犬も喰わないこの始末

「……この、バカ者があああああぁぁぁぁっ」
 アマゾネスの集落の朝に怒号が響き渡った。一件の家から聞こえるそれはもはや朝の風物詩となっている。
 近所の家は思う、ああまたあの家かと。もしくはその大音響を目覚ましにしている者もいる。
「妻である私を残し寝床を離れるとはどういう了見だ! お前には妻を労う甲斐性はないのか!」
「……申し訳ありません」
 家の中ではアマゾネスが夫の胸ぐらを掴みまくし立てている。夫は特に抵抗せずに少し目を伏せて謝罪の言葉を口にしていた。
「……なぜ私を見ない? 反省は口だけか?」
 言いながら投げ付けるように胸ぐらを掴んだ手を離すと、夫はすぐに正座をし、アマゾネスを見て口を開く。
「私は愚かにも妻を省みず、一人で勝手に床を離れました馬鹿亭主でございます。糧を与えてくださる妻をないがしろにしたことをここに深く謝罪させていただきます」
「いいか、夫は妻に奉仕する義務がある。お前はそれを怠った。義務も満足に果たせないような男は必要ないんだ」
「……はい」
 完全に言いがかりである。もし夫が床を離れずアマゾネスと布団にくるまっていたとしたら、アマゾネスはこう言うだろう。
「いつまで寝ているつもりだ、着替えはどうした。夫の役割も果たせないのか」と。
「わかったらさっさと奉仕しろ! もたもたするんじゃないグズが!」
「……申し訳ありません」
 怒鳴りながら足を夫の顔に押し付るアマゾネス。夫は正座のまま顔を上げて踏まれるがまま、ぴちゃぴちゃと音を立てながら懸命に舌を伸ばしアマゾネスの足裏に擦り付ける。
 普段野山を駆け回っているとは思えないほどにスベスベしたアマゾネスの足裏に夫の唾液がぬるぬると滑っていく。
「もういい、やめろ」
 苛立った声に夫はぴたりと舌の奉仕を止めた。
「相変わらず下手くそな口技だ。何時になったらお前は私を悦ばせることが出来るんだ?」
「……申し訳、ありません」
「この能なしが」
 アマゾネスは夫を蹴り倒すと片足を股間に近付ける。一枚の布を腰ひもで留めただけの簡素な服は少し肌けただけで性器が露出するようになっていた。
 眼前に晒された夫の性器を足でしごき始める。夫の性器は見る間に大きく膨れ上がり張りつめていく。
「……ふん、堪え性の無い奴め。私を無視して自分だけ気持ちよくなるとは」
 言いながら器用に足指を使い夫の性器をしごくアマゾネス。亀頭を掴むように揉みしだき、指の間に挟んで上下させ、つま先で転がすように弄る。
「……ぐうっ」
 夫はうめき声をあげ必死に堪えるが、限界が近いことは目に見えている。アマゾネスはそんな夫を冷たい目で見ながら罵倒する。
「もう出そうなのか。男の中でもとびきり情けないなお前は」
「くぅ……ぐぐっ」
 嘲りの言葉に肉棒をを跳ねさせる夫を見て、その瞳の侮蔑の色がさらに濃く映った。
「ほら、さっさとイってしまえ。夫の仕事を満足にこなせないゴミ男が」
「……ぐ、くあっ、……くはぁぁぁっ! ……ううっ」
 アマゾネスに罵倒されながら夫は精液を噴き上げた。射精後の虚脱感か、それとも自分の情けなさを恥じているのか、虚ろな目で横たわる。
「女に金玉を蹴り転がされてイクとは、たいした変態だな」
「…………」
「礼はどうした?」
「……射精させていただいて、ありがとうございました」
 上から見下ろされ、這いつくばって頭を下げる夫。抑揚のない声と諦念の表情が哀れさを引き立てていた。
 他のアマゾネスの声で外が賑わい始める。狩りへと出る時間が近い。
「ちっ、時間か。いいか、戻ったらお前の無能さをたっぷりと反省してもらうからな」
「……はい、分かりました」
 妻の狩具を用意しようと立ち上がる夫。しかしアマゾネスに蹴り倒され踏みつけられる。
「誰が立ち上がっていいと言った!?」
「ぐっ!?」
「勝手なことをするな。お前は私の言う通りに動いていればいい」
「申し訳ありません」
「さっさと狩具を用意しろ! このノロマ!」
「……はい」
 理不尽としか言えない仕打ちにも逆らうことが出来ず、夫は従順に妻に従う。
 狩具を渡し衣装を着付け、その最中にも罵声を浴びせられながら、反抗的な態度を見せることなく淡々とアマゾネスの狩りの準備をこなしていく。
「準備一つにどれだけ手間取るつもりだ。全くお前の無能さは筆舌に尽くしたがたい」
「申し訳ありません」
「それしか言えないのが既に屑の証だな。こんなのが私の夫とは情けない」
「……」
「なんとか言ったらどうだ? 救いようのないダメ男が」
 ひたすらに低姿勢に俯く男をさらに苛むアマゾネス。その目はまさにゴミを見る目だった。
「ふん、腹立たしい。今日は私が見えなくなるまで土下座のまま行ってらっしゃいませを繰り返してろ」
「……」
「……なんだ? まともなことを何一つ言
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