出会いは、砂漠

 街からの依頼を受けた。
どうやら特殊な鉱石が必要だとかで、砂漠まで採りに行ってほしいとのこと。
報酬が並外れて良い事から、快く引き受けた俺。
だが、その仕事に見合わぬ報酬に、魔物の存在が影響している――
そう気が付いたのは、俺が魔物と遭遇してからのことだった。


 俺はツルハシを灼熱の太陽の下、岩肌へと振り下ろす。甲高い音とともに、太陽の光に反射して、キラキラと輝く"何か"を見つけた。
「これか…」
採った鉱石を鞄へと詰める。俺はわざとらしく周りを見回してみたが、生物どころか、影を作り出す物体さえ見当たらなかった。
「順調、過ぎるな…」
それはそれで問題ないが、不釣合いなまでの報酬を考えると、何かが起こってもおかしくはないと考えるのが正しい。
この調子で、日が暮れる前に終わればいいんだけど…。
俺はツルハシを振り上げ、採掘を続けた。

 魔王の世代交代から、魔物の討伐依頼は、激減した。
報酬の良い魔物討伐は、俺のような"成り損ねの勇者"にとっては生きる糧だったと言っていい。それがほとんど無い今、俺は報酬に釣られ、砂漠のド真ん中までやって来ているというワケだ。
いちを身分なら、こっちの方が上なんだけど…。

もうね、俺を完全に使い走り。

ひどいね、使い走り。

ただ、何度も言うとおり、今回は報酬が異様なまでに良い。この報酬量は魔物討伐には至らないものの、最近の依頼の中では一番の額を誇っていた。
先に誰かに取られるくらいならと、俺は依頼を引き受けたということ。

完全に…鍛冶屋の使い走り。

でも最高だね、使い走り。


 俺は再び、ツルハシを岩肌へ振り下ろす。
「やはり、希少な物だけあって、なかなか出てこないか…」
光沢の見られない岩肌を見ながら、一息。灼熱の太陽は南中し、その熱を存分なまでに地へと伝えていた。
「…暑い…」
にじみ出る汗が、喉の渇きを促す。
少し、陽の光を遮れる場所で休憩した方が良いかな…?時間はまだ十分にあるし、砂漠を甘く見るのはよくない。それは昔、嫌という程身に染みた。
「とりあえず…移動しようかな」
この辺りにいては陽の光を遮ることはできない。やや重たくなった鞄を持って、俺は足を進めた。

 少し進んだところに、岩にぽっかりと空いた穴を見つけた。
洞窟にしては少し小さすぎるし、よっぽど水の乏しいここに鍾乳洞があるのは不自然だ。
俺は穴を覗く。冷たい風が頬を撫でた。
どこかに別の入り口が…?
穴は地下へと進んでいるように見える。
昔の探検大好きの血が騒い――。
「う〜む…」
わざわざ奥まで進む必要はない。入り口の近くで、休もう。
ふー…。
ここへは、採掘に来たんだ。探検のためじゃない…。
自らの胸の騒ぎを落ち着け、俺はその穴へと足を踏み込む。中は、涼しいどころか少し寒いくらいだ。
何も…見えない…。
俺は、ランプに火を灯し辺りを確認する。大きめの大人一人分通れるくらいの広さしかなく、壁が綺麗に凹凸を繰り返していた。壁の至る所に血痕が見える。相当な時間が経過しているようで、茶色く変色し、触ればボロボロと崩れてしまった。
地面には、人のような足跡がついている。
これがこの血痕の者なのか、あるいはその者を襲った者なのか、それですらないのか、俺には分からないが、この穴に対して、期待も油断もできないらしかった。


「…?」
思考を一時中断した辺りで、俺は不思議な香りがすることに気づいた。


風に乗ってきたのか…?

魔力が感じられるが、とても弱い。取り巻く香りは次第に薄れ、消えていった。
思う限り、魔界への入り口というワケではないようだ。


この先はどうなっているんだ…?


暗闇に沈んでいるその先へと、ランプの光を当てた。冷たい風がランプの灯をゆらす。
………?


ん?


ふと、暗闇の奥で何かが光に反射したのが見えた。
鉱石か…?
確かに、洞窟には鉱石の類が多く埋まっているし、御目当ての鉱石である可能性も否定できない。もしそうならば、幸運だ。俺は警戒しながらも、ツルハシを担ぐ。

その時だ。

「――――」

…。
呼吸音。
それが呼吸なのかは分からないが、俺にはそう聞こえた。
……ん?
ランプに照らされた、光沢の形が微妙に変化している。先ほどより縦に伸びたように……見えなくも無い。
「何だ…あれ…」
俺はその光沢に目を凝らし、それが光沢でないことに気がついた。
光沢と言うよりは、液体の反射?

「――――」

…!
再び、呼吸音が耳に入った。
その光沢が金属だったとしても液体だったとしても、とりあえず確信した事が1つある。

洞窟の奥に、何かが潜んでいる。

「………」
姿が見えない以上、こちらから仕掛けるのは得策ではない。視線も感じなければ、殺気も感じない為、そもそも相対しているのかすら怪しかっ
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