「これで帰りのホームルームを終了します」
「起立! 礼!」
今日も一日が終わった。
すると、斜め後ろの席の、紫色のリボンでポニーテールにした白蛇が、ささっと歩み寄ってきた。
「柿村君、今日も一日お疲れ様です」
「......白峰さん、ありがとうね、いつも気を使ってくれて」
彼女は、白峰ユキホさん。
人魔共学の高校に入学してからの付き合いで、3年生になった今も、よく会話する女子である。
「柿村くん、今日は部活はなかったですよね? 一緒に帰りませんか?」
「......ごめんねぇ、文学部仲間と一緒にマスクドナルドに行って駄弁ろうぜって予定になるから、また今度でいいかな?」
白峰さんは、シュンと肩を落としてしまった。
「......そう言って、10回に1回くらいしか、一緒に帰ってくれませんよね...」
「......本当にごめんね...」
彼女は美人である。
だが僕は、もう他に好きになってしまった人がいる。
今ここで彼女を選ぶようなことをすれば、ある意味、二股になってしまう。
そんなことは、お天道様も、白蛇の白峰さんも、魔物娘全員も許さないだろう。
「じゃあ、また明日...ですね」
「うん、また明日」
そう言って、白峰さんはしょげた様子で、教室を出て行ってしまった。
かわいそうだとは思うが、自分のことと秤に掛けると、どうしても自分の方を優先してしまう。
そんなことを考えていたが、頭を横に振って、現実に帰還する。
そして、毎日の日課となっていること...想い人の委員長(人間)に声を掛けに行った。
「委員長、お疲れさま。手伝おうか?」
「あぁ、柿村君、お疲れ。大丈夫よ、手は足りてるから」
「そうかー? ならいいけど...。なんかあったら、僕を頼ってくれよ?」
「分かってるよー。じゃあ、また明日ね」
「うーい、また明日ー」
そう言って、友人との待ち合わせ場所の、ファーストフード店・マスクドナルドへ急ぐのだった。
3日後。
「柿村くん、今日も一日お疲れ様です♪」
「おー、白峰さん。お疲れ」
「で、柿村君......今日は一緒に帰ってくれますか?」
「えー.........いいよ、一緒に帰ろう」
「...『えー』のあとに肯定ですか」
「ちょっとからかってみたくってね」
「もうっ!!」
ポカポカ叩いてくる白峰さん。
「痛い痛い、叩かないで。ほら、帰ろう?」
「......そうでしたね、帰りましょうか」
白峰さんと僕は、二人で教室を後にするのだった。
「柿村君って、夏休みの予定とかあるんですか? やっぱり部活?」
「うーん...部活って言っても、僕、文学部だよ? 前半は家に篭って、新作を書くくらいしかないけど」
「そうでしたか!! じゃあ、私の家でアイディアを練ったり、作品を書くのはどうでしょう?」
「......深い意味はないよね?」
「深い意味なんてありません!!」
うーん、と唸る僕。
たしかに僕は、いったところのない場所ほど、インスピレーションが沸いてくる質である。
彼女の家には行ったことがないし、もしかしたらこれは、いい作品をかける天啓かもしれない。
「...じゃあ、お言葉に甘えて」
「まぁ!! では、終業式は半ドンなので、その日の午後からにしましょう!!」
「......日帰りでね?」
「分かってますよ!!」
こうして僕は、白峰さんの自宅で小説のアイディアを練ったり、書いたりする約束を取り付けられたのだった。
これが、あとであんなことになるとは、この時点では欠片も予想できなかったのであった。
終業式が終わり。
「ようこそ、私の家へ!!」
「お邪魔します...」
玄関に通されて気づく。家の人が出てこないのだ。
「ご家族は?」
「両親は、毎年夏になると、『〜回目の新婚旅行に行ってくる』と言って、家を留守にするんです」
「...妹さんやお姉さんは?」
「姉は、別府に温泉婚活ツアーに行きましたし、妹は想い人のところへ押しかけている最中です」
「.........ってことは」
「はい
#9829; この家には、私と柿村君の二人っきりです
#9829;」
やばくなーい? すごくなーい?
マジでやばーばばいやいやい。やばい。
ここで初めて、自分が嵐の中にダイブしてしまったことに気づいた。
「やっぱり、この話はなかったことに...」
「もんどー無用です
#9829; はーい、一名様ごあんなーい
#9829;」
既に靴を脱いでしまっていることもあり、背を押され、家の奥に連行されてしまったのだった。
「粗茶ですが...どうぞ
#9829;」
「お気遣いどうも...」
僕は白峰さんの部屋に通され、お茶を出されていた。
テーブルに、ボールペンと白紙のコピー用紙(アイディアを絞
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