読切小説
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リャナンシーさんが顔を引きつらせる
「リャナンシーは創作物が食料だと言ってたではないですか」

「 優れた が抜けてる」

「なかなかの自信作だったのですが」

「では、あらすじをどうぞ」

「俺は何の変哲もない高校生!!

強いてあげれば、金髪で両目の色が違ってて、
記憶喪失で両親がいないくて、今は1人暮らしってとこかな!!」

「続けて」

「そんな俺だけど学校の帰り道、突然辺りが暗くなったと思ったら見知らぬ場所に立っていたんだ!!

どうやら俺は魔物が女の子に変わっちまった異世界に迷い込んだみたいだ、他にも『げんそーきょー』だとかいう所から飛ばされてきた空飛ぶ女の子や、『スタンド』ってのが使える奴らもいる」

「ついでに、英霊やら戦車やらもだしたらいい」

「第二話から出てきます」

「………」

「どうかしました?」

「いえ…ここまでで貴方が感じたことは?」

「私の好きな物を全部混ぜたので名作になると思います、わた…主人公もカッコいいです」

「………」

「続けていいですか?」

「…どうぞ」

「異世界に飛ばされたおかげで俺の「能力」が覚醒!!
襲ってくる魔物娘達を「能力」で撃退!!」

「撃退の方法を具体的に」

「剣で真っ二つにしたり、魔法で蜂の巣にします」

「………」

「続けていいですか?」

「もちろんダメ」

「これからがいい所なのですが…」

「勘弁して」

「仕方ない、感想をお願いします」

「評価に値しない」

「……ひどい」

「最初から気をてらい過ぎてるかもしれない、
今度はその設定を全て封印して書いて」

「つまり、真逆の作風にすればいいわけですね」

「極端に言えばそうなることもないかもしれなくもない」

「わかりました、さっそく書いてきます」

「その前に、報酬のおやつ、作品が食べられなくてお腹が空いてる」

「残り物ですが、チョコレートケーキが冷蔵庫に入っています」

「残り物で十分」

………

……







「……美味しかった、これくらいのものが書ければいいのに…」

「書いてきました」

「今度は期待してる、見せて」

「あ、見る前に自分の名前をここにいれてください」

「………?」

「そうすると主人公の名前があなたの名前になります」

「…嫌な予感がする…」

「今度は恋愛で、主人公は女子中学生です。クラスでいじめられている主人公が転校生の男子に一目惚れされます。いじめはさらに苛烈になりますが、転校生が守ってくれます。強姦されたり、殺されかけたりしますが何とかなります。最後は主人公と転校生の子供が出来ますが転校生が難病で死にます、感動です☆(ゝω・)v」

「そうきたか…」

「どうでしょうか?」

「……私はどうしようもない無力感に打ちひしがれてる」

「私の才能の前に教えることが何もないということでしょうか?」

「もうそれでいい」

「リャナンシーさんから免許皆伝を頂きました」

「…そんなはずないでしょ、破門よ」

「これでは小説の投稿所に作品を出せません…」

「…出してどうするの?」

「投稿すればあの人が読んでくれます。
そして人気になったらオフ会に誘うのです。
人気作家の正体が私だと知ればきっと私の事を好きになるでしょう!!」

「まどろっこしい女」

「なんとでも言ってください、あの人に嫌われることがないように計画的にいくのです。
彼が好きなもの全て私も好きです、そして、私が彼に彼の好きなものを与えられるようになれば私だけを愛してくれる!! 私だけを見てくれるのです!!」

「そんなことしてる間に他の子に取られる」

「そのため、早く上達するようにとリャナンシーさんに指導をお願いしました。
それに、悪い虫が付くようなら叩き潰すだけです」

「……瞳孔が開いてる」

「…料理も覚えました、テニスもインターハイまで行けました、STGだって彼より上手いですし、勉強だって教えて上げられる、ギターだって弾けます!! グッピーの飼い方も分かるし、歌だってコンクールで優勝しました!! ライトノベルが好きで、オッドアイや記憶喪失に憧れていたり、携帯小説をバカにしててもこっそり読んでいたり、敬語で喋る子が好きってことも知ってます!!」

「…それが原因か……」

「もう少しなんです、もう少し頑張れば私だけを見てくれます!!
これを書くことがその「もう少し」なんです!!」

「わかった、そこまで熱意があるなら私も本気で手伝う」

「ありがとうございます、さっそく御鞭撻お願いします」

「急に冷静になられるとびっくりする…
でもそのまえに、お茶でも飲んで休憩」

「そういわずに……」

「まずは落ち着いて、そんなんじゃいい作品が書けない。
ここに集中力が高まる飲み物があるから飲む事をおすすめする」

「わかりました……こんな色の飲み物、初めて見ました」ゴクッ

「………気分はどう?」

「羽が生えたように軽いです」

「……(実際生えてる)

「頭もすっきりしました」

「貴方がやるべきことが分かったでしょ?」

「はい、












あの人に本を読ませてきます」




終わり
15/11/25 00:30更新 / ヤルダケヤル

■作者メッセージ
「幼馴染が俺の背中に胸をくっ付けて本を読ませてくる」

「そんなタイトルありそうです」

言われる前に言わせていただきます。

俺が言うな


ストーリーやキャラを考えたりしてると、どうもキャラ設定だけドンドン膨らんでいって困ります。よくSSを書く上でネタにされる最低系SSも他人事とは思えません。というわけで、自戒を込めた作品になりました。

タグをリャナンシーちゃんにするかレッサーサキュバスさんにするか
迷いましたが、どっちかというとリャナンシーさんよりの作品だと思いましたのでこっちに。

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