ハロウィンで一宿
ハロウィン。
それはヨーロッパ地方の古代ケルト民族の収穫祭がルーツとされ、他にもバンシーなどの悪霊を祓う魔除けなどの儀式的な意味も持ち合わせている。が、アメリカで民間イベントとなってからは本来の意味のハロウィンでは無くなり、ただの仮装イベントとなっている。恐らくヨーロッパ人以外でハロウィンの由来を知る人間はほとんどいないだろう。
ハロウィン。
現代の魔物たちは、当然ハロウィンの由来を知らない。
というより、ハロウィンが子供のイベントだということもあまり知られていない。成人以上の独身の魔物も子供に混じって近所を回り、『お菓子を貰う』という目的の陰にある別の目的を果たそうとする。したがって、独身の魔物が言うお菓子というのは隠喩であると想像するに難くない。
そもそも彼女たちはハロウィンに対して『楽しいイベント』『仮装乱交パーティー』以外の知識など必要ないのである。何のためにそんなムツカシイ知識を覚えなきゃならないのか、とブーイングを発するに違いない。
作者はそんな彼女たちとベッドの上でイタズラし合いたいと、心から願うばかりである。
今宵はハロウィン。
月は満月。雲ひとつなし。絶好のハロウィン日和である。
住宅密集地ではジャック・オー・ランタンをかたどったランプをぶら下げた子供たちが、人魔に関わらず仮装して家々を回ってお菓子をもらっている。
たくさんいる子供たちのほとんどは仲のいい友達とグループになって、キヤッキャッと騒ぎながら楽しそうにはしゃぎ回っていた。
その中で、どのグループにも属さずに一人で家を回っている女の子がいた。女の子は黒い布地にカボチャをイメージした橙色のフリルやリボンを大量にあしらったドレスを着こなし、頭には白いフリルに赤いバラが施されたゴスロリ風ヘッドセット。どちらも長い絹のようなサラサラの金髪や、サキュバスの特徴である翼や尻尾ととても似合っていた。
少女はマリア。アリスという種族である。
彼女はふらふらと一人旅していて、たまたまハロウィンの盛り上がりを見つけて仮装したのだそう。しかし彼女の服装はむしろパーティーに適するようなドレスで仮装とは違うものだが。
「えへへ、こんなにいっぱい貰っちゃった♪」
手に提げたバスケットには、容量いっぱいの菓子類が詰まっていた。
それを確認し、屈託のない笑顔を輝かせるマリア。
「どうしようかな……次で最後にしよっと」
気が付くと騒いでいた子供たちの声がピタリと止んでいた。見回すと、ただの静かな夜の住宅街に戻っていた。時計を見ると９時を回っていて、良い子はもう眠る時間である。
そこでマリアは泊めてくれる家を探すことにした。その会話の流れにハロウィンを用いる作戦である。マリアは少し頭が良かった。
しばらく歩き回って、マリアの勘が「ここだ」と言った家のインターホンのボタンを細い指で鳴らした。
数分前。
「これで配り終えたかな……？」
飴玉を口の中で転がしながら、ハロウィン用の余ったお菓子を片付けようとする男。
男は至って健全な、何にも無さすぎる人間である。年齢は三十を過ぎてはいるが健康的な体をしていて、そこそこ女性受けの良い顔だが、今のところ独身だ。
「明日は仕事だし、早めに寝ておくか……」
その前に風呂にでも、と男は動こうとしたところで、
「んお？」
鳴った。
インターホンが、鳴った。
宅配便が届くには中途半端な時間だし、こんな時間に訪ねてくるような人間は男の周りにいない。
「…………」
無駄な考えは無かった。
不審者という可能性も彼の頭の中にはあったが、じゃあ果たして何の恨みで俺は殺されるのか？
人間の死因がいくらあると思ってる。
馬鹿馬鹿しい、と男は思った。
男は宅配便を受けとるかのような普通の歩き方で、まるで物怖じもなく玄関へ向かう。
「はいはい、どちら様ですか？」
開けると、いきなり活発な声が男の脳に情報として届いた。
「トリックオアトリート！お菓子をくれなきゃ、イタズラしちゃうぞ♪」
黒いドレスを纏った金髪の少女が目に映る。
「…………」
「…………」
「……待ってて」
玄関を閉めて、立ちすくむ。
「……可愛いな」
リビングに置いてある片付けかけていた菓子類を持って再び玄関へ。
「ほら」
マリアの両手に収まりきらない量のお菓子。
マリアは笑顔を見せる。
「わぁ……ありがとう、お兄ちゃん！」
男はマリアの視線に合わせるように脚を折り曲げる。
「こんな時間まで回ってるのか？お母さん、お父さんは？」
「いないよ。マリア、ひとりたび」
「一人旅……」
しばらく悩むように天を仰ぎ、男は再びマリアと目を合わせて
「泊まるか？俺の家でいいなら、だけど」
と言った。
「広ーい！」
と、リビングに１歩踏み入れてマリアは叫ぶ。
男の家には最低限の家電や家具しかない。あるとすればテレビを観るためのソファーくらいである。壁の見える面積が広いために部屋が広いと錯覚する。
「言っとくがそんなに広くはないぞ？単に物が少ないだけ」
「なんで？」
「ごちゃごちゃ、ってのが嫌いなだけだ」
マリアは首を傾げる。
男はインスタントコーヒーの粉に湯を注いで、かき混ぜている。
「お兄ちゃん、一人？」
「一人暮らしだけど？」
「独身？」
「やかましい」
「ならマリア、お兄ちゃんの彼女さんになろうかな？」
男はコーヒーを噴いた。
「げほっ、げほっ！」
「わわっ！お兄ちゃん大丈夫？」
「い……いいかいマリアちゃん。そう簡単にそんなことを言っちゃダメ」
「違うよ！マリア、本気だよ！」
「うぐ……俺、風呂に入ってくるから」
半ば逃げる形で男は風呂場に駆け込んだ。
「どーすんだこれ……」
男は湯船に浸かり、天井をボーッと眺める。
「まずあのマリアって子、見る限り着替えとか持ってないよな……下着どうしよ。もう店とか閉まってるよな……ベッドは、まあ、俺がソファーで寝ればいいし……」
……でも小さいし一緒に寝れるか？
いやいや何を考えてる！と男は顔に湯をバシャバシャ当てる。
「そもそも、あの子の種族はサキュバス……なのか？いやでも、サキュバスの子供は近所にいるがマリアほど純白な感じじゃ……」
一方そのころ。
「探険♪探険♪」
好奇心に負けてマリアは男の部屋に入っていた。
寝室もリビング同様、無駄か物が一切無かった。
シングルのベッド、机、椅子。
だが、その物の少なさが逆にマリアの好奇心をくすぐった。
「何があるのかなー？」
机の中を覗くが、文房具や書類しか無い。
他を見回しても、あまり目ぼしいモノは無かった。
ガッカリしながら部屋を出ようとした時、視界の端で何かが見えた。
「んん？」
それはベッドの下にあった。
取り出してみれば、雑誌だった。
より詳しく言うと、エロ雑誌である。
「ふおぉ……」
好奇心が再燃したマリアは男のベッドに寝転がり、その雑誌を読み耽った。
「裸の絵ばっかり……変な本」
だがページを繰る手は止まらない。
それどころか、マリアの意識は雑誌に釘付けだった。
「はぅ……なんか、へん、だよぉ……」
内股をむず痒そうにして、モジモジとする。
顔は真っ赤になり息は荒い。
マリアは無意識にうずうずとする股間に手を伸ばして……
「！」
マリアはぎょっとした。
ぬるりとした生温かい感覚が手にあった。確認すると指と指の間には透明な粘液が糸を引いている。
起き上がってスカートを捲ると、ふわふわの綿のパンツにじんわりとシミが出来ていた。
当然それが何なのか、マリアは知らない。
分からないから、怖い。
「お兄ちゃんっ！」
マリアは雑誌を放り投げて駆け出し、勢いよく風呂のドアを開けた。
それに驚いた男は湯船で溺れかけ、体勢を直す。
「どうした？」
「うぅ〜……」
「な、泣くなよ……事情は分からんが風呂に入ればスッキリするから、服を脱ぎな」
どうやらドレスが上手く脱げないようで、マリアは背中に手をやってもぞもぞやり続けている。男は湯船から出て、背中のホックを取ってあげた。
どうせなら、と、そのままパンツを下ろそうとして……
「え……ちょ、え？」
毛の１本も生えていない、未成熟な性器。
それだけならまだいい。
陰唇がひくついていて、ピッタリと閉じた陰裂から透明な粘液を垂れ流してパンツの布と糸が繋がっていた。
「…………とりあえず、お風呂入ろうか」
男は見なかったことにして、静かに嗚咽を漏らすマリアにシャワーを当てる。
生まれて３０と少し、家族以外で初めて入る異性との風呂。それが『血の繋がらない』全くの『他人』の女『児』とは犯罪めいていると男は思った。
「マリア、お兄ちゃんのお部屋に入っちゃったの……」
「責めたりはしないさ」
「でも謝らせて。ごめんなさい、お兄ちゃん」
「マリアちゃんはいい子だね」
トリートメントは無かったので省略。髪も体も綺麗にして、男はマリアを抱えるように湯船に再び浸かる。
「温かい……♪」
「そうか。よかった」
「ねぇ」
「あ？」
振り向いて、キスをした。
それは本当に突然で、男はまるで動けなかった。
視界には、目を瞑ってキスをするマリアの顔。
天使のような顔だった。
「…………」
イタズラじゃない。
本気の気持ち。
「マリア、お兄ちゃんのこと、好き……」
マリアの瞳から涙が溢れ、頬を伝って、湯に落ちる。
「分かんないの……マリアの……マリアの好きが、どうしたらお兄ちゃんに、伝わるのかな……？言葉の『好き』じゃなくて、それじゃダメなくらい大きくて……初めて見た時にマリア、お兄ちゃんのことが好きになってて……うう、どうやったら……分かんないよぉ……お兄ちゃん」
体や心はまだ子供。
でもしっかり、大人の恋を知っている。
だから、わからない。
心がまだ……未熟すぎる。
「分かった」
マリアの頭を撫でる。
背中をさすると、小刻みな震えはおさまった。
「そういう時は、無言でキスをするんだ」
言って、今度は男がアリスにキスをする。
濃厚な、大人のキス。
入ってくる男の舌に一瞬驚くも、そこは魔物の本能、拒むどころか小さな舌が男の舌を引き込むように絡みつく。むしろ驚いたのは男の方だったくらいだ。
「ん……はぁ……」
唇を離すと、互いの舌にねっとりとした透明な糸。
のぼせたようにうっとりとしているマリアの華奢で綺麗な体を、男は再び抱き締めた。
その後男はマリアの白い純潔に手を出さなかった。風呂から上がって体の水分を拭い、二人は同じベッドに眠った。男はマリアに自分の子供の頃の話をした。マリアはそれを感情をコロコロと変えて楽しそうに聞いていた。マリアが瞼を閉じて眠ったと判断した男は、マリアの髪を撫でながら夢の世界に落ちた。
男が眠ったのを目を閉じたまま気取ったマリアは、目を開けた。窓から入る月の光に綺麗な瞳が蒼色に輝いた。
「お兄ちゃん……」
男は完全に寝入っている。
きっと、いい夢を見てるのだろう。
「ごめんね……お兄ちゃん」
マリアは男の唇に自分のを重ねた。
ほんの少し前に男から教わった、ディープ・キス。
それをいつの間にかマスターしたマリアは器用に舌を動かして口腔内にねじ込み、ぐちゅぐちゅと音を立ててその行為を楽しんでいる。
「ハァ……おに、いちゃん……♪」
寝間着のズボンの内で硬くなっていく男の性器を見て、マリアの脳裏には雑誌で見た漫画の描写が思い出される。
おそるおそる、という感じでそっとズボンを下ろさせると、男の勃起した肉棒が露わになり天井を向いた。
マリアは少しそれを気味悪がった。
もしゃもしゃと生えた大量の陰毛に血管を強く浮き上がらせた勃起ペニス。年端もいかない女の子にとっては見慣れているはずがなく、気味悪がってもおかしくはない。
だがマリアはすぐに慣れたようで、まじまじと観察するように見ている。
「これが……えっと、おちんちん、なんだよね……？」
お風呂の時に見たのと違う、とマリアは首を傾げて呟いた。
試しに、マリアは左手でそれを撫でた。
少し冷たい彼女の手のひらに敏感な亀頭を触れられ、肉棒はビクッと反応し、男は少し呻く。
「おちんちんさん、嬉しいの……？」
触るほど早鐘を打つマリアの心臓。
高まる、感じたことのない興奮。
マリアはその興奮に身を委ねて、空いている右手を自信の秘部へと。
「はぅ……ん、んぅ……♪」
少し強めに左手で男性器を撫で続けながら、マリアの本能は右手で彼女の女性器を弄らせ始めた。
「きも、ちぃ……♪ぁ……んん……♪」
くちゅくちゅと湿った音が発し始める頃には、マリアの顔は快楽に爛れた女の顔になっていた。
撫で続けられている肉棒は既にパンパンなまでに膨らんでいた。
四つん這いのような状態で愛撫しているために、指を伝って流れるマリアの愛液が少しずつシーツを汚していく。だが『覚醒』した魔物は、当然そんなことを気にもしない。どころか、敏感な部分をさらに激しく責め立てていく。
「あぁ……ふぁ……♪おにぃちゃ……ん、あ、んうぅぅっ……!?」
体をぶるぶると震わすと、パタパタと音を立てて溢れ落ちる愛液。
初めての自慰にマリアは達したようだ。
「ハァ……ぁっ。ハァ……」
まだ疼きが収まらない体。
目の前には痛々しいほどに膨らんで反り返っている、大好きな男の肉棒。
「でも……でも……」
これ以上やって、もしも嫌われたりしたらどうしよう。
僅かなマリアの理性がそう叫ぶ。
「やだ……やだ、よぅ……」
頭ではそう思っていても、マリアの体は既に男の上に跨がっていた。
下腹部に肉棒が接触し、その熱さを感じる。
強く脈を打っているモノを見るたびに、マリアの欲望が加速する。
……欲しい。
……漫画で読んだ、あの行為をやってみたい。
「お兄ちゃん……お兄ちゃん……」
泣きながら、腰を浮かして。
亀頭が膣口に当たる感覚にゾクゾクと体を震わすマリア。
「大好き……♪」
ずりゅ、と。
男の槍は、未成熟な狭い膣内を貫いた。
「か……ぁっ！」
激痛。
味わったことのない痛みで叫びそうになり、マリアはすぐに口を塞いだ。赤い液体が結合部から垂れているのを見て、恐怖に顔が歪む。
「いた……い……痛いよ……っ」
マリアは確認する。
男は、まだ眠っている。
「お兄ちゃん……おっきくてぇ……奥、まで……入ってるよ……♪」
慣れてきたのか、マリアはすぐに腰を揺らし始める。
男の体がビクビクと痙攣する様を見下ろしながら。
「んん、あぁんっ♪」
だんだんと不器用な腰の振り方が異常なまでに上達していく。
おそらく事前に漫画の描写を見たのが影響しているのだろう。
「ほらぁ……お兄ちゃんが眠っている間におっきなおちんちん、マリアに出入りしてるよぉ♪」
ほんの一分程度で、ほんの一分前まで処女だったと思わせないほどに、マリアの動きはサキュバスにも負けない激しさになっていた。いくら性を知らないアリスでも、内側に眠る欲望はサキュバスのそれと同じなのだ。否、普段それが眠っている分、サキュバス以上なのかもしれない。
とにかく男の上のマリアは、普段とはまるで正反対すぎるほど卑猥なものだった。
「んぁぁ……♪お兄ちゃんの、またおっきくなって……ビクビク、してきたぁ……♪」
マリアは無意識に右手で男性器の根元を強く握り締める。
「まだダメだよお兄ちゃん……♪はぁ……マリアと一緒に、イくん……だもん……♪」
やはりまだ慣れきっていないのか、少しずつマリアの動きが緩慢になってくる。快楽によって腰が動かなくなっているのだ。
「はれ……体、力がはいんない……？」
マリアの動きがピタリと止まった瞬間、男の両腕が彼女の腰辺りをガシと掴む。
驚いてマリアは「きゃあっ！」と叫んだ。
そしてそのまま男の腰が、彼女を下から突き上げた。
「ひゃ、あぁ……くぅんっ♪お兄ちゃん、はげしいよぉ……ぁあっ♪」
先ほどまでマリアの睡姦であった交わりが、今では男がマリアを責めている和姦の状態であった。だが、男は未だ眠っているのだ。
眠っている状態で性交は出来ない。
だが、マリアもといアリスの魔力が絡んでいるならば例外である。
性に対する知識を持たないアリスには、当然『男を襲う』という考えを持たない。しかし彼女も魔物、それもサキュバスの端くれならば、男の精を食さねば生きられない。したがって交わりを要するのである。
そのために彼女たちの魔力の効果がある。
純真無垢の極みである彼女に対して強い情欲を抱かせる魔力。
ただでさえ強い魔力が発情によって飛躍的に強力になり、それに男の体が長い間さらされた。そして睡眠中、理性は当然、体と切り離されている。
つまり男の『体』が、歯止めのない無意識の状態で、ひとりでに彼女を犯しているのだ。
「お兄ちゃ、ぁぁ……だめぇ♪マリア……んん……お兄ちゃんよりさきにぃ……♪」
小刻みに震えて体を反らし、肉壺は男から精を搾り取ろうと強く締め付けていく。
快楽に少しずつ薄らいでいくマリアの意識。
自分の体内が暴れ狂う肉棒に蹂躙され、ただの道具のごとく犯されることに、彼女は激しく悦んでいた。
内臓が押し上げられる気持ち悪い感覚も破瓜の痛みも、全てが狂おしく……いとおしい。
「イっちゃう……？お兄ちゃん、イっちゃうの？」
ピストンが激しくなり男の絶頂を本能的に察したマリアは、握っていた手を離し、最後の追い込みと自身も腰を乱暴に揺らす。
「あぁっ、あぁっ♪きてぇ、お兄ちゃんっ！一緒に、いっしょにぃ……っ♪」
根元まで咥えこんだ状態でマリアは男の体にしがみつく。
そして限界を迎えたペニスは、暴発という表現が当てはまるくらいの激しい射精をマリアの最奥で行った。
「あぁ……っ！はぁ……♪」
嬌声を堪えきったマリアは、自身の体内で脈打つ男の男性器に「お疲れさま」と言って下腹部を撫でさする。
ゆっくりと抜くと肉棒がぐったりと萎え、その上に溢れ出た精液が垂れ流れる。
「ありがとう……♪」
眠る男の頬に唇を添えて、マリアは眠りについた。
この上ない至福の表情で眠っていた。
「ん、ぉ……？」
朝。
男は目を覚ました。
体には少し疲れたような感じがある。
その正体が昨晩の性交だとは、夢にも思わないだろう。
「よく寝たなぁ……」
時計は午前９時を示している。
仕事が休みの日でも習慣で７時くらいに起きているのだが、今日の彼は珍しく遅く起きた。
「マリア……？」
玄関を見るが、靴は無かった。
「朝飯くらい、食っていけばいいのに……ん？」
リビングに置かれたテーブルの上には、彼への朝食が作られていた。トーストにスクランブルエッグ、サラダにフルーツ。ご丁寧にラップに包まれていた。
そしてキッチンには男の朝食に使われた皿と同じ数同じ種類の皿が乾かされていた。
「ちゃっかりしてる」
男はラップをはがし、トーストを頬張った。
それはヨーロッパ地方の古代ケルト民族の収穫祭がルーツとされ、他にもバンシーなどの悪霊を祓う魔除けなどの儀式的な意味も持ち合わせている。が、アメリカで民間イベントとなってからは本来の意味のハロウィンでは無くなり、ただの仮装イベントとなっている。恐らくヨーロッパ人以外でハロウィンの由来を知る人間はほとんどいないだろう。
ハロウィン。
現代の魔物たちは、当然ハロウィンの由来を知らない。
というより、ハロウィンが子供のイベントだということもあまり知られていない。成人以上の独身の魔物も子供に混じって近所を回り、『お菓子を貰う』という目的の陰にある別の目的を果たそうとする。したがって、独身の魔物が言うお菓子というのは隠喩であると想像するに難くない。
そもそも彼女たちはハロウィンに対して『楽しいイベント』『仮装乱交パーティー』以外の知識など必要ないのである。何のためにそんなムツカシイ知識を覚えなきゃならないのか、とブーイングを発するに違いない。
作者はそんな彼女たちとベッドの上でイタズラし合いたいと、心から願うばかりである。
今宵はハロウィン。
月は満月。雲ひとつなし。絶好のハロウィン日和である。
住宅密集地ではジャック・オー・ランタンをかたどったランプをぶら下げた子供たちが、人魔に関わらず仮装して家々を回ってお菓子をもらっている。
たくさんいる子供たちのほとんどは仲のいい友達とグループになって、キヤッキャッと騒ぎながら楽しそうにはしゃぎ回っていた。
その中で、どのグループにも属さずに一人で家を回っている女の子がいた。女の子は黒い布地にカボチャをイメージした橙色のフリルやリボンを大量にあしらったドレスを着こなし、頭には白いフリルに赤いバラが施されたゴスロリ風ヘッドセット。どちらも長い絹のようなサラサラの金髪や、サキュバスの特徴である翼や尻尾ととても似合っていた。
少女はマリア。アリスという種族である。
彼女はふらふらと一人旅していて、たまたまハロウィンの盛り上がりを見つけて仮装したのだそう。しかし彼女の服装はむしろパーティーに適するようなドレスで仮装とは違うものだが。
「えへへ、こんなにいっぱい貰っちゃった♪」
手に提げたバスケットには、容量いっぱいの菓子類が詰まっていた。
それを確認し、屈託のない笑顔を輝かせるマリア。
「どうしようかな……次で最後にしよっと」
気が付くと騒いでいた子供たちの声がピタリと止んでいた。見回すと、ただの静かな夜の住宅街に戻っていた。時計を見ると９時を回っていて、良い子はもう眠る時間である。
そこでマリアは泊めてくれる家を探すことにした。その会話の流れにハロウィンを用いる作戦である。マリアは少し頭が良かった。
しばらく歩き回って、マリアの勘が「ここだ」と言った家のインターホンのボタンを細い指で鳴らした。
数分前。
「これで配り終えたかな……？」
飴玉を口の中で転がしながら、ハロウィン用の余ったお菓子を片付けようとする男。
男は至って健全な、何にも無さすぎる人間である。年齢は三十を過ぎてはいるが健康的な体をしていて、そこそこ女性受けの良い顔だが、今のところ独身だ。
「明日は仕事だし、早めに寝ておくか……」
その前に風呂にでも、と男は動こうとしたところで、
「んお？」
鳴った。
インターホンが、鳴った。
宅配便が届くには中途半端な時間だし、こんな時間に訪ねてくるような人間は男の周りにいない。
「…………」
無駄な考えは無かった。
不審者という可能性も彼の頭の中にはあったが、じゃあ果たして何の恨みで俺は殺されるのか？
人間の死因がいくらあると思ってる。
馬鹿馬鹿しい、と男は思った。
男は宅配便を受けとるかのような普通の歩き方で、まるで物怖じもなく玄関へ向かう。
「はいはい、どちら様ですか？」
開けると、いきなり活発な声が男の脳に情報として届いた。
「トリックオアトリート！お菓子をくれなきゃ、イタズラしちゃうぞ♪」
黒いドレスを纏った金髪の少女が目に映る。
「…………」
「…………」
「……待ってて」
玄関を閉めて、立ちすくむ。
「……可愛いな」
リビングに置いてある片付けかけていた菓子類を持って再び玄関へ。
「ほら」
マリアの両手に収まりきらない量のお菓子。
マリアは笑顔を見せる。
「わぁ……ありがとう、お兄ちゃん！」
男はマリアの視線に合わせるように脚を折り曲げる。
「こんな時間まで回ってるのか？お母さん、お父さんは？」
「いないよ。マリア、ひとりたび」
「一人旅……」
しばらく悩むように天を仰ぎ、男は再びマリアと目を合わせて
「泊まるか？俺の家でいいなら、だけど」
と言った。
「広ーい！」
と、リビングに１歩踏み入れてマリアは叫ぶ。
男の家には最低限の家電や家具しかない。あるとすればテレビを観るためのソファーくらいである。壁の見える面積が広いために部屋が広いと錯覚する。
「言っとくがそんなに広くはないぞ？単に物が少ないだけ」
「なんで？」
「ごちゃごちゃ、ってのが嫌いなだけだ」
マリアは首を傾げる。
男はインスタントコーヒーの粉に湯を注いで、かき混ぜている。
「お兄ちゃん、一人？」
「一人暮らしだけど？」
「独身？」
「やかましい」
「ならマリア、お兄ちゃんの彼女さんになろうかな？」
男はコーヒーを噴いた。
「げほっ、げほっ！」
「わわっ！お兄ちゃん大丈夫？」
「い……いいかいマリアちゃん。そう簡単にそんなことを言っちゃダメ」
「違うよ！マリア、本気だよ！」
「うぐ……俺、風呂に入ってくるから」
半ば逃げる形で男は風呂場に駆け込んだ。
「どーすんだこれ……」
男は湯船に浸かり、天井をボーッと眺める。
「まずあのマリアって子、見る限り着替えとか持ってないよな……下着どうしよ。もう店とか閉まってるよな……ベッドは、まあ、俺がソファーで寝ればいいし……」
……でも小さいし一緒に寝れるか？
いやいや何を考えてる！と男は顔に湯をバシャバシャ当てる。
「そもそも、あの子の種族はサキュバス……なのか？いやでも、サキュバスの子供は近所にいるがマリアほど純白な感じじゃ……」
一方そのころ。
「探険♪探険♪」
好奇心に負けてマリアは男の部屋に入っていた。
寝室もリビング同様、無駄か物が一切無かった。
シングルのベッド、机、椅子。
だが、その物の少なさが逆にマリアの好奇心をくすぐった。
「何があるのかなー？」
机の中を覗くが、文房具や書類しか無い。
他を見回しても、あまり目ぼしいモノは無かった。
ガッカリしながら部屋を出ようとした時、視界の端で何かが見えた。
「んん？」
それはベッドの下にあった。
取り出してみれば、雑誌だった。
より詳しく言うと、エロ雑誌である。
「ふおぉ……」
好奇心が再燃したマリアは男のベッドに寝転がり、その雑誌を読み耽った。
「裸の絵ばっかり……変な本」
だがページを繰る手は止まらない。
それどころか、マリアの意識は雑誌に釘付けだった。
「はぅ……なんか、へん、だよぉ……」
内股をむず痒そうにして、モジモジとする。
顔は真っ赤になり息は荒い。
マリアは無意識にうずうずとする股間に手を伸ばして……
「！」
マリアはぎょっとした。
ぬるりとした生温かい感覚が手にあった。確認すると指と指の間には透明な粘液が糸を引いている。
起き上がってスカートを捲ると、ふわふわの綿のパンツにじんわりとシミが出来ていた。
当然それが何なのか、マリアは知らない。
分からないから、怖い。
「お兄ちゃんっ！」
マリアは雑誌を放り投げて駆け出し、勢いよく風呂のドアを開けた。
それに驚いた男は湯船で溺れかけ、体勢を直す。
「どうした？」
「うぅ〜……」
「な、泣くなよ……事情は分からんが風呂に入ればスッキリするから、服を脱ぎな」
どうやらドレスが上手く脱げないようで、マリアは背中に手をやってもぞもぞやり続けている。男は湯船から出て、背中のホックを取ってあげた。
どうせなら、と、そのままパンツを下ろそうとして……
「え……ちょ、え？」
毛の１本も生えていない、未成熟な性器。
それだけならまだいい。
陰唇がひくついていて、ピッタリと閉じた陰裂から透明な粘液を垂れ流してパンツの布と糸が繋がっていた。
「…………とりあえず、お風呂入ろうか」
男は見なかったことにして、静かに嗚咽を漏らすマリアにシャワーを当てる。
生まれて３０と少し、家族以外で初めて入る異性との風呂。それが『血の繋がらない』全くの『他人』の女『児』とは犯罪めいていると男は思った。
「マリア、お兄ちゃんのお部屋に入っちゃったの……」
「責めたりはしないさ」
「でも謝らせて。ごめんなさい、お兄ちゃん」
「マリアちゃんはいい子だね」
トリートメントは無かったので省略。髪も体も綺麗にして、男はマリアを抱えるように湯船に再び浸かる。
「温かい……♪」
「そうか。よかった」
「ねぇ」
「あ？」
振り向いて、キスをした。
それは本当に突然で、男はまるで動けなかった。
視界には、目を瞑ってキスをするマリアの顔。
天使のような顔だった。
「…………」
イタズラじゃない。
本気の気持ち。
「マリア、お兄ちゃんのこと、好き……」
マリアの瞳から涙が溢れ、頬を伝って、湯に落ちる。
「分かんないの……マリアの……マリアの好きが、どうしたらお兄ちゃんに、伝わるのかな……？言葉の『好き』じゃなくて、それじゃダメなくらい大きくて……初めて見た時にマリア、お兄ちゃんのことが好きになってて……うう、どうやったら……分かんないよぉ……お兄ちゃん」
体や心はまだ子供。
でもしっかり、大人の恋を知っている。
だから、わからない。
心がまだ……未熟すぎる。
「分かった」
マリアの頭を撫でる。
背中をさすると、小刻みな震えはおさまった。
「そういう時は、無言でキスをするんだ」
言って、今度は男がアリスにキスをする。
濃厚な、大人のキス。
入ってくる男の舌に一瞬驚くも、そこは魔物の本能、拒むどころか小さな舌が男の舌を引き込むように絡みつく。むしろ驚いたのは男の方だったくらいだ。
「ん……はぁ……」
唇を離すと、互いの舌にねっとりとした透明な糸。
のぼせたようにうっとりとしているマリアの華奢で綺麗な体を、男は再び抱き締めた。
その後男はマリアの白い純潔に手を出さなかった。風呂から上がって体の水分を拭い、二人は同じベッドに眠った。男はマリアに自分の子供の頃の話をした。マリアはそれを感情をコロコロと変えて楽しそうに聞いていた。マリアが瞼を閉じて眠ったと判断した男は、マリアの髪を撫でながら夢の世界に落ちた。
男が眠ったのを目を閉じたまま気取ったマリアは、目を開けた。窓から入る月の光に綺麗な瞳が蒼色に輝いた。
「お兄ちゃん……」
男は完全に寝入っている。
きっと、いい夢を見てるのだろう。
「ごめんね……お兄ちゃん」
マリアは男の唇に自分のを重ねた。
ほんの少し前に男から教わった、ディープ・キス。
それをいつの間にかマスターしたマリアは器用に舌を動かして口腔内にねじ込み、ぐちゅぐちゅと音を立ててその行為を楽しんでいる。
「ハァ……おに、いちゃん……♪」
寝間着のズボンの内で硬くなっていく男の性器を見て、マリアの脳裏には雑誌で見た漫画の描写が思い出される。
おそるおそる、という感じでそっとズボンを下ろさせると、男の勃起した肉棒が露わになり天井を向いた。
マリアは少しそれを気味悪がった。
もしゃもしゃと生えた大量の陰毛に血管を強く浮き上がらせた勃起ペニス。年端もいかない女の子にとっては見慣れているはずがなく、気味悪がってもおかしくはない。
だがマリアはすぐに慣れたようで、まじまじと観察するように見ている。
「これが……えっと、おちんちん、なんだよね……？」
お風呂の時に見たのと違う、とマリアは首を傾げて呟いた。
試しに、マリアは左手でそれを撫でた。
少し冷たい彼女の手のひらに敏感な亀頭を触れられ、肉棒はビクッと反応し、男は少し呻く。
「おちんちんさん、嬉しいの……？」
触るほど早鐘を打つマリアの心臓。
高まる、感じたことのない興奮。
マリアはその興奮に身を委ねて、空いている右手を自信の秘部へと。
「はぅ……ん、んぅ……♪」
少し強めに左手で男性器を撫で続けながら、マリアの本能は右手で彼女の女性器を弄らせ始めた。
「きも、ちぃ……♪ぁ……んん……♪」
くちゅくちゅと湿った音が発し始める頃には、マリアの顔は快楽に爛れた女の顔になっていた。
撫で続けられている肉棒は既にパンパンなまでに膨らんでいた。
四つん這いのような状態で愛撫しているために、指を伝って流れるマリアの愛液が少しずつシーツを汚していく。だが『覚醒』した魔物は、当然そんなことを気にもしない。どころか、敏感な部分をさらに激しく責め立てていく。
「あぁ……ふぁ……♪おにぃちゃ……ん、あ、んうぅぅっ……!?」
体をぶるぶると震わすと、パタパタと音を立てて溢れ落ちる愛液。
初めての自慰にマリアは達したようだ。
「ハァ……ぁっ。ハァ……」
まだ疼きが収まらない体。
目の前には痛々しいほどに膨らんで反り返っている、大好きな男の肉棒。
「でも……でも……」
これ以上やって、もしも嫌われたりしたらどうしよう。
僅かなマリアの理性がそう叫ぶ。
「やだ……やだ、よぅ……」
頭ではそう思っていても、マリアの体は既に男の上に跨がっていた。
下腹部に肉棒が接触し、その熱さを感じる。
強く脈を打っているモノを見るたびに、マリアの欲望が加速する。
……欲しい。
……漫画で読んだ、あの行為をやってみたい。
「お兄ちゃん……お兄ちゃん……」
泣きながら、腰を浮かして。
亀頭が膣口に当たる感覚にゾクゾクと体を震わすマリア。
「大好き……♪」
ずりゅ、と。
男の槍は、未成熟な狭い膣内を貫いた。
「か……ぁっ！」
激痛。
味わったことのない痛みで叫びそうになり、マリアはすぐに口を塞いだ。赤い液体が結合部から垂れているのを見て、恐怖に顔が歪む。
「いた……い……痛いよ……っ」
マリアは確認する。
男は、まだ眠っている。
「お兄ちゃん……おっきくてぇ……奥、まで……入ってるよ……♪」
慣れてきたのか、マリアはすぐに腰を揺らし始める。
男の体がビクビクと痙攣する様を見下ろしながら。
「んん、あぁんっ♪」
だんだんと不器用な腰の振り方が異常なまでに上達していく。
おそらく事前に漫画の描写を見たのが影響しているのだろう。
「ほらぁ……お兄ちゃんが眠っている間におっきなおちんちん、マリアに出入りしてるよぉ♪」
ほんの一分程度で、ほんの一分前まで処女だったと思わせないほどに、マリアの動きはサキュバスにも負けない激しさになっていた。いくら性を知らないアリスでも、内側に眠る欲望はサキュバスのそれと同じなのだ。否、普段それが眠っている分、サキュバス以上なのかもしれない。
とにかく男の上のマリアは、普段とはまるで正反対すぎるほど卑猥なものだった。
「んぁぁ……♪お兄ちゃんの、またおっきくなって……ビクビク、してきたぁ……♪」
マリアは無意識に右手で男性器の根元を強く握り締める。
「まだダメだよお兄ちゃん……♪はぁ……マリアと一緒に、イくん……だもん……♪」
やはりまだ慣れきっていないのか、少しずつマリアの動きが緩慢になってくる。快楽によって腰が動かなくなっているのだ。
「はれ……体、力がはいんない……？」
マリアの動きがピタリと止まった瞬間、男の両腕が彼女の腰辺りをガシと掴む。
驚いてマリアは「きゃあっ！」と叫んだ。
そしてそのまま男の腰が、彼女を下から突き上げた。
「ひゃ、あぁ……くぅんっ♪お兄ちゃん、はげしいよぉ……ぁあっ♪」
先ほどまでマリアの睡姦であった交わりが、今では男がマリアを責めている和姦の状態であった。だが、男は未だ眠っているのだ。
眠っている状態で性交は出来ない。
だが、マリアもといアリスの魔力が絡んでいるならば例外である。
性に対する知識を持たないアリスには、当然『男を襲う』という考えを持たない。しかし彼女も魔物、それもサキュバスの端くれならば、男の精を食さねば生きられない。したがって交わりを要するのである。
そのために彼女たちの魔力の効果がある。
純真無垢の極みである彼女に対して強い情欲を抱かせる魔力。
ただでさえ強い魔力が発情によって飛躍的に強力になり、それに男の体が長い間さらされた。そして睡眠中、理性は当然、体と切り離されている。
つまり男の『体』が、歯止めのない無意識の状態で、ひとりでに彼女を犯しているのだ。
「お兄ちゃ、ぁぁ……だめぇ♪マリア……んん……お兄ちゃんよりさきにぃ……♪」
小刻みに震えて体を反らし、肉壺は男から精を搾り取ろうと強く締め付けていく。
快楽に少しずつ薄らいでいくマリアの意識。
自分の体内が暴れ狂う肉棒に蹂躙され、ただの道具のごとく犯されることに、彼女は激しく悦んでいた。
内臓が押し上げられる気持ち悪い感覚も破瓜の痛みも、全てが狂おしく……いとおしい。
「イっちゃう……？お兄ちゃん、イっちゃうの？」
ピストンが激しくなり男の絶頂を本能的に察したマリアは、握っていた手を離し、最後の追い込みと自身も腰を乱暴に揺らす。
「あぁっ、あぁっ♪きてぇ、お兄ちゃんっ！一緒に、いっしょにぃ……っ♪」
根元まで咥えこんだ状態でマリアは男の体にしがみつく。
そして限界を迎えたペニスは、暴発という表現が当てはまるくらいの激しい射精をマリアの最奥で行った。
「あぁ……っ！はぁ……♪」
嬌声を堪えきったマリアは、自身の体内で脈打つ男の男性器に「お疲れさま」と言って下腹部を撫でさする。
ゆっくりと抜くと肉棒がぐったりと萎え、その上に溢れ出た精液が垂れ流れる。
「ありがとう……♪」
眠る男の頬に唇を添えて、マリアは眠りについた。
この上ない至福の表情で眠っていた。
「ん、ぉ……？」
朝。
男は目を覚ました。
体には少し疲れたような感じがある。
その正体が昨晩の性交だとは、夢にも思わないだろう。
「よく寝たなぁ……」
時計は午前９時を示している。
仕事が休みの日でも習慣で７時くらいに起きているのだが、今日の彼は珍しく遅く起きた。
「マリア……？」
玄関を見るが、靴は無かった。
「朝飯くらい、食っていけばいいのに……ん？」
リビングに置かれたテーブルの上には、彼への朝食が作られていた。トーストにスクランブルエッグ、サラダにフルーツ。ご丁寧にラップに包まれていた。
そしてキッチンには男の朝食に使われた皿と同じ数同じ種類の皿が乾かされていた。
「ちゃっかりしてる」
男はラップをはがし、トーストを頬張った。
14/10/31 22:09更新 / 祝詞