愛心(ハーピー・甘口・エロあり)

僕は、サキさんに言われ草原に来ていた。
宿屋に近いこの場所は、さまざまな魔物がいると言われている。

加えて、人里の近くには恐れられているような魔物はいない。
そのため、害がない限り放置されるか、僕のような初心者の戦闘相手として追い払われるのが大半だ。

僕は羊皮紙に書かれたサキさんお手製の絵を見る。
今回、調査するのは『ハーピー』という魔物だそうだ。

「飛んでたりするのかな」

眩しい陽光に目を細めながら、空を見上げる。
広がるのは雲ひとつない青空で、そういった類が飛んでいるようには見えなかった。

★ ☆ ★ ☆

しばらく歩いていると、僕は対象を見つけた。
大空を飛ぶための桃色の両翼と、茶色の羽根。
猛禽類を思わす鋭い両脚。
間違いない。ハーピーだ。

「うう……」

しかし、僕が近づいても飛びたとうとも、襲おうともしない。
……どうやら怪我をしているようだ。

本当であれば、杖を取り出し魔法を唱えるべきなんだけど……。

「あ、あのっ、大丈夫ですかっ」

僕はハーピーに話しかけていた。もちろん、いつでも逃げられる距離からだ。

「……あはは、ちょっとドジっちゃったみたいでさ」

体を覆っていた羽根を重そうにゆったりと動かすと、ハーピーの身体が現れた。
両翼と同じ桃色の髪。トサカのように尖ったアホ毛。
そして、小ぶりな胸が生えた羽毛によって隠されている。
デニム生地のズボンを着ているせいか、はち切れそうな太ももにハイライトが入り、際立っていた。

「え、えっと……」

思っていたより人間の姿をしていて、僕はしどろもどろになってしまう。
見た感じ、外傷はないけど……。

「飛んでたら毒食らっちゃって……このありさま。う……毒が回ってきたみたい」

自嘲気味に笑うハーピーは、身体をぐったりとさせる。

「このまま、君にやられちゃうかな?」

「ま、ままってください、いま毒を消す薬草出しますから」

弱っている相手を攻撃するほど僕は、信仰が厚くはない。
助けられそうな相手がいるなら、助けるのは人間としての善だろう。
僕はポーチから毒けし草を手に取り、彼女に近づく。

「……
#9825;。君は優しいんだね」

「はい、ほらこれと、ああえっと、水は僕の水筒から……」

僕は助けたいという気持ちから、彼女から視線を外す。
瞬間、僕の身体がグッという強い力で掴まれた。

「つーかまえた
#9825;」

「え……」

2m近い両翼がバサ……と広がり、陽光を遮る。
足が地面から離れ、持っていた薬草、水筒
……そして唯一の武器である杖がぼろぼろと僕の手元から落下していく。

「は、離せっ、この魔物がっ」

「抵抗しても無・駄
#9825;」

「この時期のハーピーに近づくなんてほんと人間て、
 優しくてちょろいなあ
#9825;」

「くっ……」

肝心の武器がなくては、僕の詠唱はただの独り言だ。
彼女の鷲のような足を殴ったとしても、拳が傷付くだけ。

「それに、ここから落ちたら怪我どころじゃ済まないよ?
 私に近付いて、飛ばれた時点で君の運命は決まっているの
#9825;」

そう言われ、僕は眼下に広がる光景を目にする。
興奮した頭から、血液がさーっと引くのが分かった。
ここで落とされたら僕は……

「ふふ
#9825;そういうこと
#9825;
 じゃあ、大人しくしててね。
 私の巣に向けて出発でーす
#9825;」

☆ ★ ☆ ★

巣に放り投げられた僕は、巣の中で放置されていた。
というのも、彼女が『渡したいもの』があるそうで、すぐさま飛び立ったからだ。

この場から、逃げる意思はとうに崩れた。
ハーピーの巣は、断崖絶壁+高所に作られる。
彼女が言っていた通り、捕まった時点で僕の生死は握られているのだ。

ハーピーの抜けた羽根にくるまり、高所から吹き付ける風に耐えるのがせいぜいだった。
寒くて凍えてしまいそうだ。

「っっと。あれ? どこにいったのかな?逃げるわけないし……ここかなぁ?」

「さ、寒い……」

「あ、ああっ、ごめんね!そっか、人間は羽毛ないの忘れちゃってた……はい
#9825;」

近づいたハーピーの両翼に全身を覆われる。
バックハグのような体勢だ。

「これで、どうかな
#9825;」

熱気のこもった吐息が、頭の後ろから聞こえてくる。
羽毛も、若干の獣臭さはあるものの、脳を刺激してくる"女の子"のかおりだ。
ずっとこのままだと、おかしくなってしまいそうな濃いかおり。

「人間くんぶるぶるしちゃってる
#9825;寒かったね、ごめんねっ
#9825;」

「すぅ
#9825;はぁ
#9825;これが、人間くんのにおい……身体もちっちゃくてかわいい
#9825;」

「そうだ
#9825;立ってるのもつらいか
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