突如としてベネチア南東部、アドリア海に現れた島国…猫の王国。
他の国々からはキャットランド王国として呼ばれている。
後にサッカー界に大きな大きな猫パンチを与えることになるのだが…
「バステト神様…リストの上から15番まで全滅したニャ…」
「南米へ視察に周ってたネコから報告…こちらも全滅とのことニャ…」
「むむう…」
「もっと猫の良さを広めるために魔界から国ごと現世に移住するってのは良くわかるニャよ?でもでもFIFAランクも低くて自由気ままな猫族率いて監督したいなんて人材そうなかなかいないニャよ…」
「てか!指示出してくれるならお姿も見せて欲しいニャよ!」
「だめですよ…一応私神様ですし。それに健康クロスさんがもっとキャラ付けしてくれないことには…」
「はぁ…まだ日本に行った奴らからの報告がないにゃ…気長に待つニャよ…」
ところ変わってここは日本の某サッカークラブ事務所。
一人の犬好きが運命の時を迎えていた。
その名は井原正樹。このクラブのヘッドコーチとして2年支え、
次期監督候補としても期待されていた。
現在の監督は就任4年目。そろそろ世代交代してもおかしくない。
時は9月の中頃。来年度に向けてチームは編成を考え始めている頃。
茶色くてまんまるい尻尾を揺らし、編成部長が現れた。
彼女は書類を手に、正樹の前に座った。
「井原君、お疲れ様。」
「…」
緊張が正樹に走る。
「キミ、クビや。」
「え!?」
「来年度やけどさぁ…後任に別の人決まってん。まぁ…またご縁があれば…チームも今ふるわんし…次の試合から監督もコーチも総入れ替えするから。」
「…今までありがとうございました。」
もう切られているのが決まっているのなら反論のしようがない。
そう自分に言い聞かせ、ロッカーを整理し、慣れたクラブハウスを後にした。
自宅に戻っても実感がわかない。
しかしただ愛犬のリッキーをなでていて涙がボロボロあふれてきた。
「ごめんな…俺もう首なっちまってさぁ…サッカーできないかもな。
これからもリッキーのこと養っていけるかなぁ…」
「…飯でも食いに行くか…」
日本代表時代からの行きつけの居酒屋。
ここの喧噪のなかにいると何か落ち着く。今自分の置かれている状況など泡沫のように消えてしまう。
ふと、とあるニュースがテレビから流れてきた。サッカー関連のニュースらしく、杯を傾けながら耳を傾けた。
「ブラジルW杯終了とともにFIFA加盟を発表した猫の王国、通称キャットランド王国ですがロシアW杯ヨーロッパ予選を前に今だコーチ陣が決まっていないようです。当サッカー協会は」
まったくご苦労なこった。名将ならここに一人転がってますよって。
ま、犬の王国ならともかくね…猫なぁ…
「ホントだ。名将が見事に転がってますね。」
「誰?」
突如ほろ酔い正樹の前にいかにもバリキャリな猫耳OLが座った。
「申し遅れました。私こういうものです。」つ名刺
キャットランド王国サッカー協会強化部長
サマンサ・フロレンツィ
「で、そのお偉いさんがなにかご用で?」
酔いが回った正樹は威勢よく答えた。
しかしサマンサは顔色一つ変えず続けた。
「今しがたニュースになったように我が国のサッカー界はピンチに陥っております。そこで、井原さんに代表チームの指揮をとって頂こうかと。」
「アラフィフで反抗期の女子高生30人ほど抱えろって?」
「仰ってることがよくわかりませんが…その点は私もチームに帯同しサポートします。コーチ陣もあなたの希望する人物を起用します。」
「ん〜猫はあんま好きじゃないけど…今職無だし…やるか。」
「…!ではここにサインを…」
その夜自宅に帰るとすぐに旧友たちに連絡を取った。
内二人からいい返事をもらうことができ、後日三人でサマンサと面会することになった。
「嫁さんがさ、一回ヨーロッパに行きたいって言ってたし、ちょうどよかったよ。」
「スペイン以来ですよ。楽しみっちゃ楽しみかな。」
連絡に応じたのは小島伸一と城彰太。いずれも共にフランスW杯を戦ったチームメイトだ。小島にはGKコーチを、城にはヘッドコーチの役目が与えられた。
彼らを待ち受ける問題児たちとは?
そしてライバル、欧州の魔物たちとは?
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