キャンプに必要なものの話
「ヒナ、『きゃんぷ』に行ってみたいですッ!!」
俺の同居人の灯奈(ヒナ)は、たまにこうした思い付きを口にする。
「…無理。」
「えぇー!?どうしてむりなのですか!?」
「夏は暑いからだ。」
俺は『夏』という季節が死ぬほど嫌いだ。
元から嫌いだったが、一人暮らしを始めてから更に嫌いになった。
何も考えず、北海道から出て暮らすなどというバカな憧れを抱いた事を、本当に悔いる。
「もう九月ですよう!
ご主人さまあつがりだから、ずっと言わずに待ったのに…」
「九月なのに、暑いからだ。」
「だって、ざんしょが終わるまで待ったら、だいがくの夏休みもなくなっちゃいます!」
そう言われても、残暑があるうちは夏である。
俺の為を思ってくれたのは嬉しいが、そう言うのは逆に5月頃に言ってくれ。
ていうかいっそ、行く事を考えるのをやめてくれ。俺はインドア派なんだ。
「過ぎ行く季節の話より、これからの話をしようじゃないか。読書の秋とか…」
「いやー!きゃんぷがいいです、きゃんぷ、きゃんぷー!」
「駄々をこねるな。全く…何でキャンプがしたいんだ?
遊びたいなら、わざわざキャンプじゃなくてもいいだろ…。」
「うぅー…
だって、せっかく、出番がありそうなのに…」
「……」
…なるほどな。
次の日、山道を走る車の助手席で、ヒナは大いにはしゃいでいた。
「わぁー、たかーい!」
「ああ、高いな。」
「ヒナのわがまま聞いてくれてありがとです、ご主人さま♪」
最後まで気は進まなかったが、楽しんでくれて何よりだ。
心なしか、彼女の中で燃える火も、生き生きとしているように感じる。
キャンプ場に着いて、出番が来るのを心待ちにしているのだろう。
「出番、楽しみだなぁ…。期待しててくださいね!」
「はいはい、頼りにしてるよ。」
道具から生まれた付喪神という妖怪の一種、提灯お化けであるヒナは、
常に自分の出番を探している。
大抵の道具は、人間に使われる為に生まれてきたものだからだ。
だが今は、家の明かりは電灯、外の明かりは携帯、火はコンロやライターと、
提灯が入り込める隙間がほぼ無いほどに、文明は発達してしまっている。
身も心も小さな女の子と変わらないヒナも、アイデンティティの喪失を恐れているのだ。
ヒナの保護者として、主人として、使える時に使ってやらねばならない。
…という訳で、わざわざ知り合いから車とテント等々を借りて出発してやったわけだ。
ヒナの涙と上目遣いがもたらす罪悪感に負けた…というのもあるが。
「ふふんふふふ〜ん♪」
……少し悔しいが、ヒナの笑顔は正直嬉しい。
やはり子供の笑顔はいいものだ。面倒くさかったが、来た価値はある。
「さっき看板あったから、もうすぐ着くぞー。」
しかし、そういった途端、更にはしゃぎっぷりが激しくなってしまい、
車が、なにかと誤解されそうなほどギッシギッシと揺れ始めた。
これ借り物なんだが…
「はやくっ、はやく〜♪」
「はいはい。急いでやるから、大人しくしてろ…」
と言っても、事故が怖いから気持ち程度だが。
ああ、高い借り物は気を使う。マイカーが欲しい。…いや、マイカーでも事故は怖いか。
十数分後、キャンプ場に到着。
お互いの体に虫よけスプレーをまぶし、車を出た。
「よーし、ちょっとキャンプ場一周するから、お前も来ーい。」
「はーい!」
キャンプ場に着いて、まずやるべき事は何か?
それは、場所の確保である。
車を止める場所と、テントを張り、帰るまで生活の場とする場所。
特にテントを張る場所は、トイレや水が汲める場所に近いか否か、枯れ枝や落ち葉の量、
近隣のキャンプ者がどんな人間か等の要素で、過ごしやすさの大半が決まる。
と、子供の頃に俺の父親は言っていた。
幸い秋に近いこともあり、駐車場所は比較的簡単に見つかったので、後はテントだ。
ヒナと共に、キャンプ場をぐるっと見て回る。
その途中で、一本の看板が立っていた。
『クマ出没の恐れあり、注意!!』
「く…くま!?ご主人さま、くまが出るみたいです!!」
「…らしいな。」
「大丈夫ですか!?」
「まあ、頻繁に出るわけじゃない。大丈夫だろ…」
『ウワアァァァ、熊に襲われたぁぁぁッ!!』
「…」
「…」
「……マジかよ。」
『ぎゃあああああ!!』
「……あっちか!」
「助けに行きましょう!」
「いや、お前は途中にあった事務所の人に知らせるんだ!」
「は、はいッ!!」
「うわぁぁぁ、あぐっ、はぁ、はぁ…」
声のするほうに駆けつけてみると、熊に食われている男を発見した。
(フッ、フゥッ、ハァ…)
しかも襲っている熊は、かなり興奮しているようだ。
「……。」
「うぎゃあああっ、あっ、く、くそ…」
「あー……その、助けて欲しいか?」
俺には無理だろうが、一応聞いてみる。
「い、いや、お構いなく…」
「…そうか。
……なあ、一つ言いたいんだが…」
「ぜえっ、ぜぇ……な、何ですか?」
「…まぎらわしく叫ぶな!!」
熊はただの熊ではなかった。正式名称をグリズリーという魔物娘だ。
早い話が、この男は絶賛逆レされ中なのである。
「あ、そう言えば、連れを事務所に行かせたんだった!早く止め…」
『ご主人さまー!じむしょの人連れてきましたー!』
…遅かった。
「あんた達、大丈夫か…おぉ!!?」
「わぁ〜…これが、『あおかん』ですか…。」
「…急いできてみれば…何をやっとるんだ、お前達はぁぁぁッ!!」
(…小一時間後…)
「スンマセンでした…」
「ごめんなさい…」
「反省してます…(何で俺まで…)」
「全く…真っ昼間からお盛んなのはこの際いいが、
もうちょっと節度を守りなさい、大人なんだから!
あと、紛らわしい悲鳴を上げるな!」
「ハイ…」
「次から気をつけるんだぞ!まったく…」
管理のじいさんにしこたま説教された。なぜか俺まで巻き込まれて。
さっきこの男が出した悲鳴とあわせて、完全に出鼻をくじかれた気分だ…
「…大丈夫ですか?ご主人さまたち。」
「…大丈夫だ。理不尽には見舞われたけどな…。」
「いや〜…ほんとスンマセンでした。」
「うぅ、ごめんなさい…。蜜の食べ過ぎで、止まれなくなっちゃったの…」
我に返ったグリズリーの方も、心底申し訳なさそうに頭を下げている。
…まあ、彼女の事は別に起こっていない。マジモノの熊じゃなくてホッとしたし、
魔物が発情して男に襲い掛かるのも、別に珍しくない。
だが…
「大丈夫です、怒ってませんよ。
…そっちのグリズリーさんに関しては。」
「え、という事は僕は…」
「うん、怒ってる。これは全面的にあんたの悲鳴が悪い。」
「…ですよね。ほんと反省してます…。
いきなり森から出てきたこの子に襲われた時、
少し『無理矢理襲われてる』ってシチュエーションに興奮しちゃいまして、つい…。」
…Mですか。
「お金と、命に関わる事と、彼女と別れる事以外なら何でもしますから、許して下さい…」
「…そうだな……じゃあ、この辺にテント張ってくれ。」
「え、ここにですか?」
「まだちょっとさっきの匂いはするが、結構いいエリアだしな。
それに…あの爺さんの説教食らってたせいで、もう昼の時間帯だ。
昼間の太陽の下でこれ以上いい場所探す気力と、テント張る気力は俺にはもう無い。」
「えええ…それは暑がりすぎじゃないスか?ヴァンパイアじゃあるまいし…」
「いいから手伝え。
自分の性癖のために俺の活動限界時間を奪ったあんたに拒否権は無い。」
「…はい。」
「ヒナも手伝います!」
「あの〜…それじゃ、私も…」
「お、ありがとな。
それじゃ車のカギ渡すから、コンロとか燃料とか取ってきてくれ。」
「はーい♪」
そして、彼らの協力により、あっという間にテントをはじめとした拠点は完成し、
完成祝いに4人で焼肉をする事になった。
「よーし、火をつけてくれ。」
「了解でーす。えーとライターは…」
「あー、ヒナがやります!ヒナがー!」
「あ、そうか。
悪いけど、ヒナに任せてもらえないか?」
「え?は、はい。じゃあヒナちゃん、一緒にライターを探…」
「あ、だめです!そんなのいらないです!」
「?じゃあ、どうやって火を…」
「こうやってです!」
そう言うとヒナは焚き付けの新聞紙を手に持ち、
口をもごもごさせた後、ぷっと小さな火を吐き出して新聞紙に着火した。
「おぉ〜…」
「な?ライター要らずだろ?」
「ヒナちゃん、凄〜い!」
「えっへん!です。」
見事なドヤ顔。
「…得意がるのはいいけど、さっさとコンロに入れろ!」
「え?
……ぁちゃちゃちゃちゃッ!もえちゃう、もえちゃいますぅぅぅッ!!」
「は、早くコンロに〜!」
全く…これがヒナの悪い癖なんだよな。
まあどうにか火はつき、焼肉が始まった。
俺とヒナの分の肉ははもちろん持ってきていたが、
あの男も、肉を余分に持ってきていたらしく、もみじと分けても肉には困らなかった。
「いただきまーす。…あ、そういや自己紹介がまだだったな。」
「そうスね。今しちゃいましょうか。」
「じゃあ俺からな。俺は提太郎(テイタロウ)。○○大学に通ってる。」
「え、マジですか!?僕もそこの2年生です!名前は道也(ミチヤ)。」
「なんだ、俺3年だから後輩かよ。世間は狭いなぁ…。」
「はーい、ヒナでーす!提灯おばけで、ご主人さまのものでーす!」
「え〜っと…グリズリーのもみじです。山育ちです。よろしく〜♪」
自己紹介も終え、適当に雑談をしつつ、肉と持参のおにぎりを食う。
ミチヤも今日がキャンプ初日らしく、おにぎりを持ってきていた。
…が、量がやたら多い。一人分とは到底思えない量だ。
「…そんなに食うのか?」
「いや、その…これは、現地で俺を気に入ってくれた子と一緒に食べようと…」
「…ハナからそれが目的だったのかよ。」
確かに、最近『独身男の恋人作り』のための行楽がやたら増えてるらしい。
虫系の魔物娘など、自然の中で暮らすのが好きな種族も多いし、
無防備な状態で行けば自動的に襲われ、彼女ゲットとなる。
この男もそのクチだったのだろう。
「…ちなみに聞くが、もし万一襲われなかったら?」
「………もみじが来てくれてよかったです。」
「おい。」
アホなのか?
「でも、このおにぎり美味しいよ〜♪お米なんて久しぶり♪」
「よっしゃ、気に入ってくれて何より!」
「ほんとおいしいです♪ご主人さまも一つどうですか?」
「…まず自分の分を食え。人から貰ってないで。」
その後も和気藹々と昼食は続いた。
ヒナはものすごく楽しそうだったが…俺は疲れた。主にツッコミで。
さっきも言ったが、親父いわく、近隣のキャンプ者がどんな奴かによっても
過ごしやすさが決まるらしいが…正直、奴らはプラスなんだかマイナスなんだか…
腹が膨れて動く気力も回復したところで、近くの川に釣りに行ってみる事にした。
…実は、昔から密かに川釣りをやってみたかったのだ。
そのためにこのキャンプ場を選んだといっても過言ではない。
糸を垂らし、ボーっと当たりを待つ…こういう平和な時間は大好物だ。
ヒナ?ヒナなら、もっと上流の川幅が広い所で、あの二人と水遊びをしている。
水遊び用に買ってやった、うぐいす色のセパレート水着を着た。
もうそろそろ秋なのに、しかも元は水厳禁の代物だったはずなのに、よくやるよ…。
「あれが子供パワーか…。俺はいつ失くしたんだっけ…」
…などと考えたり、ちょっとウトウトしたりしている内に、
いつの間にか夕方になり、暗くなりかけていた。しかも、ここまで一度もヒット無し。
…これはマズイ。何がマズイかというと、
実は最初から、釣った魚を今日の夕食にしようと考えていたからだ。
非常用カップ麺やらもあるにはあるが、ボウズは情けなくて避けたい。
どうしたものか…と悩んでいると、ヒナが水着姿のままこちらへやって来た。
「ご主人さま、つれてますか?」
「…いや、全然だ。」
「…そうですか。」
「……」
「………」
しばらくの沈黙の後、ヒナが空気を変えようとしたのか、
俺の正面に回って、さっきまでの水遊びの事を話し始めた。
「…あ、あのですね!聞いてください!
最初に、みんなで水かけっこしたんですけど、
その途中で、ヒナと同い年くらいのかっぱさんが出てきたんですよ!それでそのあと、
かっぱさんも混ぜて、皆でまた水かけっこしたんですけど、
かっぱさんすごいんですよ。手から水が『ほーす』みたいにぴゅーって出るんです!」
「へぇー。そんな事も出来るのか、河童って…」
「あと、水着になったもみじさんのおっぱいがすごく大きくて、
動くたびに、たっぷんたっぷんって激しく動くんです!
とちゅうでミチヤさんにぶつかった時に、おっぱいがべしんって顔に当たって、
鼻血が出ちゃったんですけど、ミチヤさんすごく嬉しそうで…」
「…ミチヤ…。」
「その後は、かっぱさんともみじさんがお相撲をとったんですけど、
どっちも強くてなかなか勝負が付かなくて、そのうち、お互いにえっちな技を…」
「お前の火に照らされたのもあるかもな………ん!?」
「……?ご主人さま、どうしたんですか?ヒナの足元ばっかり見て…」
「…ヒナ。ちょっとそこ動くなよ。」
「?はい…。」
ヒナは今川の上に浮かび、体内の火で川を照らしているのだが、
その足元に水の反射とは違うきらめきが見えた気がした。もしかして…
「……はっ!」
俺は網を手に取り、ヒナの足元を一気にすくった!
「…よっしゃあッ!!」
確かな手ごたえを感じ、網を上げると、そこには数匹の魚が入っていた。
「えっ?どうしてお魚が?」
おそらく、暗くなった所にヒナが現れて水面を照らしたことで、
その光に魚が集まって来たのだろう。
「ヒナのお陰だ。ありがとうな、ヒナ!」
「えっ、ヒナのおかげですか!?やったー!」
その後もヒナのお陰で順調に魚がとれ、
夕食にするのに十分な量の魚を手に入れた俺たちは、意気揚々と拠点に戻った。
ちなみに今まで全員拠点を出ていたが、出かける前、偶然近くにいたマンティスに
焼肉を分ける事で見張りを頼んであったから大丈夫だ。
…何言ってるんだ、ご都合主義なもんか。断じて…
「おーい、魚とって来たぞー!」
「おお、ほんとに捕れたんスか!」
「ヒナのお陰でな。」
「おいしそ〜!」
「多いから、お前達もさばくの手伝ってくれ。」
「…さばく…って、なに?」
「……え?」
「私、魚はとったらそのまま食べるんだけど〜…何か変?」
…水着を持ってても、野生か。
結局、魚は俺とミチヤだけでさばいた。ヒナ?確実に怪我するからダメだ。
数十分後、出来上がったものは、焼き魚…ではなく、
「鍋だーッ!!」
「「「おぉーー!」」」
「そして炊き込みご飯だぁーッ!!」
「「「おおぉーーー!!」」」
大喜びである。過程は見ていたはずなのに。
この二つにしたのは、水遊びと夜で冷えた体を温め、
飯作りがたるい翌朝に、両方の余りで雑炊にするためである。
しかも両方とも、食べ終わった後、水で汚れが簡単に落ちる。
我ながら実に合理的なチョイスだ。
「そして、とどめにビールだあぁぁぁッ!!」
クーラーボックスから缶ビールを取り出し、満面の笑みを浮かべるミチヤ。
……だが。
「あー…あのー、悪い。
俺、ビール飲めないんだわ。ってか、酒全般ダメ。
ヒナはまだ子供。って事で、酒類は持ってきてないんだよ。」
「えー…じゃあ…あの、もみじって何歳?」
「22だよ〜?」
「微妙に年上だったのか…。まあいいや。一緒にコレ飲まない?お酒なんだけど。」
「飲む飲む〜♪」
どうなるかは大体予想が付くが…知らないぞ?
「俺達は、普通に鍋食うか。」
「はい♪それにしても…ミチヤさん達、すっかりヒナ達のともだちですね。」
「…だな。」
間違いなく初対面だったはずなのに、
いつの間にか4人分の飯を作る事になってたし…(食材は出し合ったが)
あいつらが持つ『溶け込むスキル』のようなものは、少し羨ましいかもしれない。
「よーし。じゃあ、いただきます。」
「いただきまーす♪」
汁を一気に具ごとすすり、飯を勢いよくかき込む。
「あぁぁ…美味い。」
「ですねぇー…。」
川魚にも、ちゃんとダシってあるんだな。
汁と飯、どちらの魚もホクッとほぐれ、味噌仕立ての汁の程よい塩気と、
飯の甘み、ダシの旨み、魚と同様に煮込まれた人参やネギなどその他の具材、
この鍋とご飯を構成するあらゆる要素が口の中で混ざり、それぞれを高めあう。
海やキャンプで食べる食事は普段より美味しく感じられると言うが、
そういった補正抜きにしても、コレは確実に美味いだろう。さすがは俺。
他二人も、驚くようなスピードでビールと鍋を進めている。
…明日の分、あるかな。
「もうおなか一杯ですー…ごちそうさまでした。」
「んー…俺もだ。」
しばらくの間、椅子に座って一息…
「さて…もう寝るか?」
「うーん…もう少し…あ、そうだ!花火!花火やりたいです!!」
「ダメ。あれは明日の夜のお楽しみだ。」
「ええ〜…」
「星はこの季節見にくいし…そうだ、トランプとかどうだ?」
「う〜ん……そうだ。あの、お、おてあらい、つれてってくれますか?」
「?まあ、俺はいいけど。」
「よかった…」
「よし、んじゃ行くか。」
「あ、あの…手、つないで下さい。」
「ああ。離すなよ?迷子になるから。」
「はい、ご主人さま。」
ヒナの手を引いて、トイレに向かう。
…だが、ヒナはトイレとは違う方向に行こうとしていた。
「…どうしたんだ?」
「……ごめんなさい、ご主人さま。おてあらいに行きたいのはうそです。
ヒナ、ご主人さまと二人っきりでいたかったんです…」
「…そういや、川でもすぐ戻ってきちゃったしな。
二人っきりがよかったのか…。ごめんな、ヒナ。」
「で、でも、ミチヤさんや、もみじさんが嫌だったわけじゃないんです!」
「分かってるよ、それぐらいは。お前は優しいしな。
…じゃあ、このまま散歩するか?」
「…はい♪」
そのまま、キャンプ場を回る。
ヒナは外灯に嫉妬しているらしいので、意図的に外灯の少ない道を選ぶ。
それでも、ヒナのおかげで道はほのかに明るかった。
「暖かいよな…お前の手。」
「ご主人さまの手も、あったかいです。」
「そうか。」
「……♪」
「………。」
しばらく、無言の時間が続く。
だけど、何となく、ヒナは幸せそうだ。そして多分、俺も。
やがて、周囲に明かりもテントも無い場所にたどり着いた。
「…ご主人さま。」
「ん?」
突然手をほどくと、顔が同じ高さになるまで浮き上がる。
続いて、顔を赤らめながらゆっくり目を閉じ、口をすぼめた。
…もう、言われなくてもわかる。
「ほれ、んっ…」
「ちゅ…♪」
抱き寄せて、唇を重ねる。何度も。
やがてヒナも俺の頭を抱き、舌を挿し入れ…
「…ちょっと待て。」
「…?」
突然口を離されて、きょとんとするヒナ。
でもな…そんな場合じゃないみたいだぞ。
「…ちょっと、周りを見てみろ。」
「えっ…きゃあああああッ!!?
なになになに、やだ、はなれて、はなれてー!!!」
明かりのない場所にいたもんだから、
ヒナが放つ光につられて、沢山の虫がやってきたのだ。
蛾に、蚊に、その他名も知れぬ沢山の羽虫…
それらが、ヒナの周囲で大乱舞していた。
「いやぁぁあああッ!!」
「急いで逃げるぞ!?」
虫を払いつつヒナの手をつかみ、一目散に拠点へ駆け戻った。
間髪いれずに、お互いに服にしがみついていた虫を払いのけ、再・虫よけスプレー。
念のためヒナには毛布を巻かせ、光を遮断する。
「はぁー…。こわかったです…」
「俺もだ…。こういうのがあるから虫って怖いわ。魔物除いて。」
一息ついてあたりを見回すと、コンロの火はもう消えかかっている。
もうひとつの明かり代わりであるヒナもこの姿だし、拠点周囲は暗い。
あの二人も、既にテントに戻っているようだ。いや、戻っている。
テントがめっちゃ揺れ動いてるから間違いない。
「はげしいですねぇ…。」
「…ああ。」
「あの…ご主人さま。」
「予想はつくけど…何だ?」
「さっき、虫にじゃまされて、途中でやめちゃったし…
つづきと、あと、その後のことも、したいなって…。」
「…わかったよ。じゃあ、テントに入るか。」
「はい♪」
「…でも、トイレ行ってからな。
お前のことだから、漏らす可能性がある。」
「はーい…」
互いにトイレを済ませ、歯を磨き、念のためコンロに蓋をし、
寝る準備を完全に済ませた後、テントに這入りこみ、
入り口をしっかり閉め、底一面に敷いたマットの上に座り込んだ。
マットは自前のだから、ナニをしてもテントは汚さない。
「そんじゃ…おいで、ヒナ。」
「ご主人さま…♪」
今度こそ抱き合って、唇を重ねる。
唇だけのキスは既にやったので省略。いきなり舌を絡め合った。
ヒナの舌はグミか何かのように柔らかいが、体内で火が燃えているせいか、熱い。
もっとも、火傷はしない熱さだが。
「れぇる、じゅるっ…」
「ちゅ、くちゅ…」
ヒナの唾液を啜ると、腹の底から燃えるように熱くなってくる感覚に襲われる。
まるで、燃料を火に注ぐように。
そして俺も、口を通じて、ヒナに燃料を渡してやる。
十分に燃料を分け合い、口を離す頃には、
ヒナの火も一回り大きくなり、瞳は期待の光を湛えながらも、とろりと潤んでいた。
「すっかり興奮してるみたいだな。じゃあ、脱がすぞ。」
「はい…。」
提灯お化けの標準装備らしい羽織をはだけ、
淡い色の、小さく可愛らしい乳首があるだけの胸を露わにする。
続いて提灯ブルマ…ではなく、それよりも動きやすいので買ってやった、
今は何やら湿っているデニムのハーフパンツを、その下のショーツごと抜き取る。
その先にあったものは、年相応に幼く毛も無いくせに、
一丁前に愛液を溢れさせ、準備を万端に整えているたて筋だった。
「…溶けた蝋が出てるぞ。もう、待ち切れなさそうだな?」
「はいぃ…がまんのできない道具でごめんなさい…♪
ご主人様の、おいしいろうそくがほしいです…」
「いいぞ。…でも、声を出すなよ。」
「えっ!?な、なんでですか?」
「お前の声でかいからなぁ。もう寝てる人もいるだろうし、怒られるだろ?
あの二人も声『だけ』は抑えてるんだから、我慢しろよ。」
「…はぁい。」
マットの上に押し倒し、大きく膨れたズボンのチャックを開けて、
ヒナと同じく準備を済ませた息子を出してヒナのたて筋にくっつける。
これからするのは、子供らしさとは大きくかけ離れた行為だが、
ヒナはその柔らかそうな頬を赤く染め、
お互いの性器がキスをする様を、子供らしい、期待と喜びに満ちた目で眺めていた。
だが…
「はやく、ヒナを使ってください、
ヒナのおまんこに、ろうそくいれてくださいっ♪」
「まあ、待て…」
まずは入り口にこすり付け、ヒナの蝋をまぶしていく。
既に何度もしているが、それでもヒナの入り口はまだまだ小さいのだ。
いきなり入れると多分痛い。俺が。
「ゃっ…あんっ…じ、じらさないで、くださぁい…」
「悪いな。もうすぐ終わるから…」
やがて十分に蝋がつき、ヒナの光をテラテラと反射するほどになった。
これで完全に準備完了。再びヒナの性器と先端を合わせる。
「じゃあ行くぞ。声抑えろよ。」
「はいっ…」
ヒナは目を固くつぶって、口を閉じ、俺の体に両腕を回してしがみついた。
ヒナなりの、挿入の感覚をこらえる体勢に入ったらしい。
それを見届けた後、ゆっくり腰を押し込んでいった。
「…ん…んっ、んっ、ぅ…ぷふぅ、ふぁぁぁ…!」
「…抑えろってば。」
だが、ヒナの小さな顎と唇だけでは、喘ぎを抑えきれないようだ。
「はぁ、はぁっ…ごめんなさい、だめ、です…」
「手で押さえたらどうだ?」
「…やです。ご主人さまにくっついていたいです。」
「しょうがないな…。じゃあ、これ咥えてろ。」
左手の中指と人差し指を差し出し、口に含ませる。
「んぅっ、あむ…ふわえあひは。」
「よし、最後まで入れるぞ。離すなよ…!」
今度はさっきよりもやや早く進めてみる。
「ふーっ、ふっふっふっ、んー…!……ふぅ〜♪」
「…全部入ったな。声も抑えられてる。えらいぞ、ヒナ。」
「…ん〜♪、んふふ…」
きめ細やかな栗色の髪をわしわしと撫でてやる。
嬉しかったようで、薄目を開け、顔を更に赤らめながら、甘えた鼻声を出している。
ストレートに言うのは恥ずかしいが、本当に可愛らしい。
それと同時に、きつい膣内がきゅんきゅんと更に締めつけた。
「相変わらず、熱いな…。本当に燃えてるみたいだ。」
押し上げられてぽっこりと膨れた下腹部を見ると、
ヒナの腹の中に燃える火と、その光で透けて見える俺の息子の影が合わさって、
まるで俺の息子が蝋燭の如く燃えているように見える。
先程のように、俺の息子を『蝋燭』と比喩するのにもうなずける。
しかも、そう見えているだけではなく、実際に燃えているように熱い。
その火はちゃんと熱を持ち、俺の先端を炙っているのだから。
「…でも、気持ちいいぞ。」
ヒナの火は、肉を焦がす熱と火傷の痛みではなく、
火照りはそのままに、理性を焦がす熱と、溶けるような快感をもたらす不思議な火だ。
そんな火にいつまでも炙られていれば、こちらも我慢が効かなくなる。
ヒナに、沢山の白い燃料を注いでやりたい…
その目的を果たすため、俺は腰を動かし始めた。
「ふっ…ぅんっ…んむぅ…♪ふぅぅ…」
小さく、押し殺した声が聞こえるが、これくらいなら外にも聞こえないだろう。
「ふふ…ヒナ…お前は、気持ちいいか?」
「んー♪」
声を抑えさせるために咥えさせていただけだった指も、
普段俺の息子にしているように、もとい、母の乳房に吸い付く赤ん坊のように、
幸せそうな表情でちゅうちゅうと吸い上げてきて気持ちいい。
お互いに、順調に高まってきている。
「そろそろ、ちょっと早くするぞ。いいか?」
「…ん。」
了承も得られたので、腰の動きを少しずつ早く、強くしていく。
「んっ、ん、んっ、ふっ、ふっ…!」
「はぁっ…もうすぐ、今日、役に立ってくれた、ご褒美、やるからな…!」
「んー!ん、んぁ…?んっ!!んむ、ぅ、ぢゅ…♪」
限界が近くなってきたところで、口から指を引き抜き、
代わりに俺の唇で口を塞いでやる。
「んぅぅん、ぁぅ、ふーっ…!?んーっ、んー!」
互いの舌を吸いあいながら、自由になった左手で乳首を摘み上げてやる。
声を抑える事が困難になってきたあたり、ヒナはどうやら、もう限界らしい。
俺も限界だ。悶える小さな体を、強く抱きしめ…
「ふぅっ、ふうっ………ぅっ!」
そして、ヒナが待ち望む最高の燃料…俺の精を、思い切り注ぎ込んでやった。
「んー、んーっ、んんーーーーーッ……!!」
それと同時に、ヒナも大きく絶頂を迎えた。
これは流石に、外に聞こえたかな…?まあよし。
「…ぷはっ、ふぅー…」
「…ぁはっ、はぁ、はぁ…」
全て出し終わったところで口を離し、ヒナの横に転がって脱力し、
しばらく、互いに絶頂の余韻に浸っていた。
「…どうだった?ヒナ。」
「…なんだか、いつもより、こうふんしちゃいました…。」
「そうか…。」
「…ご主人さまは、どうですか?」
「そうだな…。耐えてるヒナも、可愛かったぞ。」
「…よかった。」
遠くで、秋の虫の声が聞こえる。
「『きゃんぷ』って、すてきですね。」
「喜んでもらえて何よりだ。」
「…ヒナ、明日の出番ももっとがんばって、遊びももっと楽しみますね。
そしたらまた、たくさんごほうび下さいね。」
「ああ。約束する。」
「やった♪」
最初は気が進まなかったが、家に帰るまでがキャンプだ。
明日は俺も、ヒナと一緒にもっと楽しもう。
「…あのね、ご主人さま。」
「何だ?」
「ヒナ、ご主人さまのこと、大好きです。」
「…俺もだよ。お前は、俺の宝物だ。」
「…うれしい…♪」
「そうか。」
…何となく、幸せだな。
「…なあ、ヒナ。」
「…」
「ヒナ?」
「…くぅー……」
「…何だ、もう寝たのか。」
いつもなら精を注いで火が強くなると、二回戦、三回戦と求められるのだが…
流石に今日は疲れていたらしい。優しい寝息を立てている。
「なら、俺も今日はゆっくり寝るか。」
と言っても、寝る準備は済ませる。
ウエットティッシュで寝ているヒナの膣を拭い、
俺の息子や、汚れたマットもきれいにした。
続いてヒナに寝たまま上下の服を着せ…って、凄い熟睡具合だな。
毛布をかぶせ、光を消した。
「…おやすみ。」
同じ毛布に入り、目を閉じる。
俺も疲れていたのか、割と速やかに、眠りに落ちていった。
…明日も、いいキャンプでありますように。
そして翌朝、テントから出て最初に目にしたものは、
未だ激しく揺れ動くミチヤ達のテントだった。
「…どんだけヤってんだよ!?」
「すごい…。ご主人さま、ヒナたちも負けずに…」
「何で対抗しようとしてんだ!?」
…ひでぇオチ。
── Have a nice camp!! ──
俺の同居人の灯奈(ヒナ)は、たまにこうした思い付きを口にする。
「…無理。」
「えぇー!?どうしてむりなのですか!?」
「夏は暑いからだ。」
俺は『夏』という季節が死ぬほど嫌いだ。
元から嫌いだったが、一人暮らしを始めてから更に嫌いになった。
何も考えず、北海道から出て暮らすなどというバカな憧れを抱いた事を、本当に悔いる。
「もう九月ですよう!
ご主人さまあつがりだから、ずっと言わずに待ったのに…」
「九月なのに、暑いからだ。」
「だって、ざんしょが終わるまで待ったら、だいがくの夏休みもなくなっちゃいます!」
そう言われても、残暑があるうちは夏である。
俺の為を思ってくれたのは嬉しいが、そう言うのは逆に5月頃に言ってくれ。
ていうかいっそ、行く事を考えるのをやめてくれ。俺はインドア派なんだ。
「過ぎ行く季節の話より、これからの話をしようじゃないか。読書の秋とか…」
「いやー!きゃんぷがいいです、きゃんぷ、きゃんぷー!」
「駄々をこねるな。全く…何でキャンプがしたいんだ?
遊びたいなら、わざわざキャンプじゃなくてもいいだろ…。」
「うぅー…
だって、せっかく、出番がありそうなのに…」
「……」
…なるほどな。
次の日、山道を走る車の助手席で、ヒナは大いにはしゃいでいた。
「わぁー、たかーい!」
「ああ、高いな。」
「ヒナのわがまま聞いてくれてありがとです、ご主人さま♪」
最後まで気は進まなかったが、楽しんでくれて何よりだ。
心なしか、彼女の中で燃える火も、生き生きとしているように感じる。
キャンプ場に着いて、出番が来るのを心待ちにしているのだろう。
「出番、楽しみだなぁ…。期待しててくださいね!」
「はいはい、頼りにしてるよ。」
道具から生まれた付喪神という妖怪の一種、提灯お化けであるヒナは、
常に自分の出番を探している。
大抵の道具は、人間に使われる為に生まれてきたものだからだ。
だが今は、家の明かりは電灯、外の明かりは携帯、火はコンロやライターと、
提灯が入り込める隙間がほぼ無いほどに、文明は発達してしまっている。
身も心も小さな女の子と変わらないヒナも、アイデンティティの喪失を恐れているのだ。
ヒナの保護者として、主人として、使える時に使ってやらねばならない。
…という訳で、わざわざ知り合いから車とテント等々を借りて出発してやったわけだ。
ヒナの涙と上目遣いがもたらす罪悪感に負けた…というのもあるが。
「ふふんふふふ〜ん♪」
……少し悔しいが、ヒナの笑顔は正直嬉しい。
やはり子供の笑顔はいいものだ。面倒くさかったが、来た価値はある。
「さっき看板あったから、もうすぐ着くぞー。」
しかし、そういった途端、更にはしゃぎっぷりが激しくなってしまい、
車が、なにかと誤解されそうなほどギッシギッシと揺れ始めた。
これ借り物なんだが…
「はやくっ、はやく〜♪」
「はいはい。急いでやるから、大人しくしてろ…」
と言っても、事故が怖いから気持ち程度だが。
ああ、高い借り物は気を使う。マイカーが欲しい。…いや、マイカーでも事故は怖いか。
十数分後、キャンプ場に到着。
お互いの体に虫よけスプレーをまぶし、車を出た。
「よーし、ちょっとキャンプ場一周するから、お前も来ーい。」
「はーい!」
キャンプ場に着いて、まずやるべき事は何か?
それは、場所の確保である。
車を止める場所と、テントを張り、帰るまで生活の場とする場所。
特にテントを張る場所は、トイレや水が汲める場所に近いか否か、枯れ枝や落ち葉の量、
近隣のキャンプ者がどんな人間か等の要素で、過ごしやすさの大半が決まる。
と、子供の頃に俺の父親は言っていた。
幸い秋に近いこともあり、駐車場所は比較的簡単に見つかったので、後はテントだ。
ヒナと共に、キャンプ場をぐるっと見て回る。
その途中で、一本の看板が立っていた。
『クマ出没の恐れあり、注意!!』
「く…くま!?ご主人さま、くまが出るみたいです!!」
「…らしいな。」
「大丈夫ですか!?」
「まあ、頻繁に出るわけじゃない。大丈夫だろ…」
『ウワアァァァ、熊に襲われたぁぁぁッ!!』
「…」
「…」
「……マジかよ。」
『ぎゃあああああ!!』
「……あっちか!」
「助けに行きましょう!」
「いや、お前は途中にあった事務所の人に知らせるんだ!」
「は、はいッ!!」
「うわぁぁぁ、あぐっ、はぁ、はぁ…」
声のするほうに駆けつけてみると、熊に食われている男を発見した。
(フッ、フゥッ、ハァ…)
しかも襲っている熊は、かなり興奮しているようだ。
「……。」
「うぎゃあああっ、あっ、く、くそ…」
「あー……その、助けて欲しいか?」
俺には無理だろうが、一応聞いてみる。
「い、いや、お構いなく…」
「…そうか。
……なあ、一つ言いたいんだが…」
「ぜえっ、ぜぇ……な、何ですか?」
「…まぎらわしく叫ぶな!!」
熊はただの熊ではなかった。正式名称をグリズリーという魔物娘だ。
早い話が、この男は絶賛逆レされ中なのである。
「あ、そう言えば、連れを事務所に行かせたんだった!早く止め…」
『ご主人さまー!じむしょの人連れてきましたー!』
…遅かった。
「あんた達、大丈夫か…おぉ!!?」
「わぁ〜…これが、『あおかん』ですか…。」
「…急いできてみれば…何をやっとるんだ、お前達はぁぁぁッ!!」
(…小一時間後…)
「スンマセンでした…」
「ごめんなさい…」
「反省してます…(何で俺まで…)」
「全く…真っ昼間からお盛んなのはこの際いいが、
もうちょっと節度を守りなさい、大人なんだから!
あと、紛らわしい悲鳴を上げるな!」
「ハイ…」
「次から気をつけるんだぞ!まったく…」
管理のじいさんにしこたま説教された。なぜか俺まで巻き込まれて。
さっきこの男が出した悲鳴とあわせて、完全に出鼻をくじかれた気分だ…
「…大丈夫ですか?ご主人さまたち。」
「…大丈夫だ。理不尽には見舞われたけどな…。」
「いや〜…ほんとスンマセンでした。」
「うぅ、ごめんなさい…。蜜の食べ過ぎで、止まれなくなっちゃったの…」
我に返ったグリズリーの方も、心底申し訳なさそうに頭を下げている。
…まあ、彼女の事は別に起こっていない。マジモノの熊じゃなくてホッとしたし、
魔物が発情して男に襲い掛かるのも、別に珍しくない。
だが…
「大丈夫です、怒ってませんよ。
…そっちのグリズリーさんに関しては。」
「え、という事は僕は…」
「うん、怒ってる。これは全面的にあんたの悲鳴が悪い。」
「…ですよね。ほんと反省してます…。
いきなり森から出てきたこの子に襲われた時、
少し『無理矢理襲われてる』ってシチュエーションに興奮しちゃいまして、つい…。」
…Mですか。
「お金と、命に関わる事と、彼女と別れる事以外なら何でもしますから、許して下さい…」
「…そうだな……じゃあ、この辺にテント張ってくれ。」
「え、ここにですか?」
「まだちょっとさっきの匂いはするが、結構いいエリアだしな。
それに…あの爺さんの説教食らってたせいで、もう昼の時間帯だ。
昼間の太陽の下でこれ以上いい場所探す気力と、テント張る気力は俺にはもう無い。」
「えええ…それは暑がりすぎじゃないスか?ヴァンパイアじゃあるまいし…」
「いいから手伝え。
自分の性癖のために俺の活動限界時間を奪ったあんたに拒否権は無い。」
「…はい。」
「ヒナも手伝います!」
「あの〜…それじゃ、私も…」
「お、ありがとな。
それじゃ車のカギ渡すから、コンロとか燃料とか取ってきてくれ。」
「はーい♪」
そして、彼らの協力により、あっという間にテントをはじめとした拠点は完成し、
完成祝いに4人で焼肉をする事になった。
「よーし、火をつけてくれ。」
「了解でーす。えーとライターは…」
「あー、ヒナがやります!ヒナがー!」
「あ、そうか。
悪いけど、ヒナに任せてもらえないか?」
「え?は、はい。じゃあヒナちゃん、一緒にライターを探…」
「あ、だめです!そんなのいらないです!」
「?じゃあ、どうやって火を…」
「こうやってです!」
そう言うとヒナは焚き付けの新聞紙を手に持ち、
口をもごもごさせた後、ぷっと小さな火を吐き出して新聞紙に着火した。
「おぉ〜…」
「な?ライター要らずだろ?」
「ヒナちゃん、凄〜い!」
「えっへん!です。」
見事なドヤ顔。
「…得意がるのはいいけど、さっさとコンロに入れろ!」
「え?
……ぁちゃちゃちゃちゃッ!もえちゃう、もえちゃいますぅぅぅッ!!」
「は、早くコンロに〜!」
全く…これがヒナの悪い癖なんだよな。
まあどうにか火はつき、焼肉が始まった。
俺とヒナの分の肉ははもちろん持ってきていたが、
あの男も、肉を余分に持ってきていたらしく、もみじと分けても肉には困らなかった。
「いただきまーす。…あ、そういや自己紹介がまだだったな。」
「そうスね。今しちゃいましょうか。」
「じゃあ俺からな。俺は提太郎(テイタロウ)。○○大学に通ってる。」
「え、マジですか!?僕もそこの2年生です!名前は道也(ミチヤ)。」
「なんだ、俺3年だから後輩かよ。世間は狭いなぁ…。」
「はーい、ヒナでーす!提灯おばけで、ご主人さまのものでーす!」
「え〜っと…グリズリーのもみじです。山育ちです。よろしく〜♪」
自己紹介も終え、適当に雑談をしつつ、肉と持参のおにぎりを食う。
ミチヤも今日がキャンプ初日らしく、おにぎりを持ってきていた。
…が、量がやたら多い。一人分とは到底思えない量だ。
「…そんなに食うのか?」
「いや、その…これは、現地で俺を気に入ってくれた子と一緒に食べようと…」
「…ハナからそれが目的だったのかよ。」
確かに、最近『独身男の恋人作り』のための行楽がやたら増えてるらしい。
虫系の魔物娘など、自然の中で暮らすのが好きな種族も多いし、
無防備な状態で行けば自動的に襲われ、彼女ゲットとなる。
この男もそのクチだったのだろう。
「…ちなみに聞くが、もし万一襲われなかったら?」
「………もみじが来てくれてよかったです。」
「おい。」
アホなのか?
「でも、このおにぎり美味しいよ〜♪お米なんて久しぶり♪」
「よっしゃ、気に入ってくれて何より!」
「ほんとおいしいです♪ご主人さまも一つどうですか?」
「…まず自分の分を食え。人から貰ってないで。」
その後も和気藹々と昼食は続いた。
ヒナはものすごく楽しそうだったが…俺は疲れた。主にツッコミで。
さっきも言ったが、親父いわく、近隣のキャンプ者がどんな奴かによっても
過ごしやすさが決まるらしいが…正直、奴らはプラスなんだかマイナスなんだか…
腹が膨れて動く気力も回復したところで、近くの川に釣りに行ってみる事にした。
…実は、昔から密かに川釣りをやってみたかったのだ。
そのためにこのキャンプ場を選んだといっても過言ではない。
糸を垂らし、ボーっと当たりを待つ…こういう平和な時間は大好物だ。
ヒナ?ヒナなら、もっと上流の川幅が広い所で、あの二人と水遊びをしている。
水遊び用に買ってやった、うぐいす色のセパレート水着を着た。
もうそろそろ秋なのに、しかも元は水厳禁の代物だったはずなのに、よくやるよ…。
「あれが子供パワーか…。俺はいつ失くしたんだっけ…」
…などと考えたり、ちょっとウトウトしたりしている内に、
いつの間にか夕方になり、暗くなりかけていた。しかも、ここまで一度もヒット無し。
…これはマズイ。何がマズイかというと、
実は最初から、釣った魚を今日の夕食にしようと考えていたからだ。
非常用カップ麺やらもあるにはあるが、ボウズは情けなくて避けたい。
どうしたものか…と悩んでいると、ヒナが水着姿のままこちらへやって来た。
「ご主人さま、つれてますか?」
「…いや、全然だ。」
「…そうですか。」
「……」
「………」
しばらくの沈黙の後、ヒナが空気を変えようとしたのか、
俺の正面に回って、さっきまでの水遊びの事を話し始めた。
「…あ、あのですね!聞いてください!
最初に、みんなで水かけっこしたんですけど、
その途中で、ヒナと同い年くらいのかっぱさんが出てきたんですよ!それでそのあと、
かっぱさんも混ぜて、皆でまた水かけっこしたんですけど、
かっぱさんすごいんですよ。手から水が『ほーす』みたいにぴゅーって出るんです!」
「へぇー。そんな事も出来るのか、河童って…」
「あと、水着になったもみじさんのおっぱいがすごく大きくて、
動くたびに、たっぷんたっぷんって激しく動くんです!
とちゅうでミチヤさんにぶつかった時に、おっぱいがべしんって顔に当たって、
鼻血が出ちゃったんですけど、ミチヤさんすごく嬉しそうで…」
「…ミチヤ…。」
「その後は、かっぱさんともみじさんがお相撲をとったんですけど、
どっちも強くてなかなか勝負が付かなくて、そのうち、お互いにえっちな技を…」
「お前の火に照らされたのもあるかもな………ん!?」
「……?ご主人さま、どうしたんですか?ヒナの足元ばっかり見て…」
「…ヒナ。ちょっとそこ動くなよ。」
「?はい…。」
ヒナは今川の上に浮かび、体内の火で川を照らしているのだが、
その足元に水の反射とは違うきらめきが見えた気がした。もしかして…
「……はっ!」
俺は網を手に取り、ヒナの足元を一気にすくった!
「…よっしゃあッ!!」
確かな手ごたえを感じ、網を上げると、そこには数匹の魚が入っていた。
「えっ?どうしてお魚が?」
おそらく、暗くなった所にヒナが現れて水面を照らしたことで、
その光に魚が集まって来たのだろう。
「ヒナのお陰だ。ありがとうな、ヒナ!」
「えっ、ヒナのおかげですか!?やったー!」
その後もヒナのお陰で順調に魚がとれ、
夕食にするのに十分な量の魚を手に入れた俺たちは、意気揚々と拠点に戻った。
ちなみに今まで全員拠点を出ていたが、出かける前、偶然近くにいたマンティスに
焼肉を分ける事で見張りを頼んであったから大丈夫だ。
…何言ってるんだ、ご都合主義なもんか。断じて…
「おーい、魚とって来たぞー!」
「おお、ほんとに捕れたんスか!」
「ヒナのお陰でな。」
「おいしそ〜!」
「多いから、お前達もさばくの手伝ってくれ。」
「…さばく…って、なに?」
「……え?」
「私、魚はとったらそのまま食べるんだけど〜…何か変?」
…水着を持ってても、野生か。
結局、魚は俺とミチヤだけでさばいた。ヒナ?確実に怪我するからダメだ。
数十分後、出来上がったものは、焼き魚…ではなく、
「鍋だーッ!!」
「「「おぉーー!」」」
「そして炊き込みご飯だぁーッ!!」
「「「おおぉーーー!!」」」
大喜びである。過程は見ていたはずなのに。
この二つにしたのは、水遊びと夜で冷えた体を温め、
飯作りがたるい翌朝に、両方の余りで雑炊にするためである。
しかも両方とも、食べ終わった後、水で汚れが簡単に落ちる。
我ながら実に合理的なチョイスだ。
「そして、とどめにビールだあぁぁぁッ!!」
クーラーボックスから缶ビールを取り出し、満面の笑みを浮かべるミチヤ。
……だが。
「あー…あのー、悪い。
俺、ビール飲めないんだわ。ってか、酒全般ダメ。
ヒナはまだ子供。って事で、酒類は持ってきてないんだよ。」
「えー…じゃあ…あの、もみじって何歳?」
「22だよ〜?」
「微妙に年上だったのか…。まあいいや。一緒にコレ飲まない?お酒なんだけど。」
「飲む飲む〜♪」
どうなるかは大体予想が付くが…知らないぞ?
「俺達は、普通に鍋食うか。」
「はい♪それにしても…ミチヤさん達、すっかりヒナ達のともだちですね。」
「…だな。」
間違いなく初対面だったはずなのに、
いつの間にか4人分の飯を作る事になってたし…(食材は出し合ったが)
あいつらが持つ『溶け込むスキル』のようなものは、少し羨ましいかもしれない。
「よーし。じゃあ、いただきます。」
「いただきまーす♪」
汁を一気に具ごとすすり、飯を勢いよくかき込む。
「あぁぁ…美味い。」
「ですねぇー…。」
川魚にも、ちゃんとダシってあるんだな。
汁と飯、どちらの魚もホクッとほぐれ、味噌仕立ての汁の程よい塩気と、
飯の甘み、ダシの旨み、魚と同様に煮込まれた人参やネギなどその他の具材、
この鍋とご飯を構成するあらゆる要素が口の中で混ざり、それぞれを高めあう。
海やキャンプで食べる食事は普段より美味しく感じられると言うが、
そういった補正抜きにしても、コレは確実に美味いだろう。さすがは俺。
他二人も、驚くようなスピードでビールと鍋を進めている。
…明日の分、あるかな。
「もうおなか一杯ですー…ごちそうさまでした。」
「んー…俺もだ。」
しばらくの間、椅子に座って一息…
「さて…もう寝るか?」
「うーん…もう少し…あ、そうだ!花火!花火やりたいです!!」
「ダメ。あれは明日の夜のお楽しみだ。」
「ええ〜…」
「星はこの季節見にくいし…そうだ、トランプとかどうだ?」
「う〜ん……そうだ。あの、お、おてあらい、つれてってくれますか?」
「?まあ、俺はいいけど。」
「よかった…」
「よし、んじゃ行くか。」
「あ、あの…手、つないで下さい。」
「ああ。離すなよ?迷子になるから。」
「はい、ご主人さま。」
ヒナの手を引いて、トイレに向かう。
…だが、ヒナはトイレとは違う方向に行こうとしていた。
「…どうしたんだ?」
「……ごめんなさい、ご主人さま。おてあらいに行きたいのはうそです。
ヒナ、ご主人さまと二人っきりでいたかったんです…」
「…そういや、川でもすぐ戻ってきちゃったしな。
二人っきりがよかったのか…。ごめんな、ヒナ。」
「で、でも、ミチヤさんや、もみじさんが嫌だったわけじゃないんです!」
「分かってるよ、それぐらいは。お前は優しいしな。
…じゃあ、このまま散歩するか?」
「…はい♪」
そのまま、キャンプ場を回る。
ヒナは外灯に嫉妬しているらしいので、意図的に外灯の少ない道を選ぶ。
それでも、ヒナのおかげで道はほのかに明るかった。
「暖かいよな…お前の手。」
「ご主人さまの手も、あったかいです。」
「そうか。」
「……♪」
「………。」
しばらく、無言の時間が続く。
だけど、何となく、ヒナは幸せそうだ。そして多分、俺も。
やがて、周囲に明かりもテントも無い場所にたどり着いた。
「…ご主人さま。」
「ん?」
突然手をほどくと、顔が同じ高さになるまで浮き上がる。
続いて、顔を赤らめながらゆっくり目を閉じ、口をすぼめた。
…もう、言われなくてもわかる。
「ほれ、んっ…」
「ちゅ…♪」
抱き寄せて、唇を重ねる。何度も。
やがてヒナも俺の頭を抱き、舌を挿し入れ…
「…ちょっと待て。」
「…?」
突然口を離されて、きょとんとするヒナ。
でもな…そんな場合じゃないみたいだぞ。
「…ちょっと、周りを見てみろ。」
「えっ…きゃあああああッ!!?
なになになに、やだ、はなれて、はなれてー!!!」
明かりのない場所にいたもんだから、
ヒナが放つ光につられて、沢山の虫がやってきたのだ。
蛾に、蚊に、その他名も知れぬ沢山の羽虫…
それらが、ヒナの周囲で大乱舞していた。
「いやぁぁあああッ!!」
「急いで逃げるぞ!?」
虫を払いつつヒナの手をつかみ、一目散に拠点へ駆け戻った。
間髪いれずに、お互いに服にしがみついていた虫を払いのけ、再・虫よけスプレー。
念のためヒナには毛布を巻かせ、光を遮断する。
「はぁー…。こわかったです…」
「俺もだ…。こういうのがあるから虫って怖いわ。魔物除いて。」
一息ついてあたりを見回すと、コンロの火はもう消えかかっている。
もうひとつの明かり代わりであるヒナもこの姿だし、拠点周囲は暗い。
あの二人も、既にテントに戻っているようだ。いや、戻っている。
テントがめっちゃ揺れ動いてるから間違いない。
「はげしいですねぇ…。」
「…ああ。」
「あの…ご主人さま。」
「予想はつくけど…何だ?」
「さっき、虫にじゃまされて、途中でやめちゃったし…
つづきと、あと、その後のことも、したいなって…。」
「…わかったよ。じゃあ、テントに入るか。」
「はい♪」
「…でも、トイレ行ってからな。
お前のことだから、漏らす可能性がある。」
「はーい…」
互いにトイレを済ませ、歯を磨き、念のためコンロに蓋をし、
寝る準備を完全に済ませた後、テントに這入りこみ、
入り口をしっかり閉め、底一面に敷いたマットの上に座り込んだ。
マットは自前のだから、ナニをしてもテントは汚さない。
「そんじゃ…おいで、ヒナ。」
「ご主人さま…♪」
今度こそ抱き合って、唇を重ねる。
唇だけのキスは既にやったので省略。いきなり舌を絡め合った。
ヒナの舌はグミか何かのように柔らかいが、体内で火が燃えているせいか、熱い。
もっとも、火傷はしない熱さだが。
「れぇる、じゅるっ…」
「ちゅ、くちゅ…」
ヒナの唾液を啜ると、腹の底から燃えるように熱くなってくる感覚に襲われる。
まるで、燃料を火に注ぐように。
そして俺も、口を通じて、ヒナに燃料を渡してやる。
十分に燃料を分け合い、口を離す頃には、
ヒナの火も一回り大きくなり、瞳は期待の光を湛えながらも、とろりと潤んでいた。
「すっかり興奮してるみたいだな。じゃあ、脱がすぞ。」
「はい…。」
提灯お化けの標準装備らしい羽織をはだけ、
淡い色の、小さく可愛らしい乳首があるだけの胸を露わにする。
続いて提灯ブルマ…ではなく、それよりも動きやすいので買ってやった、
今は何やら湿っているデニムのハーフパンツを、その下のショーツごと抜き取る。
その先にあったものは、年相応に幼く毛も無いくせに、
一丁前に愛液を溢れさせ、準備を万端に整えているたて筋だった。
「…溶けた蝋が出てるぞ。もう、待ち切れなさそうだな?」
「はいぃ…がまんのできない道具でごめんなさい…♪
ご主人様の、おいしいろうそくがほしいです…」
「いいぞ。…でも、声を出すなよ。」
「えっ!?な、なんでですか?」
「お前の声でかいからなぁ。もう寝てる人もいるだろうし、怒られるだろ?
あの二人も声『だけ』は抑えてるんだから、我慢しろよ。」
「…はぁい。」
マットの上に押し倒し、大きく膨れたズボンのチャックを開けて、
ヒナと同じく準備を済ませた息子を出してヒナのたて筋にくっつける。
これからするのは、子供らしさとは大きくかけ離れた行為だが、
ヒナはその柔らかそうな頬を赤く染め、
お互いの性器がキスをする様を、子供らしい、期待と喜びに満ちた目で眺めていた。
だが…
「はやく、ヒナを使ってください、
ヒナのおまんこに、ろうそくいれてくださいっ♪」
「まあ、待て…」
まずは入り口にこすり付け、ヒナの蝋をまぶしていく。
既に何度もしているが、それでもヒナの入り口はまだまだ小さいのだ。
いきなり入れると多分痛い。俺が。
「ゃっ…あんっ…じ、じらさないで、くださぁい…」
「悪いな。もうすぐ終わるから…」
やがて十分に蝋がつき、ヒナの光をテラテラと反射するほどになった。
これで完全に準備完了。再びヒナの性器と先端を合わせる。
「じゃあ行くぞ。声抑えろよ。」
「はいっ…」
ヒナは目を固くつぶって、口を閉じ、俺の体に両腕を回してしがみついた。
ヒナなりの、挿入の感覚をこらえる体勢に入ったらしい。
それを見届けた後、ゆっくり腰を押し込んでいった。
「…ん…んっ、んっ、ぅ…ぷふぅ、ふぁぁぁ…!」
「…抑えろってば。」
だが、ヒナの小さな顎と唇だけでは、喘ぎを抑えきれないようだ。
「はぁ、はぁっ…ごめんなさい、だめ、です…」
「手で押さえたらどうだ?」
「…やです。ご主人さまにくっついていたいです。」
「しょうがないな…。じゃあ、これ咥えてろ。」
左手の中指と人差し指を差し出し、口に含ませる。
「んぅっ、あむ…ふわえあひは。」
「よし、最後まで入れるぞ。離すなよ…!」
今度はさっきよりもやや早く進めてみる。
「ふーっ、ふっふっふっ、んー…!……ふぅ〜♪」
「…全部入ったな。声も抑えられてる。えらいぞ、ヒナ。」
「…ん〜♪、んふふ…」
きめ細やかな栗色の髪をわしわしと撫でてやる。
嬉しかったようで、薄目を開け、顔を更に赤らめながら、甘えた鼻声を出している。
ストレートに言うのは恥ずかしいが、本当に可愛らしい。
それと同時に、きつい膣内がきゅんきゅんと更に締めつけた。
「相変わらず、熱いな…。本当に燃えてるみたいだ。」
押し上げられてぽっこりと膨れた下腹部を見ると、
ヒナの腹の中に燃える火と、その光で透けて見える俺の息子の影が合わさって、
まるで俺の息子が蝋燭の如く燃えているように見える。
先程のように、俺の息子を『蝋燭』と比喩するのにもうなずける。
しかも、そう見えているだけではなく、実際に燃えているように熱い。
その火はちゃんと熱を持ち、俺の先端を炙っているのだから。
「…でも、気持ちいいぞ。」
ヒナの火は、肉を焦がす熱と火傷の痛みではなく、
火照りはそのままに、理性を焦がす熱と、溶けるような快感をもたらす不思議な火だ。
そんな火にいつまでも炙られていれば、こちらも我慢が効かなくなる。
ヒナに、沢山の白い燃料を注いでやりたい…
その目的を果たすため、俺は腰を動かし始めた。
「ふっ…ぅんっ…んむぅ…♪ふぅぅ…」
小さく、押し殺した声が聞こえるが、これくらいなら外にも聞こえないだろう。
「ふふ…ヒナ…お前は、気持ちいいか?」
「んー♪」
声を抑えさせるために咥えさせていただけだった指も、
普段俺の息子にしているように、もとい、母の乳房に吸い付く赤ん坊のように、
幸せそうな表情でちゅうちゅうと吸い上げてきて気持ちいい。
お互いに、順調に高まってきている。
「そろそろ、ちょっと早くするぞ。いいか?」
「…ん。」
了承も得られたので、腰の動きを少しずつ早く、強くしていく。
「んっ、ん、んっ、ふっ、ふっ…!」
「はぁっ…もうすぐ、今日、役に立ってくれた、ご褒美、やるからな…!」
「んー!ん、んぁ…?んっ!!んむ、ぅ、ぢゅ…♪」
限界が近くなってきたところで、口から指を引き抜き、
代わりに俺の唇で口を塞いでやる。
「んぅぅん、ぁぅ、ふーっ…!?んーっ、んー!」
互いの舌を吸いあいながら、自由になった左手で乳首を摘み上げてやる。
声を抑える事が困難になってきたあたり、ヒナはどうやら、もう限界らしい。
俺も限界だ。悶える小さな体を、強く抱きしめ…
「ふぅっ、ふうっ………ぅっ!」
そして、ヒナが待ち望む最高の燃料…俺の精を、思い切り注ぎ込んでやった。
「んー、んーっ、んんーーーーーッ……!!」
それと同時に、ヒナも大きく絶頂を迎えた。
これは流石に、外に聞こえたかな…?まあよし。
「…ぷはっ、ふぅー…」
「…ぁはっ、はぁ、はぁ…」
全て出し終わったところで口を離し、ヒナの横に転がって脱力し、
しばらく、互いに絶頂の余韻に浸っていた。
「…どうだった?ヒナ。」
「…なんだか、いつもより、こうふんしちゃいました…。」
「そうか…。」
「…ご主人さまは、どうですか?」
「そうだな…。耐えてるヒナも、可愛かったぞ。」
「…よかった。」
遠くで、秋の虫の声が聞こえる。
「『きゃんぷ』って、すてきですね。」
「喜んでもらえて何よりだ。」
「…ヒナ、明日の出番ももっとがんばって、遊びももっと楽しみますね。
そしたらまた、たくさんごほうび下さいね。」
「ああ。約束する。」
「やった♪」
最初は気が進まなかったが、家に帰るまでがキャンプだ。
明日は俺も、ヒナと一緒にもっと楽しもう。
「…あのね、ご主人さま。」
「何だ?」
「ヒナ、ご主人さまのこと、大好きです。」
「…俺もだよ。お前は、俺の宝物だ。」
「…うれしい…♪」
「そうか。」
…何となく、幸せだな。
「…なあ、ヒナ。」
「…」
「ヒナ?」
「…くぅー……」
「…何だ、もう寝たのか。」
いつもなら精を注いで火が強くなると、二回戦、三回戦と求められるのだが…
流石に今日は疲れていたらしい。優しい寝息を立てている。
「なら、俺も今日はゆっくり寝るか。」
と言っても、寝る準備は済ませる。
ウエットティッシュで寝ているヒナの膣を拭い、
俺の息子や、汚れたマットもきれいにした。
続いてヒナに寝たまま上下の服を着せ…って、凄い熟睡具合だな。
毛布をかぶせ、光を消した。
「…おやすみ。」
同じ毛布に入り、目を閉じる。
俺も疲れていたのか、割と速やかに、眠りに落ちていった。
…明日も、いいキャンプでありますように。
そして翌朝、テントから出て最初に目にしたものは、
未だ激しく揺れ動くミチヤ達のテントだった。
「…どんだけヤってんだよ!?」
「すごい…。ご主人さま、ヒナたちも負けずに…」
「何で対抗しようとしてんだ!?」
…ひでぇオチ。
── Have a nice camp!! ──
12/12/25 09:18更新 / K助