傷口に塩塗り込まれると死んだ方がマシだと思えてくるのは末期だな。

肩が痛い。
だが、痛いのは俺がまだ生きていて、神経が通っている証拠だ・・・

何度も自分へと言い聞かせ、必死に痛みに耐えながらスフィアの肩を借りながら人目の少ない場所へと向かった。

「大丈夫か?」
「んっ、貧血で倒れそうなのが本音・・・」
「アンタ、バカだね。俺なんかの為に命張って・・・ホント、大馬鹿だ。」
「んな事言わんで下さいよぉ〜」

そう言いながら歩いてはいるが、滅茶苦茶痛いぞ!?
簡単に表現するなら、そうだなぁ・・・
『骨が灼けるようにジクジク痛んで、骨が皮膚を突き破って出てくるんじゃないか?』と言うような激痛。
それ以外に表現の仕方がない。

「あのぉ・・・ドコ向かってんです?」
「俺の知り合いに鬼医者がいるから、そこまで道案内してやる。」
「鬼医者・・・?」
「あぁ・・・こっから少し先に森がある。そこの洞窟に住んでる。」
「医者なら、街の方が儲かるんじゃ・・・?」
「魔物だからな。」
「そういや、街には魔物が少ないよな?俺が見たこと有るのは牛みたいな奴とか羊みたいな奴だけだ・・・」
「共生出来る魔物が居るように、共生出来ない魔物もいるんだ。大半は世界のどこかでヒッソリ暮らして、必要な時に男と交わったりするんだ。でも、魔力が強すぎる奴は魔界にいる。そして、魔界へ男を連れていく。」
「へぇ〜・・・なんか、複雑な事情があるんだな。」
「何も知らないんだな、ギルドの有名人が・・・」
「コッチはコッチで訳有りなんだよ・・・っ!!」

痛みが、増した?
・・・毒でも塗ってあったのか・・・
視界がボヤケてきた。

片膝をつき、荒い息を吐き出し熱を抑えようとする。
だが、正直前を見るのがやっとで立てない。
力がロクに入らない・・・

「ダメだ・・・もう、立つ力も残ってないみたいだ・・・」
「お、おい。チッ・・・こうなったのは俺のせいか・・・」
「お前以外いないだろ・・・?」
「仕方ない、背負ってやる。絶対諦めるなよ!」
「んなこたぁ〜分かってるけど・・・」

力ない一言。
喋るのが精一杯。




「分かるか?ココが森の入り口だ、少しは体が楽になるはずだ。」
「あぁ、確かにちょっと楽になってきた気がする・・・」
「ココは地の精霊と風の精霊が守護する数少ない聖域。不浄な者が入れば汚れてしまう、でもお前は大丈夫そうだ」
「なぜ言い切れるんです?」
「風の精霊、シルフが治癒の風を贈っている。」
「そうか・・・良く分からんが礼を言ってくれ。」
「自分で言う方が礼儀だろ?」
「そうか・・・」

「待て。」

「「?」」

「貴様、どう言うつもりだ!人間をこの聖域へ立ち入れるとは!!」

「チィ、面倒なのに見つかったか・・・」
「誰だ・・・?」
「エルフ族、人間を自分達より下と見なしてる種族だ。」
「うげぇ、不幸だ・・・」

「何をゴチャゴチャ言っている、この森を汚す前に一刻も早くこの地を去れ下郎が!!」

「コイツは怪我してんだ!医者に見せるんだよ!!」

「人間がどうして魔物の医者に診てもらう必要がある!?アンタもアンタで自分が何してるのか分かっているの?」

「当然だ、命の恩人を助けている。それだけだ!!」

「命の・・・恩人?」

「あのぉ〜・・・すいません、ココを通してもらえませんか?この聖域の風は俺を心配してくれてるらしいんです。だから、速く医者に見せてシルフさんにお礼を言わないと・・・」
「だ、そうだ。この森の精霊が下した判断にお前がケチをつけるのか?」

「精霊が良いって言うなら仕方ないわね・・・べ、別にアンタを通しても良いとは思ってないんだからね!」

とは言うものの、なぜか誘うような動き・・・
男を誘惑するような気配。
それを無視し、スフィアは歩みを進めた。

ツンデレか・・・?
まぁ、可愛い事は肯定しよう。

「ふぅ〜なんとか面倒なのはやり過ごせたが・・・」
「どうした?」
「道に迷った・・・」
「はい・・・?」
「道に、迷ったようだ・・・」
「冗談・・・ですよね?」
「マジだ。」


それから何分が過ぎたのだろうか・・・?
日が落ち始め、太陽な綺麗な朱色へと染まりきっている。
この世界の夕日は綺麗だと思う。
元の世界より美しく、大きく、暖かい・・・

「どうした?」
「夕日が、綺麗だと思って・・・」
「・・・そうだな。」
「・・・・・・」
「あ、思い出した。」
「何を?」
「洞窟の位置、思い出した。」
「!・・・マジか?」
「急ぐぞ、振り落とされるなよ!?」

ダッと走り出したスフィアへしっかり抱き付き離れないように踏ん張る。
じきに肩の痛みが和らぐと想像しただけで一気に活力が増してきた。


「ココだ!」
「ココが・・・」

洞窟の前で堂々と立ち、ゆっくり一歩を踏み出した。
それから大声で洞窟へ叫んだ

「おぉ〜
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