002 - それは伝染したのだった

201X年、11月上旬のことだった。
にて、友人・西塔ヨシキと、自分...大葉タケルは連絡を取り合っていた。
そのRINEで話している話題は、専門学校時代の友人、久村マサトが「そのうち暇を見て会えないかー?」と、連絡をしてきたことである。

タケル:にしても、マサトのやつ、どうしたんだろうな?
ヨシキ:さぁ...。だけど、電話口での訳わからんテンションがヒントだと思うが。
タケル:そうだ、電話といえば、マサトと話してたら、ちょっと呼ばれてるから切るわー、そうか、それじゃ仕方ないなーって、話終わったことがあるだけどさ。
ヨシキ:だけどさ?
タケル:そのとき、あいつの名前読んだの、女の声なんだよな。すっごい綺麗な声の。
ヨシキ:......まさかとは思うが。
タケル:だよなー、彼女が出来たのかもしれんなー...。
ヨシキ:...俺らも彼女見つけたほうがいいのかな?
タケル:いやいやいや、無理したところで、ズルい女に引っかかってもダメだし、焦るべきではないと思うの。
ヨシキ:だよなぁ...。

と、こんな流れの会話をしていた。

それから、5日後。
社会人になってから、たまに三人で集まってはなんか食べに行っている喫茶店『トルーパー』で落ち合うことになっていた。

「早いな、タケル」
「ちょっと、変な予感がしてよ...」
「気持ちは分かる」

ヨシキは、俺の座っている席(四人がけのテーブル席)に着いて、頬杖をついた
そんな会話をしていると、喫茶店のマスターがじきじきに、注文していたコーラを持ってきた。

「おう、どうした? そんな眉間に皺よせてよ?」
「マスター、マサトの野郎に彼女ができたかもしれん...」
「へぇー、マジか。あいつにもいよいよ春がきたか...」

自分のことでもないのに、ちょっと嬉しそうなマスター。
こういう人だから、地元の人に愛される店を作れたのかもしれない。

その時、チリンチリンと鈴が鳴り、マサトと......明らかに日本人じゃない女が入店してきた。
俺は飲んでいたコーラを吹き出し、ヨシキはガクッと頬杖から落ち、マスターはカクンと脱力した。

「マサト......その人は誰だ?」
「あぁ彼女は、ワタクシの嫁ちゃんでーす♪」
「「「嫁ェ!?」」」

唖然とする俺たち三人。
彼女も通り越して嫁ですか?

「...で、どこの人?」
「どこで知り合った?」
「いつ式挙げた?」

「......彼女はブラジル人でよ、電車男みたいな馴れ初めだと思ってくれれば。籍を入れただけなので、あしからず」
「ブラジル人で、電車男ねぇ...」
「っていうか、今の間はなんだ」

ちょっと怪しいと思ったのは、俺だけではないはず。
その証拠に、マスターとヨシキも釈然としなさそうな顔である。

「まぁ、それは置いといて、ヨシキかタケル、どっちかの側に移ってくれない?」
「...あぁ、いいけどさ...」

そう言って、ヨシキが俺の隣に来て、二人が隣り合って席に着いた。

その時、チリンチリンと音が鳴り、黒づくめ...ちょうど、喪○福造みたいな格好の二色の髪の女が店に入ってきた。

「ごきげんよう、マスター。いつもの頼めるかい?」
「あぁ、黒づくめの姉ちゃん、わかった、今持っていく」

カウンター席に着いた女に、マスターが返事する。
それを不思議そうに眺めていたマサトは、マスターに問う。

「マスター、あの人は?」
「黒づくめの姉ちゃんか? ひと月前から毎日この店に通っている常連さんだよ」

こともなげに説明するマスター。
それをマサトは聞いていたのだが、とんでもないことを言い出した。

「...ちょっと挨拶してくるか」
「おい、彼女連れでナンパか?」

思わずツッコンだ。

「ちっがうよ!! あの人のおかげで、結婚できたからさ、お礼にと思ったんだよ」
「......どういうことだ? 電車男はどうした?」

ヨシキのツッコミに、ハッとした顔になるマサト。

「......まぁ、お前らになら真実を教えても構わないかな......ねぇ?」

そう言って、嫁さんに同意を求めるマサト。

「そうですね、見た感じ、マサトさんと似たような方々ですしねぇ」
「どういう意味だ...」

若干、一緒にはされたくない。

「...よし、挨拶が済んだら説明してやっから、ちょっと待ってろ」

そう言って、マサトは女に近づいて、肩を叩いて話し始めた。
...ペコペコ頭を下げてお礼を言っているが、そんなにすごい女なのだろうか?

しばらくして戻ってきたマサト(と、その嫁さん)に質問を開始する。

「で、本当の馴れ初めはなんだ?」
「それはだな...」

マサトは変な出会い方をして、あの女に会ったこと、その女から変なカードを買ったこと、そのカードを使ったことで、嫁さんと出会った
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