読切小説
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ャンドル?ガイスト
「今日はどこに行くつもりだったんだ?」

「コンビニでアイス買ってくるつもりです」

「なるほど、一人では危険だ、同行する」

「別にいいですけど」

「では一丁行くか、蝋燭だけにな」

「え?」

「蝋燭の単位に『1本』『1個』の他に『1丁』と呼ぶ場合がある。
 今回のギャグは蝋燭の『1丁』と何かに取り掛かる際に言われる『一丁』を掛けた
 素晴らしいギャグというわけだ」

「ギャグの説明させて申し訳ない」

「問題ない。次回のギャグは教養のレベルを下げてやろう」

「根に持ってない?」

「このように私は蝋燭としての機能のほかにユーモラスな会話も出来るのだ」

「要るか要らないかで言ったら蝋燭的には要らない」

「他にも蝋燭らしく、アロマキャンドル機能も付いているぞ」

「そういうのでいいんですよ」

「では、私の腋の匂いを楽しむがいい」

「そういうのじゃないんですよ」

「では、胸の谷間にするか?」

「夜中って言っても往来でそういうことするのは…」

「なら腋で」

「はい……う”」

「どうだ?」

「……ガンダルヴァ系じゃなくてトロールとかハイオーク系列。
 なんで魔法物質がこんな臭いだせるの…?」

「満足してもらえたようだな」

「バブルスライムまで行ってないだけ良しとします」

「待て、前方に敵性反応有」

「もしかして、あのインプとかゴブリンたちのこと言ってる?」

「魔物だ」

「お前もだよ」

「このまま前進すると声をかけられる可能性がある」

「たまにすれ違うけど、ちゃんと挨拶してくれる子たちだよ」

「なるほど、不審者には先に挨拶するのが効果的だからな」

「俺も先に挨拶しとけばよかった」

「先制攻撃による排除を実行する」

「待って待って!」

『こんばんわー。あれ、オニーサン。カノジョ出来たの?』

「攻撃一旦停止」

「ん…いや…ちょっと…」

『あ!あたし、知ってる〜
 夜道で男の人に付きまとってくるキャンドルガイストさんでしょ?
 
 …警察に連絡してあげよっか?』

「全弾発射準備」

「……彼女です」

「私は主の夜道の安全を確保するための存在であり、
 決してカノジョではないが、そういうふうに見えるのならば否定はしない」

「めんどくせえなこいつ」

『え〜でも嬉しそうに見えるんだけど〜?』

「まったく子供たちにはかなわないな…
 では、行こうか。ダーリン」

「じゃあね、俺の犠牲を無駄にしないためにも早くお家に帰りな」

『は〜い』

「ふっ…カノジョか」

「ホントだ、凄い嬉しそう」

「なぜ私が喜んでいると?」

「頭の炎が犬のしっぽみたいに揺れるんだよ」

「なるほど、自分では気が付かないわけだ」

「しかし、アイス買いに行くだけで彼女ができるとは…」

「主の要望とあれば、蝋燭兼伴侶という扱いでいいぞ」

「勝手に彼女から嫁さんにランク上げないでよ」

「…?彼女も伴侶も嫁も性奴隷も全て同義では?」

「魔界だとそうだったね」

「私たちキャンドルガイストとしては暗い場所が多い魔界の方が好ましいがな」

「この世界だと生活するだけなら明かりには困らないしね」

「今、私のこと必要ないといったか?」

「そんなこと言ってないからマント脱がないで」

「そうか、私の有用性を主の体に叩き込むところだった」

「危険性はだいたい分かった」

「蝋燭一本火事の元というしな、決して私から目を離すなよ」

「2mの蝋燭が火元だったら一瞬で家が丸焦げになるだろうしね」

「火事で家を失った場合、テントでキャンプ生活になって
 私への依存度が高まるということか…フッ」

「キャンプだと蝋燭じゃなくてランタンだね」

「…! 計画を修正」

「俺の家燃やされそうになってた?」

「まあ、私は最新のキャンドルガイストだから家の中でも役に立つがな」

「へえ、火事じゃなくて家事とかしてくれるの?」

「蝋燭に何を求めているのだ」

「えぇ…」

「例えばだな、危険なサイトや情報にアクセスする前にお前を止めるファイアウォール(物理)」

「それは素直に助かる」

「ただ私がいちいち情報をチェックする必要があるのでメンタルが秒で破壊される」

「それ聞かされたらもうPC使えないよ」

「どうせエロサイトしか見ないんだからもう不要だろう?」

「なんで俺のメンタルまで秒で破壊したの?」

「PCなんて見ているよりも私の火を見てすごすべきだな」

「室内でそれは完全に病んでる人だよ…」

「むっ、病むといえば、こんな時間にアイスを食べようだなんて何事だ」

「食事だよ」

「暑さで胃腸が疲れているのに冷たいものを食べるのは良くないだろう

 ちょっと待っていろ

 ……出来たぞ、かき氷だ」

「まさか暗い夜道で一人で待たされると思わなかったし、
 もっと言えば、冷たくなるものを出されるとも思わなかった」

「まあ食べてみろ」

「あ、冷たくない!触感はお店のかき氷みたいにフワフワで口の中で解けるのに…」

「そうだろう」

「上にかかってる練乳も濃厚で氷とよく合って美味しい!」

「チーズと牛肉が合うようなものだ」

「チーズ?……牛肉?……コレの原料って何?」

「私だ」

「お前だったのか…」

「私の蝋を固めて削った物に、私の胸から出てきた蝋を掛けた<火器固澱 かきごおり>だ」

「男塾みたいな当て字してるんじゃないよ!」

「美味しかったのなら良いではないか」

「美味しかったけどスライムが自分の体食べさせるのと訳が違うんです」

「ホルスタウロスの乳やアルラウネの蜜なら喜んで飲むのに、
 キャンドルガイストの蝋は飲めないと?」

「ゴーレム属が何言ってるんだ」

「知らないのか?そのゴーレムの腕についてるアレ、クッキーだぞ」

「クッキーだったの!?」

「ラーヴァゴーレムの胸の溶岩も美味しそうだし、
 カースドソードの滴る魔力はパンに塗ってもいい感じだ
 クリーピングコインの魔界金は粉にして掛けるとゴージャスになる」

「マジ?ありもしない新設定作ってない?」

「……やれやれ、まだジョークの教養を下げる必要があるようだな」

「二度とジョークを口にするな」

「だが、私の白くてモチモチのふわふわぷにぷにぼでい、美味しそうだろう?」

「餅の妖怪か何か?」

「焼き餅焼きではある」

「そう…」

「ところでコンビニに行く必要がなくなったようだが」

「そうだね、かき氷の割に食べた後の満足感が半端ない」

「今度はホワイトチョコも掛けておいてやろう」

「本当に人体に影響はないんですか?」

「蜜蝋みたいなものだし問題ない、…と良いな」

「もし体壊したらどうするの?」

「その時は私も一緒に墓に入ってやろう。あの世の方が照らし甲斐がありそうだ」

「まず病院に連れてって」








ーーー帰宅ーーー



「ふむ、二人暮らしになると少々手狭だが…身を寄せ合って暮らすのもまた良し」

「……(やっぱり家までついて来るんだ)」

「では、風呂に入るか」

「一人暮らしだと水道代もバカにならないんですよ…」

「なら私が蝋で包み込んで温めてやろう、そうすれば汗を流すだけの水で足りるはずだ」

「風呂から出るころには蝋人形になってそうなんだけど」

「一目で私のモノだとわかるな」

「俺は主なのかモノなのかはっきりさせてほしい」

「主もモノもお兄ちゃんもあなたも全て同義では?」

「一度、魔界言語学を習ってみたいね」

「風呂に入らないなら今日はもう寝るぞ」

「お前が決めるのか…」

「当然だ、夜更かしほど危険なものはないからな」

「一理ある」

「布団の代わりに私を使うといい、夏はひんやり冬は暖かだぞ(※個人の感想です)」

「風呂に入らなくても結局蝋まみれになるのか」

「どんな魔物娘でもマーキングは基本だからな」

「キスマークとかそういう洒落たものにしてほしい所」

「じゃあ、ちゅーするぞ、ちゅー」

「いや、キスマークは首筋とかに付けるもので…

 んんっっっ……!!」

「ぷあっ…キスマーク、よし」

「はあ…はあ…どこに付けたの…?」

「主の心の中だ」

「………じゃ、おやすみ」

「服を脱ぐからちょっと待っていろ」

「あ、やっぱりその装飾品取れるんだ」

「主と寝るときには邪魔になるからな、付けたままでも別にいいが」

「いや、大丈夫だとわかってても目に入ったら痛そうだから脱いどいて」

「承知した」

「こうやって見ると…」

「ふっ、まじまじと見てどうした?
 私の体はもはや主の物だ、使いたいなら好きなように使うがいい」

「装飾品外すと本当に餅の妖怪みたい」

「餅と蝋の違いを徹底的に教育してやろう」

「アァァァァッッ!!!!」



ーーー事後ーーー


「初めてのセックスは工事現場みたいな音がした」

「望みだったら、もっと優しく絡みつくような奉仕をしてやるぞ、今から」

「今からはもう限界です…」

「なら寝かしつけてやろう。子守唄か?絵本を読むか?
 両方も可能だぞ、ミュージカル風という意味だが。
 それとも、蝋燭の成り立ちから今後の蝋燭業界の展望について私が解説してやってもいいが、
 少々長くなるぞ、まず蝋燭とは…」

「俺の耳に蝋を詰め込んで耳栓代わりにして」

「蝋燭の使い方が分かってきたじゃないか」


ーーー深夜ーーー



「……(突然、付いてこられてビックリしたけど、
考えようによっては小遣い稼ぎのチャンスかも…?
魔界の危険な場所を巡る観光ツアーとか企画したり、
ダンジョンや洞窟で宝探しもちょっと面倒だけどロマンがあるな…

とにかく、キャンドルガイストさんがいれば安全だし、起きたらいろいろ考えてみよう)」



ーーー朝?ーーー

「おはよう、人生を照らす一条の光。お前の妻だ」

「その名乗り口上もいろいろパターンがありそうだね」

「頑張ってコンプリートを目指してくれ」

「ところで、なんで部屋がこんなに暗いっていうか、
 光が君以外存在してないの?」

「主が寝ている間に部屋を内側から蝋で固めておいた」

「賃貸でやっていい行為じゃない!」

「その点は抜かりない、もうすでにこの部屋は買取済みだ」

「魔物娘がらみだと果てしないスピードで物事が進む社会」

「会社にも連絡済みだ、キャンドルだけにfireだ」

「クビになったの俺!?」

「労働は危険だからな」

「全くもって仰る通りだと思います」

「地上には危険(灯り)が多すぎるからな
 安全な場所(二人きりのスペース)を確保し、
 十分な燃料補給(イチャラブセックス)をするのが急務だ」

「本音が明るみに出てるね、蝋燭だけに?」

「まあ、準備が整えば私の先導でハネムーン旅行に行っても良い、深海とか」

「自分以外の光源は許せないタイプの人?」

「そのためにも主の体がインキュバス化するまで不眠不休の勤労奉仕を行う
 インキュバス化しても行う」

「うすうす気が付いていたけど…」

「さあ、私の体が役に立つということをまた教えてやろう」

「こいつが一番危な……



 アァァァァァ!!」

















「……(凄いのに懐かれたかも…)」

「…あるじ…主…ずっと一緒の私のご主人様……ふふっ♥」

「ま、明るく考えますか」
24/07/31 12:31更新 / ヤルダケヤル

■作者メッセージ
夜道をストーキングしたり、他の女と接触させないようにしたり、食事に体液を混ぜたり、監禁したりするけど…病んではいない!



今回も読んでいただきありがとうございました。

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