可愛がられる人、愛玩する人形
秋葉原―――その名を聞けば人々は何を思い浮かべるだろうか。恐らく海外から来た人々は電化製品やPC製品が豊富にある場所として認知し、日本に住む人々はオタクの聖地として認識をしているだろう。
確かに秋葉原には海外の人々も羨む程の数多くの電化製品が揃っており、電化製品を取り扱う大型ショッピングセンターも幾つかある。それ故に電化製品の激戦区と言われるのも納得だ。
また秋葉原には萌えやコスプレ、同人誌など日本ならではのオタク文化が発祥した地としても有名であり、現在でもオタク達が犇めき合っている。
そしてこれは後者の部類に属するのだが、秋葉原には豊富な人形が揃っている。先に述べた萌えを追求した人形は勿論のこと、何十年も前に製造された骨董品と呼ぶに相応しい時代を感じさせる人形、更にはブリキの玩具やプラスチックの模型に至るまで。
知る人ぞ知る貴重且つ希少な人形が秋葉原には存在しており、コレクターならば涎が出るのを抑え切れない程の宝が眠っているかもしれないのだ。無論、それらのお宝には何万円、何十万円という高い値札がぶら下げられているが、一流のコレクター達は人形を得る為ならば自分の財産を惜し気もなく投資する。つまり売る側にとっても、これは大きなマネービジネスでもあるのだ。
それ故に人形を取り扱う店同士の対立も少なからず存在しており、店内に飾ってある人形の配置が自分の店と被っているとイチャモンを付けられ裁判沙汰になった店もある程だ。裁判の行方、そして真偽の程は定かではないが、そういった商売や人形絡みの揉め事もあるのだと頭に置いといてもらいたい。
文字通り人の欲望渦巻く秋葉原の人形事情ではあるが、そんな秋葉原ならではの欲望の波に晒される事無く只管前向きに人形に関する商売を続ける店があった。
秋葉原の歩行者天国で賑わう繁華街から少し離れた裏通りに近い場所にある五階建てのビル。剣山のように聳え立つ周りの高層ビル群のおかげで少し日の当たりは悪く、道幅も狭い。
歩行者天国に比べれば行き交う人々の姿は少ないが、人混みを嫌う人や、賑やかな表通りにはない珍しい商品や玩具を求めて足を運ぶ人間の姿が見受けられ、少なくともその通りには100人近くの人間が行き来していた。
そんな裏通りのビルに店を構えた模型と人形専門店『リビングドール』は今日も商売繁盛だった。この店の売りは一階から五階に至るまで、全て模型と人形の商品で埋め尽くされているという事だ。
一階は老若男女誰しもが好む人形……リラッ熊や垂れパ●ダなど、癒し&キュート系人形の専門店となっており、可愛いものが大好きな女子高生やOLなどで常に賑わっている。
二階はプラモデルや軍艦模型、更には怪獣模型を置いたプラスチック模型専門店。人間と同じサイズの怪獣人形から、迫力ある戦車や戦艦のジオラマなど男心擽る模型玩具が所狭しと並んでいる。
三階は一部のオタク達に大人気である萌え人形を数多く揃えた萌え人形専門店。俗に言うR−18指定の人形も売られているので、お子様は出這入り厳禁である。
四階は西洋から東洋に至る骨董人形、価値の高いブリキ人形を揃えたアンティーク人形専門店だ。希少品という事もあり値は張るものの、時々そういった物に目が無いコレクターの人が足を運んでは大金を出して数体人形を買い取ってくれる事もある。
そして最上階である五階……この五階こそがリビングドールの最大の売りであり、此処にしかない人形専門の修理店だ。今まで述べた一階から四階に至る人形の修理は勿論のこと、一般の玩具屋で売られている幼児向けの玩具の修理も請け負ってくれる親切で丁寧な店としても有名だ。
今日も五階へと続く長い階段には、壊れた玩具や人形を手に持つ人々の行列が出来上がっていた。しかし、長い行列とは相反して五階の内部は極めて狭いものであった。
いや、狭いと言うよりも、五階のほぼ大半が人形を修理するのに必要な機材や道具を置いた作業場となっており、客が出入り出来るスペースが制限されていると言うのが正しいであろう。
店に入ってすぐ目の前にレジが置かれたカウンターがあり、そこにバーカウンターに見受けられるような床に固定された椅子が一つ設置されている。客は一人ずつ店に入り、そこに腰を掛けて店のオーナーと修理して貰いたい人形や玩具について色々な相談をするのだ。
まるで占いの館に入り、占い師と一対一で遣り取りをするような雰囲気さえも感じられるが、無論此処はそんな場所ではない。あくまでも人形を修理する修理屋だ。
それでも人々が此処に詰め寄るという事は、それだけ此処の職人の腕前を高く評価し、同時に信頼している証拠だ。
そして今も店には一人のサラリーマン風の男性が五階の店のオーナーと真剣な面持ちで話し合いをしていた。
「……成る程。落とした衝撃で腕が外れちゃったんですね」
「ええ、初めて父親から貰った大事な誕生日プレゼントでして、大事にしていたつもりだったのですが、やはり脆くなっていた様で……」
サラリーマンの男性から手渡されたのは昭和の初期か中頃に作られたと思われる重々しいブリキのロボットだ。所々錆び付いてはいるが、傷んだ部分は見受けられない所を察するに大事に扱われていたようだ。
しかし、くの字に曲がったロボットの右腕が根元からポロリと外れており、コレクターが見れば嘆き悲しみそうな光景だ。
「これ……直りますか?」
「そうですね……肩の付け根のネジや部品が根元から折れているので、此処の部分だけ新品の物に交換しますね。あと、錆も所々目立ちますの落とさせて頂いても宜しいでしょうか?」
「はい、お願いします!」
年代物なので直せないかもしれないと覚悟をしていたサラリーマンだったが、オーナーが直せると言った上に玩具の錆も落としてくれると言った途端に肩の荷が下りたような柔らかな笑みを浮かべた。
「それでは二ヶ月後のこの時間帯に受け取りに来て下さい。これが証明書の番号になりますので」
「本当に有難うございました」
流石に先約が山のようにあるのでその日の内に直して返すという方法は取れないが、それでもオーナーは今まで約束した期日に遅れたりした事は無かった。それが客からの信頼をより厚くしていると言えるだろう。
この五階の人形専門の修理屋を営む彼こそが、一階から五階のリビングドールの総責任者でもある『工藤 楓』だ。くりくりとした大きな瞳と幼さが抜け切らない顔立ち。やや小柄で細身の肉体ではあるが、一応列記とした男である。
若干17歳という若さではあるが、3歳の頃に西洋人形に触れ合ってから人形の美しさや職人技に心を奪われ、その後は人形や模型作りに没頭していった。
そして年齢を重ねる毎に模型や人形の制作に腕を磨き、雑誌を見たりホビーショウに足を運んだりして我流で人形作りの勉学を極めていった。
そして15歳の頃には日本を代表する模型や人形の原型師として脚光を浴び、16歳の頃にリビングドールを開業するに至った。今では大好きな人形と触れ合い、大好きな人形を修理するという順風万端な日々を過ごしていた。
「楓君、あたしのテディベアの腕が取れちゃったの!」
「これは縫い直すだけですので、四日後に取りに来て下さい」
「オーナー! 俺のミルクちゃんがあああああああ!!!」
「足が折れていますね。これは残念ながら根元から取り換えるしかありません。部品は揃っていますので、一週間後に取りに来て下さい」
「お、お、オーナー。俺のアサギちゃん人形のアソコのペイントに失敗しちまって……」
「………三週間後に来て下さい。あとペイントもしておきますので」
可愛い人形から萌え人形、更にはR−18人形まで持ち込まれ、笑いあり赤面ありの忙しい日々ながらも、かえでの心は充実していた。
そして日が暮れて短針が夕方の6時を指す十分前に、一階から五階の店は一斉にシャッターを下ろし始める。一階から四階で働いていた従業員達はオーナーである楓の所に足を運び、帰りの挨拶をしてから帰路へと着いて行く。
しかし、楓だけは別だ。彼の家はこの作業場が置かれた五階であり、寝食も此処で済ましている。また楓はお客達から預かった人形の修理もせねばならず、彼が眠りに就くのは大体真夜中の12時過ぎか、遅ければ深夜2時を回る事もある。
それでも彼が弱音を吐かないのは、それだけ人形と向き合うこの仕事が大好きだからだろう。
夕食を摂るのも忘れ、人形の修理作業に没頭し続けているとピンポーンとチャイム音が鳴り響く。そこでハッと現実に戻った楓は慌てて席を立ち、玄関の方へ向かっていく。そして扉を開けると、そこには褐色肌に引き締まった体の若い大男の姿があった。
大男は楓の姿を見るや、ニカッと人当たりの良い満面の笑顔を浮かべて挨拶をした。
「嘉山くん!」
「師匠、夕食の差し入れ持ってきたッスよ。多分、師匠の事だから食べるのも忘れているでしょうッスけどね」
挨拶すると同時に大男こと『嘉山 鋼太』は手にしていたコンビニ弁当が入ったレジ袋を楓に見せると、楓の腹から空腹を訴える虫の音色が聞こえてきた。楓も自分が今まで夕食を食べていない事に今更ながらに気付き、しかも嘉山にそれを聞かれて恥ずかしく主他のか、赤面して軽く俯いてしまった。
嘉山は楓の八つ年上の男性であり、メッセンジャーという東京都内を自転車で走り回る肉体アルバイトをする傍らで、プラモデルや軍艦模型のジオラマの出展会では必ず出品する程の模型オタクだ。
そんな嘉山は数年前の模型の大会で最優秀賞を受賞した楓の作品と彼の繊細な腕前に惚れ、以後は年下である楓の事を師匠と呼ぶようになった。楓の方は師匠と呼ばなくても良いと言うのだが、ガテン系であり体育会系でもある嘉山は上下関係をハッキリしときたいという強い意志を持っていたので、これだけは譲れないようだ。
年齢は勿論のこと、図体や体付きなど様々な面で大きく異なる二人ではあるが、模型という共通の好みや趣味を持っていた為に意気投合するのは時間の問題であり、現に嘉山はこうやって楓の家に足を運べる程の仲となった。
「師匠、もう一つ見て貰いたいものがあるんスけど……」
「え、もしかして……前に言っていた作品が完成したの?」
「へへっ、当ったりー♪」
嘉山が差し入れで持って来てくれたコンビニ弁当を食べ終えると、嘉山はもう一つ持って来ていた別の袋を持ち出し、それを楓の前に置いた。そして中から取り出したのは、砂漠戦を想定した茶色と砂色の迷彩柄のペイントが施されたティーガーTの模型と、砂漠を模したジオラマであった。
「わぁ、漸く完成したんだぁ〜! 凄いね!」
「師匠の言う通りにアレンジしたら、砂漠の雰囲気がよりリアルになったッスよ!」
「うんうん、それに迷彩のペイントも上手になったね! それとこの戦車のキャタピラにこびり付いた砂も良い感じだよ!」
「本当ッスか! いや〜、師匠に褒めて貰えて本望ッスよ!」
嘉山が作った模型を目にした途端に楓の目が光り、無邪気な子供のように興奮した面持ちで嘉山と共に模型について語り合ってしまった。暫く話に没頭した後、楓が何気なく時計を見れば既に時計の短針は夜中の11時を指す直前まで迫って来ていた。
「いけない! もうこんな時間だ!」
「うわ、マジッスか! 明日も朝早くからバイトだってのに……! じゃあ、俺はこれで失礼するッス!」
「気を付けてね! それとこのプラモ、二階の模型店に飾らせてもらうね!」
「お願いします! それじゃ!」
押し迫った時間のせいで落ち着く事も出来ず、嘉山は慌ただしく部屋を出ていった。一人部屋に残された楓は嘉山の作ったプラモデルを作業場へと持って行き、それを様々な方向から眺めた。
「ふふ、嘉山くん……段々上手くなっていくなぁ。僕も頑張らないと……」
嘉山の腕前はプロである楓と比べると劣っているのは否めないが、アマチュアとしては相当高いレベルであるのは確かだ。何せ、楓自身も彼の模型に関する腕前を認める程なのだから。
また楓は自分には無い大胆且つ堂々とした嘉山の作品が大好きだった。しかも、その作り上げたばかりの作品を真っ先に自分の所に持って来てくれるのが嬉しくて堪らない。
「嘉山くん……うぅ……ふぅ……ふぅん……」
………だが、楓の抱いている感情は作品に対する喜びや嬉しさだけではない。ハッキリと言ってしまえばそれらの感情の範囲をも跳び越えており、嘉山本人に対し愛おしさすら感じていた。その証拠に楓は自分のズボンを下ろし、そこから現れた男性の象徴である男性器に手を遣り自慰をし始めたのだ。
彼がこんな事をし始めたのは嘉山と出会ってから一年ぐらいが経過した頃であった。嘉山の事を友達以上の親友のように付き合い始め、彼がちょくちょく自分の作品を持って来ては感想を求めたりし出したのがきっかけだった。
嘉山の模型作りに対する情熱や愛情、そして彼の大らかな人柄や男らしさ……自分には無いものを兼ね備えている彼に何時の間にか楓は引き摺りこまれていた。同性でありながら、嘉山という男に彼は一目惚れしてしまっていたのだ。
自分でもこんな感情を持つのは間違いであり、彼に対しても失礼だし迷惑だと理解している一方で……何時の日か逞しい彼に抱かれたいという叶えられない夢を見ていた。だからこそ、彼の作品を間近で見ながら、自慰でその淡い夢を昇華させようとしていた。
楓の頭の中では裸になった嘉山に抱き絞められ、豊富な愛の言葉を囁かれながら抱かれる己の姿を妄想していた。同時に男性器を弄る手の動きも段々と速くなっていき、遂に絶頂を迎えようとしたその瞬間だった。
「あ〜ら、いけない子ね。私の約束を破って勝手に自慰しちゃうつもりなの?」
「ひぐっ!?」
自分しか居ない筈の部屋に女の子の声が響き、直後に自分の男性器がキラキラと輝く細い糸でボンレースハムのように幾重に巻かれて縛られる。突然襲い掛かった激痛の余り、楓は身動きを取る事もままならずその場に蹲ってしまう。
額から嫌な脂汗が滲み出てくる程の苦悶の表情を浮かべていると、自分の顔の真横にフワリと何かが舞い降りた。そちらに視線を向けると、そこに立っていたのは40センチ程の小さな西洋人形だった。
シルクのようにキラキラと輝く長い銀髪を色鮮やかな紫色のリボンで結び、身に付けている西洋風のドレスは純白と紫のコントラストであしらえられ、所々に可愛らしいハートマークが印されている。更に人形の顔立ちは人形ならでは美しさと、本物の幼女のような可愛さを兼ね備えている。
アンティーク人形として売り出せば、数百万の値が付けられても買う人は居るだろうと断言出来る程に華麗なものであった。
但し、その人形は自分の遺志で立ち、そして会話する事も出来る『リビングドール』と呼ばれる呪われた人形であった。
普通の人がそんな人形を目の当たりにすれば絶叫するだろうが、楓は叫ぶどころか驚きもせず、静かにそのリビングドールの名前を呟いた。
「り、リリィちゃん……」
「楓の気持ち、分かるよ。大好きな人が来てくれて気持ちが昂っちゃったんだよね? でも、楽しい事は私と一緒にっていう約束があるのに……酷いなー」
「ご、ごめんなさい……」
楓がリビングドールのリリィと親しくなったのは今から十カ月も前の事だ。嘉山を想いながら自慰をするのが日課となりつつある頃、それまで単なる人形だったリリィはリビングドールのリリィとなって楓の前に現れた。
そもそもリリィは楓が三歳の頃に祖父に買って貰った人形であり、また楓が人形模型に憧れを抱き、模型師としての道を歩むきっかけを与えた人形でもある。
十何年も一緒に過ごし可愛がっていた人形が突然動き出した日には言うまでもなく驚き、困惑したものの、そんな楓の驚愕する様などお構いなしにリリィは近付き、彼の耳元で囁いた。
『あの大きな男の人が好きなんだよね、楓は。だったら、私がもっと気持ち良くなる方法を教えてあ・げ・る♪』
それ以降、リリィと楓は単なる人形とその所有者という関係から、互いの欲望を満たし合う卑猥な関係へと発展していった。またこの時に自慰やオナニーなど『楽しい事』を二人でしようという約束もリリィが取り付けたのであった。
「まぁ、今日は久し振りに楓の想い人に会えたからね。楓の恋心に免じて許してあげちゃう」
自分の主の気持ちを察するかのようにリリィは理解を示し、今まで締め付けていた楓の男性器を解放してやった。そして男性器を締め付けていた糸はシュルルルと音を立て、彼女の輝く銀髪の束の中へと戻っていく。どうやら楓の男性器を縛り上げた糸はリリィの長い銀髪から繰り出されており、ある意味で彼女の体の一部だったようだ。
「あ、有難う。リリィちゃん……」
「良いのよ。それじゃあ楓………一緒に楽しい事をして、気持ち良くなろう♥」
「……うん♥」
二人の間では既にお決まりとなっている『楽しい事』の呼び掛けに楓が恥ずかしそうに頷くと、リリィはスカートを捲り、何も身に付けていない自分の下半身を露わにさせた。
人形であった頃はリリィの身体はマネキンと同じ無機質な素材で出来ていたが、リビングドールとなってから彼女の体には柔らかさと温かみ……人間と全く同じ体温と柔肌、更には女性器さえも持つようになっていた。
リリィが仰向けに寝転がり大きく股を開くと、その間にある柔らかな蕾は薄らと濡れてヒクヒクと卑猥に動いており、まるで楓の男性器を心待ちにしているかのようだ。
「じゃあ、何時ものように此処に楓のオチンチンを入れて気持ち良くなってね♥」
「う、うん……」
彼女の誘惑に引き摺りこまれるかのように、楓は戸惑う様子も見せずギンギンに勃起した男性器を彼女の膣へと挿入した。
楓の男性器は10センチそこそこと平均男性並ではあるが、それでも40センチという人形サイズのリビングドールのリリィからすれば途轍もなく大きい事に変わりはない。その証拠に楓の男性器がリリィの中へ入ると、彼女の腹部が男性器の亀頭に押されて膨れ上がる。
まるで馬のペニスで獣姦をする女性のように見えるが、リリィの表情に苦痛や苦悶の色は見当たらない。寧ろ快楽と快感を楽しんでいるかのようにも見える。
「んんん!♥ ふぁあああああん!♥」
「ああ、リリィちゃんの中……熱いよぉ……!♥」
小柄な人形サイズであるからか、それともリビングドールという男性の精を好む魔物娘だからだろうか。リリィの膣内に肉棒を入れた途端、彼女の肉壁が楓の男性器をキュウキュウに締め付ける。
「うふふ、やっぱり楓のオチンチンは良いわねぇ♥ ほら見て、楓の逞しいオチンチンのおかげで私のお腹が妊婦さんのように膨れちゃったわ♥」
リリィは男性器に圧迫されて膨らんだお腹を擦りながら、妖しげな笑みを浮かべて楓の性欲を挑発する。その言葉に更に興奮したのか楓の性器は益々硬さを帯び、そのまま盛った猿のように何度も何度も夢中になって腰を振り続ける。
傍から見ると人形の形をしたオナホールで必死にオナニーをしているかのようにしか見えないが、先にも述べた様にリリィは列記とした魔物娘だ。実際に楓の男性器に伝わって来る感触は本物の女性と同じか、それ以上の快感で満ち満ちている。
「あっ、あっ、出ちゃう♥ 出ちゃうよぉ♥」
「うふふ、もう出ちゃうのね。良いわよ、沢山出して♥ あたしのオマンコに楓のザーメンどっぴゅどっぴゅ出してね♥」
「うぅ……出るぅうっ!!」
彼女の中へ挿入してから一分足らずで楓は絶頂に達し、彼女の膣内に若い子種を存分に吐き出した。男性器が脈動し、睾丸から送り出された精液が全て彼女の膣内へ注ぎ込まれる。やがて楓が射精し終わると、今度はリリィが中出しされたばかりの肉壺を締め付けて彼の肉棒に残っている精液を絞り取る。
「ふぁあああ……♥」
「ふふ、ザーメンご馳走様♥」
情けない悲鳴を上げながら楓が男性器を引き抜くと、リリィの肉壺からは出したばかりの濃厚でホカホカの精液がトロリと流れ出てきた。もし彼が性欲旺盛な人間ならば、中出しされたリリィの肉壺を見てもう一発という気持ちになったかもしれないが、残念ながら彼の男性器は硬さも張りも失いフニャリと力が抜けていた。
只単にリリィが精液を欲しがるのならば、目的を果たしたこの時点で二人の淫らな遊びはお開きとなっただろう。だが、リリィの目には未だに輝きが秘められていた。
それは子供が悪戯を企む様な目付きにも見えるし、または無垢な子供を汚すのを喜ぶ魔性の女の怪しげな目線にも近い。
「ねぇ、楓。今日はどうする? アレはしないの?」
『アレ』と言われた途端、楓の体がピクンと反応した。身体だけじゃない、性欲を吐き出し終えて力を失っていた男性器もピクピクと若干力を取り戻して動き出しており、頬も薄らと赤くなっている。
「どうする? するの? それとも……」
「ぉ……します……」
「ん? なーに? 小声で全然聞こえないわぁー♪」
「お願い……します……。今日も……アレをして下さい……」
『アレ』をお願いするのが余程恥ずかしいのか、楓は顔をトマトのように真っ赤にさせながらリリィにお願いした。所有者と所有物の立場が逆転してしまっている会話の遣り取りであるが、事実、卑猥な遊びの主導権を握っているのはリリィだ。そちらの方に疎い楓では勝ち目は無いに等しい。
「よく言えました☆ それじゃ早速始めるわね……」
楓からのお願いを聞くとリリィは微笑を浮かべ、彼女の体から薄い桃色の光が……恐らく魔力と思われる力が発せられる。そして先程彼の男性器を縛り上げたリリィの銀髪が数本急激に伸び、資材などが置かれてある作業場の襖へ向かっていく。
魔力を有した髪の毛の力で襖を器用に開けると、暗闇が広がる襖の中へ飛び込んでいく。まるで暗闇の中へ銀の糸が吸い込まれるかのような幻想的な光景だ。
暫くすると、襖の奥からカチャンとマリオネット人形を動かす際に発せられる音が聞こえてきた。
そして暗闇から現れたのは―――――嘉山 鋼太に瓜二つのマネキン人形であった。それも姿形だけではなく、ボサついたボーイッシュな髪形から日に焼けた褐色の肌、身長も彼と全く同じ等身大サイズだ。
どうやらリリィの髪の毛で嘉山人形を操作しているらしく、また魔力を含んでいるおかげか、人形の動きもぎこちないマリオネット人形とは大きく異なり、普通の人間と同じスムーズなものである。
但し、顔や身体の皮膚や殆どがシリコンで作られており、四肢の関節には人形と同じ球体関節が埋め込まれている他、人間の男性器に当たる部分には中型のディルドが装着されている。
これを作ったのは他ならぬ楓本人だ。嘉山に対して抱いた禁断の想いを拗らせてしまった挙句、このような等身大人形を作っては自分を慰める……という病的に歪んだ愛情へと発展してしまった。
だが、それにしても流石はプロの模型造型師だ。遠目からではコレが人形であると気付ける人間は皆無だろう。
「嘉山くん……」
『ふふ、今日の師匠もエロいッスね。俺、我慢出来ないッスよ』
嘉山人形の口がパクパクと動き、そこから嘉山と全く同じ声が出て来た。が、これは嘉山本人の声ではない。人形を操っているリリィが腹話術で嘉山の声を再生させ、それを人形の口の動きに合わせて、如何にも本人であるかのように演じているだけだ。
楓も相手が人形である会話もリリィが織り成す演出の一つだと理解している。だが、どれだけ理解していても、これから行う事に対する興奮が勝ってしまい心臓の動悸が収まらない。
自分の作り上げた嘉山人形を見上げてウットリする楓だったが、間も無くしてローションのボトルを抱えたリリィが楓の背後にソッと回り込む。
「さてと、それじゃ楓のお尻にローションを塗るわよー♪」
「ひゃっ!」
その台詞を皮切りにボトルの中のローションを楓のお尻に派手にぶっ掛ける。ぬめったローションが楓の桃尻の上をゆっくりと流れ落ちていくその様子は、男であるにも関わらず何処か卑猥な感じがする。
やがてローションが楓のお尻全体に余すことなく行き渡ると、リリィは自らの手を使ってローションの液を均等に塗りたくる。お尻だけでなく睾丸や男性器、更には肛門の内部に至るまで。楓の性感に関係する場所を全て塗り尽くす。
特に肛門に至っては念入りだ。洋服を脱ぎ捨てたリリィが自分の肩にまでローションを掛け、片腕丸々一本を使って彼の肛門を解す程だ。
可能な限り奥まで塗るとリリィは腕を抜き、『これで準備OKね』と嬉しそうな笑みを浮かべて楓の尻をぺしんっと軽く叩いた。
「さぁ、楓。大好きな彼を模した人形さんにちゃんとおねだりしてみせなさい」
「は、はい……。嘉山くん、嘉山くんのおちんちんで……僕のお尻の穴を埋めて下さい……!」
羞恥心のあまり顔を赤くしながらも、楓はリリィに言われた通りにお尻を少し持ち上げた四つん這いの格好で厭らしく懇願した。男なのだが、その様子はまるで性欲を抑え切れない雌犬のようだ。
それを間近で見ていたリリィはゾクゾクとする歓喜に近い感情を抱きながら、髪の毛の数本を動かし楓のバックに人形を移動させる。そしてディルドの疑似ペニスを楓のお尻に宛がうと、そのまま一気に奥底へと突き入れた。
「んあ!! ああああああああ!!!♥」
『師匠のお尻、俺のオチンチンをギュウギュウに締め付けてくれて……とっても気持ち良いッス! もう我慢出来ないッス!』
「あ、ま、待って! 急に激しく……ひゃあん!!♥」
人形の腰が激しく前後に振り始め、楓の腰とぶつかる度にパンパンと肉体同士がぶつかり合うような音が部屋に鳴り響く。疑似ペニスで直腸をズンズンと貫かれる感触に楓は最早何も考えられず、喉が乾いた犬のように舌を出し、口からダラダラと唾液が漏れ出る。
「ふふふ、今夜の楓も良い表情を見せてくれるわね。私も御一緒させて貰おうかしら♥」
「ふぇ!? な、何を……ひゃああああ!?」
人形とのSEXで乱れる楓に追い打ちを掛けるかのように、リリィは自分の口と手、更には輝く銀髪を使って楓の肉棒を刺激し始めた。
人形サイズの小さな舌が亀頭の先端にある尿道に舌を入れて舐め回し、堅い人形の手で睾丸や竿を揉み解される。銀髪の髪が男性器全体に絡み付き、強く縛ったり急に緩めたりを繰り返し苦痛と快感の双方を与えてくれる。
「は、反則だよぉ!♥ そんな事されたら、もう……もう僕……!♥」
「良いわよぉ、イっちゃいなさい。お尻とオチンチンを同時に弄られて、楓の変態ザーメンをもう一度大量に吐き出しなさい♥」
そう言ってリリィが髪の毛を動かして人形の腰の動きを速め、楓を更に責め立てる。最早人形の腰の動きはプロのAV男優並か、もしくはそれ以上と言える程に高速かつ力強いものであった。そんな動きでアナルを責められれば、楓の絶頂が速まるのも無理ない話だ。
「あっ! あっ! あっ! イクッ! イクッ! イクイクイク! イィグゥー!♥」
獣の様な雄叫びを上げた直後、楓のペニスから大量の精液が放出された。大量の精液はペニスを目の前で弄っていたリリィに全てぶちまけられ、瞬く間に彼女の五体は生臭い濃厚な白濁液によって汚されてしまった。しかし、精液を浴びせられた彼女は怒る訳でもなく、寧ろ大量の精液を存分に浴びれた事に喜びさえ感じていた。
「うふふふ、一杯出たわねぇ♥ 楓♥」
「は…はぁい……♥」
リリィの呼び掛けに反応してはいるものの、楓の表情は軽く白目を向き、無様なアヘ顔を浮かべるなどあられもない姿を晒している。しかし、何処となく楓からは幸福のオーラも感じられるので、これもまた彼の望んだ幸せなのだろう。
「それじゃ……そろそろ今日のメインディッシュに行きましょうか」
「へ? メイン……ディッシュ……?」
「そう、メインディッシュ」
絶頂に達した楓の頬に触れながら、耳元でソッと呟いたリリィの言葉に楓は反応した。今まで自分とリリィの遊びはリリィの中に射精したり、リリィが操る人形で自分を慰めたりするのが殆どだった。
しかし、今回はそれだけに留まらずメインディッシュ――この場合のメインディッシュは無論料理ではなく、卑猥の遊びを意味するのであろう――があるのだと言われたのだから楓が目を丸くするのは当然だ。
「メインディッシュって……一体何をするんですか?」
「楓は素質があるからね、もしかしたら可能だと思う」
「素質? 可能?」
リリィの魂胆が全く読めず、楓は首を傾げて何をする気だと問おうとした―――その時だった。
ドクンッ
「え…? あ…?」
胸が躍っているかのように心臓が強く跳ね上がり、次いで身体の芯に溶岩が注ぎ込まれたかのように無性に熱くなる。明らかに尋常ではない出来事が自分の体の中で起こっていると察し、楓の顔に思わず恐怖の色がこびり付く。
「な、何……何コレ……!?」
「大丈夫よ。実は今ね、楓のお尻に刺さったままのディルドを通して私の魔力を注入しているの」
「ま、魔力……!?」
魔物とか魔法とかに関しては全くの鞭ではあるが、魔力を浴びせられた女性は魔物娘に、そして男性はインキュバスに変身してしまう事ぐらいは楓も知っている。まさか自分もインキュバスになるのか……と不安そうな表情を浮かると、彼の心を読み取ったかのようにリリィが言葉を付け足した。
「大丈夫よ。言ったでしょ、楓には素質があるって♪」
「そ、素質って何の―――!?」
そもそも素質の意味が分からないと叫びたい想いに駆られたが、それは叶えられなかった。何故なら自分の体内に注ぎ込まれていく魔力が快感へと生まれ変わり、その押し寄せる快感の波に襲われて言葉も発せられない状態になってしまったからだ。
「ひぐっ! な、何……これぇ……♥ 身体がおかしくなっちゃうぅぅぅぅ!♥♥♥」
「うふふ、どうやら“来た”みたいね」
リリィが妖しげな笑みを浮かべながら楓を見遣ると、楓の体に異変が起き始めた。
黒髪だった髪が金髪へと変わり、耳もエルフのように尖っていく。横に張り出した男の肩は女のように撫で肩へなっていき、真っ平らな胸も膨らんでいく。そして今さっきまでリリィを喜ばせていた男性器は消失し、代わりにそこに存在したのは穢れを知らない美しい女性器であった。最後は小悪魔をイメージさせる可愛らしい翼と尻尾、後頭部から丸みと光沢を帯びた黒い角が生えた。
そこで魔力を注入し終えたらしくお尻に刺さったままのディルドが引き抜かれた。
「はぁ……はぁ……一体何が起こったの? ………あれ、声が何か変?」
身体がおかしくなる程の快楽から開放されて、漸くまともに言葉を返せた楓であったが、そこで自分の声に違和感を覚えた。そして自分の手足の形も今までとは異なる様な気がし、ふと作業場にあった自分の姿を映し出す大型の鏡へ目を遣ると――――
「……な、何じゃこりゃああああああああああああ!!?」
―――そこに映されていたのは自分がよく知る自分ではなく、可愛らしい姿形をしたサキュバスであった。
「な、なななんなんなな何ですかコレぇ!? というか胸が!? チンチンが!? 翼が!? 角が!? 髪の毛さえもぉー!?」
「あっははははは! やっぱり成功だ! 楓にはアルプの素質があるって思っていたのよねぇー♪」
「あ、アルプ……?」
聞き慣れない名前に楓が尋ねると、リリィは嬉しそうな笑みを浮かべたまま御丁寧に説明してくれた。リリィが言うには、男でありながら同性に憧れや恋心を抱いている男性が魔力を受けてサキュバス化し、そのサキュバス化した魔物の事をアルプと呼んでいるそうだ。
つまり嘉山に対して愛情を抱ていた楓が魔力を注入され、アルプへ生まれ変わる可能性は十分にあったという訳だ。しかし、当の本人はアルプとなってしまった自分に戸惑うばかりだ。
「ど、どうするんですか! これじゃ明日からお客さん接する事は出来ないよぉ〜……」
それもそうだ、魔物娘になってしまった自分の事をお客に向けて何て説明すれば良いのやら。そもそも、こんな姿では客商売なんてまともに出来ない。店は赤字だと嘆き悲しむ楓であるが、そこは大丈夫よとリリィが声を掛けた。
「魔力を上手く扱えるようになれば以前の姿を維持する事が出来るし、私生活にだって問題はないわよ。まぁ、魔力を扱うのは初心者には少し難しいかもしれないけどねぇ」
「じゃあ、何で態々こんな面倒な魔物娘に変身させたんですかー!?」
前の姿に戻ったり魔物娘に変身したりするぐらいならば、十分に今のままでも良かったのではと疑問を口に出す楓。確かに彼……いや、彼女の疑問は最もであるが、それに対しリリィはまたもや言葉を切り返した。
「あら、私は貴女の願望を叶えてあげただけよ。『本物』の嘉山くんとエッチしたいんでしょー?」
「!!!」
今まで散々嘉山人形を使って自慰をしてきた楓であるが、その心は徐々に本物の嘉山とのSEXを望みつつあった。それを指摘され楓は言葉を失うが、更にリリィは言葉を続けた。
「それに今のアルプの姿なら嘉山くんとのSEXは勿論のこと、彼の子供を貴女の体内に宿す事だって十分に可能なのよ」
「嘉山くんの……子供……」
彼の男性器を受け入れ、彼の射精の快感を味わい、更に彼の子供も孕める……魔物娘になったせいか、それを想像しただけで心臓の動悸が速まり、興奮のあまり女性器から愛液がツゥ…と股を伝って落ちていく。
「想像して御覧なさい。何時も自分を慰めるディルドではなく、熱くて硬い肉棒が貴女の大事な部分を貫きぐちゃぐちゃにしちゃうのよ。ぐちゃぐちゃにされた挙句、大量の精液を吐き出されて子宮がキュンキュンと疼き、身も心も蕩ける程の快楽が体全身に襲い掛かるの。しかも、大好きな人の子をお腹に宿す幸福感を味わえるのよ」
「あ…あ…」
「ねぇ、体験してみたいと思わない?」
それは正にサキュバスらしい堕落への誘いであった。もし楓に強い意志があったら撥ね退けられただろうが、魔界娘として生まれ変わった今の楓にはそれを断る強い意志も勇気も無かった。
また日本という狭い国での常識などから男同士の恋愛に臆病となっていたが、自分が魔物娘になった事で肉体的にも性的にも結ばれるとなった今、楓が嘉山に向けて抱き続けていた禁断の想いが開花するのが必然であった。
「体験したい……です……。嘉山くんと……SEX……したいです……!」
「ふふ、そうこなくっちゃね。楽しみだわぁ、アルプになった貴女を見た嘉山くんの反応が……うふふふふ」
こうしてまんまとリリィの魔の手に落ちた楓は、彼女の操り人形と化した。そして一週間後、楓は嘉山と肉体的に結ばれるのだが……これもリリィの狙い通りだとは知る由もない。
確かに秋葉原には海外の人々も羨む程の数多くの電化製品が揃っており、電化製品を取り扱う大型ショッピングセンターも幾つかある。それ故に電化製品の激戦区と言われるのも納得だ。
また秋葉原には萌えやコスプレ、同人誌など日本ならではのオタク文化が発祥した地としても有名であり、現在でもオタク達が犇めき合っている。
そしてこれは後者の部類に属するのだが、秋葉原には豊富な人形が揃っている。先に述べた萌えを追求した人形は勿論のこと、何十年も前に製造された骨董品と呼ぶに相応しい時代を感じさせる人形、更にはブリキの玩具やプラスチックの模型に至るまで。
知る人ぞ知る貴重且つ希少な人形が秋葉原には存在しており、コレクターならば涎が出るのを抑え切れない程の宝が眠っているかもしれないのだ。無論、それらのお宝には何万円、何十万円という高い値札がぶら下げられているが、一流のコレクター達は人形を得る為ならば自分の財産を惜し気もなく投資する。つまり売る側にとっても、これは大きなマネービジネスでもあるのだ。
それ故に人形を取り扱う店同士の対立も少なからず存在しており、店内に飾ってある人形の配置が自分の店と被っているとイチャモンを付けられ裁判沙汰になった店もある程だ。裁判の行方、そして真偽の程は定かではないが、そういった商売や人形絡みの揉め事もあるのだと頭に置いといてもらいたい。
文字通り人の欲望渦巻く秋葉原の人形事情ではあるが、そんな秋葉原ならではの欲望の波に晒される事無く只管前向きに人形に関する商売を続ける店があった。
秋葉原の歩行者天国で賑わう繁華街から少し離れた裏通りに近い場所にある五階建てのビル。剣山のように聳え立つ周りの高層ビル群のおかげで少し日の当たりは悪く、道幅も狭い。
歩行者天国に比べれば行き交う人々の姿は少ないが、人混みを嫌う人や、賑やかな表通りにはない珍しい商品や玩具を求めて足を運ぶ人間の姿が見受けられ、少なくともその通りには100人近くの人間が行き来していた。
そんな裏通りのビルに店を構えた模型と人形専門店『リビングドール』は今日も商売繁盛だった。この店の売りは一階から五階に至るまで、全て模型と人形の商品で埋め尽くされているという事だ。
一階は老若男女誰しもが好む人形……リラッ熊や垂れパ●ダなど、癒し&キュート系人形の専門店となっており、可愛いものが大好きな女子高生やOLなどで常に賑わっている。
二階はプラモデルや軍艦模型、更には怪獣模型を置いたプラスチック模型専門店。人間と同じサイズの怪獣人形から、迫力ある戦車や戦艦のジオラマなど男心擽る模型玩具が所狭しと並んでいる。
三階は一部のオタク達に大人気である萌え人形を数多く揃えた萌え人形専門店。俗に言うR−18指定の人形も売られているので、お子様は出這入り厳禁である。
四階は西洋から東洋に至る骨董人形、価値の高いブリキ人形を揃えたアンティーク人形専門店だ。希少品という事もあり値は張るものの、時々そういった物に目が無いコレクターの人が足を運んでは大金を出して数体人形を買い取ってくれる事もある。
そして最上階である五階……この五階こそがリビングドールの最大の売りであり、此処にしかない人形専門の修理店だ。今まで述べた一階から四階に至る人形の修理は勿論のこと、一般の玩具屋で売られている幼児向けの玩具の修理も請け負ってくれる親切で丁寧な店としても有名だ。
今日も五階へと続く長い階段には、壊れた玩具や人形を手に持つ人々の行列が出来上がっていた。しかし、長い行列とは相反して五階の内部は極めて狭いものであった。
いや、狭いと言うよりも、五階のほぼ大半が人形を修理するのに必要な機材や道具を置いた作業場となっており、客が出入り出来るスペースが制限されていると言うのが正しいであろう。
店に入ってすぐ目の前にレジが置かれたカウンターがあり、そこにバーカウンターに見受けられるような床に固定された椅子が一つ設置されている。客は一人ずつ店に入り、そこに腰を掛けて店のオーナーと修理して貰いたい人形や玩具について色々な相談をするのだ。
まるで占いの館に入り、占い師と一対一で遣り取りをするような雰囲気さえも感じられるが、無論此処はそんな場所ではない。あくまでも人形を修理する修理屋だ。
それでも人々が此処に詰め寄るという事は、それだけ此処の職人の腕前を高く評価し、同時に信頼している証拠だ。
そして今も店には一人のサラリーマン風の男性が五階の店のオーナーと真剣な面持ちで話し合いをしていた。
「……成る程。落とした衝撃で腕が外れちゃったんですね」
「ええ、初めて父親から貰った大事な誕生日プレゼントでして、大事にしていたつもりだったのですが、やはり脆くなっていた様で……」
サラリーマンの男性から手渡されたのは昭和の初期か中頃に作られたと思われる重々しいブリキのロボットだ。所々錆び付いてはいるが、傷んだ部分は見受けられない所を察するに大事に扱われていたようだ。
しかし、くの字に曲がったロボットの右腕が根元からポロリと外れており、コレクターが見れば嘆き悲しみそうな光景だ。
「これ……直りますか?」
「そうですね……肩の付け根のネジや部品が根元から折れているので、此処の部分だけ新品の物に交換しますね。あと、錆も所々目立ちますの落とさせて頂いても宜しいでしょうか?」
「はい、お願いします!」
年代物なので直せないかもしれないと覚悟をしていたサラリーマンだったが、オーナーが直せると言った上に玩具の錆も落としてくれると言った途端に肩の荷が下りたような柔らかな笑みを浮かべた。
「それでは二ヶ月後のこの時間帯に受け取りに来て下さい。これが証明書の番号になりますので」
「本当に有難うございました」
流石に先約が山のようにあるのでその日の内に直して返すという方法は取れないが、それでもオーナーは今まで約束した期日に遅れたりした事は無かった。それが客からの信頼をより厚くしていると言えるだろう。
この五階の人形専門の修理屋を営む彼こそが、一階から五階のリビングドールの総責任者でもある『工藤 楓』だ。くりくりとした大きな瞳と幼さが抜け切らない顔立ち。やや小柄で細身の肉体ではあるが、一応列記とした男である。
若干17歳という若さではあるが、3歳の頃に西洋人形に触れ合ってから人形の美しさや職人技に心を奪われ、その後は人形や模型作りに没頭していった。
そして年齢を重ねる毎に模型や人形の制作に腕を磨き、雑誌を見たりホビーショウに足を運んだりして我流で人形作りの勉学を極めていった。
そして15歳の頃には日本を代表する模型や人形の原型師として脚光を浴び、16歳の頃にリビングドールを開業するに至った。今では大好きな人形と触れ合い、大好きな人形を修理するという順風万端な日々を過ごしていた。
「楓君、あたしのテディベアの腕が取れちゃったの!」
「これは縫い直すだけですので、四日後に取りに来て下さい」
「オーナー! 俺のミルクちゃんがあああああああ!!!」
「足が折れていますね。これは残念ながら根元から取り換えるしかありません。部品は揃っていますので、一週間後に取りに来て下さい」
「お、お、オーナー。俺のアサギちゃん人形のアソコのペイントに失敗しちまって……」
「………三週間後に来て下さい。あとペイントもしておきますので」
可愛い人形から萌え人形、更にはR−18人形まで持ち込まれ、笑いあり赤面ありの忙しい日々ながらも、かえでの心は充実していた。
そして日が暮れて短針が夕方の6時を指す十分前に、一階から五階の店は一斉にシャッターを下ろし始める。一階から四階で働いていた従業員達はオーナーである楓の所に足を運び、帰りの挨拶をしてから帰路へと着いて行く。
しかし、楓だけは別だ。彼の家はこの作業場が置かれた五階であり、寝食も此処で済ましている。また楓はお客達から預かった人形の修理もせねばならず、彼が眠りに就くのは大体真夜中の12時過ぎか、遅ければ深夜2時を回る事もある。
それでも彼が弱音を吐かないのは、それだけ人形と向き合うこの仕事が大好きだからだろう。
夕食を摂るのも忘れ、人形の修理作業に没頭し続けているとピンポーンとチャイム音が鳴り響く。そこでハッと現実に戻った楓は慌てて席を立ち、玄関の方へ向かっていく。そして扉を開けると、そこには褐色肌に引き締まった体の若い大男の姿があった。
大男は楓の姿を見るや、ニカッと人当たりの良い満面の笑顔を浮かべて挨拶をした。
「嘉山くん!」
「師匠、夕食の差し入れ持ってきたッスよ。多分、師匠の事だから食べるのも忘れているでしょうッスけどね」
挨拶すると同時に大男こと『嘉山 鋼太』は手にしていたコンビニ弁当が入ったレジ袋を楓に見せると、楓の腹から空腹を訴える虫の音色が聞こえてきた。楓も自分が今まで夕食を食べていない事に今更ながらに気付き、しかも嘉山にそれを聞かれて恥ずかしく主他のか、赤面して軽く俯いてしまった。
嘉山は楓の八つ年上の男性であり、メッセンジャーという東京都内を自転車で走り回る肉体アルバイトをする傍らで、プラモデルや軍艦模型のジオラマの出展会では必ず出品する程の模型オタクだ。
そんな嘉山は数年前の模型の大会で最優秀賞を受賞した楓の作品と彼の繊細な腕前に惚れ、以後は年下である楓の事を師匠と呼ぶようになった。楓の方は師匠と呼ばなくても良いと言うのだが、ガテン系であり体育会系でもある嘉山は上下関係をハッキリしときたいという強い意志を持っていたので、これだけは譲れないようだ。
年齢は勿論のこと、図体や体付きなど様々な面で大きく異なる二人ではあるが、模型という共通の好みや趣味を持っていた為に意気投合するのは時間の問題であり、現に嘉山はこうやって楓の家に足を運べる程の仲となった。
「師匠、もう一つ見て貰いたいものがあるんスけど……」
「え、もしかして……前に言っていた作品が完成したの?」
「へへっ、当ったりー♪」
嘉山が差し入れで持って来てくれたコンビニ弁当を食べ終えると、嘉山はもう一つ持って来ていた別の袋を持ち出し、それを楓の前に置いた。そして中から取り出したのは、砂漠戦を想定した茶色と砂色の迷彩柄のペイントが施されたティーガーTの模型と、砂漠を模したジオラマであった。
「わぁ、漸く完成したんだぁ〜! 凄いね!」
「師匠の言う通りにアレンジしたら、砂漠の雰囲気がよりリアルになったッスよ!」
「うんうん、それに迷彩のペイントも上手になったね! それとこの戦車のキャタピラにこびり付いた砂も良い感じだよ!」
「本当ッスか! いや〜、師匠に褒めて貰えて本望ッスよ!」
嘉山が作った模型を目にした途端に楓の目が光り、無邪気な子供のように興奮した面持ちで嘉山と共に模型について語り合ってしまった。暫く話に没頭した後、楓が何気なく時計を見れば既に時計の短針は夜中の11時を指す直前まで迫って来ていた。
「いけない! もうこんな時間だ!」
「うわ、マジッスか! 明日も朝早くからバイトだってのに……! じゃあ、俺はこれで失礼するッス!」
「気を付けてね! それとこのプラモ、二階の模型店に飾らせてもらうね!」
「お願いします! それじゃ!」
押し迫った時間のせいで落ち着く事も出来ず、嘉山は慌ただしく部屋を出ていった。一人部屋に残された楓は嘉山の作ったプラモデルを作業場へと持って行き、それを様々な方向から眺めた。
「ふふ、嘉山くん……段々上手くなっていくなぁ。僕も頑張らないと……」
嘉山の腕前はプロである楓と比べると劣っているのは否めないが、アマチュアとしては相当高いレベルであるのは確かだ。何せ、楓自身も彼の模型に関する腕前を認める程なのだから。
また楓は自分には無い大胆且つ堂々とした嘉山の作品が大好きだった。しかも、その作り上げたばかりの作品を真っ先に自分の所に持って来てくれるのが嬉しくて堪らない。
「嘉山くん……うぅ……ふぅ……ふぅん……」
………だが、楓の抱いている感情は作品に対する喜びや嬉しさだけではない。ハッキリと言ってしまえばそれらの感情の範囲をも跳び越えており、嘉山本人に対し愛おしさすら感じていた。その証拠に楓は自分のズボンを下ろし、そこから現れた男性の象徴である男性器に手を遣り自慰をし始めたのだ。
彼がこんな事をし始めたのは嘉山と出会ってから一年ぐらいが経過した頃であった。嘉山の事を友達以上の親友のように付き合い始め、彼がちょくちょく自分の作品を持って来ては感想を求めたりし出したのがきっかけだった。
嘉山の模型作りに対する情熱や愛情、そして彼の大らかな人柄や男らしさ……自分には無いものを兼ね備えている彼に何時の間にか楓は引き摺りこまれていた。同性でありながら、嘉山という男に彼は一目惚れしてしまっていたのだ。
自分でもこんな感情を持つのは間違いであり、彼に対しても失礼だし迷惑だと理解している一方で……何時の日か逞しい彼に抱かれたいという叶えられない夢を見ていた。だからこそ、彼の作品を間近で見ながら、自慰でその淡い夢を昇華させようとしていた。
楓の頭の中では裸になった嘉山に抱き絞められ、豊富な愛の言葉を囁かれながら抱かれる己の姿を妄想していた。同時に男性器を弄る手の動きも段々と速くなっていき、遂に絶頂を迎えようとしたその瞬間だった。
「あ〜ら、いけない子ね。私の約束を破って勝手に自慰しちゃうつもりなの?」
「ひぐっ!?」
自分しか居ない筈の部屋に女の子の声が響き、直後に自分の男性器がキラキラと輝く細い糸でボンレースハムのように幾重に巻かれて縛られる。突然襲い掛かった激痛の余り、楓は身動きを取る事もままならずその場に蹲ってしまう。
額から嫌な脂汗が滲み出てくる程の苦悶の表情を浮かべていると、自分の顔の真横にフワリと何かが舞い降りた。そちらに視線を向けると、そこに立っていたのは40センチ程の小さな西洋人形だった。
シルクのようにキラキラと輝く長い銀髪を色鮮やかな紫色のリボンで結び、身に付けている西洋風のドレスは純白と紫のコントラストであしらえられ、所々に可愛らしいハートマークが印されている。更に人形の顔立ちは人形ならでは美しさと、本物の幼女のような可愛さを兼ね備えている。
アンティーク人形として売り出せば、数百万の値が付けられても買う人は居るだろうと断言出来る程に華麗なものであった。
但し、その人形は自分の遺志で立ち、そして会話する事も出来る『リビングドール』と呼ばれる呪われた人形であった。
普通の人がそんな人形を目の当たりにすれば絶叫するだろうが、楓は叫ぶどころか驚きもせず、静かにそのリビングドールの名前を呟いた。
「り、リリィちゃん……」
「楓の気持ち、分かるよ。大好きな人が来てくれて気持ちが昂っちゃったんだよね? でも、楽しい事は私と一緒にっていう約束があるのに……酷いなー」
「ご、ごめんなさい……」
楓がリビングドールのリリィと親しくなったのは今から十カ月も前の事だ。嘉山を想いながら自慰をするのが日課となりつつある頃、それまで単なる人形だったリリィはリビングドールのリリィとなって楓の前に現れた。
そもそもリリィは楓が三歳の頃に祖父に買って貰った人形であり、また楓が人形模型に憧れを抱き、模型師としての道を歩むきっかけを与えた人形でもある。
十何年も一緒に過ごし可愛がっていた人形が突然動き出した日には言うまでもなく驚き、困惑したものの、そんな楓の驚愕する様などお構いなしにリリィは近付き、彼の耳元で囁いた。
『あの大きな男の人が好きなんだよね、楓は。だったら、私がもっと気持ち良くなる方法を教えてあ・げ・る♪』
それ以降、リリィと楓は単なる人形とその所有者という関係から、互いの欲望を満たし合う卑猥な関係へと発展していった。またこの時に自慰やオナニーなど『楽しい事』を二人でしようという約束もリリィが取り付けたのであった。
「まぁ、今日は久し振りに楓の想い人に会えたからね。楓の恋心に免じて許してあげちゃう」
自分の主の気持ちを察するかのようにリリィは理解を示し、今まで締め付けていた楓の男性器を解放してやった。そして男性器を締め付けていた糸はシュルルルと音を立て、彼女の輝く銀髪の束の中へと戻っていく。どうやら楓の男性器を縛り上げた糸はリリィの長い銀髪から繰り出されており、ある意味で彼女の体の一部だったようだ。
「あ、有難う。リリィちゃん……」
「良いのよ。それじゃあ楓………一緒に楽しい事をして、気持ち良くなろう♥」
「……うん♥」
二人の間では既にお決まりとなっている『楽しい事』の呼び掛けに楓が恥ずかしそうに頷くと、リリィはスカートを捲り、何も身に付けていない自分の下半身を露わにさせた。
人形であった頃はリリィの身体はマネキンと同じ無機質な素材で出来ていたが、リビングドールとなってから彼女の体には柔らかさと温かみ……人間と全く同じ体温と柔肌、更には女性器さえも持つようになっていた。
リリィが仰向けに寝転がり大きく股を開くと、その間にある柔らかな蕾は薄らと濡れてヒクヒクと卑猥に動いており、まるで楓の男性器を心待ちにしているかのようだ。
「じゃあ、何時ものように此処に楓のオチンチンを入れて気持ち良くなってね♥」
「う、うん……」
彼女の誘惑に引き摺りこまれるかのように、楓は戸惑う様子も見せずギンギンに勃起した男性器を彼女の膣へと挿入した。
楓の男性器は10センチそこそこと平均男性並ではあるが、それでも40センチという人形サイズのリビングドールのリリィからすれば途轍もなく大きい事に変わりはない。その証拠に楓の男性器がリリィの中へ入ると、彼女の腹部が男性器の亀頭に押されて膨れ上がる。
まるで馬のペニスで獣姦をする女性のように見えるが、リリィの表情に苦痛や苦悶の色は見当たらない。寧ろ快楽と快感を楽しんでいるかのようにも見える。
「んんん!♥ ふぁあああああん!♥」
「ああ、リリィちゃんの中……熱いよぉ……!♥」
小柄な人形サイズであるからか、それともリビングドールという男性の精を好む魔物娘だからだろうか。リリィの膣内に肉棒を入れた途端、彼女の肉壁が楓の男性器をキュウキュウに締め付ける。
「うふふ、やっぱり楓のオチンチンは良いわねぇ♥ ほら見て、楓の逞しいオチンチンのおかげで私のお腹が妊婦さんのように膨れちゃったわ♥」
リリィは男性器に圧迫されて膨らんだお腹を擦りながら、妖しげな笑みを浮かべて楓の性欲を挑発する。その言葉に更に興奮したのか楓の性器は益々硬さを帯び、そのまま盛った猿のように何度も何度も夢中になって腰を振り続ける。
傍から見ると人形の形をしたオナホールで必死にオナニーをしているかのようにしか見えないが、先にも述べた様にリリィは列記とした魔物娘だ。実際に楓の男性器に伝わって来る感触は本物の女性と同じか、それ以上の快感で満ち満ちている。
「あっ、あっ、出ちゃう♥ 出ちゃうよぉ♥」
「うふふ、もう出ちゃうのね。良いわよ、沢山出して♥ あたしのオマンコに楓のザーメンどっぴゅどっぴゅ出してね♥」
「うぅ……出るぅうっ!!」
彼女の中へ挿入してから一分足らずで楓は絶頂に達し、彼女の膣内に若い子種を存分に吐き出した。男性器が脈動し、睾丸から送り出された精液が全て彼女の膣内へ注ぎ込まれる。やがて楓が射精し終わると、今度はリリィが中出しされたばかりの肉壺を締め付けて彼の肉棒に残っている精液を絞り取る。
「ふぁあああ……♥」
「ふふ、ザーメンご馳走様♥」
情けない悲鳴を上げながら楓が男性器を引き抜くと、リリィの肉壺からは出したばかりの濃厚でホカホカの精液がトロリと流れ出てきた。もし彼が性欲旺盛な人間ならば、中出しされたリリィの肉壺を見てもう一発という気持ちになったかもしれないが、残念ながら彼の男性器は硬さも張りも失いフニャリと力が抜けていた。
只単にリリィが精液を欲しがるのならば、目的を果たしたこの時点で二人の淫らな遊びはお開きとなっただろう。だが、リリィの目には未だに輝きが秘められていた。
それは子供が悪戯を企む様な目付きにも見えるし、または無垢な子供を汚すのを喜ぶ魔性の女の怪しげな目線にも近い。
「ねぇ、楓。今日はどうする? アレはしないの?」
『アレ』と言われた途端、楓の体がピクンと反応した。身体だけじゃない、性欲を吐き出し終えて力を失っていた男性器もピクピクと若干力を取り戻して動き出しており、頬も薄らと赤くなっている。
「どうする? するの? それとも……」
「ぉ……します……」
「ん? なーに? 小声で全然聞こえないわぁー♪」
「お願い……します……。今日も……アレをして下さい……」
『アレ』をお願いするのが余程恥ずかしいのか、楓は顔をトマトのように真っ赤にさせながらリリィにお願いした。所有者と所有物の立場が逆転してしまっている会話の遣り取りであるが、事実、卑猥な遊びの主導権を握っているのはリリィだ。そちらの方に疎い楓では勝ち目は無いに等しい。
「よく言えました☆ それじゃ早速始めるわね……」
楓からのお願いを聞くとリリィは微笑を浮かべ、彼女の体から薄い桃色の光が……恐らく魔力と思われる力が発せられる。そして先程彼の男性器を縛り上げたリリィの銀髪が数本急激に伸び、資材などが置かれてある作業場の襖へ向かっていく。
魔力を有した髪の毛の力で襖を器用に開けると、暗闇が広がる襖の中へ飛び込んでいく。まるで暗闇の中へ銀の糸が吸い込まれるかのような幻想的な光景だ。
暫くすると、襖の奥からカチャンとマリオネット人形を動かす際に発せられる音が聞こえてきた。
そして暗闇から現れたのは―――――嘉山 鋼太に瓜二つのマネキン人形であった。それも姿形だけではなく、ボサついたボーイッシュな髪形から日に焼けた褐色の肌、身長も彼と全く同じ等身大サイズだ。
どうやらリリィの髪の毛で嘉山人形を操作しているらしく、また魔力を含んでいるおかげか、人形の動きもぎこちないマリオネット人形とは大きく異なり、普通の人間と同じスムーズなものである。
但し、顔や身体の皮膚や殆どがシリコンで作られており、四肢の関節には人形と同じ球体関節が埋め込まれている他、人間の男性器に当たる部分には中型のディルドが装着されている。
これを作ったのは他ならぬ楓本人だ。嘉山に対して抱いた禁断の想いを拗らせてしまった挙句、このような等身大人形を作っては自分を慰める……という病的に歪んだ愛情へと発展してしまった。
だが、それにしても流石はプロの模型造型師だ。遠目からではコレが人形であると気付ける人間は皆無だろう。
「嘉山くん……」
『ふふ、今日の師匠もエロいッスね。俺、我慢出来ないッスよ』
嘉山人形の口がパクパクと動き、そこから嘉山と全く同じ声が出て来た。が、これは嘉山本人の声ではない。人形を操っているリリィが腹話術で嘉山の声を再生させ、それを人形の口の動きに合わせて、如何にも本人であるかのように演じているだけだ。
楓も相手が人形である会話もリリィが織り成す演出の一つだと理解している。だが、どれだけ理解していても、これから行う事に対する興奮が勝ってしまい心臓の動悸が収まらない。
自分の作り上げた嘉山人形を見上げてウットリする楓だったが、間も無くしてローションのボトルを抱えたリリィが楓の背後にソッと回り込む。
「さてと、それじゃ楓のお尻にローションを塗るわよー♪」
「ひゃっ!」
その台詞を皮切りにボトルの中のローションを楓のお尻に派手にぶっ掛ける。ぬめったローションが楓の桃尻の上をゆっくりと流れ落ちていくその様子は、男であるにも関わらず何処か卑猥な感じがする。
やがてローションが楓のお尻全体に余すことなく行き渡ると、リリィは自らの手を使ってローションの液を均等に塗りたくる。お尻だけでなく睾丸や男性器、更には肛門の内部に至るまで。楓の性感に関係する場所を全て塗り尽くす。
特に肛門に至っては念入りだ。洋服を脱ぎ捨てたリリィが自分の肩にまでローションを掛け、片腕丸々一本を使って彼の肛門を解す程だ。
可能な限り奥まで塗るとリリィは腕を抜き、『これで準備OKね』と嬉しそうな笑みを浮かべて楓の尻をぺしんっと軽く叩いた。
「さぁ、楓。大好きな彼を模した人形さんにちゃんとおねだりしてみせなさい」
「は、はい……。嘉山くん、嘉山くんのおちんちんで……僕のお尻の穴を埋めて下さい……!」
羞恥心のあまり顔を赤くしながらも、楓はリリィに言われた通りにお尻を少し持ち上げた四つん這いの格好で厭らしく懇願した。男なのだが、その様子はまるで性欲を抑え切れない雌犬のようだ。
それを間近で見ていたリリィはゾクゾクとする歓喜に近い感情を抱きながら、髪の毛の数本を動かし楓のバックに人形を移動させる。そしてディルドの疑似ペニスを楓のお尻に宛がうと、そのまま一気に奥底へと突き入れた。
「んあ!! ああああああああ!!!♥」
『師匠のお尻、俺のオチンチンをギュウギュウに締め付けてくれて……とっても気持ち良いッス! もう我慢出来ないッス!』
「あ、ま、待って! 急に激しく……ひゃあん!!♥」
人形の腰が激しく前後に振り始め、楓の腰とぶつかる度にパンパンと肉体同士がぶつかり合うような音が部屋に鳴り響く。疑似ペニスで直腸をズンズンと貫かれる感触に楓は最早何も考えられず、喉が乾いた犬のように舌を出し、口からダラダラと唾液が漏れ出る。
「ふふふ、今夜の楓も良い表情を見せてくれるわね。私も御一緒させて貰おうかしら♥」
「ふぇ!? な、何を……ひゃああああ!?」
人形とのSEXで乱れる楓に追い打ちを掛けるかのように、リリィは自分の口と手、更には輝く銀髪を使って楓の肉棒を刺激し始めた。
人形サイズの小さな舌が亀頭の先端にある尿道に舌を入れて舐め回し、堅い人形の手で睾丸や竿を揉み解される。銀髪の髪が男性器全体に絡み付き、強く縛ったり急に緩めたりを繰り返し苦痛と快感の双方を与えてくれる。
「は、反則だよぉ!♥ そんな事されたら、もう……もう僕……!♥」
「良いわよぉ、イっちゃいなさい。お尻とオチンチンを同時に弄られて、楓の変態ザーメンをもう一度大量に吐き出しなさい♥」
そう言ってリリィが髪の毛を動かして人形の腰の動きを速め、楓を更に責め立てる。最早人形の腰の動きはプロのAV男優並か、もしくはそれ以上と言える程に高速かつ力強いものであった。そんな動きでアナルを責められれば、楓の絶頂が速まるのも無理ない話だ。
「あっ! あっ! あっ! イクッ! イクッ! イクイクイク! イィグゥー!♥」
獣の様な雄叫びを上げた直後、楓のペニスから大量の精液が放出された。大量の精液はペニスを目の前で弄っていたリリィに全てぶちまけられ、瞬く間に彼女の五体は生臭い濃厚な白濁液によって汚されてしまった。しかし、精液を浴びせられた彼女は怒る訳でもなく、寧ろ大量の精液を存分に浴びれた事に喜びさえ感じていた。
「うふふふ、一杯出たわねぇ♥ 楓♥」
「は…はぁい……♥」
リリィの呼び掛けに反応してはいるものの、楓の表情は軽く白目を向き、無様なアヘ顔を浮かべるなどあられもない姿を晒している。しかし、何処となく楓からは幸福のオーラも感じられるので、これもまた彼の望んだ幸せなのだろう。
「それじゃ……そろそろ今日のメインディッシュに行きましょうか」
「へ? メイン……ディッシュ……?」
「そう、メインディッシュ」
絶頂に達した楓の頬に触れながら、耳元でソッと呟いたリリィの言葉に楓は反応した。今まで自分とリリィの遊びはリリィの中に射精したり、リリィが操る人形で自分を慰めたりするのが殆どだった。
しかし、今回はそれだけに留まらずメインディッシュ――この場合のメインディッシュは無論料理ではなく、卑猥の遊びを意味するのであろう――があるのだと言われたのだから楓が目を丸くするのは当然だ。
「メインディッシュって……一体何をするんですか?」
「楓は素質があるからね、もしかしたら可能だと思う」
「素質? 可能?」
リリィの魂胆が全く読めず、楓は首を傾げて何をする気だと問おうとした―――その時だった。
ドクンッ
「え…? あ…?」
胸が躍っているかのように心臓が強く跳ね上がり、次いで身体の芯に溶岩が注ぎ込まれたかのように無性に熱くなる。明らかに尋常ではない出来事が自分の体の中で起こっていると察し、楓の顔に思わず恐怖の色がこびり付く。
「な、何……何コレ……!?」
「大丈夫よ。実は今ね、楓のお尻に刺さったままのディルドを通して私の魔力を注入しているの」
「ま、魔力……!?」
魔物とか魔法とかに関しては全くの鞭ではあるが、魔力を浴びせられた女性は魔物娘に、そして男性はインキュバスに変身してしまう事ぐらいは楓も知っている。まさか自分もインキュバスになるのか……と不安そうな表情を浮かると、彼の心を読み取ったかのようにリリィが言葉を付け足した。
「大丈夫よ。言ったでしょ、楓には素質があるって♪」
「そ、素質って何の―――!?」
そもそも素質の意味が分からないと叫びたい想いに駆られたが、それは叶えられなかった。何故なら自分の体内に注ぎ込まれていく魔力が快感へと生まれ変わり、その押し寄せる快感の波に襲われて言葉も発せられない状態になってしまったからだ。
「ひぐっ! な、何……これぇ……♥ 身体がおかしくなっちゃうぅぅぅぅ!♥♥♥」
「うふふ、どうやら“来た”みたいね」
リリィが妖しげな笑みを浮かべながら楓を見遣ると、楓の体に異変が起き始めた。
黒髪だった髪が金髪へと変わり、耳もエルフのように尖っていく。横に張り出した男の肩は女のように撫で肩へなっていき、真っ平らな胸も膨らんでいく。そして今さっきまでリリィを喜ばせていた男性器は消失し、代わりにそこに存在したのは穢れを知らない美しい女性器であった。最後は小悪魔をイメージさせる可愛らしい翼と尻尾、後頭部から丸みと光沢を帯びた黒い角が生えた。
そこで魔力を注入し終えたらしくお尻に刺さったままのディルドが引き抜かれた。
「はぁ……はぁ……一体何が起こったの? ………あれ、声が何か変?」
身体がおかしくなる程の快楽から開放されて、漸くまともに言葉を返せた楓であったが、そこで自分の声に違和感を覚えた。そして自分の手足の形も今までとは異なる様な気がし、ふと作業場にあった自分の姿を映し出す大型の鏡へ目を遣ると――――
「……な、何じゃこりゃああああああああああああ!!?」
―――そこに映されていたのは自分がよく知る自分ではなく、可愛らしい姿形をしたサキュバスであった。
「な、なななんなんなな何ですかコレぇ!? というか胸が!? チンチンが!? 翼が!? 角が!? 髪の毛さえもぉー!?」
「あっははははは! やっぱり成功だ! 楓にはアルプの素質があるって思っていたのよねぇー♪」
「あ、アルプ……?」
聞き慣れない名前に楓が尋ねると、リリィは嬉しそうな笑みを浮かべたまま御丁寧に説明してくれた。リリィが言うには、男でありながら同性に憧れや恋心を抱いている男性が魔力を受けてサキュバス化し、そのサキュバス化した魔物の事をアルプと呼んでいるそうだ。
つまり嘉山に対して愛情を抱ていた楓が魔力を注入され、アルプへ生まれ変わる可能性は十分にあったという訳だ。しかし、当の本人はアルプとなってしまった自分に戸惑うばかりだ。
「ど、どうするんですか! これじゃ明日からお客さん接する事は出来ないよぉ〜……」
それもそうだ、魔物娘になってしまった自分の事をお客に向けて何て説明すれば良いのやら。そもそも、こんな姿では客商売なんてまともに出来ない。店は赤字だと嘆き悲しむ楓であるが、そこは大丈夫よとリリィが声を掛けた。
「魔力を上手く扱えるようになれば以前の姿を維持する事が出来るし、私生活にだって問題はないわよ。まぁ、魔力を扱うのは初心者には少し難しいかもしれないけどねぇ」
「じゃあ、何で態々こんな面倒な魔物娘に変身させたんですかー!?」
前の姿に戻ったり魔物娘に変身したりするぐらいならば、十分に今のままでも良かったのではと疑問を口に出す楓。確かに彼……いや、彼女の疑問は最もであるが、それに対しリリィはまたもや言葉を切り返した。
「あら、私は貴女の願望を叶えてあげただけよ。『本物』の嘉山くんとエッチしたいんでしょー?」
「!!!」
今まで散々嘉山人形を使って自慰をしてきた楓であるが、その心は徐々に本物の嘉山とのSEXを望みつつあった。それを指摘され楓は言葉を失うが、更にリリィは言葉を続けた。
「それに今のアルプの姿なら嘉山くんとのSEXは勿論のこと、彼の子供を貴女の体内に宿す事だって十分に可能なのよ」
「嘉山くんの……子供……」
彼の男性器を受け入れ、彼の射精の快感を味わい、更に彼の子供も孕める……魔物娘になったせいか、それを想像しただけで心臓の動悸が速まり、興奮のあまり女性器から愛液がツゥ…と股を伝って落ちていく。
「想像して御覧なさい。何時も自分を慰めるディルドではなく、熱くて硬い肉棒が貴女の大事な部分を貫きぐちゃぐちゃにしちゃうのよ。ぐちゃぐちゃにされた挙句、大量の精液を吐き出されて子宮がキュンキュンと疼き、身も心も蕩ける程の快楽が体全身に襲い掛かるの。しかも、大好きな人の子をお腹に宿す幸福感を味わえるのよ」
「あ…あ…」
「ねぇ、体験してみたいと思わない?」
それは正にサキュバスらしい堕落への誘いであった。もし楓に強い意志があったら撥ね退けられただろうが、魔界娘として生まれ変わった今の楓にはそれを断る強い意志も勇気も無かった。
また日本という狭い国での常識などから男同士の恋愛に臆病となっていたが、自分が魔物娘になった事で肉体的にも性的にも結ばれるとなった今、楓が嘉山に向けて抱き続けていた禁断の想いが開花するのが必然であった。
「体験したい……です……。嘉山くんと……SEX……したいです……!」
「ふふ、そうこなくっちゃね。楽しみだわぁ、アルプになった貴女を見た嘉山くんの反応が……うふふふふ」
こうしてまんまとリリィの魔の手に落ちた楓は、彼女の操り人形と化した。そして一週間後、楓は嘉山と肉体的に結ばれるのだが……これもリリィの狙い通りだとは知る由もない。
13/07/15 21:50更新 / ババ