にならん」

あぁ、このおっさん前に来た事あるみたいだな。

その時の負けっぷりがこの会話から見て取れる…。

「何の用だ?わらわにリベンジでもしに来たのか?」

「ああ、その通りだが…これを見な」

グランツの後ろから現れたのは小柄で痩せている男だが、その男は大きな皮袋を担いでいた。

「その袋が何だと言うのだ?」

「見てりゃ分かるさ」

そう言うとグランツは短剣で袋を軽く刺す。

「痛いニャ!?」

袋の中からは聞いた事のあるような声が聞こえた。

「なっ!?まさかその中身は…!?」

「おうよ、外にいたスフィンクスだが…発情して倒れてたから人質として連れてこさせて貰ったぜ?」

「ニャニャニャー!?何だニャ!?出してくれニャー!」

袋はジタバタと暴れるが、殆ど意味はないようだ。

「さあ、中身のコイツを返して欲しかったらこの遺跡の宝を寄越すんだな」

「くっ…」

アヌビスは怯み、半歩後ろに下がる。

「だがそれだけじゃ物足りねえ…お前の身体も貰ってやるよ」

「っ!」

生理的に受け付けないのか、今度はおもいっきり数歩下がった。

「さぁ、どうする!?」

「仲間を見捨てる事など…しかし此処の宝は…!」

何だか俺たちすっかり蚊帳の外。

アレ?ヴェロニカが何処にもいないんだけど…後マミーのミンも。

「ザ・ン・ネ・ン♪」

シュバっと音が響き、グランツの手首が短剣で斬られた。

「がっ…!?ギルタブリルだと!?さっきまであそこにいたのに…!?」

そう、グランツを斬ったのはヴェロニカだった。

「私は砂漠の暗殺者…音も無く忍び寄るなんて朝飯前よ?」

あの短剣も勿論毒付き……グランツは倒れて動けなくなった。

「や、やっべ…」

手下も逃げ出そうとするが…

「逃がさない…」

「うわあっ!?」

何時の間にか出口に先回りしていたミンの包帯に絡め取られた。

「おっし、ヴェロニカ良くやったぞ」

「当然よ」

髪を掻き揚げながらそう言う仕草は妙にエロティックだ。

「さてと、大丈夫か?」

袋を開けてやると、そこから思いっきりスフィンクスが飛び出してきた。

「んっ!?」

「んぅ!?」

まあ、そのせいで口付けをしてしまった…最近キス多すぎだって。

「うにゃああああ!?私のファーストがぁあああああ!?」

一気に飛び退いて顔を赤くするが俺の顔を見ると逆にホッとした表情になった。

「なんだ、アンタニャら良いニャ」

なんじゃそれ。

「まあともかく無事でよかったな。仲間が無事でさ」

アヌビスを見ると、今度は向こうも俺を見ている。

「…まさか予言の…いやしかし確証が…」

なにやら1人でブツブツ呟いているが、俺には関係ないだろうな。

「そいじゃ今度こそ帰るか。こいつ等はお前等に任せ…」

そこまで言うと、遺跡がズズン!と大きく揺れた。

「な、なんだ…地震か!?」

「へ、へへへ…」

俺たち全員驚いている中、グランツは僅かに笑い声を漏らしていた。

それが聞こえたのか、アーリアはグランツに馬乗りになって首を掴む。

「貴様の仕業だなっ!?一体何をしたっ!」

「お、俺の仲間が此処を爆破してるのさ…時間になったら遺跡を爆破して魔物を生き埋めにするってな…」

弱弱しく言うと、最後にザマア見ろと言われて腹がたったので顔面を蹴って気絶させておいた。

「逃げるぞ!」

「しかし…間に合うのか!?」

「多分大丈夫だ!コイツ等は本来今頃宝を持って遺跡から脱出している筈だ…即ち此処を崩すのには少し時間がかかる!脱出する時間はある筈だ!」

「アノン達はどうするのよ?」

「悪運は強そうだから大丈夫だ」

「大丈夫だー!」

キャノは俺の肩から降りて、先に出口に向けて走っていった。

そして俺はアヌビスとスフィンクス、そしてミンの方を向く。

「お前等はどうする?」

「ニャ!クー、此処は逃げるニャ!」

「その通り…今は逃げる」

スフィンクスとミンは脱出を薦めているようだがアヌビスは頷かない。

「私の任はここの管理…私は此処で遺跡と共に果てるとしよう」

自分の最期と決めたのか、薄く笑って2人にそう言った。

「おいおい、いいのか本当に」

「…ああ」

俺が聞くと、アヌビスはまた薄く笑って壁画に向き直った。

でも、俺は目の前にいる自殺志願者を見捨てるつもりは無いぜ。

俺はアヌビスを肩に担いだ。

「なっ!?何をする気だ!?」

「さ、逃げるぞ!」

俺はアヌビスを担いだまま走り出し、俺の後ろからヴェロニカとアーリアも付いてくる。

それを少し遅れてミンとスフィンクスが追ってきた。

所々で降ろせだの離せだのと言われたが、一切無視した。

遺跡は大きく揺れ続け、その内壁が崩れたり天井に皹が入ったりしていた。

途中、バキンと大きな音がして後ろの壁が崩れたと思ったら、そこから水が流れ出してきた。

「なんだ!?」

「逃げろー!水だ水だー!」

何だか逃げてる内にテンション上がってきた!

若干水に巻き込まれながらギリギリ外に脱出した。

「ふはー!助かったな!」

担いでいたアヌビスを地面に降ろすと俺も地面に座り込んだ。

遺跡の出口からはヴェロニカ、アーリアに続きスフィンクスとミンも出てきた。

「「「「あぁあああああああああぁああぁああ!?」」」」

そしてBチームの皆も水に流されながら出てきた…何やってたんだ?

「…何故私を助けた?」

アヌビスが、少し不機嫌そうな顔で俺に尋ねてきた。

「助けなかったら死ぬだろ?」

「当たり前だ!」

「死んだら、ミンとあのスフィンクスが悲しむからな。かといって説得する時間もなかったし、無理矢理連れてきたってだけだよ」

まだ納得していない顔だがま、いっか。

するとウトが妙な箱を持って俺の方へ来た。

「せ、センさ〜ん…僕がこれを持って来ました…褒めて下さい…」

フラフラしながらも俺の元へ箱を届ける…健気だ。

「そ、その箱は!」

アヌビスはウトから箱をひったくると中を開けようと、懐から鍵を取り出して回し、開けた。

そこにあったのは、赤い宝石が埋め込まれている首飾りだった。

「この首飾りがどうかしたのか?」

「……別に、なんでもない」

そう言う割には随分と大事そうに首飾りを持つアヌビスに、俺は何も聞かなかった。



現在地-砂漠港町ザンガール-砂漠入り口

「ようやく砂漠を抜けたな」

「そうだね。とにかく体を洗って砂を落としたいよ」

「じゃあ体を洗いに少し良い宿に泊まりたいです〜」

そう、あれからはヴェロニカが言った通り、1日で到着した。

だが俺たち一行は更に様変わりした。

「クー、シャム、ミン、お前達もそれでいいか?」

アヌビスのクー、スフィンクスのシャム、マミーのミンが仲間に加わった。

「あ、ああ…これが街か」

「見るもの全てが新鮮だニャ!」

「ん…」

このままだと人数が多くて旅が続けられないな…何か考えとかないとな。

ま、暫くこの街で考えるか。



同時刻-ザンガール-噴水広場

「うむ!此処まで来ればあ奴等も追ってこんじゃろうて」

この街にある噴水広場で、山羊角の幼女がこんな事を言っていた。
11/06/18 15:52更新 / ハーレム好きな奴
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■作者メッセージ
フラグ乱立!

回収がキツい…。

て言うか砂漠が2話で終わるとは…次回ではバフォ様と出会う予定。

そして…とうとうあの魔物娘が!

ではこれにてドロン。

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