ミチミチ......
「.........まずい......」
エルフの森を出て一年が経つ。
魔物化の兆候が出たことで集落を追放された私は、森の浅部で生涯のパートナーとなる男性と出会った。
ここまではいい、いいのだ。
だが、しかし......。
「......まずい、太った...」
そう、人間のご飯を主食にし、食生活が変化した私は。
体にだいぶ肉がついた、ついてしまった!!!
「どうしよう......ブラ......また買い換えないと......」
ホックを締めるとミチミチと音が鳴る、我が下着。
出費だって馬鹿にならない、一応見越してなるべく安いのを大量に買わないようにしているが......。
その時、キッチンにいる夫から声がかかった。
「アリア、ご飯だよー」
「はーい、シェロウ
#9829; ......まずい、いつものパターンだ......。量は控えないと......」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あー
#9829; おいしかったー
#9829;」
「ほらデザートもあるよ、今日はチョコアイスだ!」
「わー
#9829;」
......って、そうじゃないーー!!!
節制しないといけないのに!!!
なんだ、御飯はいつも通りおかわりまでしてしまった!!
なんだこのざまは!!!
「......ごめん、今日はデザートはいい...」
「どうしたんだい!? どこか体調が悪いのかい!?」
血相変えて心配してくれる夫のシェロウ。
......痛い、優しさが心に刺さる。
「......ううん、やっぱり食べる!! あなたの料理美味しいもの!!!!!」
「それでこそアリアだ!」
......ううん、問題ないはず...。
集落にいたときみたいに脂肪を燃やせば......うん。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「なるほど、旦那の料理が美味しくて肉がついてきたと」
「わかる」
私は翌日休みだったため、街を走ることにした。
走っていると、職場が同じデュラハンとヴァルキリーと出くわした。
近くの公園で、三人で一席ずつブランコに乗りながら会話をする。
「たしかに、結婚すると旦那の作ってくれるご飯が美味しくて、ついつい食べてしまう」
「わかります、純粋な天使をやっていた時には得られなかった感覚です」
デュラハンは心底同意してくれている様子だ。
ヴァルキリーも同じようだ。
「だが、我々は腐っても魔物娘。 肉が付く場所は決まっている」
「たしかに」
「......なんでそんなことを断言できるのよ」
「あなたを見ていればわかります」
デュラハンたちの言葉は、なんというか、根拠のない希望に溢れている気がする。
「気づいているか? お前、森から出てきたばかりとか言っていたより、だいぶ巨乳になっているぞ?」
「はぁぁぁぁぁっ!!? 何言ってんですかアンタはァァッ!!!」
ブランコを停めて、デュラハンは私の右胸を、ヴァルキリーは左胸を鷲掴みにしてきた!!!
「お前は覚えていないのか、自分の足元が見えていた時代を!!!」
「......そんなこと...」
私は二人をはっ倒してから、直立して視線を下に向けた。
「...................................うん、見えないわね」
たしかに、私の胸部のせいで足元が見えなかった。
そういえば一年前まではまな板同然だったわ......。
「人間と同じ食生活の我々はともかく、お前はエルフだ。 果実や山菜などしか食べないベジタリアン同然の生活をしていた奴が人間の食事を摂れば、体型が激変わりするというのも、よく考えれば考えつくだろう」
「...そうね、たしかに葉緑体ばっかり摂ってたわ、あの時は」
頭が痛い話だ、あの時と同じ食事を摂っていた感覚で、それ以上のカロリーを摂っていたのだ。
もっと早く気づくべきだった。
二人は、またも私の胸を......今度はさっきとは逆の胸を揉みしだきながら言った。
「それにお前の場合......いや、私からは言うまい。 だが、この街に来たときに私たちにした話を思い出せ。 『自分が貧乳すぎて夫を満足させられない〜』とか言って、夫に3サイズを測ってもらった話をな......。 それを晩飯の時にでも夫に話して、また3サイズ測ってもらうといい」
「......そんなこと言ってたっけ...」
「喉元過ぎれば熱さを忘れるとは言いますが......」
「言ってやるな。 ならばあとは容易いだろう、さらばだ」
デュラハンたちのアドバイスを胸に、二人と別れ、私はランニングに戻るのだった......。
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