大きな花がそこにはあった。
道がてら花を見つけた青年は、ただただそれを美しいと思った。
青年は平々凡々とした男であった。植物の知識には乏しかったが、考える葦に普遍する、ものを耽美し感動する心は持っている。花は、そこに直接訴えかけてくるようだった。
青年は街でギルドの手伝いをしていた。武器を運び、捺印し、都合の良い依頼が無いと声を荒げる大男を宥めながら、少しばかりの金を貰い、街の外れの番小屋に暮らしていた。
ギルドのある中心部と彼の小屋の間にはこんもりとした森があった。普通であれば、まだ薄暗い内に家を出て、日が暮れてから帰途につく青年は、暗々とした木々の隙間への根拠のない恐怖心から、カンテラを片手にその森を避けて通っていた。しかし荒れた大男がギルドのテーブルをいくつか薪同然にまで破壊してしまった今日は、幸か不幸か早めに終業を言い渡された。まだ日の高い内に帰れるのはありがたいことだが、その分の時給を貰えないのも事実である。そして、客が暴徒化する前に抑えられなかった責任も、また青年にはあった。
さて、怖いものもその要素が無くなればどうということもないものである。帰り際の森は、秋に色付いた葉々が梢から漏れる光と相俟って、やや芸術の雰囲気を醸し出していた。そこに獣道を見つけた彼は、近道と、ちょっとした探検心から、森の中へ足を進めた。
そして、大きな花を見つけた。
花は、美しく、馨しかった。
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……!足音だ!足音が来た!
ついについに人間さんです、このリーシュが引き抜かれる時ですよコンチキショー。
バフォ様のきまぐれ広範囲転移魔法に巻き込まれてはや1ヶ月。ってかあれ絶対テロでしょ。なにが「ワシも新天地で婿探しじゃー!」ですかそういうの自分チでやって下さいよホントもうお願いしますよー。だってあれ転移先の座標がランダムなやつでしょ。むー。バフォちゃん様なら教団の兵士の真ん前に飛んでもバフォバフォパワーでどうにかなるけど、こちとら植物ですからね、死にますよ。まあここはなんだかそう危険そうな土地じゃなさそうだから良かったけど。
けど、けど!何って人が来ない!誰も来なければ魔力もない。一応土からは養分は取れるけど、人間にとってのスナックとかあんな感じで、つまり肉が食いたい。おなかすいたおなかすいた!肉ゥ!肉ゥ!精!アァアア!
といったところで!やっとのとこさの人間さんですよ!あのしっかりとした足踏み、あの素晴らしい精の感覚!近づいてきた!抜かれる、私は抜かれる!あっ我慢できない濡れてきた
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青年が思わず花に近付くと、鼻をくすぐる香りはさらに強くなった。それはまるで青年の探訪を喜んでいるようでもあり、もっと近くへと誘惑しようとしているようでもあった。
「…綺麗だ」
無意識に言葉を出した彼は、花の中心が少し湿っているのに気が付く。蜜だろうか。湿っている部分に指を擦り付けてそれを舐めてみると、なんとも惹き込まれるような甘さが口の中に広がった。しかし、蜜らしからぬえぐみも、同時に味わった。よく見ると、花の一部分が少し萎れているようだった。
花と言っても生き物は生き物である。こんな人通りの少ない森の中で管理も行き届かなければ、この花もすぐ枯れてしまうだろう。
「待ってろ、ご飯持ってくるからな」
幸いそこから自宅まで遠くなかった彼は、そう花に話しかけると、急いで肥料となるものを取りにいった。暖炉に残していた灰なら、いい養分になるだろう。
花の周りの土に灰を混ぜてあげた翌日、青年は少し家を早く出た。いつもより増して日の光が浅く、森は深い陰を湛えていたが、あの花のきっと元気になっている姿を見れることに比べれば、闇の恐怖は何ともなくなっていた。
花は、そして期待通り水々しくなっていた。確認するように指を花の中心に触れさせると、そこには蜜がじわりと溜まっていた。その味には昨日のようなえぐみがなく、すっきりと突き抜けるような甘さになっていた。青年はそれが嬉しかった。
「今日も仕事頑張って来るからな」
青年にとって、大きな花が生活の彩りとなったのも、また事実であった。
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違う違うそうじゃなくて。
…なんで引き抜かないのさ?
や分かりますよ、お花を大切に思う気持ち。灰も嬉しかったですよ。でもね、そうじゃない。
ここ一週間くらい毎朝ずーっと話しかけて蜜舐めて、それでおしまーい。とんぴらしゃん。
んー、あのままだと引き抜かずに、埋まったままの私を愛でて終わりそうなんだよねー、どうにかして花をひっ掴んでもらわないと…。
……あっやってきた、さあ今日こそ私を引き抜きなさいよ、ほら匂いムンムンムンムン。ムンムン。おっ近づいて来た。
ってんんっ!違っ、そこ触らないでっ、んぁっ!ぁあっ!そ
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