報告書「ワーバット」(中)
「さて、これからお前を痛めつけるわけだが…」
鞭を左右に、顔の前に垂らしながら勿体ぶる。私は気を強く持とうとするが、自然と男の持っている鞭の方へと目線が行ってしまう。
それに気が付いているのか、男は口の端をゆがめた。
「…ック。それがなんだってんだよ!」
声が震えるのを隠しきれない。だから大声をあげた。そうしないと心が折れてしまいそうだったから。
「盗った薬はどの程度だ? どうせ抱えるほどだろう?」
「フン」
こんな屑に場所を教えることもない。私は目線も合わせずに黙殺しようとした。
「そんなに麻薬がほしかったのか、それとも売り捌いて金が欲しかったのか。あさましいな」
「そんなはずないだろう!」
つい、カっとなって叫んだ。泥棒扱いもいい、罪人扱いでもいい。それでも麻薬を売っていた連中と同じに見られるのだけは我慢できなかった。
はっとして顔を下げるが後の祭りだ。男は納得するように頷いた。
「まあ、どうでもいいことだがな」
鞭を振り上げる。それがスローに見える。
バシィン!
「……ぁ、ぐ」
叫ぼうとしたが、声が出なかった。鞭で叩かれるなんてこと、今まで経験したこともないから。
「どうした? まだ一発目だぞ?」
挑発している。それが私の抵抗心に火をつける。歯を食いしばり、睨みつけてやった。
「ぬ、ヌルイね…それがどうした?」
これがささやかな抵抗、私からこの男にできる精一杯。
腕が振り上げられる。私は歯を食いしばる。叩かれる。そんな事が何度か続く。
「もう限界か?」
「ッギ……ぅ。ぁ…そ、そんなはず……ゥァ……ないでしょ!」
バシン! バシン!
悲鳴を上げないことで、屈指はしないと意思を示す。だが、淡々と作業のように鞭を振るってくる。涙があふれるのは止められなかったけど、意地でも悲鳴なんか出してやらない。
息が乱れる。体中は赤い蚯蚓腫れから血が出ている。
「苦しそうだな」
いったん手を止めた。時間の感覚がない。ずっと叩かれていた気もするし、すぐに終わった気もする。
「う……るさい。何でこんなことするのよ」
こちらから質問する。すぐに再開されるのがいやで、時間を稼ぎたかった。
「暗い場所では弱音は吐かないか…」
そう言うと、部屋に明かりを灯し始める。明るくなるにつれ、体が震えてきてしまった。
「や、やめて…」
「何か言ったか?」
睨まれる。たったそれだけで何も言うことができない。さっきまで文句を言ってくれた口は動いてくれない。それよりも大きくなっていく恐怖でどうにかなってしまいそうだ。
「…ぁ」
「この状態で叩くとどうなるんだ?」
そんな事を言われたって分らない。持っている凶器も、睨んでくる顔も、動きを封じる拘束具も怖くて仕方がない。
あぁ、鞭が降り上げられる……イヤ、痛いのはイヤ……振り下ろされ……
バシィィン!
「キャアァァァァァ!」
痛い痛い痛い! さっきより痛い! もうイヤ、痛い。
「そうか、泣くほど痛いか」
両目からボロボロと涙が出てくる。私は必死に顔を振る。許してもらえるかもしれないから。
「痛いの、痛い。痛いのヤなの…」
すぐに殺されると思っていた。それで恨みながら死のうと思っていたのに、こんなことになるなんて。
「面白い事をしようか?」
顎をつかまれ、上を向かせられる。カチカチとかみ合わない口。
「痛いの…はイヤァ」
「痛くはないさ」
そこで、さっきのワーウルフが帰ってきた。
「主人、見つけた」
「思ったよりも早いな。どうせ床下にでも隠してあったんだろう?」
「正解」
その言葉を聞いて凍りついた。隠した麻薬を見つけてきてしまったらしい。
「おい、今の話を聞いていただろう? 何をされるか察しがついたか?」
もしかして……ぁ、麻薬を広げて………やめて………それを近付けないで……
私は息をとめた。そんなものが私の体に入ってくると思うだけで鳥肌が立つ。
「主人、私は言った通り帰る」
「宿屋で寝てろ、すぐに終わる」
取り出したのは、注射器?
私は息を止めたのが無駄だと悟った。体に直接入れるつもりだ。
水で溶く、注射器に入れる。軽く振って中の空気を抜く。その1連の動作は滑らかだった。
「いや……ヤァァアァ!」
暴れようと思っても、拘束された体じゃ何もできない。腕をつかまれ、そのまま悪魔の薬が私の体の中へ入っていく。
「すぐに良くなるさ。これはそういう薬だからな」
「ウゥ……」
使い終わった注射器をしまい、袋に残っている薬をなめる。
「思ったより上質らしいな。」
服を脱いで体に触れてくる。その嫌悪感よりも先に、視界が揺れ始めていることのほうが重大だ。ジワジワと暖かくなっていく体。その薬は確実に私に効果を及ぼしている。
「ふ…ぅぅぅ」
撫でられている部分がだんだん心地よくなってくる。
「もう降参か?」
「や…だ」
ゴツゴツした手がゆっくりと私の服を脱がしていく。
お臍から顎まで、舌先で舐められる。ナメクジがはいずるような嫌悪感。
胸を弄られ、全身をマッサージするように揉みほぐされる。
軽く体を触られただけだというのに、パンティーから染み出るほどに濡れているのがわかる。それが悔しくて、情けなくて、さっきとは違う意味で涙があふれてきた。
だけど、それも濡れそぼったアソコをいじられてしまえば分らなくなる。
「挿入るぞ」
「ふぁ、あ、……アアアアアァ!」
自分の体が爆発したのかと思った。
目の前が真っ白になり、電流でも流されたのかと思った。
―――プシャァァァァ
私はあっけなく絶頂に追いやられ、そのまま失禁した。
「まだ動かしてもいないのに、それじゃあ先が思いやられるな」
深く差し込んだまま、腰を揺らして奥を刺激する。浅いところを刺激する。長いストロークで刺激する。そのありとあらゆる行為は私の理性を溶かしていく。
「ぅ、ぁ……」
「もう降参か?」
出会ったときから変わらない暗い表情。
「ガアアアア!」
私は力を振り絞ってコイツの首に噛みついた。自分の牙を食いこませ、首をふるって食いちぎった。
「……」
でも、食いつき方が浅かったのか、頸動脈を噛み切ることはできなかった。
「ッペ! ざまぁみろ」
「お前は……強いな」
予想外だったのは怒り狂うと思っていたのに、何故かこの男は私のことを眩しいものでも見るような眼差しで見つめている。
それが気に食わなかった。なぜか知らないけど、今までで一番大きい怒りがわいてきた。
けど、男は傷のことなんてなんでもないように動き始める。
「あう! あ、あああ」
ヤダ…そんなに動かないで。そんなにお語句と、またわかんなくなっちゃうの…だめ…それ以上は…
「奥を突かれるのが好きみたいだな」
「だ、ダメ! あふぁ、ああ! 」
何も分からなくてって、目の前が白くて、暖かくて……………………
私はいつの間にか気絶していたらしい。起き上がり、最初に感じたのは不快感。イライラしてどうしようもない。
「起きたか。あれから1日寝てたぞ」
「五月蠅いな…」
「機嫌が悪いな、まあそうだろう。だが、すぐに良くなる」
私に近づいてくる。これはチャンスだと思った。今は拘束されていない。襲いかかって倒してしまえば外に出られる。
そう思っていたのに、懐から取り出された注射器に釘付けになった。
「…あ」
見た瞬間に体が怯んでしまった。
「これでよくなる」
あっという間に腕から注入されてしまった。慌てて離れるけど、すでに注入されてしまった後。さっきまでのイライラがどこかへと消えてしまった。
「よ、よくも!」
「それより、お前の相方の話を聞かせろ」
「は?」
「報告書にも載っていなくてな。そういう話は調べるよりも当事者に聞いたほうがいい」
「なんでお前なんかに話さないといけないんだよ」
「暇つぶしだ」
でも、こいつの言う通りな気がした。アリアのことは私が一番知っているわけだし。……いや、まて。なんでそんな不自然な会話の切り替えに乗りそうになっているんだ私は。
「ふざけるな、話す必要はないわよ」
「そうか、それではまた今度だな」
特になにをするわけでもなく、この男は外へ行ってしまった。私を恐れて出て行ってしまったんだろう。
いい気分だった。仕返しができた気分だ。
鼻歌の1つでも歌いたくなる。それからあいつはある程度時間がたつたびに私に悪魔の薬を打ってきた。
けど、私は負けるつもりはない。だって、あんなに苦しんでいたアリアと違って私はそういうのが無い。きっと私には気分が良くなるだけの薬なのだろう。
アッシュは宿屋に戻り、酒を飲んだ。後ろからカーミルが寄りかかってきた
「調子は?」
「あれは薬に弱いらしい。薬が切れる前に新しく注入しているところだ。今日だけでかなりの量が入っている。常人なら死んでしまうほどに。魔物という丈夫な体のせいだろう」
「中毒症状を起こして楽に死なせるつもりだった?」
「……」
答えずに酒を流し込む。
「その首の傷は?」
「軽く噛まれただけだ」
「なんでよけられなかった?」
「不意を打たれただけだ」
「……バカ」
鞭を左右に、顔の前に垂らしながら勿体ぶる。私は気を強く持とうとするが、自然と男の持っている鞭の方へと目線が行ってしまう。
それに気が付いているのか、男は口の端をゆがめた。
「…ック。それがなんだってんだよ!」
声が震えるのを隠しきれない。だから大声をあげた。そうしないと心が折れてしまいそうだったから。
「盗った薬はどの程度だ? どうせ抱えるほどだろう?」
「フン」
こんな屑に場所を教えることもない。私は目線も合わせずに黙殺しようとした。
「そんなに麻薬がほしかったのか、それとも売り捌いて金が欲しかったのか。あさましいな」
「そんなはずないだろう!」
つい、カっとなって叫んだ。泥棒扱いもいい、罪人扱いでもいい。それでも麻薬を売っていた連中と同じに見られるのだけは我慢できなかった。
はっとして顔を下げるが後の祭りだ。男は納得するように頷いた。
「まあ、どうでもいいことだがな」
鞭を振り上げる。それがスローに見える。
バシィン!
「……ぁ、ぐ」
叫ぼうとしたが、声が出なかった。鞭で叩かれるなんてこと、今まで経験したこともないから。
「どうした? まだ一発目だぞ?」
挑発している。それが私の抵抗心に火をつける。歯を食いしばり、睨みつけてやった。
「ぬ、ヌルイね…それがどうした?」
これがささやかな抵抗、私からこの男にできる精一杯。
腕が振り上げられる。私は歯を食いしばる。叩かれる。そんな事が何度か続く。
「もう限界か?」
「ッギ……ぅ。ぁ…そ、そんなはず……ゥァ……ないでしょ!」
バシン! バシン!
悲鳴を上げないことで、屈指はしないと意思を示す。だが、淡々と作業のように鞭を振るってくる。涙があふれるのは止められなかったけど、意地でも悲鳴なんか出してやらない。
息が乱れる。体中は赤い蚯蚓腫れから血が出ている。
「苦しそうだな」
いったん手を止めた。時間の感覚がない。ずっと叩かれていた気もするし、すぐに終わった気もする。
「う……るさい。何でこんなことするのよ」
こちらから質問する。すぐに再開されるのがいやで、時間を稼ぎたかった。
「暗い場所では弱音は吐かないか…」
そう言うと、部屋に明かりを灯し始める。明るくなるにつれ、体が震えてきてしまった。
「や、やめて…」
「何か言ったか?」
睨まれる。たったそれだけで何も言うことができない。さっきまで文句を言ってくれた口は動いてくれない。それよりも大きくなっていく恐怖でどうにかなってしまいそうだ。
「…ぁ」
「この状態で叩くとどうなるんだ?」
そんな事を言われたって分らない。持っている凶器も、睨んでくる顔も、動きを封じる拘束具も怖くて仕方がない。
あぁ、鞭が降り上げられる……イヤ、痛いのはイヤ……振り下ろされ……
バシィィン!
「キャアァァァァァ!」
痛い痛い痛い! さっきより痛い! もうイヤ、痛い。
「そうか、泣くほど痛いか」
両目からボロボロと涙が出てくる。私は必死に顔を振る。許してもらえるかもしれないから。
「痛いの、痛い。痛いのヤなの…」
すぐに殺されると思っていた。それで恨みながら死のうと思っていたのに、こんなことになるなんて。
「面白い事をしようか?」
顎をつかまれ、上を向かせられる。カチカチとかみ合わない口。
「痛いの…はイヤァ」
「痛くはないさ」
そこで、さっきのワーウルフが帰ってきた。
「主人、見つけた」
「思ったよりも早いな。どうせ床下にでも隠してあったんだろう?」
「正解」
その言葉を聞いて凍りついた。隠した麻薬を見つけてきてしまったらしい。
「おい、今の話を聞いていただろう? 何をされるか察しがついたか?」
もしかして……ぁ、麻薬を広げて………やめて………それを近付けないで……
私は息をとめた。そんなものが私の体に入ってくると思うだけで鳥肌が立つ。
「主人、私は言った通り帰る」
「宿屋で寝てろ、すぐに終わる」
取り出したのは、注射器?
私は息を止めたのが無駄だと悟った。体に直接入れるつもりだ。
水で溶く、注射器に入れる。軽く振って中の空気を抜く。その1連の動作は滑らかだった。
「いや……ヤァァアァ!」
暴れようと思っても、拘束された体じゃ何もできない。腕をつかまれ、そのまま悪魔の薬が私の体の中へ入っていく。
「すぐに良くなるさ。これはそういう薬だからな」
「ウゥ……」
使い終わった注射器をしまい、袋に残っている薬をなめる。
「思ったより上質らしいな。」
服を脱いで体に触れてくる。その嫌悪感よりも先に、視界が揺れ始めていることのほうが重大だ。ジワジワと暖かくなっていく体。その薬は確実に私に効果を及ぼしている。
「ふ…ぅぅぅ」
撫でられている部分がだんだん心地よくなってくる。
「もう降参か?」
「や…だ」
ゴツゴツした手がゆっくりと私の服を脱がしていく。
お臍から顎まで、舌先で舐められる。ナメクジがはいずるような嫌悪感。
胸を弄られ、全身をマッサージするように揉みほぐされる。
軽く体を触られただけだというのに、パンティーから染み出るほどに濡れているのがわかる。それが悔しくて、情けなくて、さっきとは違う意味で涙があふれてきた。
だけど、それも濡れそぼったアソコをいじられてしまえば分らなくなる。
「挿入るぞ」
「ふぁ、あ、……アアアアアァ!」
自分の体が爆発したのかと思った。
目の前が真っ白になり、電流でも流されたのかと思った。
―――プシャァァァァ
私はあっけなく絶頂に追いやられ、そのまま失禁した。
「まだ動かしてもいないのに、それじゃあ先が思いやられるな」
深く差し込んだまま、腰を揺らして奥を刺激する。浅いところを刺激する。長いストロークで刺激する。そのありとあらゆる行為は私の理性を溶かしていく。
「ぅ、ぁ……」
「もう降参か?」
出会ったときから変わらない暗い表情。
「ガアアアア!」
私は力を振り絞ってコイツの首に噛みついた。自分の牙を食いこませ、首をふるって食いちぎった。
「……」
でも、食いつき方が浅かったのか、頸動脈を噛み切ることはできなかった。
「ッペ! ざまぁみろ」
「お前は……強いな」
予想外だったのは怒り狂うと思っていたのに、何故かこの男は私のことを眩しいものでも見るような眼差しで見つめている。
それが気に食わなかった。なぜか知らないけど、今までで一番大きい怒りがわいてきた。
けど、男は傷のことなんてなんでもないように動き始める。
「あう! あ、あああ」
ヤダ…そんなに動かないで。そんなにお語句と、またわかんなくなっちゃうの…だめ…それ以上は…
「奥を突かれるのが好きみたいだな」
「だ、ダメ! あふぁ、ああ! 」
何も分からなくてって、目の前が白くて、暖かくて……………………
私はいつの間にか気絶していたらしい。起き上がり、最初に感じたのは不快感。イライラしてどうしようもない。
「起きたか。あれから1日寝てたぞ」
「五月蠅いな…」
「機嫌が悪いな、まあそうだろう。だが、すぐに良くなる」
私に近づいてくる。これはチャンスだと思った。今は拘束されていない。襲いかかって倒してしまえば外に出られる。
そう思っていたのに、懐から取り出された注射器に釘付けになった。
「…あ」
見た瞬間に体が怯んでしまった。
「これでよくなる」
あっという間に腕から注入されてしまった。慌てて離れるけど、すでに注入されてしまった後。さっきまでのイライラがどこかへと消えてしまった。
「よ、よくも!」
「それより、お前の相方の話を聞かせろ」
「は?」
「報告書にも載っていなくてな。そういう話は調べるよりも当事者に聞いたほうがいい」
「なんでお前なんかに話さないといけないんだよ」
「暇つぶしだ」
でも、こいつの言う通りな気がした。アリアのことは私が一番知っているわけだし。……いや、まて。なんでそんな不自然な会話の切り替えに乗りそうになっているんだ私は。
「ふざけるな、話す必要はないわよ」
「そうか、それではまた今度だな」
特になにをするわけでもなく、この男は外へ行ってしまった。私を恐れて出て行ってしまったんだろう。
いい気分だった。仕返しができた気分だ。
鼻歌の1つでも歌いたくなる。それからあいつはある程度時間がたつたびに私に悪魔の薬を打ってきた。
けど、私は負けるつもりはない。だって、あんなに苦しんでいたアリアと違って私はそういうのが無い。きっと私には気分が良くなるだけの薬なのだろう。
アッシュは宿屋に戻り、酒を飲んだ。後ろからカーミルが寄りかかってきた
「調子は?」
「あれは薬に弱いらしい。薬が切れる前に新しく注入しているところだ。今日だけでかなりの量が入っている。常人なら死んでしまうほどに。魔物という丈夫な体のせいだろう」
「中毒症状を起こして楽に死なせるつもりだった?」
「……」
答えずに酒を流し込む。
「その首の傷は?」
「軽く噛まれただけだ」
「なんでよけられなかった?」
「不意を打たれただけだ」
「……バカ」
11/11/06 02:16更新 / Action
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