喜劇的ビフォー&アフター

自分は25歳、独身にして無職である。

小さいころから大人たちから無能だなんだと言われ続け、
同級生や周りの子供たちからはいじめつづけられるもなんとか成人を迎えられた。
しかし。

新卒で入った会社は典型的なブラック。
指示通りに仕事をこなせば、こうは指示していないだの。
お前の尺度に任せると言われたから自分なりに頑張ればこんなのはダメだの。
前者は100歩譲っても、後者は新卒1カ月の人間に出す指示じゃない、そう言い返そうと思ったこともある。
加えて先輩や上司からのパワハラ、同期からはいじめられる......
体がストレスに耐え切れなくなり、一度目の失業を迎えた。


2年間仕事にありつけず、やっと見つけた仕事も似たようなものだった。
先の職場のような指示されたこととそのあとが全然違うということがないものの。
仕事をさぼるやつがいるわ、仕事ができないやつがいるわ。
そいつらの仕事を自分がやらされるわ.....。
長く続くはずがなく、二度目失業を迎えた。


そして今。
2度のブラック就職を経て、すっかり心が折れてしまった自分は、ここ数カ月実家にてニートと化していた。
人間心さえ持てば何とかなるといは言うが、自分の現状はその真逆。
完全に心が折れてしまったために、毎日無気力すぎる日々を送っていた。

最近のやることといえば、もっぱらオナニーとネットのみ。
そして食べて消費するだけのうんこ製造機として動くのみだった。


ある日、風呂が沸いたから入れと言われ風呂に向かう。
湯船に使って一息。

なんで自分はこうなんだろう。
なんで自分はこんなにもダメなやつなんだろう。

思えば生まれたときからケチがついていたのかもしれない。
考えれば考えるほど、ネガティブな想像が思考を支配していく。
自分には、精力と性欲の強さ以外これといった取り柄がなく...。
だからと言ってこれで食っていけるとは思えず。

そんなことはないだろうと自己主張を始めるペニスを、恨めし気に見つめる瞳の端から涙が零れる。
そして、涙と同時に、口からも声が零れた。

「自分なんかでも大切にしてくれて、十分役に立てる場所に行きたい」

その瞬間だった。

「その願い、叶えてあげましょう!!」

どこからともなく声が聞こえてきた。
なんだと思う間もなく、湯船の中のお湯が渦巻き、自分はその渦の中へと吸い込まれてしまった!!

某『ローマの風呂』のテルマエ職人よろしく風呂の彼方へと流されていった......





そして流された先。
やっと激流が収まり底に足がつけると気付いた自分は思いっきり立ち上がった。
だが。

自分の目の前には色白い肌の銀髪の女がいた。
女の顔がちょうど自分のペニスの真ん前にいることに気づいたとき、その先端から白濁液が彼女の顔へと発射されてしまった。

そして二人分の叫び声が轟いたのだった......。








「で、あんたは自分ちで風呂に入っていたら風呂の底に引きずりこまれて、いつの間にか『ここ』に漂流したと...」
「はい、だいたいは......」

自分はこの女性の自宅の風呂に出てしまったようだった。
おまけに初対面の入浴中の女性......なんでも、魔物娘という人外の存在の一種族『ぬらりひょん』に顔射をかましてしまった。
一通り大騒ぎになった後、俺は浴衣を着せられて縄で縛りあげられ。
彼女の自宅の居間で、事情聴取を受けていた。
ちなみに今、自分が顔射をかましたぬらりひょんは、自分の前に浴衣を着て仁王立ちでいる。

「じゃあ、あれかい。お前さん、帰れるかもわからないし、帰れないなら行く当てもないと」
「はい、そうです...」
「...........」

腕組みし、非常に悩んでいるぬらりひょん。

「......アンタの事情はだいたいわかった、まぁ元居た場所でそんな目に遭ってれば辛いわな。でも、アンタにはお嫁に行けなくなる目にも遭わされたわけだしィ?」


ビクッと震える。
たぶんこの場所...この世界の警察に引き渡されるんだろうか。
嫌な考えが頭に浮かぶ。

「そ・れ・に、アンタは自称『性欲と精力しか取り柄が無い』。なら結論はこうだ。

アンタがおとなしくウチのお婿にきて、その精力と性欲を全部あたしにぶつけてくれるってなら丸く収めてやろうじゃないかね。

どうだ?」


!!!!
なんということでしょう。
あの謎の声は自分の願いをちゃんと汲んでくれたのである。

「受ける受ける! 受けます!!」

大急ぎ大声で条件を飲む。

「なら決まりだ、ウチはぬらりひょんのスバル。しがない物書きで、これからアンタを養ってくれる偉大な女さ。よろしくね」

女は、ぬらりひょんは、物書きのスバルはねっとりとした口づけとともに自己紹介をしてきたのだった。

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