「サッムィ!!やっぱり…イタリアとは違うなぁ…」
早くからきて日本に慣れようと意気込んでいたものの、行き成り異国の空気に慣れるはずはなく。心細さがより一層増してきて、ダニエルは急いで迎えのクラブスタッフを探した。
確か欧州とは違いJリーグは終盤戦。クラブからは誰が迎えに行けるか分からないという話だったが…
「おーい!」
遠巻きから身長は190センチあろうかというアカオニがやってきた。
「女みたいな長い黒髪、ブルーの瞳に細い体…ダニエル・ダンテってのはお前さんかいな?」
「はい。来年からお世話になります。ダニエル・ダンテです。」
「俺は真子徳子!ポジションはGK。これからよろしゅうな!」
「よろしく願いします。」
ダニエルはしっかり日本に合わせお辞儀した。
よし、完璧だ。
「ほんじゃま、今夜はお前さんの来日祝いじゃ!俺の行きつけの店に連れて行ったる!!」
「あ、ありがとうございます。」
そっか。日本酒にも慣れとかなきゃな。
夜の帳の下りた岡山。
ダニエルと徳子は因幡屋という居酒屋へ来ていた。
ここはこの町における所謂スポーツバーのような役割を果たしているらしく
今日の岡山VS横浜の試合がTVに映され、異様な熱気に包まれていた。
「女将ー!!俺だー!!」
「はーい!今すぐ〜」
熱狂の中を透き通るような声の主は稲荷。
キュッとしたエプロンがちょっと煽情的。
「あれま徳子さん…とその方は?」
「ファジアーノの秘密兵器
#9825;。いつもの二つね!」
「うふふ。かしこまり〜」
「さてと、俺たちも観戦するかな。」
「ですね」
内心秘密兵器と言われほくそ笑んだものの、おちおちしていられない。
現に、来年には仲間に、ライバルに成ろうかという者たちが敵地横浜で熱戦を繰り広げているのだから。
「お?気になるかい?あいつ等のこと。」
「あはは。分かります?影山監督にお願いしてビデオは送ってもらってたんですけど。」
「伊達にガキの頃からボール蹴ってねえよ。」
「お待たせしました。キツネうどん二つ…きゃっ!」
ゴオオオオール!!押谷の右足から追加点が生まれました!岡山ダメ押し〜!!″
「いいぞオッシー!!」 「ようやったでー!!」
突然の歓声に若い稲荷の女給が汁をこぼしてしまった。
「はわわわ…すいません!いま吹きますね!」
「ああ、いやお気になさらずに…」
という前に女給は奥に戻ってしまった。
「あちゃー。ダニエル、ありゃあんたに惚れてたんじゃないか?そんでぼーっとしちまってさ…」
「んなバカな…」
「すいませ〜んウチの子が租惣を…ほら、お酌して差し上げて!!」
「は、はい!どうぞ…」
ぎこちない手つきで若い稲荷は酒を注ぐ。
なんだか気不味いが徳子はにやけるだけで助け船を出さない。
「あ、あの!!」
「な、なんでしょう?」
「母から聞いたのですが…秘密兵器というのは…」
「来年から岡山に入団するんです。ダニエル・ダンテです。よろしくお願いします。」
「あ、牧村美咲と申します。よろしく…」
何か話題はないものか…高校生かテメェらは…
と、二人を酒の肴にする徳子。
「所でさ、この町、いいですね。」
「?」
「なんかさ、こう、皆好きなんだよね。ファジアーノって言うチームが。それがよく伝わって来るよ。」
「そう言っていただけて何よりです。」
「盛りあがろうとしてとこ悪いが…ダニエル、もうすぐオフだよ?どうすんのさその間は。」
「まートレーニングでもして過ごそうかと…」
「そういうことなら!ふふふ…」
おっと唐突に女将登場。
「ネノカタスクニへお行きなさいな。ウチの娘が案内しますわ。」
「お母さん!ちょっと何を勝手に…」
「美咲さん、ちょっとこちらへ。」
首をガッチリホールドし女将は美咲に語りかけた。
はたから見るとかなり怪しかったが、勢いに押されダニエルは見守ることしかできない。
「いい?これはお母さんのインスピレーションだけど…あの人、めちゃくちゃいい旦那様になるわよ〜。二人で障害を乗り越えて、愛を育んで…もうあなたも26なんだもの。今がその時よ!」
「ひいい…そんなぁ…」
「もうそんなこと言ってられないのよ?いいの?このままじゃ同級生の女の子たちが白無垢姿を一人さみしく見続けるだけなのよ?」
「ううう…分かりましたよ…」
「おっけーです!ダニエルさん、美咲さん、修行の旅へレッツ・ゴー!ですわ!」
「ええ…」
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