オークさんにご主人様といわれたい
「うぅ…あづい゛…」
急に夜中に目が覚めてしまった。
寝巻きが汗でびったりとくっついて不快この上ない。
もう一度寝直そうとしても雨季のジメジメとした湿気と熱気のせいで寝れそうにない。
窓を開けて外気を取り入れようと考えたが、ここは森の中、窓を開けっぱなしになどしたら、たちまち蚊の餌食にされてしまう。
「さて、どうするかな…」
台所に水を汲んでくる。井戸水ではなく魔法によって保存されている水のため温くなっている。
生暖かい飲み水を飲み、椅子に腰掛けて、考えを巡らせる。
「今年は、一段と暑いみたいだな…まったく運の悪い」
例年ならば、暑さをしのぐための術式を発動させるのだが、魔道具を買い付けていた行商人が今年、行方不明になってしまった。おそらく、アマゾネスやフェアリーなんかに連れて行かれたのだろう。
おかげで必要な道具を揃えることが出来ず。むしむしとした部屋で愚痴を言わなければならない羽目になった。
「いっそ、思い切って裸で寝るというのもいいかもしれん。寝巻きがべたつくから眠れんのだ」
さっそく実行に移したところ、思いのほか気持ちが良い。汗がそのまま蒸発し、体が心地よく冷えてくる。
その晩はそのまま眠りにつくことができた。
ハックション!! ウェ゛ーイ
朝起きると体の芯から寒さが襲ってくる。体もだるい、頭はじくじくと痛む。
なぜ、あのときの私はこの危険性を考えてなかったのか…
「いくら暑いからと言って、裸は不味かったか…」
熱で軋む体と痛む頭を酷使し、どうにか着替えてベッドに横たわる。
昨晩の自分を殴り飛ばしたい気分である。
いちおう、魔導師のはしくれなので、家にあった薬草で解熱剤を作ったものの。風邪がすぐによくなるものではなく、今日は一日安静にしていなければならない。
「あぁ…こんなときに嫁さんでもいれば…」
この前にあった友人が、先日結婚した嫁の自慢をしていたことを思い出す。魔物娘と結婚したと聞いて心配であったが、彼が本当に幸せそうであったため、杞憂であったことを悟った。
『ほんと、うちの嫁さんは最高だよ。スライムなんだけどね、あのひんやりプニプニの体!
もうね…もう…たまらんね…っ!フヒッ』
涎を垂らしながら惚気話する彼に、別の心配をしたが。
「結婚か…」
今寝ているベッドに、美しいもしくはかわいらしい女性がいっしょに寝ていることを妄想してしまう。
人の温もりと柔らかさを想像し、人肌恋しくなってしまう。昔はよく娼館に通ったものだが、森に越してきたからはご無沙汰になっている。
「もし、結婚するんだとしたら俺も魔物娘の女の子と…」
友人の幸せそうな顔を思い出す。
「よし!俺、結婚する!結婚!けっこぉぉぉぉぉぉぉぉおん!」
ガバッとベッドから起き上がり大きな声で宣言する。急に頭を揺らしたせいでガンガンするがそんなことは気にならないほど興奮していた。
……今の私から見ても、あのときの私はどうかしていた、もしかしたら薬草の中に間違ってマズイ物が紛れ込んでいたのかもしれない。もし、あの絶叫を誰かに聞かれていたら恥ずかしさのあまり首をくくっていた事だろう。森の中に住んでいて本当によかったと思う。
ダダダッ
書庫に向かって一直線でから魔物娘の図鑑を持ってくる。この森に住むときに、魔物娘に対抗できるようにと買ったものだが、そのあとすぐに気配を消す術を覚えたため、不要と思い読んでいなかった。
「…………」
本に穴が開くほどとよく言われるが、それくらいの気迫で読んだ。誰かが私の目を見ることが出来たなら、おそらく真っ赤に血走っていただろう。
「ふう…」
読み終わるのに半日以上かかり、すでに真夜中になっていた。尋常ではない集中力を発揮し、特徴はあらかた覚えることが出来た。今度は、どんな魔物娘がいいのか自問自答することとなった。どうせ、夜は暑くて眠れないのだ。夜を徹して考え続けよう。
しかし、どの魔物娘も魅力的で甲乙つけがたい、そのなかで人生の伴侶決めるのは非常に大変な作業である。ここは、消去法で地道に探していきたい。
……今の私から見ても、あのときの私はどうかしている。お前、選べる立場じゃないだろ?土下座してでもお願いする立場だろ?30過ぎのおっさんがなにを贅沢言ってるんだ? しかし、そのおかげで今の私がいるのでなんともいえない気分になる。
「まず、魔導師といってもそこそこの俺がどうにかできる相手じゃなきゃいけないな」
ドラゴンやバフォメットやヴァンパイア、いわゆる上級魔族に会うことなど自分の実力では至難の業である。仮に会えたとしても指先一つでダウンであろう。
「出来ればここに住み続けたいな…」
なんだかんだ言ってもこの生活は好きで始めたことだ、この静かな環境を手放したくない。そうなると、ハニービーやジャイアントアントなど巣で生活する魔物娘とは難しい。海の中で暮らすことも選択肢から消える。
「あんまり、遠くまでは探しにいけないな…」
先ほども言ったようにそこそこの魔導師である自分にとって旅とは命がけの冒険になる。魔界やジパングまでいくなんてもっての外である。
「そういえば俺、毛アレルギーなんだった…」
モフモフは非常に魅力的だが、多分それをした後に、鼻水と涙地獄に落ちてしまうであろう。
「スライムは…うちじゃダメだろうな…」
薬品棚の方に視線を移す。スライムは液体のため薬品を洗い流すことが出来ないだろう。万が一、有害な薬品が体に混ざったしまったら大変なことになってしまう。というか嫁さんをそんな危険な場所に居させたくない。
「Sっ気はあんまりないほうがいいかな…」
一人ひとり性格が違うのでなんともいえないがアラクネやダークエルフなどの種族はその傾向が顕著らしい。ちょっと惹かれるものがあったが戻ってこれない気がするのでやめておく。
「だいぶ絞れてきた気がするな」
「あっ!」
「一番重要な要素を忘れていた…」
「おっぱい!」
「おっぱいがないと始まらないわ!」
サバトと妖精の国に宣戦布告する。ないよりあったほうが良いに決まっているではないか。
その後も私は夜通しさまざまな視点から吟味を続けた。
その結果…
「オークさん!俺、オークさんと結婚する!」
それほどの力量がなくても戦える相手で、わざわざ遠くに行く必要もない。この家に住むことができ、体毛も少なくスライムでもない。オークは負けを認めれば従順らしく、いきなり緊縛プレイなどになることはないだろう。
「そして、何よりムチムチプリン…」
これが決定の一番のウェイトを占めていた。
夜はもうすでに明けており、森の中にも微かに光が差し込んでいる。
「いける…今ならドラゴンだろうがリリムだろうが倒せそうな気がする…」
一世一代の晴舞台に彼の胸は高鳴っている。風邪も徹夜の疲れも全く感じなかった。
着々と準備を整えていく、自分の魔導師としての力をありったけ使うつもりであった。魔力を高めるローブを纏い、下中級魔法ならば無詠唱で展開することが出来る、もったいなくて使ってなかった特注の杖を持ち、森を抜けた山岳地帯に向かう。
山には問題なく着くことが出来た。森を歩いてる最中何度か魔物娘と遭遇したが、私の顔を見るなり逃げ出してしまう。少し傷ついたが無事に来れたのでよしとする。
「さて…探すとするか・・・」
用意していた周辺の地図に物質感知の術式を組み、展開させる。地図に手をかざすとさまざまな情報が頭に浮んでくる。上級魔導師ならば細部までの情報を引き出すことが出来るのだろうが、私の実力では、おおよその位置と大きさしかわからない。
「群れらしきものが3つ…」
1つは、身長130〜150cmくらいの群れが10人、おそらくゴブリンであろう。
2つ目は、数が8人、身長150〜170cmくらいの群れ、これが本命のオークの群れだろう。なんてったって胸がありますもの。
「…で最後の一つは…なんじゃこりゃ?」
数は5人と一番少ないが小さいのが130cm、大きいので200cmと差があり、体つきから男性もいることがわかる。そして、下半身が蛇の者までいるためこの集団が何者なのか予測できない。しかもまっすぐとオークの群れに向かっている。
「……もしかして、討伐隊か…?」
ここは、親魔物領のため魔物娘が住んでいても問題がない。しかし、略奪行為が認められているわけではなくオークやゴブリンなどが悪質にそれを繰り返すと、ギルドに討伐依頼がくることがある。討伐と言っても殺傷にいたることはなく、魔法などで捕縛の後、地方の法によってさまざまだがこの地方では、希望した被害者男性へ更生の名目の元、奴隷として引き渡される。奴隷といってもほとんどは性的な意味である。しかも大半の被害者男性はその奴隷とゴールイン。もうそれ奴隷じゃないだろ。
ちなみに、それを免れた場合罪の重さによって変わってくるが、大半は町の掃除などの奉仕活動をさせられる。性的な意味ではなく、真面目に。
「どうするどうするどうするよ!」
百戦錬磨のギルドの連中が相手ではオークに勝ち目など微塵もない。かといって指をくわえてみていれば、全員しょっ引かれて終わり、私の夜通し練った人生計画も終了である。どうにかして時間を稼がなければならない」
「仕方ない…危険な賭けだが…」
「あ〜あんな所に〜ゴブリンの〜群れがいるぞ〜これは大変だ〜早く逃げなくちゃ〜(棒)」
見つけやすい場所で、大きな声で自分の存在をアピールする。ゴブリンたちがこちらに気づいたことを確認し走り出す。
「あ!ひさしぶりの人間だ!よわっちそうだし、みんな〜やっちゃえ〜!」
「アイアイサ〜!」
私を見つけた彼女たちは、リーダーの号令とともにこちらに向かって走ってくる。どうにか作戦は成功しそうだ。
「まてまて〜」
「いたくしないから〜」
「こん棒持ちながらじゃ説得力ないよ! てか足はやっ!」
甘く見ていた。小さくとも魔物であり人間とは違うのだ。地の利もあちらにあるようでみるみる差が縮まって行く。
「あばばばばば…」
脳の半分はすでに彼女たちに捕まった後をシミュレートしている。…存外悪いものではないらしい。
いや!気をしっかり持て!自分!何のためにここまできたのだ!そしてなんでオークさんを選んだかわかっているのか!そう!
「残念ながら胸のない君たちに捕まるわけには行かない!」
そう叫び、自分を激励する。もう少しだ。
「え〜!」
「しつれ〜い」
「おじさんのせーへきなんて、あたしたちにはカンケーないし〜」
「あ!でも、おるすばんしてるオヤブンはむねおっきいよ!」
「なぬ!」
まさかホブゴブリンまでいたとは…深夜の嫁さん選びの際、最終的にホブゴブリンとオークのどちらがいいかでとても迷ったのだ。その結果、辛くもオークさんに軍配が上がった。ホブゴブリンの落選理由は、「たぶんここら辺にいないから」
「え?え?どうしよ?」
いきなり対抗馬の出現である。すでに脳みその半分は裏切って、ホブゴブリンとの結婚生活モードに入っている。走る速度もだんだん落ちてきている。
足音がすぐ後ろまで迫っている。これはもうだめだな。
「さ!おじさん、かんねんしてあたしたちとイイコトしよ〜」
「あ、」
私はとてつもない思い違いをしていた。そうである あたし「たち」なのである。ホブゴブリンだけ家に連れ帰るなんて到底不可能。絶対にこいつらもついて来る。10人以上養う経済力など私にはない。コブ付きならぬゴブ付きであった。
「やっぱ、無理!ごめんね!」
裏切り者が戻ってきたおかげでどうにか最後の気力を振り絞ることが出来た。
「どぁぁぁぁらぁぁぁぁぁぁ!!」
もはや、気力だけで走っている。愛の力といっても過言ではない。
そしてついに、目標の後ろ姿が見えた、作戦は成功である。
「た、助けてくださあぁぁぁい!!」
今回は演技ではなく正真正銘心の叫びである。討伐隊が気づきこちらに向かってくる。私のすぐ後ろにゴブリンたちが見えるのですぐに状況を察したようだ。
「ゴブリンに人が襲われている!至急救援に向かうぞ!」
「ハッ!」
「ん〜?なんだなんだ〜?」
「あたしたちのえものをよこどりする気だね!かえりうちだよ!」
「でもなんだかつよそうだよ…」
「数はこっちのほうが多いからきっとだいじょうぶ!みんな〜かかれぇ〜!」
討伐隊とゴブリンとの戦闘が始まる。これで時間は稼げるはずだ。ゴブリンたちには頑張って欲しい所だが、おそらく10分もかからずやられてしまうだろう。少し気の毒に思うが、元はといえば山賊なんてしている彼女たちが悪いのだ。きっと彼女たちなら更生出来るはずだ。……町で掃除していたら声かけてやろうププッ。
息を整え、ポーションを一気に飲み干す。付き合いで買ったものだがとてつもなく高かった。効果は確かなようで活力が漲ってくる。
そのまま私はこのどさくさに紛れオークの群れに向かう。
「いたいた…」
念願のオークの群れを発見、長い道のりでした…
あぁ…予想以上に皆さんおっきいですね…もちろんおっぱいがです。
魔法で気配を消し、様子を見る。
ゴブリンと討伐隊の戦闘音が聞こえてくるので、まだ大丈夫そうだ。
オークたちもこの音が気になるようで音のするほうに行くか行かないかで話し合いをしているようだ。
「ちょうどよく固まってくれたな…」
一箇所にまとまってくれている為、かなり都合がいい。神のご加護だろうか今度、教会にいったら多めに寄付してやろう。
深呼吸する。走って着崩れたローブを直す。杖を握り締める。全身全霊の力を発揮できるように極限まで集中する。
「いける!」
彼の全力の魔力が篭もった杖が振られる。
オークの固まりの中心に閃光と轟音が炸裂する。光と音に魔力を大量に使う魔法のため威力なんてない、こけおどし魔法である。
「きゃぁぁぁ!!」
それでも十分効果はあったようで、突然の奇襲にパニックを起こしたオークたちは散り散りに逃げ出す。
「後は、孤立したオークさんを…ヌフフ」
「ん?」
一人だけ動じていないオークがいる。それどころかこちらに石鎚を構えて向かってくる。
「ゲッ」
オークがパニック状態のうちに勝負を決め、さっさと連れ帰ってしまおうという計画であったため、向かってこられるのは想定外であった。
「ええい! ままよ! 相手してやるからついて来い!」
啖呵を切って山の奥に誘導する。ここでは討伐隊にすぐに見つかってしまう。
出来ればついて来て欲しくないな、と思いながら後ろを振り返る。
ついて来てる…
いつまでも逃げていても仕方がないので広めの場所で立ち止まる。
「一人であたしらに喧嘩売るなんざいい度胸じゃないかい。その度胸を買って、頭領のあたし直々に屈服させてやるよ」
どうやら親玉を連れてきてしまったらしい。見るからに強そうだ、頬に十字の傷があるし、眼帯してるし、石鎚は二刀流だし、これでもかというほどそれっぽい雰囲気は出てる。神も仏もないとはこのことである。教会への寄付はやはり無しにしよう。
「あんたが大人しく負けを認めるというなら、少しは優しく犯してやろうじゃないか」
「ん〜」
どうしたものか…?逃げれそうもないし…
「あたしが本気を出したらあんたなんか3秒で泣き出すよ!さっさと降参しちまいな!」
「んん〜〜〜」
そういわれても、せっかくここまできたんだしな…
「と〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っても強いんだよあたしは!怪我をしたくないなら優しく言ってるうちに言うこと聞きな!」
…何度も私を説得しようとするあたり、意外に平和主義なお方のようだ。これなら案外、尻に敷かれることはあっても、そこまで酷い仕打ちは受けないだろう。
「わかりました…大人しく従わせていただきます」
「そうかい、それが賢明な判断だよ、そのままこっちに来な」
「え?このままでいいんですか?」
杖持ったままでいいの?
「?? どういう意味だい?」
…わかっていないようだ。
いや、もしかして俺の忠誠心を試すためにやってるのかも…
いや、単に油断しきってるだけ?それならチャンスじゃないか?
…どうしよう…
「グギギ…」
「なに変なうめき声上げてるのさ、あたしも溜まってるんださっさと犯されな!」
おもむろに武器を捨て、防具を取り外しながらこちらに近づいて来る。
あ、やっぱりおっぱいすごいね。…ではなくて、これ完全に舐められ切ってるよね、…さすがちょっとプライドが傷ついた。どうせ、死ぬわけでもないし、やるだけやってみるか。
「気が変わった、やっぱり勝負することにします」
「へ?」
「どうぞ、服を着ているうちに攻撃はしないので用意してください」
「いやいやいや…ほら…あたし強いよ?もしかしたら、あんた殴られて骨折れちゃうかも…」
ん?もしかして…?
「骨折くらいなら治癒魔法で応急処置くらい出来ます」
「下手したら死んじゃうかもしれないし…」
「下手しないようにしますね」
「きゅ…急にどうしたのさ!!」
明らかに狼狽している。
「あんまり、舐められているので人類としての意地をみせようかな〜と」
「あ、あたしは舐めるような真似なんてしてないよ!」
「いやいや、武器持ったまま来いとか、裸になりながら歩いてくるとか舐めくさってますよね?」
「え?あ?あぁぁ!そうね!言われてみると、確かにね!でもあたし強いから!丸裸でもあんたくらいになら余裕だから!」
「あ、もう言われないと気づかないほどナチュラルに舐めてると。
これはもう私としては刺し違える覚悟で戦うしかないようですね」
「え?え?いや、そんな無理しなくていいんだよ?」
「ねっ?まだ間に合うから、降参してもいいんだよ?お姉さん優しくしてあげるよ?」
…口調まで変わってきている。
「もう降伏勧告は結構ですので、さっさと白黒つけましょう」
「う…」
「じゃ、裸でも余裕だそうですし、いきますね」
杖を構え発動の準備をする。
「ちょ!?ちょっと!?タンマ!ね!待って!ちょっと待って!?」
「問答無用!」
眼帯オークの目の前に氷塊を叩き下ろす。
「ひぃ!」
彼女は情けない声を上げへたへたとその場に座り込んでしまう。
「今のを避けるとはさすが頭領を名乗るだけありますね。じゃあこれならどうです!!」
魔力で出来た矢を顔の横を掠めるように放つ。
「ひっひぃぃぃ」
さらに情けない声を上げながら震え始めた。
なんだろう… 何かに目覚めそう!!
「まさか、この攻撃すら避けられるなんて…舐めていたの私の方でしたね…これが全力です!」
威力を極限まで減らした魔法の矢を体に当たらないように撃ち続ける。
「あぅう…あたしの負けでいいから!!お願い!もうやめてよぉ!」
「よく聞こえないぞ、繰り返せ!」
「あたしの負けです!!もう許してぇ!!」
「くそっ!通信妨害か…」
「眼帯も伊達だし、顔の傷も化粧なんです!!ほんとは仲間の中で一番弱いんです!!」
「今更そんな情報がなんだというんだ!」
「うっうっ…ごめんなさい…ごめんなさいってばぁ…」
ついに泣き始めた、このまま続けると失禁しそうなのでやめることにする。
これ以上自分の性癖を増やしたくないんでね。
「じゃあ、いい加減許してしんぜよう」
「ほんと?ほんとに?」
「ほんとに」
「あぁぁぁぁ…」
シャァァァァァァ
「実は許して欲しくないとか?」
「あぅぅぅ…違うんです…ほっとしたら急に・・・」
安心して気が緩んだのだろう。結局彼女は失禁してしまった。
羞恥で顔を真っ赤にしながら放尿し続ける。彼女の座っているところに薄黄色の水溜りが出来る。
その姿をみて私は言いようのない興奮とときめきを感じたのであった。もうダメだね。
「で、俺が勝ったわけだけどお願い聞いてくれる?」
「……はい、あたしに出来ることでしたら、なんなりとお申し付けください、ご主人様」
すっかりしおらしくなっている。ここまで豹変するとは…
「じゃ、遠慮なく……
結婚を前提にお付き合いしていただけませんか?」
「はい、今ここで、あたしはあなた専用の肉便器になることを誓います」
あれ?言葉の齟齬を感じるんだけど?大丈夫だよね?俺、魔導師から調教師にジョブチェンジしてないよね?
「さっそく家まで案内したいんだけどいいかな?」
「その前にお願いがありますご主人様…」
「え?なに?」
「仲間たちにご主人様が出来たことの報告とお別れが言いたいのです…」
「あ、あぁ〜それか… それはたぶん町に行かないと言えないと思うな…」
「へ?」
…………
………
……
…
「…ということがあってめでたくゴールインしたんだけど、ほんと、うちの嫁さんは最高だよ。オークなんだけどね、あのもっちりむちむちの体!もうね…もう…たまらんね…っ!フヒッ」
終わり
急に夜中に目が覚めてしまった。
寝巻きが汗でびったりとくっついて不快この上ない。
もう一度寝直そうとしても雨季のジメジメとした湿気と熱気のせいで寝れそうにない。
窓を開けて外気を取り入れようと考えたが、ここは森の中、窓を開けっぱなしになどしたら、たちまち蚊の餌食にされてしまう。
「さて、どうするかな…」
台所に水を汲んでくる。井戸水ではなく魔法によって保存されている水のため温くなっている。
生暖かい飲み水を飲み、椅子に腰掛けて、考えを巡らせる。
「今年は、一段と暑いみたいだな…まったく運の悪い」
例年ならば、暑さをしのぐための術式を発動させるのだが、魔道具を買い付けていた行商人が今年、行方不明になってしまった。おそらく、アマゾネスやフェアリーなんかに連れて行かれたのだろう。
おかげで必要な道具を揃えることが出来ず。むしむしとした部屋で愚痴を言わなければならない羽目になった。
「いっそ、思い切って裸で寝るというのもいいかもしれん。寝巻きがべたつくから眠れんのだ」
さっそく実行に移したところ、思いのほか気持ちが良い。汗がそのまま蒸発し、体が心地よく冷えてくる。
その晩はそのまま眠りにつくことができた。
ハックション!! ウェ゛ーイ
朝起きると体の芯から寒さが襲ってくる。体もだるい、頭はじくじくと痛む。
なぜ、あのときの私はこの危険性を考えてなかったのか…
「いくら暑いからと言って、裸は不味かったか…」
熱で軋む体と痛む頭を酷使し、どうにか着替えてベッドに横たわる。
昨晩の自分を殴り飛ばしたい気分である。
いちおう、魔導師のはしくれなので、家にあった薬草で解熱剤を作ったものの。風邪がすぐによくなるものではなく、今日は一日安静にしていなければならない。
「あぁ…こんなときに嫁さんでもいれば…」
この前にあった友人が、先日結婚した嫁の自慢をしていたことを思い出す。魔物娘と結婚したと聞いて心配であったが、彼が本当に幸せそうであったため、杞憂であったことを悟った。
『ほんと、うちの嫁さんは最高だよ。スライムなんだけどね、あのひんやりプニプニの体!
もうね…もう…たまらんね…っ!フヒッ』
涎を垂らしながら惚気話する彼に、別の心配をしたが。
「結婚か…」
今寝ているベッドに、美しいもしくはかわいらしい女性がいっしょに寝ていることを妄想してしまう。
人の温もりと柔らかさを想像し、人肌恋しくなってしまう。昔はよく娼館に通ったものだが、森に越してきたからはご無沙汰になっている。
「もし、結婚するんだとしたら俺も魔物娘の女の子と…」
友人の幸せそうな顔を思い出す。
「よし!俺、結婚する!結婚!けっこぉぉぉぉぉぉぉぉおん!」
ガバッとベッドから起き上がり大きな声で宣言する。急に頭を揺らしたせいでガンガンするがそんなことは気にならないほど興奮していた。
……今の私から見ても、あのときの私はどうかしていた、もしかしたら薬草の中に間違ってマズイ物が紛れ込んでいたのかもしれない。もし、あの絶叫を誰かに聞かれていたら恥ずかしさのあまり首をくくっていた事だろう。森の中に住んでいて本当によかったと思う。
ダダダッ
書庫に向かって一直線でから魔物娘の図鑑を持ってくる。この森に住むときに、魔物娘に対抗できるようにと買ったものだが、そのあとすぐに気配を消す術を覚えたため、不要と思い読んでいなかった。
「…………」
本に穴が開くほどとよく言われるが、それくらいの気迫で読んだ。誰かが私の目を見ることが出来たなら、おそらく真っ赤に血走っていただろう。
「ふう…」
読み終わるのに半日以上かかり、すでに真夜中になっていた。尋常ではない集中力を発揮し、特徴はあらかた覚えることが出来た。今度は、どんな魔物娘がいいのか自問自答することとなった。どうせ、夜は暑くて眠れないのだ。夜を徹して考え続けよう。
しかし、どの魔物娘も魅力的で甲乙つけがたい、そのなかで人生の伴侶決めるのは非常に大変な作業である。ここは、消去法で地道に探していきたい。
……今の私から見ても、あのときの私はどうかしている。お前、選べる立場じゃないだろ?土下座してでもお願いする立場だろ?30過ぎのおっさんがなにを贅沢言ってるんだ? しかし、そのおかげで今の私がいるのでなんともいえない気分になる。
「まず、魔導師といってもそこそこの俺がどうにかできる相手じゃなきゃいけないな」
ドラゴンやバフォメットやヴァンパイア、いわゆる上級魔族に会うことなど自分の実力では至難の業である。仮に会えたとしても指先一つでダウンであろう。
「出来ればここに住み続けたいな…」
なんだかんだ言ってもこの生活は好きで始めたことだ、この静かな環境を手放したくない。そうなると、ハニービーやジャイアントアントなど巣で生活する魔物娘とは難しい。海の中で暮らすことも選択肢から消える。
「あんまり、遠くまでは探しにいけないな…」
先ほども言ったようにそこそこの魔導師である自分にとって旅とは命がけの冒険になる。魔界やジパングまでいくなんてもっての外である。
「そういえば俺、毛アレルギーなんだった…」
モフモフは非常に魅力的だが、多分それをした後に、鼻水と涙地獄に落ちてしまうであろう。
「スライムは…うちじゃダメだろうな…」
薬品棚の方に視線を移す。スライムは液体のため薬品を洗い流すことが出来ないだろう。万が一、有害な薬品が体に混ざったしまったら大変なことになってしまう。というか嫁さんをそんな危険な場所に居させたくない。
「Sっ気はあんまりないほうがいいかな…」
一人ひとり性格が違うのでなんともいえないがアラクネやダークエルフなどの種族はその傾向が顕著らしい。ちょっと惹かれるものがあったが戻ってこれない気がするのでやめておく。
「だいぶ絞れてきた気がするな」
「あっ!」
「一番重要な要素を忘れていた…」
「おっぱい!」
「おっぱいがないと始まらないわ!」
サバトと妖精の国に宣戦布告する。ないよりあったほうが良いに決まっているではないか。
その後も私は夜通しさまざまな視点から吟味を続けた。
その結果…
「オークさん!俺、オークさんと結婚する!」
それほどの力量がなくても戦える相手で、わざわざ遠くに行く必要もない。この家に住むことができ、体毛も少なくスライムでもない。オークは負けを認めれば従順らしく、いきなり緊縛プレイなどになることはないだろう。
「そして、何よりムチムチプリン…」
これが決定の一番のウェイトを占めていた。
夜はもうすでに明けており、森の中にも微かに光が差し込んでいる。
「いける…今ならドラゴンだろうがリリムだろうが倒せそうな気がする…」
一世一代の晴舞台に彼の胸は高鳴っている。風邪も徹夜の疲れも全く感じなかった。
着々と準備を整えていく、自分の魔導師としての力をありったけ使うつもりであった。魔力を高めるローブを纏い、下中級魔法ならば無詠唱で展開することが出来る、もったいなくて使ってなかった特注の杖を持ち、森を抜けた山岳地帯に向かう。
山には問題なく着くことが出来た。森を歩いてる最中何度か魔物娘と遭遇したが、私の顔を見るなり逃げ出してしまう。少し傷ついたが無事に来れたのでよしとする。
「さて…探すとするか・・・」
用意していた周辺の地図に物質感知の術式を組み、展開させる。地図に手をかざすとさまざまな情報が頭に浮んでくる。上級魔導師ならば細部までの情報を引き出すことが出来るのだろうが、私の実力では、おおよその位置と大きさしかわからない。
「群れらしきものが3つ…」
1つは、身長130〜150cmくらいの群れが10人、おそらくゴブリンであろう。
2つ目は、数が8人、身長150〜170cmくらいの群れ、これが本命のオークの群れだろう。なんてったって胸がありますもの。
「…で最後の一つは…なんじゃこりゃ?」
数は5人と一番少ないが小さいのが130cm、大きいので200cmと差があり、体つきから男性もいることがわかる。そして、下半身が蛇の者までいるためこの集団が何者なのか予測できない。しかもまっすぐとオークの群れに向かっている。
「……もしかして、討伐隊か…?」
ここは、親魔物領のため魔物娘が住んでいても問題がない。しかし、略奪行為が認められているわけではなくオークやゴブリンなどが悪質にそれを繰り返すと、ギルドに討伐依頼がくることがある。討伐と言っても殺傷にいたることはなく、魔法などで捕縛の後、地方の法によってさまざまだがこの地方では、希望した被害者男性へ更生の名目の元、奴隷として引き渡される。奴隷といってもほとんどは性的な意味である。しかも大半の被害者男性はその奴隷とゴールイン。もうそれ奴隷じゃないだろ。
ちなみに、それを免れた場合罪の重さによって変わってくるが、大半は町の掃除などの奉仕活動をさせられる。性的な意味ではなく、真面目に。
「どうするどうするどうするよ!」
百戦錬磨のギルドの連中が相手ではオークに勝ち目など微塵もない。かといって指をくわえてみていれば、全員しょっ引かれて終わり、私の夜通し練った人生計画も終了である。どうにかして時間を稼がなければならない」
「仕方ない…危険な賭けだが…」
「あ〜あんな所に〜ゴブリンの〜群れがいるぞ〜これは大変だ〜早く逃げなくちゃ〜(棒)」
見つけやすい場所で、大きな声で自分の存在をアピールする。ゴブリンたちがこちらに気づいたことを確認し走り出す。
「あ!ひさしぶりの人間だ!よわっちそうだし、みんな〜やっちゃえ〜!」
「アイアイサ〜!」
私を見つけた彼女たちは、リーダーの号令とともにこちらに向かって走ってくる。どうにか作戦は成功しそうだ。
「まてまて〜」
「いたくしないから〜」
「こん棒持ちながらじゃ説得力ないよ! てか足はやっ!」
甘く見ていた。小さくとも魔物であり人間とは違うのだ。地の利もあちらにあるようでみるみる差が縮まって行く。
「あばばばばば…」
脳の半分はすでに彼女たちに捕まった後をシミュレートしている。…存外悪いものではないらしい。
いや!気をしっかり持て!自分!何のためにここまできたのだ!そしてなんでオークさんを選んだかわかっているのか!そう!
「残念ながら胸のない君たちに捕まるわけには行かない!」
そう叫び、自分を激励する。もう少しだ。
「え〜!」
「しつれ〜い」
「おじさんのせーへきなんて、あたしたちにはカンケーないし〜」
「あ!でも、おるすばんしてるオヤブンはむねおっきいよ!」
「なぬ!」
まさかホブゴブリンまでいたとは…深夜の嫁さん選びの際、最終的にホブゴブリンとオークのどちらがいいかでとても迷ったのだ。その結果、辛くもオークさんに軍配が上がった。ホブゴブリンの落選理由は、「たぶんここら辺にいないから」
「え?え?どうしよ?」
いきなり対抗馬の出現である。すでに脳みその半分は裏切って、ホブゴブリンとの結婚生活モードに入っている。走る速度もだんだん落ちてきている。
足音がすぐ後ろまで迫っている。これはもうだめだな。
「さ!おじさん、かんねんしてあたしたちとイイコトしよ〜」
「あ、」
私はとてつもない思い違いをしていた。そうである あたし「たち」なのである。ホブゴブリンだけ家に連れ帰るなんて到底不可能。絶対にこいつらもついて来る。10人以上養う経済力など私にはない。コブ付きならぬゴブ付きであった。
「やっぱ、無理!ごめんね!」
裏切り者が戻ってきたおかげでどうにか最後の気力を振り絞ることが出来た。
「どぁぁぁぁらぁぁぁぁぁぁ!!」
もはや、気力だけで走っている。愛の力といっても過言ではない。
そしてついに、目標の後ろ姿が見えた、作戦は成功である。
「た、助けてくださあぁぁぁい!!」
今回は演技ではなく正真正銘心の叫びである。討伐隊が気づきこちらに向かってくる。私のすぐ後ろにゴブリンたちが見えるのですぐに状況を察したようだ。
「ゴブリンに人が襲われている!至急救援に向かうぞ!」
「ハッ!」
「ん〜?なんだなんだ〜?」
「あたしたちのえものをよこどりする気だね!かえりうちだよ!」
「でもなんだかつよそうだよ…」
「数はこっちのほうが多いからきっとだいじょうぶ!みんな〜かかれぇ〜!」
討伐隊とゴブリンとの戦闘が始まる。これで時間は稼げるはずだ。ゴブリンたちには頑張って欲しい所だが、おそらく10分もかからずやられてしまうだろう。少し気の毒に思うが、元はといえば山賊なんてしている彼女たちが悪いのだ。きっと彼女たちなら更生出来るはずだ。……町で掃除していたら声かけてやろうププッ。
息を整え、ポーションを一気に飲み干す。付き合いで買ったものだがとてつもなく高かった。効果は確かなようで活力が漲ってくる。
そのまま私はこのどさくさに紛れオークの群れに向かう。
「いたいた…」
念願のオークの群れを発見、長い道のりでした…
あぁ…予想以上に皆さんおっきいですね…もちろんおっぱいがです。
魔法で気配を消し、様子を見る。
ゴブリンと討伐隊の戦闘音が聞こえてくるので、まだ大丈夫そうだ。
オークたちもこの音が気になるようで音のするほうに行くか行かないかで話し合いをしているようだ。
「ちょうどよく固まってくれたな…」
一箇所にまとまってくれている為、かなり都合がいい。神のご加護だろうか今度、教会にいったら多めに寄付してやろう。
深呼吸する。走って着崩れたローブを直す。杖を握り締める。全身全霊の力を発揮できるように極限まで集中する。
「いける!」
彼の全力の魔力が篭もった杖が振られる。
オークの固まりの中心に閃光と轟音が炸裂する。光と音に魔力を大量に使う魔法のため威力なんてない、こけおどし魔法である。
「きゃぁぁぁ!!」
それでも十分効果はあったようで、突然の奇襲にパニックを起こしたオークたちは散り散りに逃げ出す。
「後は、孤立したオークさんを…ヌフフ」
「ん?」
一人だけ動じていないオークがいる。それどころかこちらに石鎚を構えて向かってくる。
「ゲッ」
オークがパニック状態のうちに勝負を決め、さっさと連れ帰ってしまおうという計画であったため、向かってこられるのは想定外であった。
「ええい! ままよ! 相手してやるからついて来い!」
啖呵を切って山の奥に誘導する。ここでは討伐隊にすぐに見つかってしまう。
出来ればついて来て欲しくないな、と思いながら後ろを振り返る。
ついて来てる…
いつまでも逃げていても仕方がないので広めの場所で立ち止まる。
「一人であたしらに喧嘩売るなんざいい度胸じゃないかい。その度胸を買って、頭領のあたし直々に屈服させてやるよ」
どうやら親玉を連れてきてしまったらしい。見るからに強そうだ、頬に十字の傷があるし、眼帯してるし、石鎚は二刀流だし、これでもかというほどそれっぽい雰囲気は出てる。神も仏もないとはこのことである。教会への寄付はやはり無しにしよう。
「あんたが大人しく負けを認めるというなら、少しは優しく犯してやろうじゃないか」
「ん〜」
どうしたものか…?逃げれそうもないし…
「あたしが本気を出したらあんたなんか3秒で泣き出すよ!さっさと降参しちまいな!」
「んん〜〜〜」
そういわれても、せっかくここまできたんだしな…
「と〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っても強いんだよあたしは!怪我をしたくないなら優しく言ってるうちに言うこと聞きな!」
…何度も私を説得しようとするあたり、意外に平和主義なお方のようだ。これなら案外、尻に敷かれることはあっても、そこまで酷い仕打ちは受けないだろう。
「わかりました…大人しく従わせていただきます」
「そうかい、それが賢明な判断だよ、そのままこっちに来な」
「え?このままでいいんですか?」
杖持ったままでいいの?
「?? どういう意味だい?」
…わかっていないようだ。
いや、もしかして俺の忠誠心を試すためにやってるのかも…
いや、単に油断しきってるだけ?それならチャンスじゃないか?
…どうしよう…
「グギギ…」
「なに変なうめき声上げてるのさ、あたしも溜まってるんださっさと犯されな!」
おもむろに武器を捨て、防具を取り外しながらこちらに近づいて来る。
あ、やっぱりおっぱいすごいね。…ではなくて、これ完全に舐められ切ってるよね、…さすがちょっとプライドが傷ついた。どうせ、死ぬわけでもないし、やるだけやってみるか。
「気が変わった、やっぱり勝負することにします」
「へ?」
「どうぞ、服を着ているうちに攻撃はしないので用意してください」
「いやいやいや…ほら…あたし強いよ?もしかしたら、あんた殴られて骨折れちゃうかも…」
ん?もしかして…?
「骨折くらいなら治癒魔法で応急処置くらい出来ます」
「下手したら死んじゃうかもしれないし…」
「下手しないようにしますね」
「きゅ…急にどうしたのさ!!」
明らかに狼狽している。
「あんまり、舐められているので人類としての意地をみせようかな〜と」
「あ、あたしは舐めるような真似なんてしてないよ!」
「いやいや、武器持ったまま来いとか、裸になりながら歩いてくるとか舐めくさってますよね?」
「え?あ?あぁぁ!そうね!言われてみると、確かにね!でもあたし強いから!丸裸でもあんたくらいになら余裕だから!」
「あ、もう言われないと気づかないほどナチュラルに舐めてると。
これはもう私としては刺し違える覚悟で戦うしかないようですね」
「え?え?いや、そんな無理しなくていいんだよ?」
「ねっ?まだ間に合うから、降参してもいいんだよ?お姉さん優しくしてあげるよ?」
…口調まで変わってきている。
「もう降伏勧告は結構ですので、さっさと白黒つけましょう」
「う…」
「じゃ、裸でも余裕だそうですし、いきますね」
杖を構え発動の準備をする。
「ちょ!?ちょっと!?タンマ!ね!待って!ちょっと待って!?」
「問答無用!」
眼帯オークの目の前に氷塊を叩き下ろす。
「ひぃ!」
彼女は情けない声を上げへたへたとその場に座り込んでしまう。
「今のを避けるとはさすが頭領を名乗るだけありますね。じゃあこれならどうです!!」
魔力で出来た矢を顔の横を掠めるように放つ。
「ひっひぃぃぃ」
さらに情けない声を上げながら震え始めた。
なんだろう… 何かに目覚めそう!!
「まさか、この攻撃すら避けられるなんて…舐めていたの私の方でしたね…これが全力です!」
威力を極限まで減らした魔法の矢を体に当たらないように撃ち続ける。
「あぅう…あたしの負けでいいから!!お願い!もうやめてよぉ!」
「よく聞こえないぞ、繰り返せ!」
「あたしの負けです!!もう許してぇ!!」
「くそっ!通信妨害か…」
「眼帯も伊達だし、顔の傷も化粧なんです!!ほんとは仲間の中で一番弱いんです!!」
「今更そんな情報がなんだというんだ!」
「うっうっ…ごめんなさい…ごめんなさいってばぁ…」
ついに泣き始めた、このまま続けると失禁しそうなのでやめることにする。
これ以上自分の性癖を増やしたくないんでね。
「じゃあ、いい加減許してしんぜよう」
「ほんと?ほんとに?」
「ほんとに」
「あぁぁぁぁ…」
シャァァァァァァ
「実は許して欲しくないとか?」
「あぅぅぅ…違うんです…ほっとしたら急に・・・」
安心して気が緩んだのだろう。結局彼女は失禁してしまった。
羞恥で顔を真っ赤にしながら放尿し続ける。彼女の座っているところに薄黄色の水溜りが出来る。
その姿をみて私は言いようのない興奮とときめきを感じたのであった。もうダメだね。
「で、俺が勝ったわけだけどお願い聞いてくれる?」
「……はい、あたしに出来ることでしたら、なんなりとお申し付けください、ご主人様」
すっかりしおらしくなっている。ここまで豹変するとは…
「じゃ、遠慮なく……
結婚を前提にお付き合いしていただけませんか?」
「はい、今ここで、あたしはあなた専用の肉便器になることを誓います」
あれ?言葉の齟齬を感じるんだけど?大丈夫だよね?俺、魔導師から調教師にジョブチェンジしてないよね?
「さっそく家まで案内したいんだけどいいかな?」
「その前にお願いがありますご主人様…」
「え?なに?」
「仲間たちにご主人様が出来たことの報告とお別れが言いたいのです…」
「あ、あぁ〜それか… それはたぶん町に行かないと言えないと思うな…」
「へ?」
…………
………
……
…
「…ということがあってめでたくゴールインしたんだけど、ほんと、うちの嫁さんは最高だよ。オークなんだけどね、あのもっちりむちむちの体!もうね…もう…たまらんね…っ!フヒッ」
終わり
15/11/25 00:28更新 / ヤルダケヤル