「貴方がアリスさんですわね? わたくしは隣に越してきたクローディアと申しますわ」
皆さんお久しぶりです、お菓子の家を作る事を決めたアリスです。
最近、種族名と合わせて自己紹介するとアリスのアリスになることに気がつきました。
そして今、私アリスは運命の出会い真っ只中なのです。
運命の相手はハーピーのお姉さんのクローディアさん。
服装は妙に厚手で、冬でもないのに膝までしっかり隠れてて少し暑そうです。
「一人暮らしは不便が多いでしょうし、心細い時もあるでしょう。 何かあったら遠慮なく声をかけてくださいな」
とは言え、運命の出会いとは言っても、伴侶を見つけたわけではありません。
私の家の前に立つクローディアさんには翼が生えていて、魔物娘であることは明らかです。
私は至って普通のノーマルちゃんなので、百合っ気はありません。
だけれど、間違いなく私にとってクローディアさんは運命の人と言わざるを得ないでしょう。
「あ、ありがとうございます……引っ越してきたばかりなのに心配してくれて」
「どういたしまして。 困ったときはお互い様、ですわ」
何故なら……。
(ああ!魔王様はかわいそうなアリスを見捨てては居なかったんだわ! こんな……こんな……)
(こ ん な 常 識 的 な 人 が 来 る な ん て !)
そう、何よりクローディアさんはまともでした。
不思議が当たり前の不思議の国では、まともな人と言うのはどんなに甘いお菓子よりも貴重なのです。
元々お菓子はもういらないけど。
「やぁ、おはようアリスとクローディア。 お昼を食べる前からお茶会に来るなんて、よっぽど楽しみにしてくれたみたいだね」
例によってお茶会に招かれた私達に、マッドハッターのルナさんが挨拶してきました。
『おはようルナさん、でももう3時よ』
毎日作業的に繰り返されるやり取りに嫌気が差しつつも仕方なく返答しようとします。
「おはようルナさん、でも……」
「ルナさん、時計が上下逆ですわよ」
私がいつもの返事をしようとして、クローディアさんの方が先に口を開きました。
間抜けを咎める様でもなく、失態を笑うわけでもない、それこそ作業的な口調にルナさんはペースを乱されてしまいます。
「あ、あれ……あはは、本当だ……」
結局、ルナさんは彼女らしからぬ曖昧な作り笑いしかできずに終わってしまいます。
俯いたルナさんの口から、時間ボケが潰されただのなんだのと呟きが聞こえてきますが良い子は盗み聞きなんてしません。
「ごめんごめん、待ってないよー。 私も今来たところだから、気にしないでね」
私の友人、マーチヘアのシーズが遅刻にも関わらず、のーんびり歩いてきます。
そりゃあ貴方が遅れて来たのだから待ってる訳がないわよね、シーズ。
私がそれをどうオブラートに包もうか考えていると……。
「シーズさん、遅刻ですわよ」
クローディアさんは直球でそう言いました。
特に咎めるような口調でもなく、笑顔なのが逆に怖かったようで、
「うっ、ごめんなさい……」
シーズはマーチヘアにあろうことか素直に謝って席に着きました。
……前もこんな事言った気がしますが、アリスみたいな良い子はそんな酷い事言うはずがありません。
いいですね?
「んにゅ〜……Zzz……」
ドーマウスのレストちゃんがお茶会の時も寝ています。
寝ながら紅茶を啜っていて、このままでは虫歯と胸焼けに苦しむ事になるでしょうが別にいつもの事です。
「レストちゃん、寝ながら飲んだら虫歯になっちゃいますわ」
「ん〜……」
クローディアさんは優しくレストちゃんを揺すって起こします。
……どちらかと言うと、以前あれだけ砂糖漬けにされておきながらまだ寝紅茶をしでかしているレストちゃんの図太さに驚きます。
「クローディアさん、私とチャーリーの作ったチョコレートはどうだい?」
悪魔めいた笑みを浮かべて、チェシャ猫の悪魔ことリビッコさんがクローディアさんに迫ります。
「ごめんなさいリビッコさん、もう要らないわ。 わたくしとアリスでも食べきれませんもの」
ばっさり。
少し前の私達の苦労はなんだったのかと思うほどあっさり断りました。
「そ、そうか……じゃあこのチョコレートどうしようかなぁ……」
「シーズのおやつにあげたら?」
悪魔、敗れたり。
そして私の身代わりとなってくれたシーズに合掌。
「クローディアさん、凄いです! ちゃんと自分の言いたい事を言えるって凄い!」
「アリス、褒めても何も出ませんわよ」
帰り道、私はずっとクローディアさんを褒めちぎっていました。
大人の女性の見本のような佇まい。
すらりとした高い背。
何より、自分の意思をはっきりと伝える性格。
全てが私の憧れで、私はクローディアさんに夢中
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