私って、どうやって動けばいいの?

僕は今、触手の森にいる。
僕が住んでいるところの近くには触手の森と呼ばれている森があった。
遠目からでも見たこともない綺麗な植物がたくさんあって、気になっていた僕は一回その森に行こうと思った。
でも大人は、お父さんとお母さんですら口を揃えて絶対に行くなと言うのだ。
そんなこと言われたら気になってしまうじゃないか。
最初は我慢していたけど、好奇心には勝てなかった。
少しだけ、少しだけ近づいて、近くで見たこともない綺麗な植物を見るだけ。
すぐに帰るから、すぐに帰ったら大丈夫。
自分にそう言い聞かせて、僕は大人達の目を盗んでその森に行くことにした。
そして僕は迷子になった。
少しだけ、少しだけ、と進みすぎたみたいだ。

「僕、これからどうしよう……」

あたりにある触手に手を触れてみる。
撫でてあげると、手に擦り寄ってきてなかなか可愛い。
大人は触手が襲って来るとか言ってたけど、嘘っぱちじゃないか。
危険はない。それに、止まっていたらいつまでたっても帰れない。
そう思って、どこかもわからない出口を目指して、僕は森を彷徨うことにした。







私はどうなってしまったのだろう。
何時も通り、この森に愉しみに来る魔物娘達や夫婦から魔力を得て……そして……そしてどうしたんだったかな。
わかっているのは、私は知らないうちに魔物娘の仲間入りをしたということだけ。
しかし、どうしてこうなった。
魔物娘化したことではない。

「私、脚もないのにどうやって移動すればいいの?」

涙目になりながらも、魔物娘化させてくれた魔王様……魔王様が直々に私を魔物化させたわけじゃないと思うけど、とりあえず感謝しつつ、足を与えてくれなかったことを恨む。
しかも触手は短いし、仰向けに寝転がっているために起き上がることもできない。
うーうー唸りながら体をくねらして少し前進してみたが……うん、なんか無様すぎる。
周りの触手で自分自身を運ぶという手も考えたが、それもおかしい気がする。
どうすればいいどうすればいいと、やはりうーうー唸りながら考えているうちに、人間の気配を感じた。
魔物娘じゃない、人間のメスでもない、オスの気配だ。
た、助けてもらえるかも、と少し期待した。
触手の森に来る人間の男は、なぜか以外と親切なものが多いということを長年の経験から知っていたからだ。
もうすぐそこ、少しこっち、左向いてこっちに来て、そうそう、もう少しよ。
周りの触手から、今どのあたりにいるかはわかる。
運良くこちらに近づいてきている。
あ、もう目の前かな。

「えっ……?」

目の前に現れたのは、確かに人間のオスだった。
しかし、私を助けてくれるという期待は少しだけ裏切られた。
なぜなら、私よりも小さい、子供だったのだ。
私を持ち上げることなんてできるはずがないし、私のことを怖がって逃げるだろう。

「ま……もの……?」

私の様な魔物を目にするのは初めてなのだろうか。
顔に浮かべた表情からは驚きと恐怖と、好奇心のようなものを感じた。

「あ、あの? 僕? ちょっと助けてくれない?」

とりあえず、私が怖いものじゃない、弱いものだと見せつけるように、体をくねらせて動けないアピールをしてみる。
すると少年は慌てて、

「あっ、お姉ちゃん大丈夫!? どこか痛いの? ど、どうすれば……」

こちらに近づいて手を伸ばしてくれた。
私は手……というか触手を伸ばしてその手を掴むと、少年は少し驚いた顔をして、でも私を引っ張ってくれた。
あれ? 私って案外手、いや触手が長いのかな、さっきも普通に起き上がれたんじゃ……。
と、とりあえず、座ることはできた。
少年に感謝感謝。

「ありがとう、すごく助かったよ!! 」
「う、うん。でもお姉ちゃんなんで倒れていたの?」
「あー……。まぁいろいろとあって……。それよりも、君はなんでこんなところにいたの?」

魔物娘化したことを話すのは簡単だが、幼い子には少し難しいかなと思ってはぐらかした。
というか、私自身もよくわかっていない。

「えっとね、見たことない綺麗な植物がたくさんある触手の森に興味があったんだけど……」

少年は結構長いあいだ私に経緯を説明してくれた。
話の内容自体は単純に、興味があった森に行くなといった大人の目を盗んできたら迷子になったというものだったが、その合間にこの森でみた植物がいかに綺麗で可愛くて素晴らしかったかをすごく楽しそうに語ってくれた。
私は嬉しかった。
快楽を求めてくる魔物娘などはともかく、普通の人間は触手に対して嫌悪感を抱いていると思っていたからだ。
少年の話が終わる。

「それで、出口がどこかわからないんだ……」
「それなら、私が案内してあげる。出口まで、行きましょう」
「で、でも……お姉さん動けないんじゃ……」
「あっ…
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