2.四大精霊(電力)
「出力正常、異常ありません。」
「よし・・・これにて実験を終了、直ちにチェック作業へ移行する」
「わかりました」
「私は今から実験室へいく。何か異常が発生したら連絡をする様に」
「はい、加賀野所長」
私は部下に指示を出し、管理室を後にした・・・
私は加賀野 明人(かがのあきと)
ここ「魔力発電研究所」の所長を務めている
ここでは現在次世代エネルギーとして期待がかかっている「魔力発電」の試験稼動を目的とした施設だ。
温暖化・化石燃料枯渇の問題・環境汚染・・・
様々な問題が山積みであった我々の世界のエネルギー問題にひとつの光明が差した。それは、魔物の持つ「魔力」を我々の世界のエネルギーへと変換し、活用するという技術だ。魔界との交流の中で我々の世界では異質の「魔力」を生活利用していることが明らかとなり、その「魔力」をこちらの世界でも応用できるのでは?というコンセプトでこのプロジェクトは始動した。
この先に私の研究の集大成がある・・・
実験室の扉が開く・・・
そこには・・・
「主ー!」
「マスター!」
「お兄ちゃん!」
「・・・ご主人様・・・」
ガシガシガシガシッ!!!!
「おお、みんな元気そうだな」
「はあ〜ず〜〜と魔力出しっぱなしでクッタクタだぜ!」
「はは、すまんな炎羅(えんら)」
「ええ・・・さすがにこれだけ長時間の魔力の放出は初めてですので・・・」
「いつも苦労をかけて申し訳ないな水紗(みさ)」
「も〜あんな狭いところに入られてたから体がバキバキだよ〜!!」
「ごめんな風美(ふみ)」
「・・・すごく・・・疲れた・・・」
「悪かったな地華(ちか)」
それぞれ火・水・風・地の精霊、正確には「魔精霊」である彼女らに抱きつかれる形で実験に対する不満を口にしてきたが、協力してもらっているいる身であるのでそれくらいの愚痴は聞いてあげたいとな。
「だが、この実験も今日でお仕舞いだ。明日からはもうやらなくていいぞ」
「えっ本当かよ!?やっと終わったぜー!」
「ということは実験は成功、ということですわね」
「えっそうなんだ?やった〜じゃあ明日からは遊べるんだ〜♪」
「・・・終わり?・・・」
「ああ、すべてが終わったわけではないが、大方研究のメドもたった」
「よっしゃあ!今からしっぽりヤれる訳だな!へへッ♪」
「もう・・・炎羅ったらはしたない・・・」
「何言ってんだよそういうお前だってそういう魂胆だろうが!」
「そ、そんなこと・・・!!・・・・ナイワケジャナイケド(ボソボソ)/////」
「あはは!水沙お姉ちゃん今にも沸騰しちゃいそうなくらい赤くなってる〜♪やらし〜〜」
「・・・素直に言えばいいと思う・・・」
「もう!みんなして私をからかって///マスタ〜何とか言ってください〜」
「ははは、まあいつもの事じゃないか。じゃあこれから私のかわいい精霊達をかわいがるとしますかね」
「「「「〜♪♪♪♪〜」」」」
こうして私達は実験室の奥へと進んでいった・・・
このやりとりも日常茶飯事。私とこの四人は出会ってからいつもそうだった・・・
そう、これからもずっと一緒だ・・・
西魔暦 403年 △月▲日
今日から定期的に日記をつけようと思う。今日が記念すべき私のプロジェクトの第一歩となる日だ。もしこの日記を見返すときがあれば私はこのプロジェクトを成功させた時だろう。私は必ず成し遂げてみせる。
西魔暦 404年 ×月●日
プロジェクトが早くも暗礁に乗り上げてしまった・・・予想以上にあちらの世界の"魔力"の解析が進まない・・・彼らいや、彼女達が持つ魔力の定義は非常に曖昧であり、それを意識的ではなく本能的に行使しているのだ。つまり彼女達も何故それが使えるのかどうかということに対する理論的な裏づけは一切ないに等しい・・・そこで我々は魔界の科学通称「魔科学」権威であるとあるバフォメットに協力を要請したが、技術を悪用される事を懸念し、私達への技術提供を断り続けていた。このままではプロジェクト自体の存続が危ぶまれる・・・
西魔暦 404年 ◎月□日
事態は思わぬ展開を見せた。突然バフォメットが技術提供を公の場で公表したのだ。いきなりの展開に戸惑いを隠せなかったが、何故心変わりしたのか?という記者が質問をすると「兄様とわしが住む世界の住み心地が悪い様では話しにならん!」とのこと。どうやらこの会見の数日前に「兄様」を見初めたらしく、それがキッカケだったというのだ。魔物の考えることはやはりイマイチ分からない・・・だが私達プロジェクトチームからすればこれ以上無い朗報である。
西魔暦 405年 △月□日
今私は魔界へとやってきている。今回魔界へ出向いたのは私のこのプロジェクトには欠かせない重要な"研究対象"である「精霊」との接触だ。プロジェクト開始から早数年、バフォメットの技術提供の元、研究は飛躍的に進み、魔力の解析・メカニズム・応用・・・様々な角度から研究を重ね、ある結論に至った。それが「四大精霊の魔力の変換と応用」である
〜四大精霊〜我々の世界でも伝承でのみ伝えられる存在である火(イグニス)・水(ウインディーネ)・風(シルフ)・地(ノーム)の精霊があちらの世界では存在しているのだ。その各精霊の魔力と現在我々の世界で使われている火力・水力・風力・地力(地熱)発電エネルギーとの親和性が高いことが判明した。バフォメット同伴のもと、私は精霊達と接触する為に魔界の各所で出向くことにする
西魔暦 405年 ■月○日
遂にすべての精霊と契約を結んだ。私が契約を結んだのは精霊の中でも「魔精霊」と呼ばれる精霊達だ。純精霊よりも強い魔力を持つ彼女達であれば膨大なエネルギーを必要とする発電施設の稼動に充分応えられるはずである。これで研究はさらに進む。すぐに我々の世界に戻り、精霊達のエネルギーを用いた実験へと移行する。尚、その過程で私は彼女達にそれぞれ名前を付けた。彼女達もそれを気に入ってくれたらしい
西魔暦 406年 ×月▲日
精霊達は実に感情豊かだ。それぞれの個体ごとに肉体、性格を持ち、私に対しる接し方や交わりを求め方も様々だ。いくら彼女達に必要不可欠であるとはいえ、当初は"研究対象"である精霊達への精の供給に対して迷いがあった。彼女達を研究対象としてしか見ていない私にその資格があるのだろうか?と・・・だが、当の本人達は私の考えなど気にせず、そして見返りを求めず私を求めてくる・・・そんな献身的な彼女達に私は研究対象を越えた「何か」が芽生えはじめてきている様だ・・・
西魔暦 407年 ○月▲日
今日このプロジェクト専用の研究施設が完成した。これから彼女達のエネルギーをより綿密に分析し、実際の発電を想定した実験へと移行する。今まで以上に彼女達に負担をかけることになるが、一方彼女達は研究施設というより"私達とマスターが一緒に暮らす家"という認識らしい。彼女達らしいなと思い思わず苦笑いがででしまった。
西魔暦 409年 □月△日
気のせいだろうか?彼女達の体の一部に黒い斑点の様なものが浮かび上がってきている。これはおそらく「闇精霊」化がはじまったのだろう。まだ初期段階の為、今のところは影響は無いが、魔力の変質が及ぼす影響も考慮しなくてはいけない。今後の動向に注意を払う。
西魔暦 410年 ●月◎日
遂に完成した・・・この7年間実に様々なことがあったが、それも今日で報われる。そしてこんな私について来てくれたプロジェクトチームの面々、研究所職員、そして彼女達には感謝の言葉しかない。そしてもう彼女達は私の一部同然だ。決して欠く事のできない大切な存在・・・そう、今までもそしてこれからもずっと一緒だ・・・
・・・この日記は当時所長であった加賀野博士の研究所私室にて見つかったものである。プロジェクト始動から完了までの経緯が克明につづられており、今回の【魔力発電研究所暴走事故】の起こる数年前に書かれたと思われる。今回の事故原因と思われる魔力炉の暴走に関しては事故後に観測された魔力に闇精霊から発せられる魔力が検出されたことから日記の一部に記述にみられる加賀野博士の契約していた魔精霊が闇精霊への変化した事が今回の事故原因として考えられる。しかし、ここで不可解な点が判明している。事故後の現稼働中のすべての魔力発電所の安全基準調査をおこなった結果、今回の事故で発生した様な闇精霊が発する魔力による発電への悪影響は各施設にすでに対策が施されており、今回の事故を上回る基準値にも耐えうる設計がなされていた。つまり加賀野博士にとってこの事故は「想定内」であったと考えられる。
もっとも今回事故にあった魔力発電研究所の設計はプロジェクト初期の設計であった為に今回の暴走に耐えられる環境でなかった想定外の事故だったとも考えられる。しかし、事故当日の加賀野所長の"的確な避難指示"で加賀野博士と契約していた精霊以外の職員は全員無事という「想定外」の事故としては奇跡とも呼べる状況にどこか意図したものを感じなくも無い。もっとも何故加賀野博士がこの様な事故を意図的に起こした動機も不明であり、いずれにせよ再度この様な事故が再発しない様我々はあらゆる事態を想定し魔力発電の安全管理に尽力をするすべきと再認識されられたのは間違いない。
「魔力発電安全委員会」事故報告レポート一部抜粋
【魔力発電研究所魔力路暴走事故】に関する報告
西魔暦 412年 ●月×日未明
・研究所魔力路の暴走により、非常事態宣言発令
・魔力発電施設に異常発生、加賀野所長の指示のもと職員はすみやかに研究所緊急避難シェルターへ退避
・数十分後この魔力路の暴走により研究所魔力炉・発電施設・実験棟が消失
・さらに数十分後自衛隊が現場へ到着、研究所職員の救出を行なった。
・職員にはほぼケガは無かったが、最後まで避難指示を行なっていた加賀野所長、契約していた魔精霊達が行方不明。その後の捜索でも遺体等は発見されなかった
・研究所周辺への「魔力漏れ」が懸念されていたが、想定内の基準数値に収まっており、安全基準を満たしていた
・研究所に保管されていた膨大な研究データはバックアップが別の研究所へ送られていた為に無事であった
・尚、加賀野博士の私室より日記および自身へ不測の事態が起こった時の為に遺したと思われるデータが発見された。内容は自分の後任の指名、研究の今後の方針、プロジェクトメンバーへの感謝の言葉等が記録されていた。
〜おわり〜
「よし・・・これにて実験を終了、直ちにチェック作業へ移行する」
「わかりました」
「私は今から実験室へいく。何か異常が発生したら連絡をする様に」
「はい、加賀野所長」
私は部下に指示を出し、管理室を後にした・・・
私は加賀野 明人(かがのあきと)
ここ「魔力発電研究所」の所長を務めている
ここでは現在次世代エネルギーとして期待がかかっている「魔力発電」の試験稼動を目的とした施設だ。
温暖化・化石燃料枯渇の問題・環境汚染・・・
様々な問題が山積みであった我々の世界のエネルギー問題にひとつの光明が差した。それは、魔物の持つ「魔力」を我々の世界のエネルギーへと変換し、活用するという技術だ。魔界との交流の中で我々の世界では異質の「魔力」を生活利用していることが明らかとなり、その「魔力」をこちらの世界でも応用できるのでは?というコンセプトでこのプロジェクトは始動した。
この先に私の研究の集大成がある・・・
実験室の扉が開く・・・
そこには・・・
「主ー!」
「マスター!」
「お兄ちゃん!」
「・・・ご主人様・・・」
ガシガシガシガシッ!!!!
「おお、みんな元気そうだな」
「はあ〜ず〜〜と魔力出しっぱなしでクッタクタだぜ!」
「はは、すまんな炎羅(えんら)」
「ええ・・・さすがにこれだけ長時間の魔力の放出は初めてですので・・・」
「いつも苦労をかけて申し訳ないな水紗(みさ)」
「も〜あんな狭いところに入られてたから体がバキバキだよ〜!!」
「ごめんな風美(ふみ)」
「・・・すごく・・・疲れた・・・」
「悪かったな地華(ちか)」
それぞれ火・水・風・地の精霊、正確には「魔精霊」である彼女らに抱きつかれる形で実験に対する不満を口にしてきたが、協力してもらっているいる身であるのでそれくらいの愚痴は聞いてあげたいとな。
「だが、この実験も今日でお仕舞いだ。明日からはもうやらなくていいぞ」
「えっ本当かよ!?やっと終わったぜー!」
「ということは実験は成功、ということですわね」
「えっそうなんだ?やった〜じゃあ明日からは遊べるんだ〜♪」
「・・・終わり?・・・」
「ああ、すべてが終わったわけではないが、大方研究のメドもたった」
「よっしゃあ!今からしっぽりヤれる訳だな!へへッ♪」
「もう・・・炎羅ったらはしたない・・・」
「何言ってんだよそういうお前だってそういう魂胆だろうが!」
「そ、そんなこと・・・!!・・・・ナイワケジャナイケド(ボソボソ)/////」
「あはは!水沙お姉ちゃん今にも沸騰しちゃいそうなくらい赤くなってる〜♪やらし〜〜」
「・・・素直に言えばいいと思う・・・」
「もう!みんなして私をからかって///マスタ〜何とか言ってください〜」
「ははは、まあいつもの事じゃないか。じゃあこれから私のかわいい精霊達をかわいがるとしますかね」
「「「「〜♪♪♪♪〜」」」」
こうして私達は実験室の奥へと進んでいった・・・
このやりとりも日常茶飯事。私とこの四人は出会ってからいつもそうだった・・・
そう、これからもずっと一緒だ・・・
西魔暦 403年 △月▲日
今日から定期的に日記をつけようと思う。今日が記念すべき私のプロジェクトの第一歩となる日だ。もしこの日記を見返すときがあれば私はこのプロジェクトを成功させた時だろう。私は必ず成し遂げてみせる。
西魔暦 404年 ×月●日
プロジェクトが早くも暗礁に乗り上げてしまった・・・予想以上にあちらの世界の"魔力"の解析が進まない・・・彼らいや、彼女達が持つ魔力の定義は非常に曖昧であり、それを意識的ではなく本能的に行使しているのだ。つまり彼女達も何故それが使えるのかどうかということに対する理論的な裏づけは一切ないに等しい・・・そこで我々は魔界の科学通称「魔科学」権威であるとあるバフォメットに協力を要請したが、技術を悪用される事を懸念し、私達への技術提供を断り続けていた。このままではプロジェクト自体の存続が危ぶまれる・・・
西魔暦 404年 ◎月□日
事態は思わぬ展開を見せた。突然バフォメットが技術提供を公の場で公表したのだ。いきなりの展開に戸惑いを隠せなかったが、何故心変わりしたのか?という記者が質問をすると「兄様とわしが住む世界の住み心地が悪い様では話しにならん!」とのこと。どうやらこの会見の数日前に「兄様」を見初めたらしく、それがキッカケだったというのだ。魔物の考えることはやはりイマイチ分からない・・・だが私達プロジェクトチームからすればこれ以上無い朗報である。
西魔暦 405年 △月□日
今私は魔界へとやってきている。今回魔界へ出向いたのは私のこのプロジェクトには欠かせない重要な"研究対象"である「精霊」との接触だ。プロジェクト開始から早数年、バフォメットの技術提供の元、研究は飛躍的に進み、魔力の解析・メカニズム・応用・・・様々な角度から研究を重ね、ある結論に至った。それが「四大精霊の魔力の変換と応用」である
〜四大精霊〜我々の世界でも伝承でのみ伝えられる存在である火(イグニス)・水(ウインディーネ)・風(シルフ)・地(ノーム)の精霊があちらの世界では存在しているのだ。その各精霊の魔力と現在我々の世界で使われている火力・水力・風力・地力(地熱)発電エネルギーとの親和性が高いことが判明した。バフォメット同伴のもと、私は精霊達と接触する為に魔界の各所で出向くことにする
西魔暦 405年 ■月○日
遂にすべての精霊と契約を結んだ。私が契約を結んだのは精霊の中でも「魔精霊」と呼ばれる精霊達だ。純精霊よりも強い魔力を持つ彼女達であれば膨大なエネルギーを必要とする発電施設の稼動に充分応えられるはずである。これで研究はさらに進む。すぐに我々の世界に戻り、精霊達のエネルギーを用いた実験へと移行する。尚、その過程で私は彼女達にそれぞれ名前を付けた。彼女達もそれを気に入ってくれたらしい
西魔暦 406年 ×月▲日
精霊達は実に感情豊かだ。それぞれの個体ごとに肉体、性格を持ち、私に対しる接し方や交わりを求め方も様々だ。いくら彼女達に必要不可欠であるとはいえ、当初は"研究対象"である精霊達への精の供給に対して迷いがあった。彼女達を研究対象としてしか見ていない私にその資格があるのだろうか?と・・・だが、当の本人達は私の考えなど気にせず、そして見返りを求めず私を求めてくる・・・そんな献身的な彼女達に私は研究対象を越えた「何か」が芽生えはじめてきている様だ・・・
西魔暦 407年 ○月▲日
今日このプロジェクト専用の研究施設が完成した。これから彼女達のエネルギーをより綿密に分析し、実際の発電を想定した実験へと移行する。今まで以上に彼女達に負担をかけることになるが、一方彼女達は研究施設というより"私達とマスターが一緒に暮らす家"という認識らしい。彼女達らしいなと思い思わず苦笑いがででしまった。
西魔暦 409年 □月△日
気のせいだろうか?彼女達の体の一部に黒い斑点の様なものが浮かび上がってきている。これはおそらく「闇精霊」化がはじまったのだろう。まだ初期段階の為、今のところは影響は無いが、魔力の変質が及ぼす影響も考慮しなくてはいけない。今後の動向に注意を払う。
西魔暦 410年 ●月◎日
遂に完成した・・・この7年間実に様々なことがあったが、それも今日で報われる。そしてこんな私について来てくれたプロジェクトチームの面々、研究所職員、そして彼女達には感謝の言葉しかない。そしてもう彼女達は私の一部同然だ。決して欠く事のできない大切な存在・・・そう、今までもそしてこれからもずっと一緒だ・・・
・・・この日記は当時所長であった加賀野博士の研究所私室にて見つかったものである。プロジェクト始動から完了までの経緯が克明につづられており、今回の【魔力発電研究所暴走事故】の起こる数年前に書かれたと思われる。今回の事故原因と思われる魔力炉の暴走に関しては事故後に観測された魔力に闇精霊から発せられる魔力が検出されたことから日記の一部に記述にみられる加賀野博士の契約していた魔精霊が闇精霊への変化した事が今回の事故原因として考えられる。しかし、ここで不可解な点が判明している。事故後の現稼働中のすべての魔力発電所の安全基準調査をおこなった結果、今回の事故で発生した様な闇精霊が発する魔力による発電への悪影響は各施設にすでに対策が施されており、今回の事故を上回る基準値にも耐えうる設計がなされていた。つまり加賀野博士にとってこの事故は「想定内」であったと考えられる。
もっとも今回事故にあった魔力発電研究所の設計はプロジェクト初期の設計であった為に今回の暴走に耐えられる環境でなかった想定外の事故だったとも考えられる。しかし、事故当日の加賀野所長の"的確な避難指示"で加賀野博士と契約していた精霊以外の職員は全員無事という「想定外」の事故としては奇跡とも呼べる状況にどこか意図したものを感じなくも無い。もっとも何故加賀野博士がこの様な事故を意図的に起こした動機も不明であり、いずれにせよ再度この様な事故が再発しない様我々はあらゆる事態を想定し魔力発電の安全管理に尽力をするすべきと再認識されられたのは間違いない。
「魔力発電安全委員会」事故報告レポート一部抜粋
【魔力発電研究所魔力路暴走事故】に関する報告
西魔暦 412年 ●月×日未明
・研究所魔力路の暴走により、非常事態宣言発令
・魔力発電施設に異常発生、加賀野所長の指示のもと職員はすみやかに研究所緊急避難シェルターへ退避
・数十分後この魔力路の暴走により研究所魔力炉・発電施設・実験棟が消失
・さらに数十分後自衛隊が現場へ到着、研究所職員の救出を行なった。
・職員にはほぼケガは無かったが、最後まで避難指示を行なっていた加賀野所長、契約していた魔精霊達が行方不明。その後の捜索でも遺体等は発見されなかった
・研究所周辺への「魔力漏れ」が懸念されていたが、想定内の基準数値に収まっており、安全基準を満たしていた
・研究所に保管されていた膨大な研究データはバックアップが別の研究所へ送られていた為に無事であった
・尚、加賀野博士の私室より日記および自身へ不測の事態が起こった時の為に遺したと思われるデータが発見された。内容は自分の後任の指名、研究の今後の方針、プロジェクトメンバーへの感謝の言葉等が記録されていた。
〜おわり〜
12/05/08 00:38更新 / KOJIMA
戻る
次へ