「トモノリ、イサム...なんで気づいてくれないんだ!!」
「無駄ですよぉ......なにせここは、『私の中』なんですから
#9829;」
そう、ここは俺を監禁している白蛇の体内である。
だから、外部には情報は漏れないし、気づかれない。
だが、なぜ外部の情報が自分に伝わっているか?
順を追って説明しよう。
今から一週間と三日前。
俺はクラスメイトの白蛇の、蛇籠 スズさんの告白を断ったばかりだった...さん付けする気などもうないがな。
なぜ断ったのか、すでに意中の人がいるからである......
......というわけでもないが、白蛇とくっつくと自由がなくなる、息苦しいという評判を聞いたことがあったため敬遠しているのだ。
これがまずかった。
体育館裏で告白を断り、顔面蒼白のスズに背を向け、その場を去ろうとした時だった。
ヒュンッ
謎の音が聞こえて振り返ると、紫色の火炎弾...おそらく白蛇の嫉妬の炎製の火炎弾が顔面に直撃。
俺は衝撃で意識を失い、地に伏せた。
...しばらくして目を覚ますと、そこは戦国時代や江戸時代の日本の城のような空間で、俺はその一室に倒れていた。
「...どこだここは」
「...おめざめですか?」
声の主は誰だと振り返ると、そこには畳から出てきたオーラが、スズを形作っていた場面だった。
「...なん...だと...!?」
「ふふふ...」
「断るのは予想外でしたが、まぁいいでしょう。私には『悪魔の実の能力』という切り札がありましたから...」
「悪魔の実だと...あれはフィクションだろ!?」
「いえいえ、寸分たがわぬ能力を持ったレプリカを、魔王軍が開発したのですよ...。 そして、試験用の物のテスターに私が選ばれたのです...」
魔王軍の技術半端なさすぎるだろ...次はパシフィスタでも作る気か!?
「そしてその能力は...『シロシロの実』。愛する人を監禁しつつも常に共にいられる最高の能力です...
#9829;」
「冗談...だろ...」
「この果実のおかげで、私の体内は脱出不可能の城と化しました。おまけに内部に自分のアバターも出せるのです、まさに白蛇にとっては神からの贈り物...」
「さぁ......らぶらぶタイムの時間ですよ?」
セリフを言い終わると共に彼女が行ったフィンガースナップで、天井から鎖が、床からも鎖が出てきて手足を縛ってしまった。
しかもご丁寧に床からはダブルサイズの布団、枕が二つも出てきた。
逃げられない...ッ!!
「さぁ、愛し合いましょう...
#9829;」
ちょっとまて、落ち着け、早まるな......
ギャァァァ.......ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ!!!!
数十発絞られて気絶した俺は、いつの間にか天守閣に連れてこられていた。
これが曲者だった。
四方に壁と柱。これは普通だ。
キングサイズの布団と枕が二つ。アカン。
エログッズ多数。もっとアカン。
正面の壁にある、二つの円形の大きな窓。
これが一番地獄だった。
円形の窓は彼女の本体が目で見ているものが映し出されるようで、ここに監禁されてからも、ずっと情報が入りっぱなしなのだ。
外部からの情報が入ってくる環境が、どれだけ地獄かようやくわかった。
スズは常に俺が中にいるからと、毎日高校に通っていた。
高校で俺が長期欠席状態になったと担任が行った時は絶望した。
「最近、カズマの顔見てないけど、大丈夫なんかな」
「心配だよなー」
「トモノリ、イサム...なんで気づいてくれないんだ!!」
悪友たちに声を張り上げて自分はここだ、と助けてを求めるも、どれだけ声を枯らしても、その叫びは届かなかった。
「無駄ですよぉ......なにせここは、『私の中』なんですから
#9829;」
手を伸ばせば届きそうな、声を張り上げれば届きそうな距離なのに、依然として自分から情報を外部に送信できない。
監禁で一番てっとりばやく心を折るには、脱出不可能かつ、外部からの情報が入る場所に閉じ込めることだと悟った瞬間だった。
「はーい、お昼ご飯ですよー
#9829; いっぱいチュパチュパしてくださいねー
#9829;」
「ちゅるっ、ちゅぱっ...」
ここに閉じ込められてからは、彼女の母乳しか飲んでいない。
最後に食べた御飯は、どんな味だったっけ...。
彼女は自分を蛇体でぐるぐる巻きにホールドしてから授乳を開始する。
最初は拒否していた自分だが、兵糧攻めには勝てず、いまや大きな赤ん坊を化してしまった。
「はーい、次は白いしーしーですよー
#9829;」
そう言ってスズは、俺が着ている、着せられている白い病院着のような甚平を脱がし、自分に覆いかぶさってきた。
このあと、ことに及ぶつもりらしい。
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