連載小説
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エピローグ 雪は星に成りて
薄暗い店内を木目とレンガの茶色が彩り、
暖色の薄明りに浮かび上がるグラスや色とりどりの酒瓶が上等な宝石の様だ。
シックな店内で曲線を活かした木製の椅子に座り隣り合う男性が二人。
グラスを満たす琥珀色の液体は指で表す程の量で、
その液体の度数が高い事を見て取ることが出来た。

「事件は無事解決。お前も稼ぎをあげたんだろ? 此処は奢りなよ。」
「心霊探偵の旦那はゴーツクですな。残念ながら今回の稼ぎはありやせん。
旦那や指紋の鑑定に依頼した分、足が出ちまったくらいでしてね。」

屋内だというのにモコモコの毛皮コートを脱がず肩を竦めるエレン。
彼はそれなりに有名人であり、この店は行きつけの一つなので、
彼の格好に口を出す店員や客はいない。

「ん? どういうこったいそりゃ。」
「いや、報酬は施設にあった金目のものの三割って言う契約でして。」
「何も無かったってのか?」
「ええ、全くありやせんでした。物自体はオーパーツってんですか?
当時としては信じられない技術の結晶ばかりだそうで、
ただ金に換えられるかというと、そっちは全然でして。」

「それはそれは・・・ん? 何だよ。此処はこっちが出すってか?」
するすると探偵の懐から財布が独りでに浮かび出ると、
2人の間に置かれて勝手に開いて札とコインが飛び出てきた。

「いやいや奥さん、痛み入りやす。」
「ったく、家のカミさんは無欲で昔から面倒見が良いからな。」
「どうぞ社長、好きなだけ惚気てくんなせえ、
それを黙って聞くくらいはチップ代としてサービスしやすぜ。」
「うるせえ、確かに内は従業員がいつかない零細探偵社だよ。
ったく、どいつもこいつも夜中のラップ音の一つや二つでビビりやがる。」

「またまたあ、一つや二つじゃないでしょう旦那。
鏡に映るけど振り返るといない血まみれの誰かとか、壁の中からする引っ掻き音とか。
相当肝の据わった御仁じゃ無けりゃ務まりやせんって。」
「そんなもんか? ちくしょう。感覚が麻痺してんな俺。」

慰めようとしてるのか、
探偵の奥方が後ろから優しく彼の頭を抱きしめていた。
無論それが見えるのは探偵と、それなりの力を擁するエレンだけだったが。

「しかし今回の件は助かりやした。
裏付けを短時間で取るのは旦那の手腕無しでは不可能でしたから。」
「隊長に話を聞いた時点で犯人は確定したし、後はそっちの線から追えば良かったからな。
国境近くの少し内側、オジブワの村落の一つがまさかアルゴンキンのスパイ養成地とはな。
郵便関係の人間は、過疎気味の村にしてはやたら手紙の量が多い事には気づいてたがな。
それが家族にあてた近況報告に偽装した。国政を始めとした機密情報の漏えいだと、
思い至るものは流石にいなかったが。」

「オウルの旦那を始め、年頃になると働きに出て婿入りするか、
何処かに嫁入りして引っ越しを経て、巧妙に関係者ぐるみで出身地を誤魔化してやしたね。」
「まあ今回の件で仕組みがばれちまったからな、
国が本気になれば残りも間もなく一網打尽だろう。
あそこの集落一つとは限らないが、手紙など情報のやり取りが異常に多い、
場所や人物を絞り込めばいいわけだしな。
アルゴンキンは向う数十年、諜報でオジブワに対し大きな後れを取るだろうさ。」

2人は喋りで口内が渇いたのか、目の前の液体を喉元にグッと流し込んだ。
喉奥からモルトとアルコールが呼吸し、追いかけて古い樽の香気が立ち昇る。
胃の奥からカッとした熱が上がってきて体にまわっていく。

「さて、只働きのエレンに労いといくか?」
「いえ、今回の件は端から報酬を受け取る気はありやせんでしたから。」
「それって、あの施設の内情は最初から知ってたってことか?」
「ある程度は、今回の件はあっしからして見たら、
身内の不始末のケツ拭きでしたから。」
「ケツ拭き・・・・・・誰の?」
「マイワイフ。」


※※※


「スンスン。」
「どうしたってんですかい? 泣き顔なんてハニーには似合いやせんぜ。」
「グスグス・・・どうしようダーリン。」
「いってえ何が悲しいんでさあ。ハニーがそんなじゃああっしもつれえ。」
「あたし、魔王様からメってされちゃう。怒られちゃうよお。
ケームショに入れられてダーリンと会えなくされちゃうかも、
そんなの・・・・・・やだ〜〜〜〜〜〜〜。」

ゴロンゴゴロンゴ
滝の様な涙を撒き散らしながら、
モコモコ白毛玉がエレンの前で回転していた。
エレンはその回転を見切り、回転の中心部、そのむっちりした尻肉を摘まんだ。

「アン♥♥」
「落ち着きなせえ。」

頭を撫でる様に尻を撫で、目の前の毛玉を落ち着かせるエレン。
体を包む白いモコモコ、それとは対照的に健康的な褐色ムッチリの肌。
彼女はイエティのミティ、エレンの愛し野人である。

エレンの毛皮は彼女から夏に生え変わる際に取れた毛を、
アラクネの糸で織り込んだ特注であり、
氷の女王から結婚祝いに祝福を与えられてもいた。
彼の雪を操作する力は其処に由来する。

エレンは表向きフリーの勇者を名乗っているが何てことはない、
魔物と通じている元勇者である。
今も勇者を名乗っているのは、反魔物側の依頼を受ける事で、
魔物側の力なら人的被害を抑えられる、反魔物領の事件を請け負うためである。

エレンは尻をモミモミ、ミティの口から事と次第を引き出した。
「オジブワって覚えてる?」
「山脈沿いにある小さい国ですね。以前調査に行ったとか言う。」
「そそ、魔王様に言われてね。昔の建物に危険なものが残ってないか調査に行ったの。」
「その時は何もなかったって言ってやしたね。」

「うんうん、そうなんだよ。私とか雪女さんとか雪山につおいメンバーやその家族と行ったんだ。
その時はガラクタしか無いって話になったんだけどね。最近そこで遭難事件があったんだって。
でどうもその施設が原因らしいの。どうなってるんだ? って王魔界からお手紙来ちゃった。」

シクシクと体を震わせるミティ、後ろから抱いていい子いい子してあげるエレン。
「調査隊は魔物とその夫とかだけで構成されてたんですよね。」
「・・・・・・うん、そうだったと思う。」
「成程、ただの人間がいなきゃ反応しない。そういう仕掛けが残ってたかもしれやせんね。
とは言え、一度ちゃんと調査されて見過ごされてるとなると、
少しそう言う物について詳しい御方を呼ばなきゃいけやせんね。」

「だいじょぶかなあ。私怒られないかなあ?」
「さあて、大事なハニーのために此処はあっしが一肌脱ぎやしょう。
出来るだけそうならないように頑張ってみやす。」
「うん、ダーリンありがとう。大好き〜〜〜〜♥
ダーリンが頑張れるようあたしもぬぐ〜〜。」

泣き顔から一転、
スポポンと体の一部じゃねえのかと思われる部分の毛もクロスアウツし。
褐色の面積を大幅に増やしたミティは、
髪と一体化してるっぽいロングな垂れ耳を揺らしながら、
散歩前の犬の様にエレンに抱き付き甘える。

彼女達イエティはとても感情豊かですぐそれが仕草に出る。
そんなミティのホットなハグに、キス混じりのハグで返しながらエレンも答える。

「あっしも愛してやすぜハニー。このすべすべのお肌にゃ指一本触れさせねえ。」
「かっこいい! 夫婦クライシスだよ。一緒に頑張ろうダーリン。」
「それで、ハニーはあっしが仕事中どうしやす?」
「ん〜〜、ダーリンのお邪魔にならないよう。
海辺でセルキーのマリノちゃんとスノーバレーしてる。」

「今は勝ち星イーブンでしたっけ。まあほどほどにしときなせい。
前の前あたり、受け損ねたスパイクが遠洋の漁船に穴開けちまったりしたでしょ。」
「マリノちゃんの家族とか知り合い呼んで漁師さん助けたね〜〜。
マリノちゃんにはGJ!って親指グッとされたよ〜〜駄目だった?」
「・・・・・・わざとは・・・よくないかもしれやせん。」
「そんないじわるしないよ〜〜ダーリン。」

何を馬鹿な事をとケラケラしてるミティを見て、
どう言い含めたものかエレンは悩んだが、
まあそうなったらそうなったでいいかとすぐに諦めた。

そして彼は自分の伝手を持って、
オジブワに自分が休暇で来ているという噂を流し、
宿泊施設でオジブワからの使者が扉を叩くのを待った。


※※※


流れる白い体表、膝を立て背を屈めて三つの影を見据える白い巨人。
施設の入り口を背にした3人の男女をエレンは見下ろしていた。

「制圧の合図が遅いと来てみれば。」
「負けてんじゃんオウルの馬鹿。」
「獣士の面汚しよ。」

ライオンを思わせるたてがみの様な髪型の、ローブを纏った偉丈夫。
長身で細身細目の、ナナフシを思わせる女性。
身長はもう一人の男性より低いが、異常に肥大化した筋肉を持つ丸く厚みのある男性。

彼らの台詞から敵と即断し、エレンは有無を言わせず白い巨躯を振るう。
両腕を左右から同時にしならせ地面を薙ぐ。
当てて捕えられれば良し、でなくとも跳ばせた所を腕を増やして追撃する。
そんな腹積もりで繰り出された攻撃、
しかしながら白い腕は新たな獣士らに触れる前に消し飛ぶ。

中央に立つ偉丈夫の体から魔力が走ると、
ある境を超えた瞬間腕が沸騰し雪の状態を維持出来なくなったのだ。
融けた雪は勢いの付いた蒸気として吹き付けるも、
それさえも熱による対流で押し留めていた。

「脆すぎる。」
そんな男の呟きが始まる前に、両側にいた男女の足は地面を離れている。
厚みのある筋肉を躍動させ、ゴム毬の様に跳ねて高速で突っ込んでくる男。
激突の寸前、両腕を広げプロペラの様に体を捻る、
その全身を使ったドリルが白い巨人の胸部を貫いた。

更に突き抜ける前に両手から魔力を衝撃波として放ち、
巨人の胸元の風穴を更に大きく押し広げる。
エレンは衝撃波の直撃を巨人の体内を移動して躱していたが、
その体が衆目に晒される事を許してしまう。

「其処か。」
たてがみ男がエレンに照準を合わせる。
エレンのいる場所を中心に巨人が沸騰していく。

(高レベルの熱や炎を操る術師?! 天敵だな。)
エレンの雪操作は体表に纏った雪が室温や体温で溶けないよう。
常温でも雪の状態を保てるよう固定して操作できる。

だが、叩きこまれた熱量はその固定の力を容易くぶち抜き、
水の結晶を本来の姿へと変換した。
煮立ち雲散霧消しつつある本体を切り離し、
まだ温度が伝わっていない部位を操作、
白い大蛇の如く高速で動く、極細の雪崩にのりエレンは危機を脱する。

立て直しを図るエレンだが、其処にもう一つの影が寄る。
雪崩に並走し、その足場とし難き白い道を滑る様に乗りこなす細身の女性、
彼女はエレンが対応する間も与えず。その腕を振るう。

その一撃はある場所にかすり傷一つつけただけ、だがその効果は絶大。
エレンは雪崩のコントロールを失い勢いそのままに、
自身を壁に叩きつけてしまう。
肺から叩きだされたものを吸う間もなく、
その腕と首は女性の足蹴にされ、
彼は天井を見上げる首を、回すことが出来ない事に気づく。

(オウルに付けられた手傷から・・・即効性の麻痺毒・・・か?)

女性はその細い目を更に細め、口の端を吊り上げながら囁いてくる。
「ヴァイパー、苦悶のヴァイパーよ。あっあ〜、別に答える必要も喋る必要もないの。
貴方が喋るのでなく、あたしが喋らせるのだから。
安心して、殺したりなんかしない。私の毒はとっても優しいから。
全身に巡る1500億の血管が一瞬で個体に凝固する苦しみ、
神経を錆びた鈍い刃物で切り潰す痛み。
呼吸する器官だけ麻痺させ丘で溺れる絶望、
光を失い不定期に体の何処かが燃える様な熱を持つ終わりなき苦悶。
こ〜〜んなにしても息を吐かせる。心臓を脈打たせる。
あたしの魔力で練り上げた色とりどりの苦悶(ヴェノム)、
是非心壊れるまで味わいつくして。」

まるで熱に浮かされて恋人に囁く様な口調、内容に目をつぶれば色っぽくさえある。
この毒を操り拷問を楽しむ真正のサディストの方を見つつ、
エレンは深く観念したように息を吐いた。
そしてもつれ気味の舌を必至に震わせる。

「やれやれ・・・・・・お手柔らか・・・に・・・お願い・・・しまさあ。」
「もう降参? 駄目よ。言ったでしょ。
降参させるのもあたし、貴方には命乞う権利もない。」

最初はどの毒でいこうかしら? 
まな板の上の鯉となったエレンを前に、
彼女は舌なめずりをして幸せな思索にふける。

獲物をしとめた直後、狩人が最も油断する瞬間。彼女は気づいた。
自分の手にピンク色の紐の様なものが巻き付いている事に、
もう一方の手で切断し振り払おうとするが、
もう一方の腕にも同じものが巻き付いていて・・・・・・

「何よ?! これはっ!!」
「知りたい?」

コロコロとした鈴の音の様な高い声がヴァイパーの真後ろから響く。
振り向いた彼女の前には目の覚める様なピンクの髪、
赤い大きなリボンと、額部位に黒く小さな山羊の骨の様な物をあしらったウィッチハット。
赤い目を各所に光らせ、粘液を持ってのたうつ服なのか生き物なのか曖昧な、
ドレスと呼ぶにも破廉恥な前が開きすぎた装いに、幼い裸身を包んだエロティックな少女だ。

彼女の掌には赤いルビーの様な一つ目を光らせた、
ピンクの触手をウニの様に生やした生き物がいた。
それがヴァイパーの全身をあまりにやさしく締めあげていた。
目視するまでその存在に気づかぬほどに。

「まあ後でもいいかなって思うけど、知りたいなら教えてあげる。
これはソクハメボンバー、略してソクハボちゃん。
フランツィスカお姉ちゃんの触手の何本かを研究して創ったの。
他にもソクオチニコマ、略してソクオニくんとかもお勧め。
って聴いてるお姉ちゃん?」

「ら、らめえぇぇぇぇぇぇぇぇえぇ!!」
効きすぎて聞いてない。

「んんんんほおおおおおおしゅごおおおいいいいいいのおおおお♥♥」
「良好良好、後で詳しい感想聞かせてね、何ならソクオニくんも試させてあげる。」

突如現れた毒々しくエロい魔女っ娘の乱入、
だが獣士二人はヴァイパーの援護に入るどころではなかった。
彼らは更なる怪物を相手にしていたからだ。

その体躯は魔女っ娘より更に貧相で、なだらかな起伏と言う言葉さえ世辞にしてしまう。
だがしかし、其処に帯びる魔力の量はその場にいる誰をも圧倒していた。
瑞々しい張りのある白い肌と手足から生える黒く深い毛がコントラストを為し、
頭頂部からは二本のヤギ角がカラスの濡れ羽色の髪を割り、
身長からすれば長すぎる大鎌を携える。
とはいえ、鎌も体もフワリと浮遊し動きにくさは感じさせない出で立ちだ。

筋肉ダルマが地面に対し体を水平に近い角度に倒し、
全霊を持って突撃した。だが相手は大きな鎌の柄の方で、
相手の弾よりも速く砲弾より大きな突進を軽く受けていた。

魔女っ娘よりさらに小さい体躯、その短い腕をたたむそのわずかな距離で、
相手の勢いを殺して受け止めていた。地面に付いてすらいないその短い両足で、
風船の様に浮かんでいるだけなのに、その小さな影は小動(こゆるぎ)もしないのだ。
まるで母親が歩き始めたばかりの我が子を両手で受け入れる様に。
優しさと慈愛のこもった声がその小さな口から紡がれる。

「ふふふ、あんよがお上手ね。でももうお休みの時間よ。」
小さな影はふぅと突き出した口から、軽く息を男の顔に吹きかける。
男はグニャリと一瞬で脱力し、地面に前のめりになると、
大きないびきを立てて寝入っていた。

「あら、いけないいけない。」
小さな影は自分だけ地面におりると、
直に手で、丁寧にうつ伏せになってる男の体をコロンと仰向けに直す。
「・・・・・・よし。」
姿勢を微調整後、仕上がりに満足したらしく少しドヤっていた。

「獣士一のパワーのオックスが・・・聞きしに勝る化け物め。」
「昔はその手の言葉を飽きる程聞いて、
悪い気もしなかったのだけれど、今は駄目ね、悲しくなるわ。」
「一瞬で黒炭にしてやる。
俺はゴート、焔のゴート、俺の炎は獣士最強。」

ゴートは片手を前面に出し、もう一方の手を弓を引くように引いた。
引いた方の手に全身の魔力が集中、燃え上がった炎の色は白。
正拳を打つように突き出した腕から白い焔の柱が迸る。

「ふーん、そのレベルで白炎の魔法を使いこなす何て、有望なのね。」
黒い体に白い炎が直撃し吹き上がる。だがそこで異常な事が起きる。
直撃したはずの炎は、彼女の黒毛から色が滲んだかのように、
火炎の流れと逆行してその色を一気に黒へと染められていった。
まるで和紙に墨を勢いよくこぼしてしまったかのようだ。

「馬鹿な! 獄炎・・・」
全てを言う暇は与えられず。その黒は術者を呑み込み、
炎を射出していた手からゴートの全身に燃え広がる。
その威力は人体など一瞬で燃えカスも残さぬ代物だ。
だが、その炎が舐め上げた後には一糸まとわぬ男の裸体があった。

「まっ・・・御立派だわ。こっちの方も有望ね。」
おどけてゴートの裸体を冷やかす彼女に対し、
ゴートは冷や汗を吹き上げていた。

炎が身を包んだ一瞬、彼は自身の死を見せられたし覚悟もした。
それだけの代物であることは、受けた彼が一番理解していた。
だというのに、器用に衣服だけが焼け落ちて彼は産毛一つ燃えていない。

こんな繊細な制御、余程の術者でも相当に手加減せねば出来ぬ。
彼は立ち竦む以外に、自分が出来ることが無い事を、
炎のスペシャリストとして、切実に実感させられてしまっていた。

そんな彼に対し、やりすぎたかしらと少しため息を吐きながらも彼女は言った。
「行きなさいな坊や、其処で転がってるお仲間をみんな連れてね。
レスカティエから黒毛のバフォメットが現場に来た。
そう言えば、撤退した貴方を誹る者はだいぶ減るはずよ。
ほら・・・・・・おばさん知っての通り化け物だから。
ああそうそう、そのままじゃ流石にまずいわよね。」

大鎌を魔法のステッキの様に躍らせる。
すると焼け落ちて一片も存在しなかったはずの彼のローブが再生していた。
服の袖を掴みながら、ゴートの顔には様々な感情がない交ぜになり浮かぶ。

だが彼は軍人だ。己の感情より部隊のために状況判断し動くことを優先する。
雪で動けなくなっていたオウルの部下達と共に、
獣士達も回収して彼は黙々とその場を立ち去った。

ただ一度だけ、肉球をふりふり彼らを見送る彼女に対し、
振り向いて睨むように見たのち、踵を返してアルゴンキン側へと下山していった。

気絶した仲間を丸太の様に肩に担ぎあげ、軽々と運びながら、
彼は敗北と共にある一つの心残りを噛み締めていた。
(触らせてくれとは流石に言えなかった・・・・・・肉球。)

場が落ち着いた中で、ミミルが別の触手生物をエレンの口に突っ込んでいた。
ぐりぐりと喉奥に触ると、別の触手を口に突っ込み、何か甘いドロリとした液を流し込んできた。
下手に抵抗するとむせるので、それを素直に喉奥に流していくエレン。
効き目はあっという間に表れた。エレンの筋肉から麻痺が取り去られていた。


「やあやあ御二方、態々レスカティエから御足労頂きありがとうございやす。」
「本当よ、こんな辺境の反魔物領の北国、
ポータルも使えないし山谷山だしくっそ寒いし、
お義母様も何で二つ返事で引き受けたの?」

「ごめんなさいねミミル、助手として貴方の大切な時間を割かせてしまって。」
「いいの、謝らないでお義母様。私おにいちゃんとお義母様とデルエラ様のためだったら、
この世の果てで地獄が凍りつくまで付き合わされたって幸せだもの。」
「貴方みたいな娘を持ってお母さん幸せだわ。」

バフォメットの肉球が膝をついて頭を下げた少女の頭を、
優しく撫ですいていく、見た目に似合わぬ怜悧さを見せていた少女も、
年相応(?)な顔でそのマシュマロの様な感触を満喫している。

そんな睦まじい一幕を見せられエレンもほっこり、
しつつも時間が押しているのも確かなので早速案内した。
「こちらです。方々に雪が散らかってますので足元にゃあご注意を。」
「はいはいブ男さん。」

先を行くエレンに対し、ミミルはブー垂れるが、
保護者であるバフォメットは彼女に優しく語り掛ける。
「理由はたぶん施設を見れば判るわミミル。
資料を見たけどメンバーの人選にミスは無かった。だとすると問題なのはこの施設の方、
たぶん此処は・・・追究者(イデア)の誰かが関わってた場所。」

その口調は平静に聞こえたが、普段の言葉が優しさに彩られているが故に、
その単語への嫌悪を隠しきるには少々堅いものになっていた。


※※※


何時以来だろうか?
懐かしの山、懐かしの畑、懐かしの家。
雪山に放り込まれて、まだ半年も経っていないというのに、
この景色にそこそこ憧憬を感じてしまう。

そしてそんな家を見下ろす裏山的な場所で、
私は兄であるケアド=フェラモールと肩を並べていた。
小さい頃は見上げ見送るしかなかった兄の背中、
その兄の背中が以前に比べ大きく見えぬのは、
私が物理的に大柄になったせいだけではないだろう。

「しかし本当にシェニなのか?」
「兄さんがどうしても苦手なものは蛾と蜂の幼虫。他にもおねしょは・・・」
「悪かった。そこまでだ。それにしたって見違えたぞ。」
「まあ見ての通り、人間じゃなくなっちゃったわけでね。」

私は他の村人に見つからぬよう、日も暮れる時分に人目を忍んで実家の戸を叩いた。
悲鳴や慟哭、悪意や敵意を向けられる事も覚悟しているつもりだったが、
それでも緊張して体が石にでもなったようだった。

そして出てきたのは母、ついで父、二人は私を上 下 上 下 と視線を往復させ、
そんな二人にこんな姿ですがシェニです。ただいまと精一杯気さくに声を掛けてみたが、
そこで事態が脳の許容を追い越したのかフリーズした。

下手に動けば悲鳴があがったり逆上させたりしかねない、
どうしたものかと石像になった両親の前で、思案に暮れる私を救ったのは、
何時までも玄関先から帰ってこない両親を、心配した兄であった。

「兄さん。こんな姿になっちゃったけど私だよ。シェニだ。」
「・・・・・・ううん。まあいいや、こんなところで人目に付くとまずい。
取りあえず上がってもらおうか。いいよね父さん母さん?」

真偽のほどを確かめる前に、周囲の人目を気にしてか、
兄さんは私とエハウィをすんなり中に入れてくれた。
父も母も兄の言うなり人形と化して、コクコクと頭を上下に振るだけだった。
まだ頭がこの現実を受け入れるか否かで、脳内会議真っ最中だったのだろう。

弟や妹たちは何だ何だと私を遠巻きに見ていた。
そんな興味本位の野次馬達を、兄はシッシッと追い払うジェスチャーをするが、
いっこうに効き目はないようで、夜中に耳元で羽音を響かせる蚊の如く、
彼らは戸口の向こうに群がるのをやめなかった。

そんな中、膠着し続ける両親を動かしたのは、
それまで私の中に引っ込んでいたエハウィだった。
彼女は私の前を開いて自分から皆の前へと姿を現した。
ゼンマイ仕掛けの兵隊よろしく、手と足を同時に出しながら、
彼女は皆の視線を一心に浴びていた。

「何あれ、カワイイ。」
「(゚д゚)ゴクリ…」


そうだろ妹よ、私の嫁は宇宙一可愛い。
それと弟よ、今日は許すが二度とお前の前でエハウィの肌は晒さん。

「シェニ・・・ムコ・・・モラウ・・・コレ・・・ユイノーヒン。」

エハウィはその小さな体いっぱいに、
装飾品として加工された黄金や宝石や貴金属をじゃらんと身に着け運んだ。
それを一つ一つ外していき、放心気味の両親の前に献上した。

どっかへ行っていた両親の魂が、マネーイズパワーの引力により復活する。
戻った眼の光はまた別の意味で此処にあらずといった有様で、
言葉にせずとも彼らが何を考えているのか、手に取る様に私には判る。

目の前の普通なら生涯お目に掛かれぬ大金と、
魔物になってしまった私を、身内にしておく危険を秤にかけているのだ。
勘当して国に売り、はした名誉と金と片田舎での外聞を守る事。
どっちの道が得か、無い頭で必死に計算しているのだろう。

「お父さんお母さん、今までありがとうございました。
もうこうして会う事もほぼ無くなるでしょうが、
今まで育てて頂き有難うございました。」

私はそんな二人の思考の一助として、
暗にもうこっちにゃほとんど来ないから安心しろ、と言ってやった。
効果はてきめんに表れた。それを聞いて目の色を変えた様にめでたいとか、
盛大に祝うわけにはいかなくて残念とか、
色々と親としての体裁を並べ立て始めたが、
空々しくてお寒いので私はそれを聞き流していた。

まあ石投げられたり呪いの言葉を吐きかけられてお別れ、
というよりはだいぶマシというものだろう。
結婚で家の者に祝福されるのは悪い事ではない。何よりエハウィが喜ぶ。
そんな私の方を兄は微笑しながらずっと見ていた。

こうして家でのすったもんだを無事に終えた私は、
久しぶりに2人きりで話がある。そう言った兄についてきて今此処に居る。
エハウィには暫く一人にしてくれというと、
彼女は知らない人の家に預けられる、猫の様な顔をしてこっちを見ていた。
すまないと頭を下げ、私は後ろ髪を引かれながらも兄と裏の山へと歩いた。

「エハウィちゃんあそぼ!」
「エハウィちゃんかわいい!!」
「え・・・エハウィちゃん、ぼ・・・僕と獣医さんごっこ・・・しよ・・・」
「オオ・・・オマエラ・・・オネエチャンダゾ!!」

私が離れると、早速戸口で様子を伺っていた野次馬が突撃していった。
兄弟達の半分がエハウィに群がっているのが声で判る。
もう半分は、家の中で両親と一緒に瞬きもせず、
金銀財宝に目の色を変えているのだろう。

後弟よ、貴様は後で高い高いの刑だ。
曇り空のようだが、貴様には満天の星空を見せてやる事に決めた。

始めは翻弄されていたエハウィだが、
姉の威厳を示すべく、兄弟達を人間お手玉し始めると、
始めは少し怖がっていた彼らも、
すぐに慣れて嬌声を上げ始め、
もっとやってお姉ちゃんと列を作ることになっていた。

まああの年頃の子供は小動物と基本変らない。
犬が何度もボールを投げてとせがむ様に、
エハウィに対し素直に尊敬と愛情の念を向けている。
そんな彼らに対し、エハウィも満更でもないらしい。

「オネエチャン・・・ウレシイ・・・ウレシイ。」

どうやらあっちはあっちで平気らしい。
と一安心した私の方を見た兄は語り掛けてきた。
私は半ば脅迫じみた内容で私がシェニである事を兄に証明する。
それにしても随分と冷静だ。癪な事だがもし私が逆の立場なら、
あの両親とそう変わらぬ反応しか出来なかっただろう。

「兄さんはやっぱりすごいね。」
「何がだ。」
「この姿を見てあの対応、冷害の時と言いずっと敵わないなと思ってたよ。」

私は己の中にずっとあった後ろ暗い感情を、素直に認め吐露した。
だがそれを聞いた兄の反応は、私が予想していたどれとも違う物だった。

「・・・・・・何だ。まだ気づいてなかったのか?」
「・・・何にさ。」
「あの新品種、ありゃ俺の手柄じゃないぞ。」
「・・・えっ?!」

少し呆れ気味な声で兄は続けた。
「一緒に朝から晩まで働いてたら、あんなもん俺に作る暇が無い事くらい、
シェニなら判るはずだと思ってたんだがな、なのにお前はずっとその事を俺に追及しない。
何だずっと勘違いしてたのかよ。お前の中の俺はどんだけ超人だ?
寝る暇も無く動かなきゃ、あんなもん俺に作る暇なんてないだろう。」

そうだ超人だ。敵わない存在、自分とは違う生き物だとずっと思っていた。

「薄々とは感じてたが、やっぱそんな風に俺を見てたのか。」
「違うってのかい? 兄さんは私よりずっと農業の才能もあったし仕事も出来た。」
「ふう、覚えてるかシェニ。以前俺はお前に夢は何かって聞いた事あったよな。」
「・・・うん、あったね。」

覚えているとも、その言葉は私に取ってちょっとした呪いだ。

「俺は農業が苦痛で嫌いでずっと逃げ出したかったんだ。
でもお前らに兄としての姿、次期家長としての姿も見せなきゃいけない。
本当の夢はコックになる事だったのにだ。
あれはそんな俺がお前に言った愚痴みたいなもんだ。」
「嘘だ。そんな・・・だって。」

苦痛? 嫌い?! 兄さんは何時だって私より上手くやってたじゃないか。
活き活きと仕事をしていたじゃないか、下向いた私からすれば眩しい笑顔だけが印象的で。

「あの冷害の年、俺はもう駄目だこのままじゃ食い扶持のために誰かの首を括るしかない。
そう思って逃げ出したんだぜ。やってられるか、もういやだ。
そういうやけっぱちな気持ちになって逃げたんだ。」

そんな。だとしたら誰があの新品種の芋を?

「其処で出会ったんだ。」

誰に? そう私が兄に問う前に、答えが私の横に立っていた。
人間離れした私の鼻に、様々な花の香りが極彩色の様に香ってくる。
今となっては私の体躯は大男並だ。
その私と並んでもその影は見劣りしない大柄なものだ。

「ケアドの弟さんですの? あまり似てらっしゃらないんですのね。」

大柄な体に似合わず。その声色は丸く言葉遣いは丁寧だ。
尖った耳、頭や手首、足首など末端に花飾り、尻尾を揺らすと、
その体に似合った大きな尻と胸も揺れる。
あとで聞いたところによるとトロールという種族なのだそうだ。

「で・・・デカイ。」
今となっては趣味ではないが、
それでもその凶器は単純な質量兵器として私の度肝を抜く。

「あ・・・あら、女性にその形容はその・・・事実ですけど。」
別に身長などを言ったわけではないが、
彼女はコンプレックスをつつかれたらしく背を丸めてしぼむ。

「デ・・・デカイゾ・・・」
他のメスの影を感じ取ったのか、
山の下にいたエハウィが何時の間にかその場にいた。
そして目の前にぶら下がる暴力的な塊に目を奪われている。
そしてその肉をボインボインと、
腹のあたりにしがみついていじり始めた。

「あの・・・その・・・ケアド。」
「辞めさせてくれシェニ。フローレンのそれは俺のだから。」

成程、私はその台詞で大体察した。彼女からは花の香りと共に良き土の匂いもする。
彼女が冷害の時兄を、いやこの村の皆を救ってくれた本当の立役者なのだろう。
私の姿を見ても兄が驚くほど冷静だったことにも、これで納得が行く。

「違いない。エハウィ、義理とは言え姉としてその態度はどうかと思うよ。」
「あらまあ、お姉さまなのですか? 御歳はおいくつでしょう・・・まあそんなに?」
「・・・オネエサマ。」
「うふふ、小さくてモフモフで可愛いですお姉さま。
わたくしこんななりで手も足も太くて、羨ましいかぎりですわ。」
「・・・カワイイ・・・オネエサマ・・・オマエ・・・イイヤツダゾ。」

その呼ばれ方が気に入ったらしい。
エハウィは彼女の肩にちょこんと乗った。
人見知りの彼女にしては、随分と簡単に心を許したものだ。
それもフローレンさんの人徳のなせるわざなのかもしれない。

「とまあ、これが真相だよ。こいつにあってこいつに触れて。
俺は土いじりを少しばっかり好きになれた。
シェニが俺の仕事に感じてた何かがあるとすれば、
きっと彼女と出会った後の筈なんだがな。」

どれだけ、どれだけ私は兄と向き合うのを避けていたのだろう。
あれだけ長く近くにいて、何も見えていなかったのだ。
そんな大きな変化さえ感じ取れず。一人で勝手に下を向いて生きていたのだ。

「今となってはお前には凄い感謝してる。」
「どうしてだい?」
「前例を作ってくれたからさ。当然彼女の事は両親には話してないんでな。」
「そっか・・・頑張って。」
「なあに、この村の皆が彼女には大きな借りがある。
それに今となっては出荷してる品種の幾つかが、彼女の手によるものだ。
下手に騒ぎ立てれば自分のところに飛び火する。
それが判らんほど、この村の皆は頑迷じゃないさ。」

兄の言葉にはしたたかな希望が響く。
きっと私とエハウィがいなくても、
この兄ならフローレンさんとの仲を上手く両親に認めさせただろう。
私は兄を今、初めて本当の意味でまっすぐに尊敬する事が出来た。
だがそんな兄の目に話題とは裏腹な色が滲むのを、
今度は見逃さずに済んだ。

「何か悩み事?」
「・・・・・・ああ、当事者のお前なら知ってるだろうが、
結局国の調査は失敗した。採掘資金を調達する目度は立っていない。」
「そうらしいね。」
「今すぐにどうこうはならんだろうが、10年後20年後のこの国がどうなっているか。
この村がどうなっているか心配なんだ。人間貧すれば鈍する。
清貧なんてそうあって欲しいという理想だ。
うちはフローレンがいれば食うに困る事はないだろう。
でも、村全員がそうである保証は無い。」

「妬み嫉みが彼女に向かわないかって?」
「いや、俺と彼女はこの村を出ても幾らでもやってける自信があるよ。
でもそうなったら残された弟や妹はどうなる?」

やはり兄は凄いと改めて思う。
家長として家の皆の行く末を常に考えてくれているのだ。
この人の目に見えてる世界と視界は、
私のものよりずっと広くて深いのだろう。

まあ、それが判る様になっただけでも、
私もたぶん少しはましになったのだと思いたい。
それにその件に関しては、私にも少し考えがあった。

「兄さん。まだ確かな事は言えないけどね。
もしかしたらその件は何とかなるかもしれない。」
「本当かシェニ?」
「うん、とはいえまだ具体的には何も決まってなくて、
あまりあてにはならないかもしれない。」

「いや、希望があるだけでも全然違う。
やってみて駄目ならまた考えればいい。
道があるなら、取りあえず進んでみたらいいさ。」

兄はそう言うと、私の背中をポンと叩いた。
何時だったか小さい頃にもそうして貰った記憶がある。
あの時はこの感触を肯定的に受け止められなかった。
でも今は、ジワリと胸の奥が沸き立つ感じだ。

悪くない。

「それはそうとシェニ、ずっとずっと聞きたかったんだがな。」
「何だい兄さん?」
「何故顔にパンツを履いているんだ? エハウィさんは。」
「・・・彼女はシャイだから。」
「何故・・・顔にパンツを履いているんだ?」
「・・・・・・彼女は・・・とてもシャイだから。」

「フォオオオオオゥ!!」
エハウィはフローレンも交えて、2人でちび達をキャッチボールよろしくお手玉していた。
突然の絶叫アトラクションに騒ぐ小鬼たち、
キャッキャッと姦しい声が夜空に木霊する一方、
私と兄の間には何とも言えぬ静寂が横たわっていた。


※※※


とある山中の大きな穴倉の中、くり抜かれたように大きな空洞が其処にはあった。
外は吹雪いているらしく、岩肌や空気を通じて山の息吹が鈍く伝わってくる。
穴の中には魔界種の光る苔が群生しており、
多少薄暗いがそれなりの光量が確保されているようだった。

その洞の中央には杭の如く突きでた岩が一つ、
下側が反り気味で円柱型、そして上部は台地の様に平らにならされていて、
その上に祭壇に捧げられた供物の様に、一つの布が厳かに置かれていた。

その供物を囲む多くの影、その影は皆一様に角を生やし、
その体を覆う深い毛が、彼らのシルエットの淵を曖昧にしている。
それはその地に住まう、ウェンディゴ達の集会だった。

数はすぐには数え切れぬ程のものであったが、
彼らからは針一つ落とした音さえ聞こえてこない。
その一団の中でも一際大きな個体、
エハウィの父であり前村長でもあるものの漏らす声が、
石像の森を彷彿とさせる彼らの沈黙を破る。

「皆聞き及んでいると思う。我が愛娘に活きの良い婿が来てくれた。
慣例に従い、新たな村長は彼に任せようと思う。」
「シェニです。至らぬところだらけの若輩ですが、
愛するエハウィ共々、今後ともよろしくお願致します。」
「・・・コンゴトモ・・・ヨロシクダゾ。」

シェニとエハウィは合体したまま同時に深く頭を下げた。
そんな彼らに対し、最初はパチリパチリと音が鳴る。
エハウィの知己であろう娘たちが、お祝いの意を示してくれる。
そしてその拍手はより大きな手の持ち主たちによる万雷の呼び水となる。
空洞の中からしばし山の息吹が追い出される。

柏手の合唱が鳴りやむと、シェニはコホンと軽く咳払い。
そして恭しく台座に載せられた一枚の布を、つまみ持ち上げた。
それはある意味、彼ら以上に今夜の主役であるとも言える一品。

布の形状は二等辺三角形に近い台形、
その表面は水色と白が境界を分かつように平行に走り並ぶ。
ウェンディゴの一行はからは、ザワリと動揺の声が漏れ広がる。

「アレはいったい?」
「あの形状は、間違いない。」
「しかしあの面妖な文様は・・・何ぞ?」

小声で空間が満ち始める、シェニはその布を、神に献上するかの様に掲げ。
それに注目する皆の声を切った。

「皆様お気づきと思われますが、これはパンツ。パンツです。」
大事な事なので二度念を押す様に言った。

「やはり。」
「それは見れば判る。」
「だがしかし。」

再び満ちる困惑混じりの声を遮る様にシェニは口を開いた。
「仰りたい事は判ります。パンツとは清純、パンツとは純白、パンツとは白雪。
事ここに於いてはパンツは白こそが至高であり、それが皆様の嗜好。
然るにこの若造は何故、犯さざるべき新雪に線を引き穢すのかと。
こう仰りたいのでしょう?」

困惑した声を上げる者達の心の声を、
先んじて代弁する事でシェニは彼らの不満の声を留めた。

「論より証拠、語るより見せましょう。エハウィ!」
「・・・・・・チョット・・・ダケダゾ。」

そこには掲げられたのと同じ柄の布を身に着けたエハウィがいた。
そしてくるりと背を向けると、赤面したままゆっくりと腰を固定したまま頭を下げる。
突き出されたもの、それに覆われた可愛らしいおしりが皆の目に飛び込んだ。

静寂を先程とは別の種類の囁きがかき乱す。
ため息、唾をのむ音、漏れる驚愕。

「どうでしょうか? 侵されざる白き山も美しい。
ですが、この線によって尻、土手、腿、
美肉の国境が、起伏の陰影が、一層視覚的に強調され・・・やらしく・・・」

「それでいてこの模様には、どこか日向の様な可愛らしさも感じられる。
達者な絵や刺繍にありがちな、尻を見るよりこれを見ろと言わんばかりの、
そういう職人の奢りが見えぬ。そうではないか? 皆の衆。」

シェニの言葉を前村長が引き継ぎ皆に問うた。
その問いに対し誰も答えを返すものはいない。

「無論、白は至高の一色です。ですがそれに勝らずとも、
選ぶ選択肢が他にあるという事は、文化的に豊かで贅沢だと私は思います。」
「婿殿は一月とたたずして肉パンツ錬成に成功したのみならず。
それから数日してこの様なものを私に持ってきた。
それを見て私は確信した。この若者の才は天賦と称されるそれであると。
こんな才気あふるる若者に、後進を託せる私は果報者である。」

突き出された尻、掲げられるパンツ、
シェニの手に前村長の大きな手が覆いかぶさる様にして重ねられる。
その一種異様な光景を前に、ウェンディゴの一団は先ほどを超える音量の、
万雷をその空間に長く長く響かせた。やがて割れる様な反響が外へ抜けるのを待って、
一人のウェンディゴがシェニに尋ねてきた。

「新村長、一つお聞きしたい。」
「何でしょうか?」
「これを、何と名づけるべきか。」
「呼び方に関しては、遠い島国であるジパングから着想を得ました。」
「ジパング、あの火の国と言われる?」
「ええ。」
「成程、判りましたぞ。これはつまりジパンツと。」
「違います。」
「違うんですか?!」

我が意を得たり! 
としたり顔をしていたであろうウェンディゴはしょんぼりした。

「ジパング周辺にあるルソン島というところから、
これと類似した模様がジパングに伝わった際、
島から伝わったので、しま模様にという名称がジパングで付いたそうです。
そこからしま模様パンツ、略してシマパンと命名しました。ゴロも良いですしね。」
「シ・・・マ・・・パ・・・ン・・・シマパン!!」
「「「シマパン! シマパン!!」」」

喝采と喜びと、褒めよ称えよの合唱が場を満たした。
此処に一つの文化が生まれ、それを生んだ一人の男は、
その本名よりそれが産んだ文化の名で語り継がれていく事になる。


※※※


「どうじゃ?」
「新顔だな、北方の何処かだねぃ。悪くない。」
「ほほっ、流石。」

日本風の土間を思わせる間取りの室内、
その縁側に隣り合う、チョコンとした幼女二人。
片一方は肩の出たアレンジされた和服を着こなし、
その頭には丸みのある三角耳、小さな体には不釣り合いな大きなシマシマ尻尾を揺らす。
もう一方は継ぎ接ぎだらけの皮服を纏い一見人間だが、
尖った耳と袂に置かれた、これまた不釣り合いなサイズの金槌が、
彼女の正体を教えてくれている。

彼女達はその小さな体に見合わず。
それぞれ大きな立場に立つものどうしである。
片や世界中に顔の効く廻船問屋の経営者にして、
刑部狸が組織する商会の代表。
片や東方の魔界におけるガラス製品や陶器他を一手に扱う、
東ギヤマンテ・ドワーフ工芸商会の顔の一人。

彼女達はその立場上、だいぶん長い付き合いでツーと言えばカー。
山と言えば川、竹馬と言えば友な関係である。

そんな二人は肩を寄せ合い、
狸が差し出した灰色の粉の様な物をドワーフが味わっていた。
それは鉄粉である。産地の土を微量ながら含んだ鉄の粉だ。
舐めただけでその鉄がまだ出回っていないものである事、
そして産地の気候と質の良し悪しを彼女は言い当てる。

「で・・・正解は?」
「オジブワじゃ。」
「ほう、資金繰りにしくじったと聞いたが?」
「それがな、中々面白い事になっとる。」
「お前さん辺りが取引を持ちかけてる時分と踏んでいたが、
此処で茶してるって事はそうでもないらしいな。」

ドワーフが顎に手を当てながら狸に先を促した。

「つもりはあった。でも必要なくなったというか。
ほれ、いたじゃろウェ・・・ウェウェ・・・」
「ウェンディゴな。寄る年波ってやつか。」
「一回り年上の御主にババア扱いされとうないわ。
「それであいつらがどしたい?」

ドワーフの相槌を聞きながら、
狸は茶をすすりのどを潤した。

「最近あいつらの村長が代替わりしたんじゃがな。」
「調査隊が沢山遭難したらしいしな。そういうこともあるだろうねぃ。」
「新しい村長が結構話せる奴でな。何と国に取引を持ちかけた。」
「成程、此れはそいつらが掘ってきたわけか。」

ドワーフは指を擦り合わせ、その間に残る粒を鳴らす。
狸はその言葉に頷いて先を続ける。

「ああ、人にとっては命懸けの大工事も、
あの連中にとっては砂場遊びみたいなもんじゃしな。」
「しかし解せん。あの連中が人前に出てこれるとは思えん。」
「それじゃがな、完全分業制にした事で解決したらしい。
夜の内にウェンディゴが掘る。朝の内に人間が掘られた鉄を回収し、
人間が中に入る為、坑道工事の指示書も同時に書いておく。
そして安全が確保された坑道から、山師が鉱床をよんで掘る向きや距離を指示する。」
「その繰り返しというわけか。」
「まあ鉢合わせてひと悶着! みたいなこともあったらしいがの。」

狸が再び茶をすする。ズズィっと音がして、
それを横目にドワーフも、後に続いてズズィっと。

「まあそれはいい、だがオジブワは反魔物領だが?」
「其処が取引よ、祈って腹が膨れれば苦労はせん。
あそこの王はそれくらいの分別はつく器量を持っとるよ。」
「ウェンディゴ側のメリットは?」
「オジブワに遠からず訪れた未来、大量の餓死者という悲劇の回避。
そして国境内に住まうウェンディゴを、国民として認めさせるという条件。」

それを聞きドワーフの眉が上がり下がりする。
驚きやら猜疑やら、色々な意味合いの視線が隣に投げかけられる。

「前者は判るが、後者をオジブワが受け入れたのか?」
「無論、魔物としてではなく、山奥に住む謎の部族という建前でじゃがな。
どうせ姿を見せんなら同じことじゃて、採掘した鉄を一切合切ゆずる。
代わりに国は、彼らの里帰りが荒だたんよう段取りする。」
「ふうむ、確かに面白い条件。しかし新村長とやらはよくもまあ、
あのビビリな集団を人手としてまとめあげたものだ。」
「それなあ、何か知らんがやたらと信任熱いんじゃよ・・・・・・新顔なのに。」
「ふうむ、奇々怪々よな。」

それまで訳知り顔で語っていた狸もこればかりは見当がつかぬ様子。
無理もない、閉じられた社会の閉じられた文化、
そこに於ける小さな布きれと、そのがらについての歓喜喝采。
文明開化に匹敵するその価値を、他種族に解れと言う方が無茶というものだ。

「まあめでたしで結構、あんたは少々パイを取り損ねたみたいだが。」
「そうでもないわえ、採掘権や取れた鉄の分け前には噛めなんだが、
鉄の流通先や流す量について、アドバイスする立場にうちの組のモンが収まった故な。」
「廻船問屋の面目躍如というわけかぃ。」
「そうじゃ、あと今は戦争の機運も下火で、ただ鉄をばら撒いても利益になりにくい。
おまけに採掘しとる量が中々多い、そのまま市場に流せば値崩れが起きかねん。」
「ふむ、だが・・・・・・寝かせておけば鉄が金に化けるというわけでもあるまい?」

ドワーフは腰の革袋から葉巻きをだし、
腰を浮かすと囲炉裏で赤々と茶を沸かす炭で着火し、
ぷかりと煙をくゆらせつつ、狸の隣に戻ってきた。

「それがそうでもない。」
「というと?」
「ヘロン社の蒸気馬車、テスラ機関の魔装車、
大国ダイムの自走輪。どれでもいいが聞いた事は?」
「蒸気馬車はあるねぃ。馬がいらない自分で走る馬車だろう?」
「そう、これらは皆細かな違いはあるが、大まかに言えば同じもの。
牛馬や魔獣を必要とせず、それ自身の機構と動力源によって自走出来る乗り物じゃ。」

それを聞きドワーフ首を一ひねり、
視界の端で巻かれたままの、厚地の布を指し示す。

「あそこにある魔法の絨毯とかとは違うのかねぃ?」
「ありゃ素材や術式が高度で、それ故に量産が難しい高価な代物。
今はまだ研究段階じゃが、わしのあげた方は量産されれば、
貴族でなくとも家庭に一つは持てる。
そんな価格に収まるはずじゃ。」

それらの構造は概ね、現代の自動車に近い代物である。
ただ動力部位に火と水の魔術回路を使う事で蒸気機関の代用としたり、
電気を増幅したり溜め込める魔術回路を積んだり、
爆裂魔法の出力やタイミング制御などによって、
人間側の弱い魔力の使い手でも、長く乗り回したり補給が何度も可能と言う乗り物だ。

人と魔の魔力量の差は基本埋めがたい。
故に親魔、中立、反魔などの魔力格差による。
生活の格差を少しでも埋めるため、
今、世界では省魔力(エネ)が研究のブームになりつつあった。
魔力の格差を構造学や力学の助けを借りて埋める。
それを各国が各々の思惑で同時多発的に行っているのだ。

親魔側は全ての人に不自由なく暮らして欲しいから、
反魔側は軍事的な戦力差を少しでも埋めるための研究の一環として、
もっとも、それらの研究費のパトロンは、
元を辿ると大体、別名義の同一人物である数人に辿りつくのだが・・・
此処に居る狸はその数人の内の一人である。

「ふん、完成時期を待てということかぃ。」
「そうそう、寝かせておけば金に化けるからの。」

見た目は幼女、御年ババア、二匹の茶飲みが世界を回す。
そんな様子は見せもせず、呑気に茶してグルグル回す。


※※※


遥か山脈を下に見下ろし、其処から吹きあがる白い息のような吹雪。
そして暗い曇天から吹き下ろす豪雪が男の黒い視界に白をちらつかせる。
男の体は今空の上にあった。でたらめに吹いているとしか思えぬ風が、
意志を持ったように彼らを運び導いていた。

シェニはコートの様な構造になったその体を、
目一杯に広げてそれを受ける。
ムササビの様に滑空しているのだが、
風の勢いが凄まじくいっこうに下降していく様子が無く。
何時までも彼らを彼方へと押し上げてくれていた。

周囲を見渡せば、同じように体の端を掴んで風を受け、
空を飛ぶ様に翔ける仲間が何人もいた。
ちなみに、エハウィを始めとしたそれぞれの妻は、
コアラの様にその腹にくっ付くもの、
ハンドルの様に角を持って頭に立つ者、
滑空している最中にも繋がっている者など様々だ。

彼らを見る者が見ればこう言っただろう。
俺は見たんだ、空を飛ぶいっぱいの露出狂(へんたい)を!!

もっとも彼らを偶々目撃し、不幸にも頭の具合を心配される様な、
そんな不幸な証言者はその日はいなかったようだが・・・

そんないっぱいの変態が目指す先、
それは星の自転と同期し、宙に漂う大きな岩であった。
内部に飛行石を内包するただの浮島、
この星にごまんとあるそんな岩塊の一つだが、
其処にある印を彼らだけが知っていた。

実は先ほどから彼らを運んでくれている風も、
彼らが主として崇める神の権能の一つに他ならない。
同位階以上のものでなくば、ただの自然の風としか気づけぬものではあるが。

そんな神風が導いた先には岩肌に刻まれた一つの印があった。
歪んだ三つ巴を思わせる様な、足の生えたクエスチョンマークの様な、
とても奇妙な印だった。それは風に呼応するように、
その淵を淡く黄色に輝かせていた。

それを囲むようにウェンディゴ達は降り立っていく。
そして最後尾にいたシェニとエハウィが降り立つと、
皆が彼らの方を向いた。

そしていっせいに拍手を送り、
この時の為に時間の流れを操作し、
保管してあった黄色い花びらを風に乗せ彼らを祝福した。

「おめでとうエハウィ。」
「おめでとうシマパン。」
「いってらっしゃいシマパン。」
「楽しんできてねシマパン。」

口々に彼らの旅立ちを祝う彼らだが、
誰もシェニの名を呼ぶものはいなかった。

「私は一生名前で呼ばれる事はないのか・・・」
「エハウィ・・・ヨブゾ。パーパモ・・・ダメカ?」

頭の上で皆の祝福に手を振っていたエハウィが、シェニの顔を覗き込み微笑んだ。
彼女は何時だって、まるで心が読める様に、
欲しい時に欲しいものを彼にくれる。

「いいや、駄目じゃないよ。家族だけが呼ぶなんて素敵な事だね。」
「ソウダゾ・・・ステキ・・・イッパイ。」

(こんな風に後ろ向きに捕えてしまうのも、不安の表れなのかもなあ。)
シェニは見送りの者達に手を振りながら、
もう一方の手を頭上のエハウィと繋ぎ思った。

彼の胸の内に不安と言う汚れがこびりつくのも、
無理からぬことと言えた。彼らはこれからこの奇妙な印の力で旅立つ。
これはウェンディゴの風習で、人間でいう所のハネムーンと言うやつだ。

その行き先はこの上空に浮かぶ岩より更に上、
雲を突き抜け空を飛び越え、月をわき見し尚先へ。
彼らの主と共に、彼らが此処に降り立つまでの道程を、
逆に辿って遥かなる故郷へと里帰りし、
いにしえの英霊達に報告し祝福を得る。

それがこの行為の意図となる。
それはつい最近まで芋ほり農家だったシェニのスケール感では、
とうに想像ですら追いつけぬ彼方の出来事である。

軽く彼は妻にどんくらい遠いのと尋ねた。
妻はしばし考え、トッテモトオイ とだけ答えた。

じゃあと彼は更に尋ねた。
山を越えて隣の国に行くより遠い?
妻はほぼ間を置かず、トッテモトオイ とだけ答えた。

海を越えて隣の大陸に行くより?
空を飛んで星の裏側へ行くより?
雲を抜けて御月さまに行くより?

考えに考えて、シェニは精一杯彼の考えうる遠くを示し続けたが、
彼の妻は何度でもこう答えるのだ。トッテモトオイ・・・と。
シェニはすぐに考えるのをやめた。
これはあかんと考えるのをやめた。

そしてこう思った。
判らなくてもいい、理解出来なくてもいい。
妻が私を連れて行ってくれるところなのだ。
私に悪いところなはずがないじゃないか。

彼の短い人生の中で、一番信じられるものが彼女だ。
彼女が自分へ向けてくれる好意だ。
スープをフーフーしてくれるハートなのだ。
だから彼は何度だって、彼女の為にやけどしたい。

そう思ったら落ち着いた。
そして勿体ないと思った。
エハウィとの想像もつかない場所への旅行なのだ。
楽しまなきゃ嘘だろう。

そして印は光っていた。その中心に進んでいた彼らは、
何時の間にか浮かび始めていた。
吹き荒れる暴風も雪も、不思議と彼らを避けて通るようだった。

それはまるで景色の方が動いているようだった。
目に見えぬ壁の様な物で彼らが覆われているのか、
外の音は遮断され、周囲のウェンディゴと足元の印は急速に小さくなっていく。

自分の方が動いてる様に感じられぬのは、
高速で上昇する事で発生する、慣性による押し付け感も浮遊感も何も感じないからだ。
光以外の外界を遮断した箱が、ただただ速度を上げていく様に、
彼らを世界の法則という鎖から守っているようだった。
これも印が象徴する、彼らの主の権能の一端なのだろう。

視界の中でただ雪が落ちて行く。夜の暗闇を下へ下へと。
そして気づくと何時の間に雲を抜けたのか、
彼の足元には数秒の間、今まで彼が立っていたであろう大地の、
その丸く青い全景が落ちて行くボールの様に見えていた。

それすらもあっという間に彼方に消えて、
何時の間にか、舞う雪は星になっていた。

遠くで燃え盛る陽炎の煌めきが、
尾を引くように、シャワーの様に彼らに降り注ぐ。
そしてシェニ達は白い輝きの中に消えていった。






























どこに行こうか

ドコニイキタイ?

どこでも行くさ 一緒なら

スキダカラ?

好きだから。

アイシテル?

あいしてる。
16/08/28 14:42更新 / 430
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■作者メッセージ
3か月掛かってしまいました。待ってた方はお待たせしました。
嫁とパンツをめぐる話は閉幕です。

イデア? どういう連中かという説明を少し入れるシーンも書く予定でしたが、
次作以降への伏線シーンなのと入れると長くなりすぎと思いカットしました。

まあ前作でバフォさんが戦った男もその一人みたいな、
図鑑世界的には少しきわどい連中です。

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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33