お・バ・カ ― トップをねらえ! ―
俺の上司・・・・、というか伴侶であるリッチのララは天才だ。
様々な特許を持ち人類の発展に尽力している。おまけに大富豪でもある。
しかし同時に、ちょっといやかなり「アレ」だ。
どれくらいアレかというと・・・。
「ダンバー君、私は料理に目覚めたのだ!!」
と、ある日急に言い出し、「蚊の目玉スープ」や自家製マースウルツ(ウジ虫入りチーズ)など連日連夜ゲテモノ料理のオンパレードを食べさせられた。
因みに心が痛むのか「バロット」(孵化寸前の卵を使ったゆで卵)は作らなかった。
またある日などは・・・・。
「ダンバー君!レゴでバッキンガム宮殿を作ったぞ!」
本物と同じくらいの敷地に同じ大きさのレゴ製バッキンガム宮殿を作るなど、無駄にバイタリティーに溢れ出している。
なお、
「徹夜で作りました」
「ドコのジョバンニだよ!!」
「ということで、お腹空いたからゴ・ハ・ン」
「えっ?えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「レイプレイプレイプレイプレイプレイプ・・・・・」
三日三晩、レゴブロック・バッキンガム宮殿がファッキンガム宮殿になったのは語るまでもないだろう。
思えば俺とララが出会ったのは、俺がブロンクスでいかさまを使ったアコギな商売をしていた時だ。
「さあさ、賭けてください!スペードのエースを見つけるだけですよ!!」
― スリーカード・モンテ ―
18世紀から存在するいかさま賭博で、「スライハンド」というカードを巧妙に重ねて幻惑させるテクニックを多用する。
言葉で客を煽り立てるのも忘れない。
俺は観光客相手のいかさまでソコソコ稼いでいた。
あの日までは・・・・。
「おや、今日は魔物の小娘が一人かよ・・・」
「じーーーーーーーーーー」
「なんだよコイツ・・・」
俺はいつものようにカードを並べるといつもの口上を述べる。
「左」
「え?」
「アナタもう一枚持ってる」
「そんなワケないさ」
そう言うと、俺は「カードをピッタリと重ねた状態」でスペードのエースをオープンする。
「な、左じゃなくて真ん中のここにエースがあるだろ?」
「そう・・・・。そういうなら考えがある」
目の前の魔物は札束を置いた。
「きっかり3000ドルはある」
「へ、正気か?」
「私は問題ない」
「悪いがその勝負は受けられないぜ。俺はそんな額の種銭は持ってないからな」
「なら金の支払いはしなくていい。私は勝てればいいの」
「面倒な魔物だな」
「私は魔物なんて名前じゃない。リッチ、リッチのララ」
〜 適当に負けて帰らすか。今日は入りが悪いし 〜
シャッシャッシャ!
慣れた手つきでカード繰り出す。
見抜かれた以上、今回は「ダブルカード」は使わない。一般的な「スライハンド」を使った。
このスリーカードモンテは観客に対して、「カードは常に一つでカード同士を重ねたりしない」と思わせることがコツだ。
「さてどれがエースだ?」
スッ
ララが札束を置いたのは「真ん中」。
魔物は人間以上の力を持っているとは聞いたことがある。
悔しいがコイツは俺のスライハンドを見抜いたようだ。
「嬢ちゃんの勝ちさ」
俺は降参して真ん中のカードを開いた。
「ったく、今日は店じまいか」
「まだ負けを認めていない」
表情を一切変えず、ララはそう要求した。
「負けだ!!!負けだよクソったれ!!!!」
「・・・・認めるのね?」
「ン?まだなんかあるのか?」
「支払いが残ってる」
「オイオイ!お前、さっき金は要らないって言ったろうが!!」
「金、はね」
その途端、ララが俺の手を掴んだ。
「金がないならカラダで支払ってもらうから」
そして、有無を言わさずララは俺を転移魔法でこの研究所に連れ込んだ。
魔物娘が男を引っ張り込んだらヤることは一つ。つまり俺は「3000ドル」分絞られたってことさ。
「ダンバー君。君は魔物娘というものをどう考える?」
「ただの色ボケ」
「違う!!魔物娘というものと人間の違いを聞いているのだ!!」
「ただの色ボケ、じゃなかったら痴女」
「それはただの見た目だ!!」
「春夏秋冬、裸マントのどこが痴女ではないと?」
「この格好は合理的思考の結果だ。断じて私は痴女ではない」
「はいはい」
いつもこうだ。ララはかなり「頑固」だ。
あの日、俺もへとへとになるくらいイったが、ララも潮吹いて白目になるくらいイっている。
でも決して彼女は認めない。
曰く、「白目を剥いているのは目を休ませていたからだ!!!」と。
「で、何が言いたいワケ?」
「要約するなら、人間に決まった型がないように魔物娘もまた決まった型は存在しないということだ」
「?」
「ダンバー君は黒人だが、メーン!とかヨー!とか言わず悪い奴大体友達!とも言わないだろ?」
「えらい古いテンプレートだな」
「だからこそ、弱気なダークエルフがいてもいいし、メイドなアマゾネスがいてもいい」
「まぁ、そうだが・・・・」
「そこで私は考えたのだ!おバカなリッチがいてもいいと!!!」
「いやその理論はおかしい」
「もう決めたのだ!!私はバカを極めるのだ!!」
「でも、バカな行動って何をするわけ?」
「まずは・・・・」
マントから取り出したのは何の変哲もないただの板チョコだ。
ペリペリ・・・。
銀紙を取り出し、ララはおもむろにそれを口に放り込んだ。
「バカ」なら一度はやってしまう失敗である。
もしゃもしゃ・・・・・
「?」
「どうした?」
ダンバーが顔を近づけた瞬間だ。
ポイ
ララが噛んでいた銀紙をダンバーの口に投げ込んだ。
「ヒぐッ!!ひぎぃィィィィィィ!!!」
電気ショックのような痛みにダンバーが悶絶する。
失礼、「ような」ではない。実際に「電流」が流れているのだ。
これは銀紙と銀歯が反応して微弱な電流が発生、それが歯の神経に作用している。
故に銀歯が全くなければ反応しない。
「次よ!」
「ふぁ・・・ふぁい」
「裸で1日を過ごすよ!」
「それ、いつもでしょ?」
1分もたたずに轟沈。
プシュ〜〜〜
「はぁ・・・・・」
プシュ〜〜〜
「何を溜息ついているのだ?ダンバー君」
「そりゃ溜息くらいつきたくなるよ!!見ろよこれ!!」
「何ってオ○モトのコンドームだが?」
「そうさ!コンドームさ!!でも何でコンドームにヘリウム入れて浮かせなきゃいかんのだ!!」
ダンバーの最もな意見にララはやれやりとリアクションをとる。
「ダンバー君。君はわかっていない。我々はコンドームを使用しての避妊を嫌う。おかげでコンドームの売れ行きは下降を辿っている。だからこそ!」
ララが仁王立ちになる。当然のことながら裸マントである。
「私がコンドームを大量に買い込んで風船を作り、ララお姉さんの空飛ぶ家と・・・・」
「それ、ディズニーのパクリ」
・・・・・計画は中止となった。
「ケフッ・・・・・!」
「何口から煙を吐いているのだい?ダンバー君」
「アンタが感電した状態で俺に触るからだろが!!」
濡れた手でコンセントを触る、人間一回くらいやったことのある行為だ。
リッチは端的に言うと「動く死体」だ。
オマケに魔物である以上、感電死などはしない。当然、インキュバスである俺が感電しても死なないワケでもあるが。
一週間ほどララの「おバカな行動」に付き合っているのだ。
並みの人間よりもダイハードな目に遭っている。
でも彼女は満足していないようだ・・・・。
「なんだよこの濃いピンク色の水槽は?」
「うむ。これは不思議の国の大気を参考に私が合成した催淫ガスだ」
「それとバカのどこが関係するんだ?」
「例えば、これにテンタクルを一ダースほど放り込んだら?」
「そりゃ、ニュチョグチョドロドロの・・・まさか!」
「今回はこの中にダイブしたいと思います!死のダイブならぬ、師の愛撫!!」
「ちょっwww、それは洒落にならない!」
ダンバーが止めるがララを引き留めることはできなかった。
グッ!
親指を立ててピンク色の雲海に消えるララ。
彼はそれをただ見つめることしかできなかった・・・。
〜 小一時間後 〜
「グスッ・・・・・」
水槽からララが帰還した。衣服は身に着けておらず・・・・。あ、いつも通りか。
「聞いてよダンバー君!!入ったら一ダースのテンタクルが姉妹のように仲良くなっていて、アイツら私に、私に!!」
嗚咽交じりにララが叫ぶ。
「お前の触手ねぇから!って言ったのよぉ!!」
どうやら、発情した一ダースのテンタクルは桃色ピンクの果てに、別世界の扉を開いてしまったようだ。お幸せに・・・。
俺は知っている。
この研究所の隅にある墓。
その墓石は長い月日が過ぎたおかげで大分擦り切れていた。
しかしその埋葬された人物の名前は辛うじて判る。
― ララ・フレイム ―
ララの本名だ。
時折ララは「自分の墓」に行く。そこで当人は何をしているのかと言うと・・・・。
「わた〜しのお墓の前〜で、泣かないで下〜さ〜い」
と、ジョン・健・ヌッツォばりの美声で「千の風になって」を歌っていたのだが。
そりゃまぁ、静かだからカラオケの練習に最適だけどさ。
「ダンバー君!私は悪に目覚めたのだ!!悪を極めるのだ!!!」
「バカを極めるんじゃなかったんですか?」
「五月蠅い!ブラック一号!サッサと幼稚園バス襲撃の準備をするのだ!!」
「幼稚園バスの襲撃って、昔懐かしの仮面ライダ〇ですか!!」
「そうだ!!悪の総統になるのだ!!目指せショッカー!!!」
魔物の寿命は長い。それこそ百年以上生きていることさえある。
彼女は「生前」や「魔物化」した後の事をあまり話したがらない。
どんな悲しみや苦しみを感じて彼女は生きてきたのだろう?
たかだか40年くらいしか生きていない俺には想像もつかない。
ララが今を幸せに生きられるのなら、こんな道楽に付き合うのも悪くないだろう。
様々な特許を持ち人類の発展に尽力している。おまけに大富豪でもある。
しかし同時に、ちょっといやかなり「アレ」だ。
どれくらいアレかというと・・・。
「ダンバー君、私は料理に目覚めたのだ!!」
と、ある日急に言い出し、「蚊の目玉スープ」や自家製マースウルツ(ウジ虫入りチーズ)など連日連夜ゲテモノ料理のオンパレードを食べさせられた。
因みに心が痛むのか「バロット」(孵化寸前の卵を使ったゆで卵)は作らなかった。
またある日などは・・・・。
「ダンバー君!レゴでバッキンガム宮殿を作ったぞ!」
本物と同じくらいの敷地に同じ大きさのレゴ製バッキンガム宮殿を作るなど、無駄にバイタリティーに溢れ出している。
なお、
「徹夜で作りました」
「ドコのジョバンニだよ!!」
「ということで、お腹空いたからゴ・ハ・ン」
「えっ?えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「レイプレイプレイプレイプレイプレイプ・・・・・」
三日三晩、レゴブロック・バッキンガム宮殿がファッキンガム宮殿になったのは語るまでもないだろう。
思えば俺とララが出会ったのは、俺がブロンクスでいかさまを使ったアコギな商売をしていた時だ。
「さあさ、賭けてください!スペードのエースを見つけるだけですよ!!」
― スリーカード・モンテ ―
18世紀から存在するいかさま賭博で、「スライハンド」というカードを巧妙に重ねて幻惑させるテクニックを多用する。
言葉で客を煽り立てるのも忘れない。
俺は観光客相手のいかさまでソコソコ稼いでいた。
あの日までは・・・・。
「おや、今日は魔物の小娘が一人かよ・・・」
「じーーーーーーーーーー」
「なんだよコイツ・・・」
俺はいつものようにカードを並べるといつもの口上を述べる。
「左」
「え?」
「アナタもう一枚持ってる」
「そんなワケないさ」
そう言うと、俺は「カードをピッタリと重ねた状態」でスペードのエースをオープンする。
「な、左じゃなくて真ん中のここにエースがあるだろ?」
「そう・・・・。そういうなら考えがある」
目の前の魔物は札束を置いた。
「きっかり3000ドルはある」
「へ、正気か?」
「私は問題ない」
「悪いがその勝負は受けられないぜ。俺はそんな額の種銭は持ってないからな」
「なら金の支払いはしなくていい。私は勝てればいいの」
「面倒な魔物だな」
「私は魔物なんて名前じゃない。リッチ、リッチのララ」
〜 適当に負けて帰らすか。今日は入りが悪いし 〜
シャッシャッシャ!
慣れた手つきでカード繰り出す。
見抜かれた以上、今回は「ダブルカード」は使わない。一般的な「スライハンド」を使った。
このスリーカードモンテは観客に対して、「カードは常に一つでカード同士を重ねたりしない」と思わせることがコツだ。
「さてどれがエースだ?」
スッ
ララが札束を置いたのは「真ん中」。
魔物は人間以上の力を持っているとは聞いたことがある。
悔しいがコイツは俺のスライハンドを見抜いたようだ。
「嬢ちゃんの勝ちさ」
俺は降参して真ん中のカードを開いた。
「ったく、今日は店じまいか」
「まだ負けを認めていない」
表情を一切変えず、ララはそう要求した。
「負けだ!!!負けだよクソったれ!!!!」
「・・・・認めるのね?」
「ン?まだなんかあるのか?」
「支払いが残ってる」
「オイオイ!お前、さっき金は要らないって言ったろうが!!」
「金、はね」
その途端、ララが俺の手を掴んだ。
「金がないならカラダで支払ってもらうから」
そして、有無を言わさずララは俺を転移魔法でこの研究所に連れ込んだ。
魔物娘が男を引っ張り込んだらヤることは一つ。つまり俺は「3000ドル」分絞られたってことさ。
「ダンバー君。君は魔物娘というものをどう考える?」
「ただの色ボケ」
「違う!!魔物娘というものと人間の違いを聞いているのだ!!」
「ただの色ボケ、じゃなかったら痴女」
「それはただの見た目だ!!」
「春夏秋冬、裸マントのどこが痴女ではないと?」
「この格好は合理的思考の結果だ。断じて私は痴女ではない」
「はいはい」
いつもこうだ。ララはかなり「頑固」だ。
あの日、俺もへとへとになるくらいイったが、ララも潮吹いて白目になるくらいイっている。
でも決して彼女は認めない。
曰く、「白目を剥いているのは目を休ませていたからだ!!!」と。
「で、何が言いたいワケ?」
「要約するなら、人間に決まった型がないように魔物娘もまた決まった型は存在しないということだ」
「?」
「ダンバー君は黒人だが、メーン!とかヨー!とか言わず悪い奴大体友達!とも言わないだろ?」
「えらい古いテンプレートだな」
「だからこそ、弱気なダークエルフがいてもいいし、メイドなアマゾネスがいてもいい」
「まぁ、そうだが・・・・」
「そこで私は考えたのだ!おバカなリッチがいてもいいと!!!」
「いやその理論はおかしい」
「もう決めたのだ!!私はバカを極めるのだ!!」
「でも、バカな行動って何をするわけ?」
「まずは・・・・」
マントから取り出したのは何の変哲もないただの板チョコだ。
ペリペリ・・・。
銀紙を取り出し、ララはおもむろにそれを口に放り込んだ。
「バカ」なら一度はやってしまう失敗である。
もしゃもしゃ・・・・・
「?」
「どうした?」
ダンバーが顔を近づけた瞬間だ。
ポイ
ララが噛んでいた銀紙をダンバーの口に投げ込んだ。
「ヒぐッ!!ひぎぃィィィィィィ!!!」
電気ショックのような痛みにダンバーが悶絶する。
失礼、「ような」ではない。実際に「電流」が流れているのだ。
これは銀紙と銀歯が反応して微弱な電流が発生、それが歯の神経に作用している。
故に銀歯が全くなければ反応しない。
「次よ!」
「ふぁ・・・ふぁい」
「裸で1日を過ごすよ!」
「それ、いつもでしょ?」
1分もたたずに轟沈。
プシュ〜〜〜
「はぁ・・・・・」
プシュ〜〜〜
「何を溜息ついているのだ?ダンバー君」
「そりゃ溜息くらいつきたくなるよ!!見ろよこれ!!」
「何ってオ○モトのコンドームだが?」
「そうさ!コンドームさ!!でも何でコンドームにヘリウム入れて浮かせなきゃいかんのだ!!」
ダンバーの最もな意見にララはやれやりとリアクションをとる。
「ダンバー君。君はわかっていない。我々はコンドームを使用しての避妊を嫌う。おかげでコンドームの売れ行きは下降を辿っている。だからこそ!」
ララが仁王立ちになる。当然のことながら裸マントである。
「私がコンドームを大量に買い込んで風船を作り、ララお姉さんの空飛ぶ家と・・・・」
「それ、ディズニーのパクリ」
・・・・・計画は中止となった。
「ケフッ・・・・・!」
「何口から煙を吐いているのだい?ダンバー君」
「アンタが感電した状態で俺に触るからだろが!!」
濡れた手でコンセントを触る、人間一回くらいやったことのある行為だ。
リッチは端的に言うと「動く死体」だ。
オマケに魔物である以上、感電死などはしない。当然、インキュバスである俺が感電しても死なないワケでもあるが。
一週間ほどララの「おバカな行動」に付き合っているのだ。
並みの人間よりもダイハードな目に遭っている。
でも彼女は満足していないようだ・・・・。
「なんだよこの濃いピンク色の水槽は?」
「うむ。これは不思議の国の大気を参考に私が合成した催淫ガスだ」
「それとバカのどこが関係するんだ?」
「例えば、これにテンタクルを一ダースほど放り込んだら?」
「そりゃ、ニュチョグチョドロドロの・・・まさか!」
「今回はこの中にダイブしたいと思います!死のダイブならぬ、師の愛撫!!」
「ちょっwww、それは洒落にならない!」
ダンバーが止めるがララを引き留めることはできなかった。
グッ!
親指を立ててピンク色の雲海に消えるララ。
彼はそれをただ見つめることしかできなかった・・・。
〜 小一時間後 〜
「グスッ・・・・・」
水槽からララが帰還した。衣服は身に着けておらず・・・・。あ、いつも通りか。
「聞いてよダンバー君!!入ったら一ダースのテンタクルが姉妹のように仲良くなっていて、アイツら私に、私に!!」
嗚咽交じりにララが叫ぶ。
「お前の触手ねぇから!って言ったのよぉ!!」
どうやら、発情した一ダースのテンタクルは桃色ピンクの果てに、別世界の扉を開いてしまったようだ。お幸せに・・・。
俺は知っている。
この研究所の隅にある墓。
その墓石は長い月日が過ぎたおかげで大分擦り切れていた。
しかしその埋葬された人物の名前は辛うじて判る。
― ララ・フレイム ―
ララの本名だ。
時折ララは「自分の墓」に行く。そこで当人は何をしているのかと言うと・・・・。
「わた〜しのお墓の前〜で、泣かないで下〜さ〜い」
と、ジョン・健・ヌッツォばりの美声で「千の風になって」を歌っていたのだが。
そりゃまぁ、静かだからカラオケの練習に最適だけどさ。
「ダンバー君!私は悪に目覚めたのだ!!悪を極めるのだ!!!」
「バカを極めるんじゃなかったんですか?」
「五月蠅い!ブラック一号!サッサと幼稚園バス襲撃の準備をするのだ!!」
「幼稚園バスの襲撃って、昔懐かしの仮面ライダ〇ですか!!」
「そうだ!!悪の総統になるのだ!!目指せショッカー!!!」
魔物の寿命は長い。それこそ百年以上生きていることさえある。
彼女は「生前」や「魔物化」した後の事をあまり話したがらない。
どんな悲しみや苦しみを感じて彼女は生きてきたのだろう?
たかだか40年くらいしか生きていない俺には想像もつかない。
ララが今を幸せに生きられるのなら、こんな道楽に付き合うのも悪くないだろう。
18/12/09 00:47更新 / 法螺男