読切小説
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ブラッディアンポンタン
「こつこつ毎日のように血を溜めた結果!! なんと! 目標のタライいっぱいまで溜めることが出来ました!! 拍手!」

「しないよ、こんなの!! なにやってんのさ!?」

「ヴァンパイアさんにそのまま告白しても望み薄だから、血まみれになってアタックしてみよっかな…と」

「みよっかな…じゃないよ! 死んだらどうするの!?」

「死なない程度には加減してましたし、実際こうして元気に生きてますし?」

「このバカは……」

「てなわけで」ザバー

「うわっ!急に被るな! 口に入ったじゃないかバカ!」

「結婚式には呼んでやるよ!!
 じゃあな!」

「待った!!」

「はい?」

「キミは魔物娘を甘く見すぎてるようだね…
 そんな格好で町に出たらヴァンパイアさんに会うどころか商店街に着く前に
 他の娘に捕まっちゃうよ!!」

「ハハハハッ!!どこの世界にヴァンパイアさん以外に血まみれの男を捕まえようとする奴がいるんだ?」

「甘い甘い!! 自分が今いかに危険な状況なのかわかってないね
 このボクがキミがこのまま外に出たらどうなるか教えて上げるよ!!」

「いや、いいです」

「教えて上げるよ!!」

「結こ「教 え て ア ゲ ル♥ 」

「お願いします…」

「よしよし、じゃあまずは家から出て町に行くまでの街道に潜む危険から教えてあげよう」

「あ〜い」




 「ひゃっほぉぉぉぉ!!」

 ヴァンパイアさんに愛を伝えるために家の戸を勢いよく開け、町を目指して街道を全力でひた走る。血で濡れた衣服が重たいが、そんなこと今は気にならない。流れ出る汗と滴り落ちる血! あぁ俺生きてる!!恋してる!!足が砕け散ろうともあなたの下まで走り続けます!!


………


「ゼェ…ハァ…ハァ…」

 結構距離あるのね街道…

「ハァ…ハァ…」

 さすがに辛いっすわ…

「ハァ…ハァ…」
「ハァハァ…」

 ちょっと、ちょっとだけ休憩しよう
 うん、私も疲れちゃったよ…

「ハァ…ハァ…ふぅ…」
「ハァハァハァハァ…」

 もう少ししたら行くか…
 そうだね、もう少ししたら棲みかに着くから頑張ろ!

「ん?」
「わふん?」

「…あら、何で街道にワーウルフさんがいらっしゃるんでしょうか?」

「あんなに美味しそうな臭い出されてたから来ちゃったワン♪」

「……森にお帰りください」

「うん! いっしょに帰ろ!!」

「そ、そういう意味じゃな…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 
その後、ワーウルフの棲みかに連れてこられた俺は多数のワーウルフ達と森の中で暮らすことになるのだった・・・

バッドエンド1 犬の鼻はシャープ」


「…まあ無くもないというか」

「ただでさえ匂うキミが血まみれなんて匂いに敏感なワーウルフにすぐ見つかっちゃうよ」

「え!? ただでさえ臭うの!?
……ショック…香水付けよ」パフパフ…

「失言だったよ…それはいいとして、まだまだ街道には危険が潜んでいるのだ!」

「ワーウルフの脅威を逃れてもまだあるの!?」





 「ひゃっはぁぁぁぁ!!」

 臭いを香水で消した俺は、今度こそヴァンパイアさんの旦那さんになるために街道を走りだした。風を感じる…いや、俺が風になってる!!愛のためなら人間は風にさえなれるんだね!待っててヴァンパイアさん!!今あなたに会いに行きま…ヒデブ!!


 突然、横から凄まじいタックルが直撃する。その衝撃は頭まで上り、一瞬で気を失ってしまった。かすかに開いた目から見えたのは健康的な筋肉と褐色の肌と二本の角そして血走って我を忘れた目だった…

「ふしゅぅ……そんな格好してあたしを誘ってるのか?
 いいぜ…とことん搾ってやるよ…」


 憐れ、発情したミノタウロスに捕まったキミはズルズルと引きずられ棲みかに連れこまれてしまうのだった…


バッドエンド2 血の色は血色」


「ある意味一番予想が付くオチだな」

「そうだね因みに、
こんなバージョンもあります」





「ある意味一番予想が付くオチだな」

「そうだね」

「じゃ、気を付けて行ってくる……わぐもっちゅ!!」

 突然、窓から飛んできた何かが後頭部に直撃し意識を失う…なんだこれは…牛乳缶・・・?

「ふしゅぅ……そんな格好してあたしを誘ってるのか?
 いいぜ…とことん搾らせてやるよ…」


 憐れ、発情したホルスタウロスに捕まったキミはズルズルと引きずられ牧場に連れこまれてしまうのだった…


バッドエンド3 強制牧場物語」



「………」キョロキョロ

「大丈夫さ、ボクが周りに結界を張っておいたから」

「あ、そう…」

「ま、町に着いてもたくさん危険はたくさんあるんだけどね」





 どうにか運よく町に着いた俺は周りの好奇の目に耐えながら、ヴァンパイアさんの邸宅を目指して歩く。血が少し乾いて来ているが、まだ問題ないだろう。もう少しだ、もう少しでちゅっちゅらびゅらびゅ…

「てへへ……」

「君キミ」

 俺がヴァンパイアさんとの妄想に耽っていると後ろから知り合いの自警団をしているデュラハンに声を掛けられた。

「はい?」

「近隣から不審者の通報があってね、一応そこで詳しく話しを聞かせてもらえないか?」

 抵抗しても相手がデュラハンでは勝ち目がない。

「あんまり時間がないのですが…」

 しょうがないので近くの屯所まで連れて行かれることになりました…
 どうせ顔見知りだし、長くは掛からないだろう。



「…それで、ヴァンパイアさんに告白するためにタライで血を浴びました」

「タライで、血を、か…フフッ……フフフ…」

「ど…どうしました?」

「フフ…まさかこんな古風な方法でアピールされるとは思わなくてね…」

「はい?」

「わざわざデュラハンのタライいっぱいの血なんて廃れた伝統に則して、私の所に来てくれるとはな…」
 
「連れてこられただけですけど…それに俺が好きなのはヴァンパイアさん…ていうかほとんどこじつけ…」

「わかっている、わかっている。素直になれないのはお互い様だ。
 まさか両想いだったなんて…
 その気が無い様に振舞っていたのは、二人ともだったというわけか…」

「え?なんなのこの人?だから違うってば…
 話しててもしょうがないな全く…それじゃ失礼します!」

「そう…愛し合う私達に言葉はいらない♥」カポッ

「く、首外してどうするんですか…は、放してください…
 う…うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 事が終わり、デュラハンさんの嬉しそうな寝顔を見ていると俺は何もかもどうでもよくなってしまうのだった…


バッドエンド4 知らないうちに旗は立つ」


「さすがにこれはないんじゃないかな?」

「そんなことないよ? キミって結構人気あるんだぜ?」

「またまたぁ〜」

「おかげでボクがどれほど苦労したか…」

「ん?」

「何でもない、それじゃ次のパターンを…」



 町に来た俺は「いや、もう十分わかった。今回は大人しく諦めて、別の方法を考えるよ」

「その方がいいと思うよ」

「次はどうしようか…」

「諦めたら?」

「あっ、そうじゃんヴァンパイアさんに俺の血を掛けるとかどうかな!?」

「ほとんど通り魔じゃないか…」

「ま、今はそれよりもこの血まみれの体をどうするかだな…」

「そうだね、お風呂沸かしてたから入ったら?」

「ありがとう…というべきなのだろうか」

「言って欲しいなぁ…」

「んじゃ、ありがとう」

「えへへ、どういたしまして」

「…幼馴染でボクっ子で…
 これで、これで…女の子だったら」

「現実って残酷だね」

「全くだな、それじゃ、風呂に入らせてもらいますかね」

「あ、ボクも入るよ、キミがいきなり被るからボクにも掛かっちゃたんだ」

「えぇ〜狭いから後で入れよ」

「まとめて入った方が経済的なんだよ
 それに男同士だし、なんの問題もないじゃないか」

「それもそうだな…」

「そうそう♪」










「……お前角なんて生えてたっけ?」






ァァァァァァァァァァ‼





バッドエンド5  どうみてもハッピーエンドです」

15/11/25 00:29更新 / ヤルダケヤル

■作者メッセージ
「よく考えると、全身に霜降り肉巻きつけた女の子に告白されるようなもんだよね」

タイトルだけが頭の中を一人歩きしていたので書きました。
皆もいろんなバッド(ハッピー)エンドを考えてみよう!

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