立ち上がーれー、立ち上がーれー、立ち上がーれー、リビアマー

「おーい、オズー。今日も一日、その『鉄の巨人』のとこにいんのー?」
「アタシたちとご飯でも行かない?」
「...おう、飯でもいくか」

サキュバスとグールに食事に誘われ、それにやや重い声色で返す。
俺は、彼女たち『魔物娘』のいう"鉄の巨人"を後にした。


...自己紹介がまだだった、俺はオズ。オズ=ピグマリオン。
28歳、男である。

ここに来たのは半月前。
俺はこの、魔物娘の存在する世界に飛ばされてきた。
ほぼ、ほぼ事故に近い次元超えだった。

俺の生まれた世界では、連邦軍と公国軍が大戦争の真っ只中だった。
俺は連邦軍所属の大尉だった。

冒頭に出てきた鉄の巨人。あれは俺の愛機である。
愛機は軍事用パワードスーツ・『グァンタム:マーク42』。
身長:5mで、白い騎士を模した、かなり後期の機体である。
自分は愛機に、『ドロシー』と呼んでいた。

その『ドロシー』と自分が率いるコマンド部隊と共に、ワープゲート発生装置を破壊しに行く手筈だった。
破壊には成功した。『には』。
最初に破壊し始めたのが、制御装置だったようで、それをパーにし終えたとき、装置が暴走し始めた。
その暴走で発生した空間の歪みに一団が飲み込まれた。
気づけば、ワープ空間を脱出できたものの、部下とは逸れ、自分ひとり。
今いるこの場所に放り出されていた。

現地の生物...魔物娘の国に墜落したのが幸い、彼女たちに保護されていた。
装置の暴走で、故郷には変えることなど叶わぬ望みで、今やひとり、できることのもない。
それに何より、『ドロシー』が動かない。
しかし、放ってどこかに行きたくもなかった。
そこで俺は、毎日ドロシーの傍にテントを張っての野宿をしていた。
...うちにこない? と聞いてくる魔物娘もいたが、もう少し気持ちを整理する時間が欲しかったので丁重に断った。

そんなこんなで修理を試みたりしているが、この世界では部品が手に入らず、諦めるしかなかった。
自分が応急処置程度の整備しか出来ないことに、後から気づいてさらにヘコんだ。

魔物娘たちは食事にも提供してくれるし、公衆浴場なども無償で提供してくれる。
本当にありがたかった。

話は逸れるが、『ドロシー』の惨状を説明しておく。
・胸部コックピットカバーは閉じない
・生体エネルギー変換装置はイカれている
・左足、右足はジャンクと化している

とてもじゃないけど、『動く』とは言えない惨状である。
搭乗者としては、かなり物悲しい心境であった。





二人と食事をしていると、急に轟音が響いた。

バゴーンッ!!!
ドゴーンッ!!!

「!?」
「何が起きた!?」

店を飛び出すと、勇者率いるパーティと、教団兵が街を蹂躙しているのが視界に飛び込んできた。

「エクス...カリバーッ!!」
「ゲイ...ボルグッ!!」

勇者と槍使いの一撃で、辺り一帯が吹き飛んだ。
逃げられな...ッ

俺は二人を庇いながら目を瞑った。

ドーン!
キュリキュリキュリーン

爆音の後に、聴き慣れた『バリア発生音』が聞こえる。
まさか
閉じた瞳を開けると、そこには...

「『ドロシー』!? バカな、壊れてたはずだ!!」

目の前に立っていたのは、巨大なる、鋼鉄の白い騎士。
自分の乗っていた、壊れてしまった『はずだった』鋼鉄の巨神。

それが、完全に直った姿で。
勇者の聖剣の巨大なビームと、槍使いの分裂し炸裂する投槍を。
バリア一枚で防ぎ切った勇姿だった。

「なんで...」

いろいろな意味で動けない自分の目の前で、胸部装甲を展開し、コックピットを露出する『ドロシー』。

「お乗りください、マイマスター」
「お前、なんで喋れるようになってんだ!? 乗るけど!!」

『ドロシー』は左手に足を掛けさせ、俺が乗り込みやすいようにする。

乗り込み、シートベルトを締めると、胸部装甲が閉じた。
外部の映像を映し出すモニターと、各種ディスプレイが起動する。
そして...

「マスター、再び私に乗ってくれて、ありがとうございます」

半透明な裸の美少女が、俺の上に、背面座位のような位置取りで出現した。

「お前...誰だ!?」
「私はドロシー、マスターの唯一無二の相棒です」

そう言いながら、少女...ドロシーはグリグリと自分の体を押し付けてくる。

「おい、緊急事態なんだ、いい加減にしろ!!」
「承知しました」

そう言うと彼女は膝の上で大人しくなった。
あぁ、消えたりはしないのね。

少し呆れながら操縦桿を握る。
左右の操縦桿を握る両手に、手を添えてくるドロシー。

「...」チラッ
「...」ニコッ
「「...」」コクンッ

顔を見合わせ、共に正面を見据えた。




ゴイン、ゴイン、ゴイン...

「おい、あの鉄の巨人はなんだ?」
「はっ、
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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33