せかんど(微エロもあるよ!)
まるで穢れを知らない純真無垢な小娘の様に、私は彼について行った。頭がぼうっとしていたせいでどこへ行っているのかも覚えていない。気が付いたら彼の新しく綺麗な家の中―よく映画やドラマで成功を収めた登場人物が住んでいる様な―にいた。多分少し内陸の方なんだろうと思うけど、そんな事は今はどうでもいい。こうして男性の家に行くのも久しぶりだろう、それとももしかしたら初めてではないか? こんなハンサムで優しい有名人男性の家に招かれて、私は思考がままならなくなるのを感じていた。ここまで歩いてきた時でさえ、平静を保つのが難しかったのに…テーブルを挟んで向かい合ったソファにそれぞれが座り、私達自身も向かい合う。
「いいソファを買っててよかったよ。で、俺の本名を教える約束だったな」
名前、名前、名前…そう、この人の本名を教えてもらうんだった。「知りたいわ」
「期待してくれてありがとよ。俺の本名は、デニス・シモンズ・ジュニアだ。覚え易いだろ?」
それがこの人の名前…そう考えただけで頭がクラクラしてきた。早くこの人の名前を呼びたい。ラジオでずっと聞いてきたあの人の名前。
「お父さんと同じ名前なのね」我ながら冷静に話せている。彼が私に「大丈夫か、熱でもあるのか?」と聞いてこない以上は、まだ私は表面上の冷ややかさを保っているのだろう。今日はその性質に感謝しているが。でなければ隠しきれたものではない。私の問いに、彼は少し恥ずかしそうな様子で答えた。
「昔はこの名前が嫌いだったよ。親父とは喧嘩ばっかしてたし…」と言ってから彼は「今はしょっちゅう電話したり会ったりするけどな」とニヤリとしながら付け加えた。何気ないその仕草さえも、酷く魅力的に見える。
私の葛藤を余所に彼は立ち上がると、「酒を取ってくる」と言って歩いて行った。今のうちに心を落ち着かせようと試みるべきだろうが、私の中で彼の存在がどんどん大きくなる。魔物娘としては正しい姿なのかも知れないが、私の理性は会ってまだ1時間も経っていない男性にここまで夢中になる事をはしたないと諌めていた。でもそれは小学生チームがプレミアリーグのスター達に挑むのと同じぐらい、無駄な努力なのだろうけど。
「あ、ちょっとすまんが」と、そこで彼の声が少し大きめに響いてきた。「酒がねぇ…ちょっと買ってくるから待っててくれ。退屈させてすまない」
「いえ、大丈夫。とっても楽しいから」
また私は冷たい返し方をしてしまった。せっかく誘ってもらったのに萎えさせてしまってはいけない。だけど彼は、そんな私の「聞く人が聞けば皮肉にしか聞こえない返答」にも気を悪くした風もなく、「じゃあ行ってくる」とだけ言って出て行った。どちらにせよ、出て行けと言われたわけじゃないし、追い出される心配はない。
彼が出て行ってまだ1分しか経っていないというのに、私はもう熱に浮かされた自分をコントロールするのが難しくなっていた。彼がいない事もそれに拍車をかけているのだろう、「不在の今ならちょっとぐらい」と。ちょっとぐらい何をするつもりだろうかと、下らない事を考えては気を紛らわそうとしているが、ふと今いるリビングも彼の匂いがする事に気付いてしまった。さっきまでは意識していなかった匂い。考えては駄目、駄目よ。
「ん…」
香水なんかよりずっといい。もっと嗅ぎたい。
ふらふらとした足取りで、しかし確固たる目的を持った私の体はある場所へと向かいだした。まだどこにあるのか間取りなんて教えてもらっていないのだけど、それでも本能が教えてくれた。いい匂い…そして1つのドアを開けた。
「はぁ…」駄目よ、だめだめ、我慢しないと。早くここから出ないとエッチな気分になっちゃうよぉ…♪ これは私のキャラではないだろうに。落ち着かないと、冷静にならなければ。でも体の奥が熱くなってドロッとした感覚がして♥ まだ引き返せる、リビングに戻らないと…あれ? どうして駄目なんだっけ? わからないし、いいのかな♪ それより早くベッドまで行かないと。ベッドに行って寝転がればもっといい匂いを嗅げるんだもん♥ あ♪ これがデニスの寝てるベッド…
「デニスぅ…♥」
呼んじゃった、あの人の名前を呼んじゃった♪ や、やだ。私何やってるの? いきなり勝手に他人のベッドに潜り込んで匂い嗅ぎ出して。でもでも、そうすると体の中でドロッとした感じがして♥
真夜中と言えど人は眠らず、街も眠らない。故にボーンマスのとある住宅街にまだ明かりが灯っていても、それは別段不思議な事ではない。それだけならば、だが。
明かりが灯っているのはリビング及びリビングと繋がっているキッチンだけであって、他の部屋はカーテンを閉め切っているので、月明かりを遮断して暗くなっている。しかしリビングにもキッチンにも誰もいない。だがある部屋には確かに誰かがいた。その部屋は真っ暗でほとんど何も見えない。微かに分厚いカーテンから漏れた光があるのみであった。もしもその場に暗視の利く種族がいれば、その部屋が何の部屋であって、そこで誰が何をしているかがはっきりと見えたはずだ。いや、正確には「何をしようとしているか」だ。
「はぁ…はぁ…」と荒い息遣いが微かに響く。想像力の豊かな人であればそれだけで今晩のオカズにも困るまい。声―正確には息だが―の主は暗い部屋の中でベッドの上に横たわって、辛そうに息をしているところだった。だが声の主は辛そうな息遣いとは裏腹に、その肉体をモゾモゾと忙しく動かしている。そしてあろう事か、声の主は横たわったままスカートを自らめくり上げ下着の上から秘所をさすり始めた。そう、声の主は女性であった。
波打つ綺麗な茶髪に近い金髪は、一部がじんわりと浮かんだ汗で額にくっついていた。その整った顔と特徴的な長く尖った耳は赤みが差し、荒い息を吐きながら何かに耐えている様だった。その辛そうだがどこか快楽を感じさせる表情は、普段の彼女とは比較出来ないぐらい「熱く」、扇情的である。それこそYouTubeにでもこの姿を映した動画をアップロードすれば軽く10万再生を越え、そこからネット上の口コミで更に再生数が増えていくだろう。世の紳士諸君にとって残念なのが、実際にアップロードされるわけでもない事だが。
8本ある彼女のタコ脚は時折何かの刺激を受けて、「あっ…!」「ひ…ん♥」という彼女の声と連動してピクリと動く。ピクピクしていない時は、耐える様にモゾモゾと動く。その様でさえも非常に扇情的ではあった。ではその刺激の源はというと、彼女が自分の右手で下着の上からさすっている秘所である。可愛らしいパンツ―主にスキュラ用としてデザインされたそれは直接股下を覆う部分が無いが、前部の逆三角形の先端2か所からそれぞれ1本ずつ伸びた紐が斜め下へ延びつつ、2足歩行種族の太腿に当たる部分の横を通り、後部でも同じ構成を取っていた。その紐は横で括るタイプで、パンツ横の部分も留め具を外せば外れるという前後から合わせる方式を取っていた―の上からそこを右手でさすっていたが、左手は対照的に胸元でギュッと拳を握っている。恐らく強い快楽に耐える為であろう、下着の上からさするだけでこれならば、彼女はかなり性感の強い方かも知れない。とは言え、こうした光景は彼女が自分の上にかけている布団によってほとんど見えない。だが布団の中で不自然に動くその様が、かえっていけない事をしている雰囲気を際立たせていた。
3分程そうしていた彼女、マンディ・ノートンは遂に耐えきれなくなったのか、更なる快楽を求める為に急いだ手付きでパンツの留め具と紐を外し始めた。その焦り方がどこかトイレへ急ぐ子供を思わせた。脱ぎ終えたパンツを布団から摘み出した彼女は、再び自慰行為を再開した。最初はさするだけだったのが、次第にエスカレートして中へ指を滑り込ませる様になった。エスカレートする行為に比例してか、彼女の体全体がビクンと跳ね、声を抑えようと空いた左手は口を押えた。もちろんそうした努力は空しく、「んーんー」と堪える声と油断して左手を口から離した際に漏れる「あっあっあっ…♥」という声が交互に響いている。もうこれで一本映画なり小説なり作ってしまえばよかろう、それぐらい生々しいものであった。そして段々と彼女の右手は動きが速くなってゆき、それに呼応して声も大きくなる。
彼女は何かを想像して「シて」いるのか? それとも何か間近にオカズ―女性にこの表現を当て嵌めるのも言いえて妙ではある―があるのか? その答えは結構意外なものであった。彼女は体全体を左に横向けて自慰に浸っているが、その顔の左半分はベッドの敷布団へ埋まっている。そこだけならば不自然でもないが、彼女はなんとそうする事で、敷布団に染みついたベッドの持ち主の匂いを嗅いで、興奮を高めていたのだ。マンディの様に普段は冷ややかな女性がこうしてベッドの匂いに乱れて自慰をしている、それだけで凄まじい背徳的魅力があるとも言えよう。
「あっあっ…♥ アンっ♥ あァああっアぁ! いやっ、やっあっ!」
自分でしているのに「いや」とは、どういう意味合いなのだろうかという疑問さえも野暮であった。最低限の性的知識や経験さえあれば、彼女は今絶頂へ向かいたいのだと理解出来るはずだ。クールな姉御と思われている普段の彼女からは想像できないその少女的なエロスは、気付かれる事無く接近してきていた侵入者をいけない気分にさせるのに充分なものである…そう、いつの間にかこの寝室には彼女以外の者まで存在していた。
だが悲しい事に、最後に自慰をした事自体が20年以上前のマンディにとって、久々に味わう性的興奮と快楽を求める事だけに集中している以上は侵入者に気付けるはずもなかった。
「いやっ! ああっ♥ デニス♥ デニス♥!」と一際大きな声を上げた彼女は今まで以上に大きく体を震わせて、イッてしまった。マンディはまだ興奮から冷めぬ様子で右手を布団から出して顔の前に持ってきた。指はぬらぬらとした液体が糸を引いていたものの、幸い潮を吹く事はなかった。
「…アマンダ?」
だが代わりに少々残酷な現実が待っていた。
聞こえるはずのない声の持ち主が、あろう事か自分の名前を呼んだ…マンディは喉元と胸が締め付けられる感覚を味わっていた。名前を呼ばれた際も自慰行為中の様に勢いよく体を震わせたその姿はかなり可愛いものだったが、彼女自身は混乱の極みにあった。
ベッドは部屋の左側に置かれていた為、左を向いてシていた彼女には背後の様子がわからなかったのも無理はない…と思われる。スッと素早く振り向くとマンディの目には気まずそうな様子のデニスが突っ立っているのが見えた。顔を真っ赤にして目と口をあわわと大きく開く彼女の姿は、冷ややかな冷徹女などではなくただの羞恥に焦る少女のそれであった。素早く上半身だけを立たせて布団で体を隠そうと引き寄せ、ベッドが面する左の壁まで後退する。そして次は必死な様子で「あっ!? これは、え、えええ、え、と…違うの!」と何を言えばいいのかさえわからぬ混乱と焦りに満ちた様子で言った。
だが、もはや自分が弁明のしようもない状況に置かれたのだと理解した、いや理解してしまったマンディは、ある1つの行動を取らざるを得なくなってしまった。子供時代も含め、今までの彼女ならば絶対にしない行動を…
「ふぇ…」自然な流れで両手が両目の下辺りへと移動した。それに気付いてハッとしたデニスは慌てて右手を差し出して制止しようとしたが…遅かったらしい。
「ふぇぇぇぇぇぇぇん!」
少し俯き恥も外聞も無くわんわん泣き始めたマンディに、普段の面影などなかった。焦るデニスだったが、内心マンディを襲いそうになっていた自分を落ち着かせる機会が出来たので、心の中ではホッと一息付いていた。
「いいソファを買っててよかったよ。で、俺の本名を教える約束だったな」
名前、名前、名前…そう、この人の本名を教えてもらうんだった。「知りたいわ」
「期待してくれてありがとよ。俺の本名は、デニス・シモンズ・ジュニアだ。覚え易いだろ?」
それがこの人の名前…そう考えただけで頭がクラクラしてきた。早くこの人の名前を呼びたい。ラジオでずっと聞いてきたあの人の名前。
「お父さんと同じ名前なのね」我ながら冷静に話せている。彼が私に「大丈夫か、熱でもあるのか?」と聞いてこない以上は、まだ私は表面上の冷ややかさを保っているのだろう。今日はその性質に感謝しているが。でなければ隠しきれたものではない。私の問いに、彼は少し恥ずかしそうな様子で答えた。
「昔はこの名前が嫌いだったよ。親父とは喧嘩ばっかしてたし…」と言ってから彼は「今はしょっちゅう電話したり会ったりするけどな」とニヤリとしながら付け加えた。何気ないその仕草さえも、酷く魅力的に見える。
私の葛藤を余所に彼は立ち上がると、「酒を取ってくる」と言って歩いて行った。今のうちに心を落ち着かせようと試みるべきだろうが、私の中で彼の存在がどんどん大きくなる。魔物娘としては正しい姿なのかも知れないが、私の理性は会ってまだ1時間も経っていない男性にここまで夢中になる事をはしたないと諌めていた。でもそれは小学生チームがプレミアリーグのスター達に挑むのと同じぐらい、無駄な努力なのだろうけど。
「あ、ちょっとすまんが」と、そこで彼の声が少し大きめに響いてきた。「酒がねぇ…ちょっと買ってくるから待っててくれ。退屈させてすまない」
「いえ、大丈夫。とっても楽しいから」
また私は冷たい返し方をしてしまった。せっかく誘ってもらったのに萎えさせてしまってはいけない。だけど彼は、そんな私の「聞く人が聞けば皮肉にしか聞こえない返答」にも気を悪くした風もなく、「じゃあ行ってくる」とだけ言って出て行った。どちらにせよ、出て行けと言われたわけじゃないし、追い出される心配はない。
彼が出て行ってまだ1分しか経っていないというのに、私はもう熱に浮かされた自分をコントロールするのが難しくなっていた。彼がいない事もそれに拍車をかけているのだろう、「不在の今ならちょっとぐらい」と。ちょっとぐらい何をするつもりだろうかと、下らない事を考えては気を紛らわそうとしているが、ふと今いるリビングも彼の匂いがする事に気付いてしまった。さっきまでは意識していなかった匂い。考えては駄目、駄目よ。
「ん…」
香水なんかよりずっといい。もっと嗅ぎたい。
ふらふらとした足取りで、しかし確固たる目的を持った私の体はある場所へと向かいだした。まだどこにあるのか間取りなんて教えてもらっていないのだけど、それでも本能が教えてくれた。いい匂い…そして1つのドアを開けた。
「はぁ…」駄目よ、だめだめ、我慢しないと。早くここから出ないとエッチな気分になっちゃうよぉ…♪ これは私のキャラではないだろうに。落ち着かないと、冷静にならなければ。でも体の奥が熱くなってドロッとした感覚がして♥ まだ引き返せる、リビングに戻らないと…あれ? どうして駄目なんだっけ? わからないし、いいのかな♪ それより早くベッドまで行かないと。ベッドに行って寝転がればもっといい匂いを嗅げるんだもん♥ あ♪ これがデニスの寝てるベッド…
「デニスぅ…♥」
呼んじゃった、あの人の名前を呼んじゃった♪ や、やだ。私何やってるの? いきなり勝手に他人のベッドに潜り込んで匂い嗅ぎ出して。でもでも、そうすると体の中でドロッとした感じがして♥
真夜中と言えど人は眠らず、街も眠らない。故にボーンマスのとある住宅街にまだ明かりが灯っていても、それは別段不思議な事ではない。それだけならば、だが。
明かりが灯っているのはリビング及びリビングと繋がっているキッチンだけであって、他の部屋はカーテンを閉め切っているので、月明かりを遮断して暗くなっている。しかしリビングにもキッチンにも誰もいない。だがある部屋には確かに誰かがいた。その部屋は真っ暗でほとんど何も見えない。微かに分厚いカーテンから漏れた光があるのみであった。もしもその場に暗視の利く種族がいれば、その部屋が何の部屋であって、そこで誰が何をしているかがはっきりと見えたはずだ。いや、正確には「何をしようとしているか」だ。
「はぁ…はぁ…」と荒い息遣いが微かに響く。想像力の豊かな人であればそれだけで今晩のオカズにも困るまい。声―正確には息だが―の主は暗い部屋の中でベッドの上に横たわって、辛そうに息をしているところだった。だが声の主は辛そうな息遣いとは裏腹に、その肉体をモゾモゾと忙しく動かしている。そしてあろう事か、声の主は横たわったままスカートを自らめくり上げ下着の上から秘所をさすり始めた。そう、声の主は女性であった。
波打つ綺麗な茶髪に近い金髪は、一部がじんわりと浮かんだ汗で額にくっついていた。その整った顔と特徴的な長く尖った耳は赤みが差し、荒い息を吐きながら何かに耐えている様だった。その辛そうだがどこか快楽を感じさせる表情は、普段の彼女とは比較出来ないぐらい「熱く」、扇情的である。それこそYouTubeにでもこの姿を映した動画をアップロードすれば軽く10万再生を越え、そこからネット上の口コミで更に再生数が増えていくだろう。世の紳士諸君にとって残念なのが、実際にアップロードされるわけでもない事だが。
8本ある彼女のタコ脚は時折何かの刺激を受けて、「あっ…!」「ひ…ん♥」という彼女の声と連動してピクリと動く。ピクピクしていない時は、耐える様にモゾモゾと動く。その様でさえも非常に扇情的ではあった。ではその刺激の源はというと、彼女が自分の右手で下着の上からさすっている秘所である。可愛らしいパンツ―主にスキュラ用としてデザインされたそれは直接股下を覆う部分が無いが、前部の逆三角形の先端2か所からそれぞれ1本ずつ伸びた紐が斜め下へ延びつつ、2足歩行種族の太腿に当たる部分の横を通り、後部でも同じ構成を取っていた。その紐は横で括るタイプで、パンツ横の部分も留め具を外せば外れるという前後から合わせる方式を取っていた―の上からそこを右手でさすっていたが、左手は対照的に胸元でギュッと拳を握っている。恐らく強い快楽に耐える為であろう、下着の上からさするだけでこれならば、彼女はかなり性感の強い方かも知れない。とは言え、こうした光景は彼女が自分の上にかけている布団によってほとんど見えない。だが布団の中で不自然に動くその様が、かえっていけない事をしている雰囲気を際立たせていた。
3分程そうしていた彼女、マンディ・ノートンは遂に耐えきれなくなったのか、更なる快楽を求める為に急いだ手付きでパンツの留め具と紐を外し始めた。その焦り方がどこかトイレへ急ぐ子供を思わせた。脱ぎ終えたパンツを布団から摘み出した彼女は、再び自慰行為を再開した。最初はさするだけだったのが、次第にエスカレートして中へ指を滑り込ませる様になった。エスカレートする行為に比例してか、彼女の体全体がビクンと跳ね、声を抑えようと空いた左手は口を押えた。もちろんそうした努力は空しく、「んーんー」と堪える声と油断して左手を口から離した際に漏れる「あっあっあっ…♥」という声が交互に響いている。もうこれで一本映画なり小説なり作ってしまえばよかろう、それぐらい生々しいものであった。そして段々と彼女の右手は動きが速くなってゆき、それに呼応して声も大きくなる。
彼女は何かを想像して「シて」いるのか? それとも何か間近にオカズ―女性にこの表現を当て嵌めるのも言いえて妙ではある―があるのか? その答えは結構意外なものであった。彼女は体全体を左に横向けて自慰に浸っているが、その顔の左半分はベッドの敷布団へ埋まっている。そこだけならば不自然でもないが、彼女はなんとそうする事で、敷布団に染みついたベッドの持ち主の匂いを嗅いで、興奮を高めていたのだ。マンディの様に普段は冷ややかな女性がこうしてベッドの匂いに乱れて自慰をしている、それだけで凄まじい背徳的魅力があるとも言えよう。
「あっあっ…♥ アンっ♥ あァああっアぁ! いやっ、やっあっ!」
自分でしているのに「いや」とは、どういう意味合いなのだろうかという疑問さえも野暮であった。最低限の性的知識や経験さえあれば、彼女は今絶頂へ向かいたいのだと理解出来るはずだ。クールな姉御と思われている普段の彼女からは想像できないその少女的なエロスは、気付かれる事無く接近してきていた侵入者をいけない気分にさせるのに充分なものである…そう、いつの間にかこの寝室には彼女以外の者まで存在していた。
だが悲しい事に、最後に自慰をした事自体が20年以上前のマンディにとって、久々に味わう性的興奮と快楽を求める事だけに集中している以上は侵入者に気付けるはずもなかった。
「いやっ! ああっ♥ デニス♥ デニス♥!」と一際大きな声を上げた彼女は今まで以上に大きく体を震わせて、イッてしまった。マンディはまだ興奮から冷めぬ様子で右手を布団から出して顔の前に持ってきた。指はぬらぬらとした液体が糸を引いていたものの、幸い潮を吹く事はなかった。
「…アマンダ?」
だが代わりに少々残酷な現実が待っていた。
聞こえるはずのない声の持ち主が、あろう事か自分の名前を呼んだ…マンディは喉元と胸が締め付けられる感覚を味わっていた。名前を呼ばれた際も自慰行為中の様に勢いよく体を震わせたその姿はかなり可愛いものだったが、彼女自身は混乱の極みにあった。
ベッドは部屋の左側に置かれていた為、左を向いてシていた彼女には背後の様子がわからなかったのも無理はない…と思われる。スッと素早く振り向くとマンディの目には気まずそうな様子のデニスが突っ立っているのが見えた。顔を真っ赤にして目と口をあわわと大きく開く彼女の姿は、冷ややかな冷徹女などではなくただの羞恥に焦る少女のそれであった。素早く上半身だけを立たせて布団で体を隠そうと引き寄せ、ベッドが面する左の壁まで後退する。そして次は必死な様子で「あっ!? これは、え、えええ、え、と…違うの!」と何を言えばいいのかさえわからぬ混乱と焦りに満ちた様子で言った。
だが、もはや自分が弁明のしようもない状況に置かれたのだと理解した、いや理解してしまったマンディは、ある1つの行動を取らざるを得なくなってしまった。子供時代も含め、今までの彼女ならば絶対にしない行動を…
「ふぇ…」自然な流れで両手が両目の下辺りへと移動した。それに気付いてハッとしたデニスは慌てて右手を差し出して制止しようとしたが…遅かったらしい。
「ふぇぇぇぇぇぇぇん!」
少し俯き恥も外聞も無くわんわん泣き始めたマンディに、普段の面影などなかった。焦るデニスだったが、内心マンディを襲いそうになっていた自分を落ち着かせる機会が出来たので、心の中ではホッと一息付いていた。
12/08/31 12:13更新 / しすてむずあらいあんす
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