「久村くーん、こっち手伝って〜」
「はーい、今行きまーす」
俺は、久村 マサト 、22歳。
2ヶ月のプータロー期間から脱却して、早一ヶ月が経った。
今は、食品関連の仕事に就いている。
そしてここ最近、不思議な体験が続いている。
前の仕事をやめてから三日目に、近所の神社に行って、おみくじを引いたところ、
『 大吉 』
商い:2ヶ月もすれば、良くなる
喜事:半月乗り切れば、軌道に乗る
待人:胡散臭く見えるが、それを信じるべし
売買:高くなければ買ったほうがいい
縁談:いきなりやってくる
子宝:出世し、孝行する
...と、あった。
この中の二つ、『商い』と『喜事』は既に的中した。
だが、その他4つがまだ何とも言えないのである。
「縁談......か。いい加減彼女欲しいよなぁ......」
「おーい、手を動かせー」
「すんません」
慌てて、商品の陳列に戻る。
...彼女、欲しいよなぁ...。
俺は、商品を陳列する手を動かしたまま、そんなことを思っていた。
「うー...今日も終わった〜」
店の裏口から出て、自宅に帰宅しようと愛車のブラウンのトールワゴンに乗り込み、発進した。
走り始めて8分。
いつも通る、環状線道路を抜け、その脇道に入る。
右手に雑木林、左手に民家がある道なのだが、近くの中学校が終わる時刻なのに、今日に限って誰もいない。
...珍しいこともあるもんだ...と、大幅に減速して走る。
すると雑木林の方が『バスンッ!!』と爆音がし、アタッシュケースを抱えた、喪黒○造のようなスーツと帽子を纏った、二色の髪の男......のような女が、ゴロゴロ転がりながら飛び出してきた。
慌ててブレーキを踏み、なんとか止めた。
転がってぐったりしていた女は、すぐにむくっと立ち上がった。
......どうやら、なんともないらしい。
そして、こちらに気づくと、車の運転席の前まで歩いてきて、窓をコンコンコンとノックしてきた。
窓を開けると、
「どうも、私、こういうものです」
女はスっと名刺を差し出してきた。
名刺には、
"スマートサバト 魔法召喚符部門 セールスマン"
"ライナ=ランビリス"
と、書かれていた。
ツッコミどころしかないが、二つも的中したおみくじを信じて、とりあえず話を聞くことにした。
「助手席、よろしいですか?」
「えっ、あっ、はい」
スススッと助手席に座り込むと、女は質問してきた。
「お兄さんは独身ですか?」
「......どう見えます?」
「独身臭が漂ってますね」
「.........」
なんだ独身臭って。
「そんなお兄さんに、面白い商品を提供したいのですが、興味ありません?」
「......これを使えばモテモテとかになるのだったら、いらないです」
「いえいえ!! 使うものではありますが、使えば確実に、超美人な恋人が手に入るものなんです」
ますます胡散臭い...。
と思ったものの、追求する自分。
「ちなみに、どういうもので?」
「おっ、ご興味が湧いてこられましたか」
「...話だけでも聞いてみようかな、と」
「なるほどなるほど...。私たちが取り扱っているのは、こちらにございます」
女はアタッシュケースを俺に向けて開いた。
そこには、タロットカードのような形状のカードが数種類入っていた。
「...これは?」
「これは、召喚符『コネクトカード』と言いまして、異世界に生きる魔物....魔物娘を召喚できるカードでして」
「魔物...娘?」
「はい。で、その魔物娘というのは、メスしか存在しない種族でして、繁殖するには人間の男性が必要なのですよ。ですが、異世界の人間の男性は、常に供給不足でして。ならば、人外の女性に理解のある、この世界の男性の助けをも借りようと思ったのですよ」
人外の女性に理解のある......。
だいたいあってるからもう...。
「えーっと、要約すると、異世界から魔物の嫁を召喚するカードということですかね?」
「はい、そのような理解で大丈夫です」
「で、代償は?」
「代償...ですか......。まぁ、特に何もないのですが、強いて言うなら、お兄さんの精液ですね」
「ぶっ!? マジですか!?」
「はい、魔物の食料は、人間の男性が生成するエネルギー...『精』と呼ばれるものです。たまたま、それが精液に多いというだけで、他意はないです」
「...............」
だとすれば......リスクはないに等しい...か?
いろいろなものを秤に掛けているのが表情に出たのか、トドメを差しに来る女。
「魔物の女の子は、とっても一途なんですよ〜? 一回自分の男と認めちゃえば、絶対に浮気なんてしません。どうです? お買い得ですよ〜?」
うんうん唸りながら、俺は....
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