私の親友二人の話をするね。正確には親友って言葉じゃ到底足りないくらい、深い関係なんだけど。
先に言っちゃうと二人は人間じゃなくて、いわゆる化け物ってやつ。と言っても牙が生えてるとか血を滴らせながら歩くとか、そういうのじゃなくてね。すっごくキュートなの!
毎日がつまらない高校生活に飽き飽きしてたときだった。そのとき二人は私の幼馴染を含めて、三人でお話してるところだったの。
ちな、その幼馴染は賢斗っていう男の子。昔よく一緒に遊んだ。チビだけどかっこいい子。
あ、ケンちゃんが女の子と話してる……って思った。昔はよく一緒に遊んだけど、特に男子って大きくなるにつれて女子と遊ばなくなるじゃん?
私ともそれっきり付き合いなくなってさ。幼稚園から高校まで同じとこなのにね。まあ私も女子同士でしか遊ばなくなってだけど。とにかく、そのケンちゃんが女の子と話してて、「へぇ」と思って見てたら、相手の女の子たちがすっごい美人だったの。
二人とも私たちと同じ制服を着てたけど、学校じゃ見たことなかった。見るからに日本人の顔じゃないから、学校にいれば目立つはずなのに。
一人は長いブロンドに白い肌、もう一人は黒髪に褐色の肌。どっちも遠目でも分かる美少女で、どこがとは言わないけどかなり大きい。
「……でさ。その猫、臭い靴下にスリスリしてきてさ」
「あははは、ヘンタイ猫じゃん」
「ニオイフェチだったの?」
楽しそうにお喋りしてた。そのときはケンちゃんが私に気づいて目が合ったから、足早に立ち去った。いや、ケンちゃんが嫌いなわけじゃなくて、むしろ久しぶりに話したいくらいだったけどさ。もう何年か口をきいてないのに、昔みたいに「ケンちゃん」って呼ぶのはハードル高かったのよ、あのときは。だからって名字で呼んだら、昔の関係もなくなっちゃいそうで。
で、逃げた私は通り道の歩道橋から、なんとなく道路を見下ろしてた。なんか考えごとするとき、高いところから下を見る癖があってね。
小さい頃、ケンちゃんと一緒に遊んでた頃を思い出してた。毎日が楽しかったな、発見、冒険の連続で。それが今じゃ、ただ惰性で高校に通ってる感じ。昔は語彙が豊富だったお母さんは「勉強しなさい」しか言わなくなって、カッコよかったお父さんもすっかり影が薄くなっちゃった。
周りの目なんか気にしないで、ケンちゃんと一緒にいれば違ったのかな……
「ねぇ、下に何か見える?」
ふいに話しかけられて、振り向いてビックリした。さっきまでケンちゃんと話していた二人が、いつの間にか背後にいたんだもの。
「あんまり覗き込むと危ないわよ」
褐色の子の方が言った。「あ、うん……」とかいう返事しかできなかったな。だって近くで見ると、女の私でさえドキっとするくらい美人なんだもん。背が高くて、キリッとしてクールな感じの顔立ちで、肌はなんだかミルクチョコレートみたいに滑らかで。青いガラスの飾りを付けてて、制服姿なのになんかエキゾチックで。髪は肩くらいまでの長さでサラサラ、なんか良い匂いまでする。どんなトリートメント使ってるんだろ、なんて思った。
金髪の子の方は見るからに明るそうな、くりくりとした目の可愛い子。やっぱり背が高いし、制服着てても分かるくらいスタイルがいい。ウェーブのかかった金髪は腰まであって、すごく綺麗。鏡の前でどれだけ時間かけてるんだろ、ってくらいの美人さん。
ぱっと見た感じ姉妹じゃなさそうだし、人種も違うけど、同じところもあった。瞳が灰色だったの。なんか神秘的な感じ。あと、どこがとは言わないけどすごく大きい。
「ボクはマルガ。こっちはハリシャ」
金髪の子が明るく名乗った。声もめっちゃ綺麗だし、日本語も上手い……というか、日本人とほぼ変わらないくらい。手の動きとかもなんとなく、優雅な感じ。
「キミは?」
「あ、天野美緒、です……」
笑顔で訊かれて、思わず敬語で答えちゃった。いや、同学年ってことは制服の校章の色で分かってたんだけどさ、なんかもう、メチャクチャ緊張したんだよね。外人さんだからってわけじゃなくて、オーラ纏ってるっていうか、そんな気がしたの。ま、事実纏ってたんだけど。
「ミオちゃんね。ボクたち、引っ越してきたばっかりでさ。同じ学校の子に挨拶してるの」
そう言いながら、マルガちゃんはベージュのショルダーバッグを開けて、中から平たい缶を出したの。ファンシーな花模様が描かれた、水色の可愛い缶。
「昨日作ったんだけど、よかったら一個どうぞ」
カパッと蓋を開けると、中に入っていたのはメレンゲ菓子。白くてふわっとした形の、ほのかに甘い匂いのするお菓子。
なんか、怪しいとかそういう気はしなかったの。すっごく美味しそうで、見ただけで無性に食べたくなっちゃった。体験し
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