黎明の肉球

「どうすればいいんだ…後二週間だろ…」

正樹は頭を抱えていた。集まりの悪いメンバー、浮かばない戦略。
そして予選の相手が悪すぎる。
何故あの時サインしてしまったのか…心のどこかでは適当にハク付けて日本に戻ろうという気があったのかもしれない。

欧州選手権予選グル―プC
キャットランド王国
スウェーデン
ウェールズ
トルコ
スペイン
マケドニア

「誰だよ!こんなクジ引いた奴はよぉ!」

…なんだかごめんなさい。

「誰だ!?」

突然の声に耳を疑い身構える。しかし…何処か透き通る心地良い声だ。


あはは…ま、端的に言うと…この国を創った者です。

「余計にわけがわからんわ!」

なんと!…あの娘達ったら…ともかく、何でもいいじゃありませんか。うふふふ…

掴みどころのない調子で声の主は続ける。

「…疲れてるんだ。寝よ…」
正樹は投げやりにベットに体を預けた。

まって!お話したいことが…

「短刀直入にどうぞ。」
一応聞くだけ聞いてやろう。どうせ明日はオフだ。

気付きませんでした?この国の地名…カルタゴ、テーベ、カレー、マッサリア…

「昔の地名が多いね。こう見えて高校では世界史取ってたんだ。」
確かにそうだ。言われてみれば視察したり動画で見たこの国のチーム…FCテーベ、カルチョ・カルタゴ…

この国は大昔から住処を失ったり、酷い目にあったりしたネコたちを救うために私が少しずつ造って参りました。自分たちの故郷を懐かしんだネコたちがそんな名前を付けたのでしょう。
脈々と受け継がれていたネコの習性…なんでしょうね。あなたを困らせてしまうのは。それでもみな私のかわいい子供たちなのです。

「犬好きと指導者にはたまったもんじゃないがな。」

ふふっそうおっしゃらず。それがあの子たちの良さでもあるのですよ。
もっとこの国を歩いて、触れて、味わって…ネコの愛おしさに気付いてあげて。そして…その力を最大限引き出してあげてくださいな。
もうすぐ全ての子たちがこの国に帰ってきます。私の加護をかけて上げますから…今はゆっくりおやすみ…

突然睡魔に襲われ、そこからの意識はなかった。




一週間後…
不思議なことに正樹たちには胃薬や睡眠薬を必要としなかった。
少しずつではあるのものの、皆しっかり練習に来るようになっていた。
やはり、サッカーが好きなんだろう。
そしてこの日、所属クラブの許可のなかった選手たちがUEFAサッカー協会の規定により合流。各ポジション争いは激化した。
点と点が繋がり環を描き始める…たとえそれがどんなに歪であっても指導者にはたまらない瞬間だ。


「超攻撃サッカー…ですか?」

「ああそうだとも。なあ伸さん?」

「キーパーコーチとして見ても、面白い戦術だと思う。」

「うん、良さは生かしてやらんとな。」

次回、初の対外試合、正樹の戦術とは?
お楽しみに。






〜コラム・王国の路地裏〜

この代表チーム、実はメンバー全員がワーキャット系の魔物というわけではない。ネコの生き様にあこがれる他の魔物娘達も移住しており、国もそう言った移民を積極的に受け入れているのだ。
なのでサッカーにおいてワーキャットたちには生まれつきの体格から向かないGKなどは違う魔物娘が担う場合も多い。
代表GKの二人、アリア―ネ・カーン、サラ・ハワードもそれぞれマッドハッター、トロールである。


15/03/17 00:18更新 / レッズ周作

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