山賊退治 白登場編
ここは城内の会議室…
そこには守備隊の各隊長、及びカイト達を始めとするギルド腕利きの冒険者が集まっていた。
近日中に決行される【山賊掃討作戦】に参加する主要メンバー達である。
「今回皆に集まってもらったのは他でもない。
偵察隊が持ち帰った資料の解析と、
シーフギルドからもたらされた情報から新事実が見えてきたのじゃ」
「俺たちを集めたと言うことはかなり重要な事柄なんだな?」
歴戦の戦士の風格を漂わせている冒険者が質問した。
「ああ、そうじゃ。
重大な事実が明らかになった…」
「その事実とは?」
山賊討伐(名目上)の応援隊として派遣されてきているフランが先を促す。
隣には勿論、夫のライトの姿も見える。
「敵の…目的は貿易路の封鎖では無いと言うことじゃ」
「「「「「!!」」」」」
「なんだと!?」
「では敵の真の目的は!?」
「レストの残存を始めとした教会が密かに開発した新型対魔物兵器の実戦テストじゃ…」
「「「「「!?」」」」」
室内が騒然となる。
「レスト教会残存にはまだそんな力が残っていたのか?!」
レスト教会本体は王国崩壊と同時に確かに壊滅した。
残存勢力はいまだに存在していたが、
散発的なテロ活動を起こす程度の力しかなかったはずである…
「残存が他地域教会の力を借り、
地下で密かに開発を続けていた様じゃ。
本来の目的は実戦テストで、
貿易路封鎖は我々を誘き出す餌というわけじゃ」
「奴等がこの頃大人しくしていたはこの為だったのか…」
レスト冒険者ギルドからの要請で残党狩りに参加していた冒険者が呟いた。
レスト支部は最近創設されたばかりで所属人数がまだ少なく、
慢性的な人手不足の状態であった。
「人間が扱える兵器ごときには簡単には負けないぜ!!」
魔物の冒険者が言い放った。
「人間を侮ってはならん…
魔法を使わない純粋な技術だけなら、
我々を凌駕するだけの力を秘めている種族じゃ」
「しかし…」
「その秘めたる力がなければ前魔王時代に駆逐されておる…
現に自律行動式の兵器をレストの残存は再び作り出しおった」
「「「「「!?」」」」」
「まさか…あの兵器を復元したと言うのか!?」
フランが言葉を荒らげる。
ジパングにいるフランの友人もその兵器によって危うく命を刈られる所だったのだ。
「いや…
兵器製造工場は資料も含めてシーフギルドが完全に破壊したはず」
情報通の冒険者がフランの言葉を半場否定する。
「それに…
コアが無いと動かないはずだぞ?!」
そう、コアの製造方法を記した資料は他のモイライギルドによって抹消されている。身体を作れたとしても頭脳であるコアを作れなければ意味がない…
「奴等が最後まで製作に苦戦していたコアは他の教会勢から提供されたようじゃ。
まだ試作段階の様じゃがな…
【魔力を結晶化】させ、
それに【式神】の魔法を埋め込んで魂の変わりとしておるらしい…
言わば人工のコアじゃな」
「なんですって!?」
思わずカイトが声をあげた。
(自律行動させられるだけの魔力を結晶化することに成功したと言うのか?)
そう…青龍の宝玉は大量の魔力を圧縮し結晶化させた物…
クレアの話が本当ならば奴等はその技術の解析に成功した事を意味する…
「コアは良いとしても身体の性能はどうなんだ?」
「うむ…前回と同じ様にジパングの技術を用いている様じゃ。
密かに持ち出したあの兵器の実戦データも設計に反映させているらしいがの…」
同じ主神派教会である所からデータを盗み出すとは…
流石は過激派で知られたレスト教会。
目的のためなら手段を選ばない様だ。
「では盗み出した資料を元に復元したのですか?」
ライトが質問を投げかける。
「いや…流石に設計図の様な物は盗み出せなかったようじゃな」
「じゃあ奴等が独自に作り出したのか?」
「一様はそうじゃな。
元になったのはジパングの【からくり人形】の技術じゃ。
それに盗み出したデータを反映させ、
レストが独自に開発したらしいの」
「なんだ?そのカラクリ人形って」
「簡単にいうとジパングの郷土品の1つです。
歯車等を組み合わせて人形に人のような動きをさせるもので、
腕の良い職人が作る物は複雑な動きをさせる事が出来ます」
クレアに代わって葵が説明した。
「ジパングにはそんな凄い人形があるのか!!」
大陸から出たことがない者達がどよめいた。
「ええ。簡単な物はおもちゃとして売られています」
「その技術と魔法を合体させたというのか…」
「そうじゃ。大陸の技術も組み入れての…」
「コアの技術は何処から?
教会が自分たちで開発したのですか?」
「それは…」
一瞬カイトを見る。
それに対してカイトは無言で頷く。
「皆には黙っておったが…
実はジパングにて封印されていた前魔王時代に作られし
【魔力の結晶体】が教会側によって奪取されての…
その魔力結晶化の技術を一部解明した様なのじゃ」
「…その結晶体にはどのくらいの魔力が封じ込められているんだ?」
「ジパング全体を包む結界を半永久的に張れるだけの魔力じゃ」
「「「「「…」」」」」
余りのスケールの大きさに皆は言葉を無くす…
もっとも、【魔法に詳しくない者】はいかに危険な物かいまいち分からないらしい…
室内は青ざめて言葉を失った者と、
頭上に?マークを浮かべている者に別れていた…
「すまん…魔法に疎い私にも分かりやすく説明してくれ…」
リザードマンの冒険者が思わず呟いく。
「こう言えばよいか?…
暴走させれば全ての大陸を一度に吹き飛ばせるぞい」
今度は全員言葉を失った。
そして
「そんな物騒なものが教会に渡っていたのか?!」
その言葉と同時に室内が再び騒然となる。
「安心せい。その結晶体には何重もの強力な封印が施されておる。
現魔王様でも封印を解くのには10〜20年は必要じゃ」
それを聞いて皆は何とか落ち着きを取り戻した。
「でも出来るだけ速く、
その結晶体を奪還する必要があるな」
「そうじゃの…あれは失われた太古の魔法技術が詰まっておるからな。
今現在判明している事は以上じゃ。何か質問は?」
「コアの開発元は何処の教会なのですか?」
カイトが質問をする。
その教会が分かれば宝玉奪還に一歩前進するからだ。
「それがレストに送られるまでに複数の教会関連施設を経由しておっての…
開発元の所在はいまだ不明じゃ。
シーフギルドも総力を挙げているのじゃが…」
「そうですか…経由した教会にコアのデータが漏れた危険性は?」
カイトが一番危惧していた事を口にする。
「コア自体が完全なブラックボックスと化しておって解析は不可能じゃ。
下手に分解しようとすれば自爆する機能付きらしい」
「全くご丁寧な機能を付けたもんだ」
「表向きは此方にコアが完全な状態で渡ってしまった時の事を想定したらしいの」
「真の意味は他の教会に情報が漏洩するのを防ぐ事か…
味方も信用できないってか?」
守備隊の隊長が皮肉を口にした。
「そう言うことじゃな。他に質問は?」
「「「「「……」」」」」
「無いようなら今日は解散。
作戦内容が決まり次第、招集をかける以上じゃ」
それを聞いて皆は会議室から出ていった。
「ああ、カイト達は領主殿が呼んでいたのでワシと一緒に来てくれ」
そういって会議室を出ようとしていたカイトに呼び止める。
「分かりました」
「では此方じゃ」
そういって謁見室に上がる階段とは反対側に歩き出す。
「?」
その行動に疑問を抱きながらもついていくカイト達。
「おいおい何処に行くんだ?」
地下へ降りる階段に差し掛かった時、
遂に紅が声を上げた。
「地下の宝物庫じゃ」
「そこに領主が居らっしゃるのですか?」
今度は葵が質問をする。
「そうじゃ。娘に似合いそうな物を探していたら、
そなた達に関係がありそうな物が見つかったそうでな」
「「「!?」」」
3人は言葉を失った。
探していた物が、
実は近くにあった可能性が出てきたのだから。
「ここじゃ」
そうこうしているうちに目的の部屋に着いたようだ…
宝物庫だけあって警備兵と重厚な扉がついていた。
「領主殿は中かの?」
「クレア様お待ちしておりました。領主様は中でお待ちです」
そういって警備兵達は扉を開けた。
扉の厚さは50cmはあるだろうか。
中には鍵付きの引き出しが数多く備え付けられていた。
部屋の奥には鍵のかかった扉が複数枚ある。
そのなかに宝物類が入っているのだろうか?
「会議は終わった様だな?」
その部屋の中心には領主であるドラゴンが立っていた。
「申し訳ない。
待たせてしまったかの?」
「いや私も先ほど来たばかりだ」
「お久し振りです。領主様」
カイト達が方膝をつき頭を下げて最大限の敬意を表す。
そう、この蒼いドラゴンこそステーション街を始めとしたこの地域一帯を納める領主である。
名をミンスリーと言い、
教会からは【蒼い旋風】と恐れられている者である。
隣の地域を治めるエメラルダス姫の幼い頃のお目付け役でもあった。
その為、今現在も魔王からあつい信頼を獲ている。
エメラの【身を呈して弱者を守る】精神はミンスリーから受け継いだ物だ。
彼女も街に危機が迫った時には自ら先陣にたって戦う真の【勇者】と言える者の一人である。
「頭を上げてくれ、カイト殿。
愛しき民達を守ってくれたそなた達が敬意を示すほどの者ではないよ。我はな」
そう言って謙遜するミンスリー。
「しかしあなた様はここの領主であることに変わりはありません。
住まわして頂いている我らが敬意を表すのは当然です」
頭を上げてカイトは言った。
「我からすればそなた達も既に愛する民だ。
それに我は領主といっても、
この地域を守護しているに者に過ぎない」
その振る舞いからは一般的なドラゴンに見られる高圧的な物は一切感じられない…
これが領民から信頼を集める要因の1つなのだろう…
どうやらミンスリーは民や家族を一番の宝と考えているようだ。
「有り難きお言葉」
「お決まりの漫才はここまでにして、本題に行っても良いか?」
…どうやら何時も同じ様な事をしているようだ。
「そうだな。
今回そなた達を読んだのは他でもない。
以前話していた【白虎】に関係する防具が見つかった」
「本当なのですか!?」
「ああ、この宝物庫の1番奥の部屋に安置されていた。
どうやら我がここを統治する遥か以前から安置されていた様だ」
「失礼ですが…装着部位は何処でしょうか?」
「足回りだ。
葵殿達が言っていた部位と一致する。
封印されている魔力もそなた達と同じ物を感じたのでな。
もしやと思い、ここにご足労願ったのだ。
重くて動かせなかったのでな」
葵達と同じ魔力…そして装着の資格を持っていない者ではまともに動かせない…
四聖獣に関係する物に間違いなさそうである。
「では案内しよう」
「お願い致します」
4人はミンスリーに案内されて着いたのは1番奥の部屋…
「この先だ」
「只の棚に見えるが…まさか隠し扉か?」
冗談半分で紅が言った。
「正解だ」
そう言って引き出しを入れ替えていくリース。
「これで…最後だ」
最後の引き出しを入れ換えると…
ガコン!!
何かが解除される音が部屋にこだまする。
そして、壁の真ん中に位置していた棚がゆっくりと地下に格納されていく…
棚があった場所には扉が隠されていたのだ。
「この先に件の防具がある」
そう言って隠し扉を開ける。
そこには石組の通路が続いていた…
その奥にはほのかに光が見える。
一同は無言で通路を進んだ。
たどり着いた部屋の上下四方の壁には魔力が漏れない様にだろうか?
強力な魔力封じの魔方陣らしき物が描かれていた。
それには見慣れない紋様が数多く使われている。
クレアが壁に近づき、
その魔法陣を穴が開くほど凝視している…
目がギラギラと輝き、
見ている者に少々恐怖を感じさせた。
その部屋の中心部には白銀に光輝く足回りの防具一式が
下半身だけの人形に付けられて鎮座していた。
この光が部屋全体を明るく照らしていたのだ…
防具には白虎をモチーフとした紋様が描かれている…
漏れ出ている魔力も葵達や楓と同じ物を含んでいた。
「間違いない…白虎の防具だ!!」
「こんな近くにあったのですね…」
葵達が察知出来ないとは…
この部屋に張られた結界はとても強力なものなのだろう…
壁に書かれた魔方陣をクレアが羊皮紙に書き写していた。
失われた古代魔法の一種なのかも知れない。
「さあ、主…封印を!!」
「白虎の眠りを覚ましてくれ!!」
「わ、分かった」
2人の剣幕に押されてカイトは防具に近付いた。
(…青龍と朱雀の封印を解いた者ですか…
待っていましたよ)
カイトの脳裏に女性の声が響く…
(あなたが白虎の封印を守る者か?)
(そうです。
正確には寝坊助である白虎のお守り役ですが)
「カイト殿は一体何をしておるのだ?」
静観していたミンスリーが、小声で葵達に疑問を投げ掛ける。
「白虎の封印を解いているのです」
「あの武具の中にもそなた達と同じ四聖獣が眠っているのか!?」
「ああ、寝坊助がな」
(それで貴女が課す試練はなんですか?)
(2人の四聖獣を従えている時点で装着の資格保持者である事は明確。
敢えて言うならば…
試練はこのお寝坊さんを起こす事でしょうか)
(はい?)
思ってもみなかった内容にカイトはあっけにとられた。
(大蛇が復活した時も目を覚まさなかった強者です。
貴方に白虎を使役する資格が有るなら…貴方の声に答えて目を覚ます筈…
さあ、手をかざして白虎に語りかけて)
(分かりました)
そう心の中で答えるとカイトは両手をかざす。
(古のジパングを護りし者よ…
今再び目覚めたまえ)
(……)
(今再び世界に危機が迫りつつある…どうか我らに力を貸したまえ…)
(………)
(俺は皆を無意味な暴力から守りたいんだ!!
俺が体験した様な事から皆を守りたい!!
その為には俺は阿修羅にでも何にでもなってやる!!
どうか力を貸してくれ!!白虎!!!)
(…その言葉確かに聞いたぞ!!我が名は白虎…そなたを主と認めようぞ!!)
そして…防具から放たれる光が一段と強くなった。
同時にカイトの右脚に白虎の紋様が描かれる
余りの眩しさにその場にいた誰もが目を瞑った。光が収まった時…
そこには…
「ふぁ〜。おはようございます〜」
白銀に光輝く白き虎…白虎がいた!!
そして…
「あれ…?あれれ?」
その白き虎は徐々に姿が変化していき、
やがて…
葵達と同じく魔物娘の姿へと変わっていった。
「はわわ…なんか姿が変わっちゃいましたよ〜!?」
風の精霊達から作られし白虎は、
分類上で言うところの風の精霊【シルフ】なっていた。
しかし葵達と同じく、様に他のシルフ達とは違う所も見られた。
髪には虎の頭部をイメージさせる装飾品が付き、
全身には虎柄の紋様が描かれていた。
髪色も白虎を彷彿とさせる白銀であり、肌色も幾分か白みがかっている。
「やっと起きたか…この寝坊助!!」
紅が白虎にデコピンをかました。
なんだか嬉しそうである。
「痛いですよ〜誰ですか?貴女は!!」
頬を膨らませて紅を睨む白虎。
…本人は全力で睨んでいるようだが…
全く怖くない。
「分からないのかい?朱雀だよ、朱雀」
「え〜!?…そう言えば朱雀と同じ魔力を感じます〜!!」
「全く…相変わらずマイペースな野郎だ」
全く変わってない性格に半場呆れる紅であった。
…マイペース&天然娘の様である。
「じゃあ貴女は…青龍ですか〜?」
「そうですよ。今は葵と名乗ってます」
「あたいは紅だ」
それぞれ【名前】を名乗る2人。
「2人とも御主人様から名前をもらったのですか〜!?」
「ああ」
「ええ」
何となく自慢気な2人
「いいな〜御主人様!!
私にも【名前】下さい〜!!」
「ご…御主人様!?」
(無事…白虎にも主として認められた様ですね。
これで私の役目も終わりです…
どうかこの世界の平和を守って下さい)
そう言うと声は聞こえなくなった…
騒動に巻き込まれる前に。
「ちょっと待て!!
さっきと言葉遣いが全く違うんですけど!?
聞きたいことまだあるのに!?」
「ね〜御主人様!!
早く私にも名前を下さい〜!!」
そう言って激しくカイトをシェイクする。
「ちちちょっととと…
ええ襟首持っててて…
ゆゆ揺らさないいいで!!」
「おい白虎!?」
「やり過ぎです!!」
慌て止めに入る2人。
「ふ〜死ぬかと思った…君の名前は…そうだな。
白銀の髪だから【白(ハク)】かな…?」
シェイクされながも一様考えてはいたようだ…
しかし…
「なんの捻りも無いですね…」
「そのまんまだな…」
カイトは残念ながらネーミングセンスは持ち合わせていない様である…
まあ、誰にも欠点の1つや2つあるが…
「ハクですか〜…素敵な名前ありがとうございます!!」
抱きついて猫のようにじゃれつく白。
「「「いいの?!」」」
思わずツッコミを入れるカイト達…
カイトの自身も採用になるとは思っていなかった様だ。
「…何でも良かったんだな…つまり」
「ですね…」
「白虎って昔からこうなのか?」
「そうですよ」
「普段は昼寝好きでマイペースな性格だが…」
「戦闘になると性格変わりますから御安心を…主」
しれっと怖いことを言う2人。
「1番安心出来ないぞ!?
それ!!」
思わずツッコむカイト
「酷いです〜戦いではちゃんと戦いますよ!!」
むくれながら白が反論?をする。
「主な相手は人間だから殺さないで下さいね…?」
葵が白に忠告をする。
「人間さんが相手って、どうゆう事ですか〜?」白は首を傾げた。
「お前…マジでずっと寝てたんだな…」
紅は心底呆れた様子で呟いた…
「それはですね…」
白に今の世界の現状を伝える3人。
「そうなんですか〜
だから、こんな姿になったんですね〜」
何とか現状は理解したようだ…
「相手が手を取り合おうとしてるのにそれに武器を向けるなんて酷い人達です〜」
教会勢の行いについて怒っているのだろう…
言葉遣いとは裏腹に凄まじいオーラを出している白。
小心者はそのオーラだけで昏倒するだろう…
「くれぐれも殺すなよ!!」
「絶対ですからね!!」
念を押す2人
「分かってますよ〜半殺し迄なら良いんですよね〜?」
何やら黒い笑みを浮かべて指を鳴らす白…
恐すぎである…
「お前の半殺しは9割殺しだろ!?」
「お仕置き程度にしてください!!」
(ほら、主からも忠告を!!)
自分達だけでは無理と判断したのであろう。
葵がカイトに注意を促す。
(あ、ああ)
背筋を正して白の目を見るカイト。
「よく聞いてくれ」
「ふぇ?」
「私達は【如何なる極悪人でも殺めず、更正の道を歩む権利を奪わない】
という【不殺の誓い】を母上の前でたてた。
これを破る事は例え四聖獣と言えども…私は許さない!!」
そう言って曇りのない瞳で白を見つめる。
「御主人様がそこまで言うなら…私も白虎の名にかけて誓います!!」
そう言って白も宣言した。
…そんなに容赦ない戦い方をするのだろうか?
(ふぅ…)
紅が思わず安堵のため息をついた。
(なあ…白ってそんなにヤバイのか?)
(魔王軍に1番恐れられてました…)
(…)
(本当です)
今の様子からはとても信じられないが…
「おお〜四聖獣最強の者が復活じゃな?」
「貴女は〜?」
「ワシはバフォメットのクレアじゃ。よろしくな白とやら」
「【はじめまして】〜クレアさん」
握手をかわす2人…
しかし何やら目線がぶつかり激しい火花が散っているような…
「過去に何かあったのか?」
「ライバルでした…あの2人」
「マジか!?」
「ええ…結局、勝敗がつく事なく戦いが終わりましたが…」
このあとクレアと白の鍛練と言う【決闘】が毎日の様に行われる様になったのは言うまでもない…
「所で御主人様〜?」
「な、なんだい?」
「私の防具を着けて貰えませんか〜?
一様それが主である証なので〜」
「分かった」
そう言って白虎の防具を着けるカイト。
装着すると身体に密着するように防具が自動的に微調整を始める…
流石は四聖獣の防具と言うところか。
微調整が終了すると光は収まり、
姿形がはっきりと視認出来るようになった。
見た目はジパングの足軽が着ける様な、
機動性重視の防具である。
「まるでズボンみたいに軽いな…」
「風の加護を施してありますから〜
私に認められた人が着けると、とても軽く感じられるんです〜
勿論、防具としても機能も優秀ですよ〜」
「なるほど…」
「それに、高さはほんの少しですけど〜
浮くことも出来ます。
足跡や足音を消したい時に有効ですよ〜」
「おまけに風の力で脚回りの強化機能付きさ」
紅が白の台詞を先取りして説明する。
「…」
もはや何も言えなくなるカイトであった…
…なんですかその最強機能は!?
「紅〜私の役目奪わないで下さい〜!!」
「悪い悪い」
「あ、でもでも〜機能に頼りすぎて鍛練を怠ると…
身体が防具の機能についていけなくなるので〜
再起不能になりたくなかったら、
鍛練は毎日欠かさずしてくださいね〜」
「真の意味で諸刃の剣だな…」
思わず身を引き締めるカイト。
「ちなみにその防具…
過去に10人程、再起不能者を出していますから…
くれぐれも扱いには注意してください」
…最早呪いの武具レベルである…
「なんだって!?」
「御主人様なら大丈夫ですよ〜多分…」
「多分が余計だろ!?」
呪い?の防具と新たな仲間を迎えたカイト達。
レスト教会残党が作り出した【自律兵器】とは一体何なのか?
次回『山賊退治 作戦会議編』に続く…
そこには守備隊の各隊長、及びカイト達を始めとするギルド腕利きの冒険者が集まっていた。
近日中に決行される【山賊掃討作戦】に参加する主要メンバー達である。
「今回皆に集まってもらったのは他でもない。
偵察隊が持ち帰った資料の解析と、
シーフギルドからもたらされた情報から新事実が見えてきたのじゃ」
「俺たちを集めたと言うことはかなり重要な事柄なんだな?」
歴戦の戦士の風格を漂わせている冒険者が質問した。
「ああ、そうじゃ。
重大な事実が明らかになった…」
「その事実とは?」
山賊討伐(名目上)の応援隊として派遣されてきているフランが先を促す。
隣には勿論、夫のライトの姿も見える。
「敵の…目的は貿易路の封鎖では無いと言うことじゃ」
「「「「「!!」」」」」
「なんだと!?」
「では敵の真の目的は!?」
「レストの残存を始めとした教会が密かに開発した新型対魔物兵器の実戦テストじゃ…」
「「「「「!?」」」」」
室内が騒然となる。
「レスト教会残存にはまだそんな力が残っていたのか?!」
レスト教会本体は王国崩壊と同時に確かに壊滅した。
残存勢力はいまだに存在していたが、
散発的なテロ活動を起こす程度の力しかなかったはずである…
「残存が他地域教会の力を借り、
地下で密かに開発を続けていた様じゃ。
本来の目的は実戦テストで、
貿易路封鎖は我々を誘き出す餌というわけじゃ」
「奴等がこの頃大人しくしていたはこの為だったのか…」
レスト冒険者ギルドからの要請で残党狩りに参加していた冒険者が呟いた。
レスト支部は最近創設されたばかりで所属人数がまだ少なく、
慢性的な人手不足の状態であった。
「人間が扱える兵器ごときには簡単には負けないぜ!!」
魔物の冒険者が言い放った。
「人間を侮ってはならん…
魔法を使わない純粋な技術だけなら、
我々を凌駕するだけの力を秘めている種族じゃ」
「しかし…」
「その秘めたる力がなければ前魔王時代に駆逐されておる…
現に自律行動式の兵器をレストの残存は再び作り出しおった」
「「「「「!?」」」」」
「まさか…あの兵器を復元したと言うのか!?」
フランが言葉を荒らげる。
ジパングにいるフランの友人もその兵器によって危うく命を刈られる所だったのだ。
「いや…
兵器製造工場は資料も含めてシーフギルドが完全に破壊したはず」
情報通の冒険者がフランの言葉を半場否定する。
「それに…
コアが無いと動かないはずだぞ?!」
そう、コアの製造方法を記した資料は他のモイライギルドによって抹消されている。身体を作れたとしても頭脳であるコアを作れなければ意味がない…
「奴等が最後まで製作に苦戦していたコアは他の教会勢から提供されたようじゃ。
まだ試作段階の様じゃがな…
【魔力を結晶化】させ、
それに【式神】の魔法を埋め込んで魂の変わりとしておるらしい…
言わば人工のコアじゃな」
「なんですって!?」
思わずカイトが声をあげた。
(自律行動させられるだけの魔力を結晶化することに成功したと言うのか?)
そう…青龍の宝玉は大量の魔力を圧縮し結晶化させた物…
クレアの話が本当ならば奴等はその技術の解析に成功した事を意味する…
「コアは良いとしても身体の性能はどうなんだ?」
「うむ…前回と同じ様にジパングの技術を用いている様じゃ。
密かに持ち出したあの兵器の実戦データも設計に反映させているらしいがの…」
同じ主神派教会である所からデータを盗み出すとは…
流石は過激派で知られたレスト教会。
目的のためなら手段を選ばない様だ。
「では盗み出した資料を元に復元したのですか?」
ライトが質問を投げかける。
「いや…流石に設計図の様な物は盗み出せなかったようじゃな」
「じゃあ奴等が独自に作り出したのか?」
「一様はそうじゃな。
元になったのはジパングの【からくり人形】の技術じゃ。
それに盗み出したデータを反映させ、
レストが独自に開発したらしいの」
「なんだ?そのカラクリ人形って」
「簡単にいうとジパングの郷土品の1つです。
歯車等を組み合わせて人形に人のような動きをさせるもので、
腕の良い職人が作る物は複雑な動きをさせる事が出来ます」
クレアに代わって葵が説明した。
「ジパングにはそんな凄い人形があるのか!!」
大陸から出たことがない者達がどよめいた。
「ええ。簡単な物はおもちゃとして売られています」
「その技術と魔法を合体させたというのか…」
「そうじゃ。大陸の技術も組み入れての…」
「コアの技術は何処から?
教会が自分たちで開発したのですか?」
「それは…」
一瞬カイトを見る。
それに対してカイトは無言で頷く。
「皆には黙っておったが…
実はジパングにて封印されていた前魔王時代に作られし
【魔力の結晶体】が教会側によって奪取されての…
その魔力結晶化の技術を一部解明した様なのじゃ」
「…その結晶体にはどのくらいの魔力が封じ込められているんだ?」
「ジパング全体を包む結界を半永久的に張れるだけの魔力じゃ」
「「「「「…」」」」」
余りのスケールの大きさに皆は言葉を無くす…
もっとも、【魔法に詳しくない者】はいかに危険な物かいまいち分からないらしい…
室内は青ざめて言葉を失った者と、
頭上に?マークを浮かべている者に別れていた…
「すまん…魔法に疎い私にも分かりやすく説明してくれ…」
リザードマンの冒険者が思わず呟いく。
「こう言えばよいか?…
暴走させれば全ての大陸を一度に吹き飛ばせるぞい」
今度は全員言葉を失った。
そして
「そんな物騒なものが教会に渡っていたのか?!」
その言葉と同時に室内が再び騒然となる。
「安心せい。その結晶体には何重もの強力な封印が施されておる。
現魔王様でも封印を解くのには10〜20年は必要じゃ」
それを聞いて皆は何とか落ち着きを取り戻した。
「でも出来るだけ速く、
その結晶体を奪還する必要があるな」
「そうじゃの…あれは失われた太古の魔法技術が詰まっておるからな。
今現在判明している事は以上じゃ。何か質問は?」
「コアの開発元は何処の教会なのですか?」
カイトが質問をする。
その教会が分かれば宝玉奪還に一歩前進するからだ。
「それがレストに送られるまでに複数の教会関連施設を経由しておっての…
開発元の所在はいまだ不明じゃ。
シーフギルドも総力を挙げているのじゃが…」
「そうですか…経由した教会にコアのデータが漏れた危険性は?」
カイトが一番危惧していた事を口にする。
「コア自体が完全なブラックボックスと化しておって解析は不可能じゃ。
下手に分解しようとすれば自爆する機能付きらしい」
「全くご丁寧な機能を付けたもんだ」
「表向きは此方にコアが完全な状態で渡ってしまった時の事を想定したらしいの」
「真の意味は他の教会に情報が漏洩するのを防ぐ事か…
味方も信用できないってか?」
守備隊の隊長が皮肉を口にした。
「そう言うことじゃな。他に質問は?」
「「「「「……」」」」」
「無いようなら今日は解散。
作戦内容が決まり次第、招集をかける以上じゃ」
それを聞いて皆は会議室から出ていった。
「ああ、カイト達は領主殿が呼んでいたのでワシと一緒に来てくれ」
そういって会議室を出ようとしていたカイトに呼び止める。
「分かりました」
「では此方じゃ」
そういって謁見室に上がる階段とは反対側に歩き出す。
「?」
その行動に疑問を抱きながらもついていくカイト達。
「おいおい何処に行くんだ?」
地下へ降りる階段に差し掛かった時、
遂に紅が声を上げた。
「地下の宝物庫じゃ」
「そこに領主が居らっしゃるのですか?」
今度は葵が質問をする。
「そうじゃ。娘に似合いそうな物を探していたら、
そなた達に関係がありそうな物が見つかったそうでな」
「「「!?」」」
3人は言葉を失った。
探していた物が、
実は近くにあった可能性が出てきたのだから。
「ここじゃ」
そうこうしているうちに目的の部屋に着いたようだ…
宝物庫だけあって警備兵と重厚な扉がついていた。
「領主殿は中かの?」
「クレア様お待ちしておりました。領主様は中でお待ちです」
そういって警備兵達は扉を開けた。
扉の厚さは50cmはあるだろうか。
中には鍵付きの引き出しが数多く備え付けられていた。
部屋の奥には鍵のかかった扉が複数枚ある。
そのなかに宝物類が入っているのだろうか?
「会議は終わった様だな?」
その部屋の中心には領主であるドラゴンが立っていた。
「申し訳ない。
待たせてしまったかの?」
「いや私も先ほど来たばかりだ」
「お久し振りです。領主様」
カイト達が方膝をつき頭を下げて最大限の敬意を表す。
そう、この蒼いドラゴンこそステーション街を始めとしたこの地域一帯を納める領主である。
名をミンスリーと言い、
教会からは【蒼い旋風】と恐れられている者である。
隣の地域を治めるエメラルダス姫の幼い頃のお目付け役でもあった。
その為、今現在も魔王からあつい信頼を獲ている。
エメラの【身を呈して弱者を守る】精神はミンスリーから受け継いだ物だ。
彼女も街に危機が迫った時には自ら先陣にたって戦う真の【勇者】と言える者の一人である。
「頭を上げてくれ、カイト殿。
愛しき民達を守ってくれたそなた達が敬意を示すほどの者ではないよ。我はな」
そう言って謙遜するミンスリー。
「しかしあなた様はここの領主であることに変わりはありません。
住まわして頂いている我らが敬意を表すのは当然です」
頭を上げてカイトは言った。
「我からすればそなた達も既に愛する民だ。
それに我は領主といっても、
この地域を守護しているに者に過ぎない」
その振る舞いからは一般的なドラゴンに見られる高圧的な物は一切感じられない…
これが領民から信頼を集める要因の1つなのだろう…
どうやらミンスリーは民や家族を一番の宝と考えているようだ。
「有り難きお言葉」
「お決まりの漫才はここまでにして、本題に行っても良いか?」
…どうやら何時も同じ様な事をしているようだ。
「そうだな。
今回そなた達を読んだのは他でもない。
以前話していた【白虎】に関係する防具が見つかった」
「本当なのですか!?」
「ああ、この宝物庫の1番奥の部屋に安置されていた。
どうやら我がここを統治する遥か以前から安置されていた様だ」
「失礼ですが…装着部位は何処でしょうか?」
「足回りだ。
葵殿達が言っていた部位と一致する。
封印されている魔力もそなた達と同じ物を感じたのでな。
もしやと思い、ここにご足労願ったのだ。
重くて動かせなかったのでな」
葵達と同じ魔力…そして装着の資格を持っていない者ではまともに動かせない…
四聖獣に関係する物に間違いなさそうである。
「では案内しよう」
「お願い致します」
4人はミンスリーに案内されて着いたのは1番奥の部屋…
「この先だ」
「只の棚に見えるが…まさか隠し扉か?」
冗談半分で紅が言った。
「正解だ」
そう言って引き出しを入れ替えていくリース。
「これで…最後だ」
最後の引き出しを入れ換えると…
ガコン!!
何かが解除される音が部屋にこだまする。
そして、壁の真ん中に位置していた棚がゆっくりと地下に格納されていく…
棚があった場所には扉が隠されていたのだ。
「この先に件の防具がある」
そう言って隠し扉を開ける。
そこには石組の通路が続いていた…
その奥にはほのかに光が見える。
一同は無言で通路を進んだ。
たどり着いた部屋の上下四方の壁には魔力が漏れない様にだろうか?
強力な魔力封じの魔方陣らしき物が描かれていた。
それには見慣れない紋様が数多く使われている。
クレアが壁に近づき、
その魔法陣を穴が開くほど凝視している…
目がギラギラと輝き、
見ている者に少々恐怖を感じさせた。
その部屋の中心部には白銀に光輝く足回りの防具一式が
下半身だけの人形に付けられて鎮座していた。
この光が部屋全体を明るく照らしていたのだ…
防具には白虎をモチーフとした紋様が描かれている…
漏れ出ている魔力も葵達や楓と同じ物を含んでいた。
「間違いない…白虎の防具だ!!」
「こんな近くにあったのですね…」
葵達が察知出来ないとは…
この部屋に張られた結界はとても強力なものなのだろう…
壁に書かれた魔方陣をクレアが羊皮紙に書き写していた。
失われた古代魔法の一種なのかも知れない。
「さあ、主…封印を!!」
「白虎の眠りを覚ましてくれ!!」
「わ、分かった」
2人の剣幕に押されてカイトは防具に近付いた。
(…青龍と朱雀の封印を解いた者ですか…
待っていましたよ)
カイトの脳裏に女性の声が響く…
(あなたが白虎の封印を守る者か?)
(そうです。
正確には寝坊助である白虎のお守り役ですが)
「カイト殿は一体何をしておるのだ?」
静観していたミンスリーが、小声で葵達に疑問を投げ掛ける。
「白虎の封印を解いているのです」
「あの武具の中にもそなた達と同じ四聖獣が眠っているのか!?」
「ああ、寝坊助がな」
(それで貴女が課す試練はなんですか?)
(2人の四聖獣を従えている時点で装着の資格保持者である事は明確。
敢えて言うならば…
試練はこのお寝坊さんを起こす事でしょうか)
(はい?)
思ってもみなかった内容にカイトはあっけにとられた。
(大蛇が復活した時も目を覚まさなかった強者です。
貴方に白虎を使役する資格が有るなら…貴方の声に答えて目を覚ます筈…
さあ、手をかざして白虎に語りかけて)
(分かりました)
そう心の中で答えるとカイトは両手をかざす。
(古のジパングを護りし者よ…
今再び目覚めたまえ)
(……)
(今再び世界に危機が迫りつつある…どうか我らに力を貸したまえ…)
(………)
(俺は皆を無意味な暴力から守りたいんだ!!
俺が体験した様な事から皆を守りたい!!
その為には俺は阿修羅にでも何にでもなってやる!!
どうか力を貸してくれ!!白虎!!!)
(…その言葉確かに聞いたぞ!!我が名は白虎…そなたを主と認めようぞ!!)
そして…防具から放たれる光が一段と強くなった。
同時にカイトの右脚に白虎の紋様が描かれる
余りの眩しさにその場にいた誰もが目を瞑った。光が収まった時…
そこには…
「ふぁ〜。おはようございます〜」
白銀に光輝く白き虎…白虎がいた!!
そして…
「あれ…?あれれ?」
その白き虎は徐々に姿が変化していき、
やがて…
葵達と同じく魔物娘の姿へと変わっていった。
「はわわ…なんか姿が変わっちゃいましたよ〜!?」
風の精霊達から作られし白虎は、
分類上で言うところの風の精霊【シルフ】なっていた。
しかし葵達と同じく、様に他のシルフ達とは違う所も見られた。
髪には虎の頭部をイメージさせる装飾品が付き、
全身には虎柄の紋様が描かれていた。
髪色も白虎を彷彿とさせる白銀であり、肌色も幾分か白みがかっている。
「やっと起きたか…この寝坊助!!」
紅が白虎にデコピンをかました。
なんだか嬉しそうである。
「痛いですよ〜誰ですか?貴女は!!」
頬を膨らませて紅を睨む白虎。
…本人は全力で睨んでいるようだが…
全く怖くない。
「分からないのかい?朱雀だよ、朱雀」
「え〜!?…そう言えば朱雀と同じ魔力を感じます〜!!」
「全く…相変わらずマイペースな野郎だ」
全く変わってない性格に半場呆れる紅であった。
…マイペース&天然娘の様である。
「じゃあ貴女は…青龍ですか〜?」
「そうですよ。今は葵と名乗ってます」
「あたいは紅だ」
それぞれ【名前】を名乗る2人。
「2人とも御主人様から名前をもらったのですか〜!?」
「ああ」
「ええ」
何となく自慢気な2人
「いいな〜御主人様!!
私にも【名前】下さい〜!!」
「ご…御主人様!?」
(無事…白虎にも主として認められた様ですね。
これで私の役目も終わりです…
どうかこの世界の平和を守って下さい)
そう言うと声は聞こえなくなった…
騒動に巻き込まれる前に。
「ちょっと待て!!
さっきと言葉遣いが全く違うんですけど!?
聞きたいことまだあるのに!?」
「ね〜御主人様!!
早く私にも名前を下さい〜!!」
そう言って激しくカイトをシェイクする。
「ちちちょっととと…
ええ襟首持っててて…
ゆゆ揺らさないいいで!!」
「おい白虎!?」
「やり過ぎです!!」
慌て止めに入る2人。
「ふ〜死ぬかと思った…君の名前は…そうだな。
白銀の髪だから【白(ハク)】かな…?」
シェイクされながも一様考えてはいたようだ…
しかし…
「なんの捻りも無いですね…」
「そのまんまだな…」
カイトは残念ながらネーミングセンスは持ち合わせていない様である…
まあ、誰にも欠点の1つや2つあるが…
「ハクですか〜…素敵な名前ありがとうございます!!」
抱きついて猫のようにじゃれつく白。
「「「いいの?!」」」
思わずツッコミを入れるカイト達…
カイトの自身も採用になるとは思っていなかった様だ。
「…何でも良かったんだな…つまり」
「ですね…」
「白虎って昔からこうなのか?」
「そうですよ」
「普段は昼寝好きでマイペースな性格だが…」
「戦闘になると性格変わりますから御安心を…主」
しれっと怖いことを言う2人。
「1番安心出来ないぞ!?
それ!!」
思わずツッコむカイト
「酷いです〜戦いではちゃんと戦いますよ!!」
むくれながら白が反論?をする。
「主な相手は人間だから殺さないで下さいね…?」
葵が白に忠告をする。
「人間さんが相手って、どうゆう事ですか〜?」白は首を傾げた。
「お前…マジでずっと寝てたんだな…」
紅は心底呆れた様子で呟いた…
「それはですね…」
白に今の世界の現状を伝える3人。
「そうなんですか〜
だから、こんな姿になったんですね〜」
何とか現状は理解したようだ…
「相手が手を取り合おうとしてるのにそれに武器を向けるなんて酷い人達です〜」
教会勢の行いについて怒っているのだろう…
言葉遣いとは裏腹に凄まじいオーラを出している白。
小心者はそのオーラだけで昏倒するだろう…
「くれぐれも殺すなよ!!」
「絶対ですからね!!」
念を押す2人
「分かってますよ〜半殺し迄なら良いんですよね〜?」
何やら黒い笑みを浮かべて指を鳴らす白…
恐すぎである…
「お前の半殺しは9割殺しだろ!?」
「お仕置き程度にしてください!!」
(ほら、主からも忠告を!!)
自分達だけでは無理と判断したのであろう。
葵がカイトに注意を促す。
(あ、ああ)
背筋を正して白の目を見るカイト。
「よく聞いてくれ」
「ふぇ?」
「私達は【如何なる極悪人でも殺めず、更正の道を歩む権利を奪わない】
という【不殺の誓い】を母上の前でたてた。
これを破る事は例え四聖獣と言えども…私は許さない!!」
そう言って曇りのない瞳で白を見つめる。
「御主人様がそこまで言うなら…私も白虎の名にかけて誓います!!」
そう言って白も宣言した。
…そんなに容赦ない戦い方をするのだろうか?
(ふぅ…)
紅が思わず安堵のため息をついた。
(なあ…白ってそんなにヤバイのか?)
(魔王軍に1番恐れられてました…)
(…)
(本当です)
今の様子からはとても信じられないが…
「おお〜四聖獣最強の者が復活じゃな?」
「貴女は〜?」
「ワシはバフォメットのクレアじゃ。よろしくな白とやら」
「【はじめまして】〜クレアさん」
握手をかわす2人…
しかし何やら目線がぶつかり激しい火花が散っているような…
「過去に何かあったのか?」
「ライバルでした…あの2人」
「マジか!?」
「ええ…結局、勝敗がつく事なく戦いが終わりましたが…」
このあとクレアと白の鍛練と言う【決闘】が毎日の様に行われる様になったのは言うまでもない…
「所で御主人様〜?」
「な、なんだい?」
「私の防具を着けて貰えませんか〜?
一様それが主である証なので〜」
「分かった」
そう言って白虎の防具を着けるカイト。
装着すると身体に密着するように防具が自動的に微調整を始める…
流石は四聖獣の防具と言うところか。
微調整が終了すると光は収まり、
姿形がはっきりと視認出来るようになった。
見た目はジパングの足軽が着ける様な、
機動性重視の防具である。
「まるでズボンみたいに軽いな…」
「風の加護を施してありますから〜
私に認められた人が着けると、とても軽く感じられるんです〜
勿論、防具としても機能も優秀ですよ〜」
「なるほど…」
「それに、高さはほんの少しですけど〜
浮くことも出来ます。
足跡や足音を消したい時に有効ですよ〜」
「おまけに風の力で脚回りの強化機能付きさ」
紅が白の台詞を先取りして説明する。
「…」
もはや何も言えなくなるカイトであった…
…なんですかその最強機能は!?
「紅〜私の役目奪わないで下さい〜!!」
「悪い悪い」
「あ、でもでも〜機能に頼りすぎて鍛練を怠ると…
身体が防具の機能についていけなくなるので〜
再起不能になりたくなかったら、
鍛練は毎日欠かさずしてくださいね〜」
「真の意味で諸刃の剣だな…」
思わず身を引き締めるカイト。
「ちなみにその防具…
過去に10人程、再起不能者を出していますから…
くれぐれも扱いには注意してください」
…最早呪いの武具レベルである…
「なんだって!?」
「御主人様なら大丈夫ですよ〜多分…」
「多分が余計だろ!?」
呪い?の防具と新たな仲間を迎えたカイト達。
レスト教会残党が作り出した【自律兵器】とは一体何なのか?
次回『山賊退治 作戦会議編』に続く…
12/07/21 22:53更新 / 流れの双剣士
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