挑戦へ

「以上が今日のスターティングメンバーだ。プランも昨日説明したとおり。」

説明を終え、正樹は選手の顔を見渡した。ネコの神をモチーフにした漆黒のユニフォームに身を包み、誰もが緊張と期待の間で心を揺らしている。ある者は武者ぶるいし、ある者は静かに時を待っていた。


「流石にお前らでも緊張は知ってるらしいな。でもそれでいい。1点取られても2点取り返せ。この試合はそのプランだ。」


そろそろピッチ入場前のチェックを始めます。メイン通路にならんでください。


「さあ…行ってこい!黒猫軍団!っとその前に…サラ、お前だけちょっとこっちこい。」

「ひゃ…ひゃい!」



第三者からすればウェールズvsキャットランドと言うのはお互い有望な若手を揃えているとはいえ、旨みに欠ける対戦カード。しかし、元々動くものが大好きなネコである国民たちは心を躍らせていた。5万5000人収容のスタジアムは超満員。国王夫妻も駆けつける天覧試合だ。



「いよいよ始まります!我らの世界への挑戦!本日は欧州選手権、予選リーグ第一節、キャットランドVSウェールズ。実況は私、エル・クライン、そして解説のには元レスカティエ教国代表、エリック・カントナさんにお越しいただいておりますニャ!」

「どうぞよろしく。」

「いよいよ試合開始というわけですが…どのような展開、予想されてますかニャ?」

「何とも言えませんね。キャットランドはまだ試合をこなしていないとはいえ、国内外で中々の存在感を示している選手で成っています。一方ウェールズも銀河系軍団、レアル・マドリード所属のベイルを中心に多彩な攻撃を武器として持っていますから。」

「井原監督も現役ではDFでしたからGKカーンを中心に守備からゲームを創るのではないか?という予想がほとんど。さあいよいよスタメン発表ですニャ!」


最初にウェールズ代表のスタメンが簡単に発表された。
いよいよ次はキャットランドの発表。ゴール裏の旗手のワーキャット、男たちは一斉に旗を構え、みなスクリーンに注目した。

お待たせしましたぁ!キャットランド代表、スタメン発表です!”

始まってすぐにスタジアム全体は歓喜ではなく驚愕の声に包まれることとなった。
正樹はGKにはチーム最年長かつドイツで活躍するアリアーネ・カーンでなく弱冠21歳、大きく長い手足を持つとはいえ経験の少ないサラ・ハワードを、DFには練習時から守備の意識の薄さが目立ったメル、チルのシェスター姉妹を起用。
FWには4人の選手を配置し、MFにはたった2人のみ配置。もはやサッカー界では死語と化した、1−4−2−4と言われるフォーメーション。


当然実況席も大騒ぎだ。

「エリックさん、これは…攻撃に対し攻撃で対応…ということでしょうかニャ!」

「いや!無謀です!あまりにも無謀ですよ!シェスター姉妹はDFながらリーグ戦ではゴールを多数記録しています…しかし両サイドを彼女たちのみで守るというのはあまりにも無理難題!MFのアリア長谷川、ディアナ・マテオもそれぞれのリーグでカバーリングに定評がありますが…連戦の疲れもあるでしょうに!」

「これは…男井原48歳、いきなり勝負にでたのか〜!!」




ふう…と小さくため息をして彼女は正樹に話しかける。どこか呆れているようだ。

「あれだけ紅白戦でこまらされたバカ姉妹使うんですか…」

「言ったろ?ミーティングでも。これが今のベストだって。」
どっから湧いてきたのか自信満々。

「それに…ルクサーナをキャプテンにってのは…」

「今のチームにキャプテンはいらんだろ。だったら一番こういうのでやる気があがるアイツに渡しとけば塩梅だ。」

当の本人は宝石を眺めるかの様に左腕に巻かれた布を見つめそのたびに二マニマ。国歌斉唱中も落ち着きがない。その後ゆっくりと雄々しくコイントスに向かった。
結果、ボールはウェールズに。選手たちがフィールドに散り、センターサークルにはベイル、モルシャイアの二人が入った。



「バカな奴らだよね、お兄ちゃん…」

「そう言ってやるなよ。がむしゃらプレー、初出場国にはありがちなものだ。」

「かわいいネコしゃんたち…でも…私たちの踏み台になってもらうよ!」

けたたましい笛の音とともにキックオフ。
キャプテンベイルを中心に小柄な魔女たちがするすると王国の選手たちを抜く。妖術でも掛けられたがごとく、メルがフェイントされ突破された。エリア内ではデビル、アークインプが待っている。一番懸念されたサイド攻撃み対する脆さ。サポーターたちが目を覆い、失点を覚悟した…が彼らが目の当たりにしたのは…





サラの長い足でのスライディングが的確にヒットし、ふっ飛ばされ宙を舞うモルシャイアだった。


「いやああああああ!!!!!!!」

[3]次へ
[7]TOP [9]目次
[0]投票 [*]感想[#]メール登録
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33