「ふぅ……これで荷物の処分も終わりだな」

廃品回収の業者にお礼を述べて軽く背伸びをする俺。
手元にあるのは衣類やら日用品やらが詰まった鞄一つとビンが一つだけ。
これから海辺へ行って待ち合わせている妻のもとへと行くのだ。
俺とマーメイドである妻のランと出会って早半年。
今日から彼女の居住区である海の中へと引っ越すのだ。
人間でも海中で住めるようになる儀式を執り行うシービショップが近くに来るのは今日の午後。
これで互いの都合を気にせずいつも一緒に居られると思うと自然と浮き足立つのも仕方あるまい。
周り近所への別れのあいさつやらお礼も済ませた俺は意気揚々と海へと向かったのである。






待ち合わせ場所には既にランが居た。
透き通るような青い長髪は潮風を受けて静かに揺れ、深い青色の目はとても穏やかな様子だ。
魚と同じ下半身を岩場に横たわらせているその姿は初めて見かけた日と変わらず優雅な印象を与える。
あぁいつ見ても綺麗だなぁなんて見惚れている俺に気付いたのであろう、ランはこちらを見て手を振ってきた。

「ラシルぅー！　こっちこっち！」
「おぅ、早いなラン、待たせたか？」
「ううん、大丈夫。ちょっと前に来たばかりだから」

そう言ってほほ笑む彼女の顔はまさに天使とも言えるほど素晴らしいものだ。
この顔をこれからはずぅっと見られると思うと引っ越すためにした苦労なども報われるものだ。
早く儀式とやらを済ませて彼女の家に上がり込んでいちゃいちゃしたいものだ。

「なぁラン、儀式っていつごろになるんだ？」
「シービショップのセセナさんが来るのは30分くらいあとかなぁ」
「そっか、俺儀式の内容知らないけど何するんだ？」
「私もよくは知らないんだけど、キスしたりするんだって」
「キスかぁ、人に見られるのはなんか恥ずかしい気もするな」
「そうだね、ちょっと恥ずかしいよね」

そんなこと言ってえへへと笑うランの顔は天使みたい……ってさっきも似たようなこと考えたな俺。
まぁ儀式してくれる魔物が来るまで少し時間があるらしいことは分かった。
手持無沙汰になるなぁなんて考えてると彼女は話を切り出してきた。

「ねぇラシル、お願いがあるんだけど」
「なんだ？　なんでも言ってくれよ」

その表情はいつになく真剣なものでつられて俺も真剣な表情を作る。
ほんの少し深呼吸して彼女は続ける。

「私の血、飲んでくれる？」
「もちろん」
「あぁまず理由説明しないとね。えっとね、人魚の血って言うのはね……って即答？」
「寿命を延ばしてくれるんだろ？　聞いたことある」

人魚の血は飲んだものの寿命を延ばす作用がある。
添い遂げる相手と同じ時間を過ごせるようにというものらしい。
人間の間でも魔物の間でも高値で取引されることがあるとのことだ。

「ランの血液を飲めば同じ時間を過ごせるんだろ？　飲むに決まってるさ」
「人間としての生活がしにくくなるよ？　身体の成長もほとんどなくなるから」
「そんなの大丈夫さ、ランさえいれば何もいらないからな」
「……良かった、どう説明しようかなって悩んでたの」
「悩むことないだろ？　俺とお前はこれからずっと一緒だ」
「……うん。ありがとね、ラシル」

そう言ってほほ笑む彼女の顔は云々、さすがに語彙が尽きてくる。
そして彼女はごそごそと小さなポーチのなかからソーイングセットを取りだす。
待ち針を取りだした彼女の手を握って止める俺。

「どうしたの、ラシル？」
「なぁ、お前の血ってどうやって飲ませるつもりだ？」
「え、どうやってって……指先にちょっと針で傷つけるつもりなんだけど」
「なぁ、俺からも頼みがあるんだ」
「えっと、何？」

俺が彼女の発言を受けて取り出すのは液体の入ったビン。
じゃじゃーんなどと効果音を口で演出しながらランに見せつけてみるも反応は薄い。
まぁそりゃそうだなと思い俺はそのビンの中身の説明を始める。

「これが何かって言うとだな、まぁ魔法薬だ」
「うん、薬っていうことは分かるよ。効果は？」
「その前に一つ質問だ。ラン、母乳出る？」
「ぼっ……出る訳ないよ！　ま、まだ子供なんて出来てないし、子どもはもうちょっと先で二人でイチャイチャしたいし……」
「まぁ出ないよな。そんでこの魔法薬、なんと子供を授かる前でも母乳が出せるようになるんだ！」
「それはすごい……のかな？」
「で、母乳と血液ってほとんど成分同じなんだってね」
「えっと……つまり、お願いって言うのは」
「授乳プレイで血液飲ませてください！！」

沈黙が空間を支配していく。
俺は土下座して頭を岩肌にごつごつと当てている、彼女は困惑して何も喋り出そうとしない。
やばいなぁ反応ないなぁなんて思いながら彼女の顔を下からのぞき見るとほんの少しむくれていた。

「ねぇラシル？　さっきまで良い雰囲気だったよね」
「え、おっぱい飲ませてで良い雰囲気になってたのか」
「その前！　貴方が『これからずっと一緒だ』って言ってくれた時まで！」
「はいすいません良い雰囲気でした」
「すっごく嬉しかったのにそのあとに母乳だなんて……」
「空気読めてない発言でした申し訳ないです」
「血液なんてどこから飲んだって同じなのに」
「それは違う！　おっぱいから母乳を飲むのは男のロマンだ！」
「黙って反省しなさい！　ムードってものが分かんないの！！」
「申し訳ないです俺が悪いです許して下さい」

先ほど以上に頭を地面というかごつごつした岩に擦りつける俺。
どうやら逆鱗に触れたようだ……人魚にも逆方向の鱗ってあるのかな？
今度一枚ずつ舐めるようにして調べて

「何考えてるのラシル！　ちゃんと反省してるの！！」
「すいません反省しております」

俺の考えていることはお見通しのようだ。
初めて会ったときに魚の下半身見て美味いのかななんて思って怒られたこともあった。
初めてのセックスの時に女性器を舌で愛撫しようとして生臭いのかなと思って怒られたこともあった。
……俺怒られてばっかりだな、ほんと猛省すべきだ。

「……はぁ、仕方ないなぁ。いいよ」
「へ？　いいって」
「だから、その薬飲んであげるって言ってるの」
「マジ！？　やったぁ大好きだぜラン！」
「はぁ……仕方ないよね、好きになっちゃったんだもん」

身体を勢いよく起こした俺を見てやれやれと言った表情で手を差し伸べてくる彼女。
素早い動きでビンの蓋をあけ彼女に手渡し飲んで飲んでと期待の目で見つめる俺。
心底嫌そうな顔をしながらも一気に飲んでくれる彼女……あ。

「あ、あのさ、ラン」
「なによぉ、ちゃんと飲んであげたんだから感謝してよね」
「いや、それ少し飲めば効果出るんだよね」
「えぇ！　なんで早く言わないのよ！　飲み過ぎて毒になったりしないよね！？」
「あぁうんそれは大丈夫だけど飲みすぎると数分間ダダ漏れになるらしいんだ」
「なんで嬉しそうな顔でそんなこと言うのよ変態ラシル！」
「いやだって嬉しいしねってなわけで頂きます！」

彼女の貝殻をあしらった服を思い切り上へずらしあげる。
豊満な乳房の先にある薄桃色の乳首は少し立っていて、その先から乳白色の液体が少しずつ溢れてきた。
両手を伸ばしておっぱいを下から持ち上げるとずっしりとした重みが手のひら全体に感じられる。
軽く揉んでやるとそれだけで乳首の先から母乳がさらに溢れてくる。
もったいないお化けが出てはいけないとそれに思い切りしゃぶりつく。
一心不乱に乳首を吸い上げると、舌全体に甘い味が伝わってくる。
実際はあんまり味なんてしないけれどもそれでもランのおっぱいだと思えば極上に思えるのだ。

「ちょ、ちょっとラシル、もっと優しく……」

ランが何か言っているようだが気にしている余裕はない。
俺が今すべきことはこの胸からあふれ出る母乳を堪能することのみ！
右の乳首を吸い上げると同時に左の乳首をつまんであふれさせる。
その溢れ出た左乳首に顔を移動させて乳房全体を舐めあげる。
舌で乳房全体をなでると同時に右乳房への愛撫も忘れない。
なんだか甘い匂いが漂っている気さえするそのおっぱいに夢中になる俺。

「ね、ねぇラシルってば！　優しくしてって……ぁぁんっ♪」

鼻に広がる甘い香り、口に広がる甘美な味わいと同時に耳朶にも淫猥な響きが聞こえ始める。
五感全体でランを堪能すべく俺は彼女の乳房を弄ぶ動きをさらに激しいものに変える。
乳房を押しつぶすようにして中央へと寄せて乳首を同時に舐められるように調整する。
びくりと揺れるその乳首に口を寄せてあまがみをする。
それだけで耳に甘い声が届き白い母乳があふれ出てくる。
思い切り吸い上げると身体全体を反応させて嬌声をあげるラン。
そんなBGMをも堪能しながら俺は数分もの間彼女のおっぱいの虜となっていた。





「ごちそうさまぁ！」
「……えっと、なんて言えばいいの私」
「いやぁ美味かった！　またよろしくたのｍ」
「しないよもう！　……もう口べとべとじゃない」

ポーチからハンカチを取り出して俺の口を甲斐甲斐しく拭いてくれるラン。
仕方ないなぁとか私がついてないと駄目ねなんて言う彼女の顔はとても優しげなものだった。

「はい、これで拭けたよ。……優しくしてって言ったのに聞いてくれないんだもん」
「いやぁ無理だよそんなの、あんなおっぱい見たら止まれないって」
「それはそうでしょうねぇ、あんなに淫らに乱れたら殿方なら誰しも暴走するでしょうねぇ」
「いやぁあんたもそう思うでしょう気が合いますねぇ……誰！？」

ランの後ろには一人の魔物娘がニヤニヤした表情を浮かべていた。
服装は結構違うがランと同じく魚の下半身を持っているその魔物を見てランは顔を紅潮させている。

「せ、セセナさん！？　いつから見てたんです！？」
「そちらの方がランさんの服からぽろんって乳房を露出させたあたりから」
「いやぁぁ！　恥ずかしいもうお嫁いけないあんなとこ見られたなんて……」
「なにがお嫁にいけないだよラン、お前は俺の嫁じゃねえか！」
「うんラシル嬉しいんだけど少し黙っててもう恥ずかしくて顔真っ赤なんだから私」

ほんとに真っ赤になっている、蒸気でも出るんじゃないかというほどだ。
そんな彼女を見てセセナさんは爆弾を落としていった。

「ランさんはウブですねぇ、これから儀式でセックスしてもらうのに大丈夫ですか？」
「セ、セックスぅ！？　キスとかじゃなかったのかラン！？」
「わ、私だって今聞いたんだよ！　人前でだなんてそんなの無理だよぉ！」
「初々しいのも結構ですけど儀式ですので。さぁ、情熱的に交わって下さい♪」
「急に言われても私心の準備が……」
「そちらの方はもう準備は万全のようですね」
「え、ってラシルぅ！　なんでもう脱いでしかも勃ってるのよぉ！」
「いやぁ母乳飲んでたらビンッビンになってたんだなぁコレが」

俺の愚息の硬度はもう最高潮に達している。
母乳効果ってすげえななんて思いながらランににじり寄る。

「うっへっへ……いくぜラン俺の全てを受け止めてくれぇいやっほぉい！」
「こんなのっていやぁ！」





何はともあれ、俺は海の住人となりました。
そして数日間全く口をきいてもらえませんでした。
というより儀式後ぼこぼこにされてオシオキされちゃいました。
思い知らされたのはランの尻尾は俺のお尻にはだいぶ大きいなってことでした。
開発されてしまったのでたまにそっちもしてくれるように頼もうかな、なんて思ってます。

「……ラシル、まだ変なこと考えてるんじゃないでしょうね？」
「いえいえ滅相もございませんともラン様！」

あ、俺の彼女への呼称はラン様へランクアップしましたとさ。

■作者メッセージ
マーメイドさんのおっぱいもいいおっぱいだ。
母乳プレイって言うとホルスタウロスさんかなと思ったけど変化球投げてみた。