世紀の珍対決

「この人に触れるな、この外道ッ!! 今、助けてあげるからね!!」

上下黒の服に身を包んだヴァンパイアが叫ぶ。
この女は僕を狙っていたストーカーだ。

「ふっ、外道はどっちよ。ストーカー風情が」

こちらはダンピールの婦警だ。

俺は、二人の脇で転がっていた。

(なんだよ、この状況......)

話は、2週間前にさかのぼる。


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事の始まりは、2週間前。
仕事終わりの夜道を、誰かに付けられていることに気づいたからだった。
家に着くと気配は消え、この時、『これが世に言うストーカーか』と悟った。
僕は成人男性とは言えど、相手が天下の魔物娘では、どうあがいたって勝ち目はない。
一部、ストーカーの魔物娘と結婚してしまった猛者もいるが、僕は顔を知らない相手に犯されて流されて結婚というのは、心の底からゴメンだった。

それから一週間経過。
気づいたことが気づかれたのか、ここから目に見えて被害が出てくる。

「...定位置の歯ブラシが消えてる...」
「ゴミ箱に捨てたはずの割り箸が無いぞ!?」
「なんで作り置きしてた料理が食べられてる!!」
「で、なんで作った覚えの無い料理があるんだ!!」
「鍵が空いてる...だと...」
「オナニーした時に使って捨てたテッシュが拉致されとる...」

奴は家の中に侵入済みのようだった。
冗談だろう、本気でそう思った。

これは勘弁ならんと、僕は警察に駆け込んだ。
そこで担当してくれたのが、彼女...ダンピール婦警である。

「ブラム・ストーカーの被害届けを出されるという、明石さんですね」
「いや、普通のストーカーの被害を出す明石です...」

婦警歴2年で独身( かつ、年齢=彼氏いない歴。二十歳 )のダンピール婦警が自宅に張り込んでくれることになったのだ。

その夜。
僕は一緒に自宅のアパートにやってきて、張り込んでくれている婦警さんに食べたいものを聞いた。
彼女は即答で焼肉と答えた。
......余計なお世話かもしれないが、妙に売れ残りそうな臭いがした。

「あー、焼肉好きな女は売れ残るって顔してますよー?」
「......気のせいでは?」

などの会話をしながら夕食を過ごした。


「あー、食べた食べた」

一通り、食器とホットプレートを片付け終わったときだった。

居間でくつろいでいると、背中に何か忍び寄る気配がした。
なんだと思って首を捻ると、既に遅く、両腕を背中に回され、『ガチャン』と音が聞こえた。
手錠を掛けられたのだ。
なんという早業だろうか。

次に床に押し倒され、ゴロンと転がされると、自分に跨ったのは......

「婦警さん...ッ!?」

ダンピール婦警だった。

「なんでこんな馬鹿なことを...」
「犯人に食われる前に、明石さんを食べちゃおうと思いまして...」

なんと敵(?)は警察にもいたのである。

「たっ、助けてーッ!! 食べられちゃうーッ!!」
「わざわざ警察相手に喧嘩売るバカはいないでしょう...諦めて、天井のシミでも数えててください」
「イヤァァァ!!」

僕を押し倒した婦警さんが、ズボンに手を掛けた。
そのときだ。



「私の、ダーリンに何してるのよォォッ!!」

バァァァン!!と、ドアを開けて入ってきて、婦警さんに蹴りをお見舞いした誰か。

「あなたは?」
「アンタ方が言う、『彼のストーカー』よ!!」

僕の窮地を救ったのは、あのストーカーだった。
ストーカーの正体はヴァンパイアだった。

「この人に触れるな、この外道ッ!! 今、助けてあげるからね!!」
「ふっ、外道はどっちよ。たかがストーカー風情が」
(なんだよ、この状況......)

手錠で拘束され、動くに動けない僕を挟み、相対する『婦警』と『ストーカー』。
......なんかやることが逆だ、気のせいではないはずだ。

にらみ合うダンピール婦警とヴァンパイア・ストーカー。
先手を打ったのは、意外にもダンピールだった。

「......まぁ、座って話し合いでも」
「......いいわ、乗りましょう」

ダンピールの魔力をもってすれば、ヴァンパイアなぞ粉砕できるハズである。
それを話し合いで云々しようとしたのだ、何を考えているのだろう。
......ストーカーそっちのけで、人のことを手篭にしようとしたやつだけどな!!

話に乗ったヴァンパイアの度胸もすごい。
ストーカーをやる奴の根性はすごいというのも実感できる
......発揮するベクトルが違うのはアレだけど。

もう一度言う。
なんだよ、この状況。



「では、あれですか、あなたは彼の職場のスーパーマーケットの常連さんだと」
「そうそう、彼目当てで結
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