2017年下半期植木賞、今期は該当作品なし/1月16日付

公益財団法人 日魔文学振興会は第28回植木賞は該当作品なしと発表した。
植木賞は日本と魔界が国交を結んでから創設され、魔好新聞と同様に人間と魔物の融和を謳った作品に与えられる文学賞である。
創設された2004年から半年毎に一回、上半期と下半期に分けて受賞されてきたが、今回は2006年下半期以来の該当作品なしという結果になった。
選考委員は該当作品なしと発表した事について「界隈全体から活気が失われている証拠で、極めて無念だ」として、作品の質よりも作家自体が減少している現状を憂いている。

10年以上続く名誉ある賞が該当なしという残念な結果に終わった2017年下半期だが、その影響にSNSを初めとしたインターネットの発達を指摘する声も少なくない。
植木賞の創設から14年、インターネットの発達でより作家と読者の距離が縮み、作品への批評が素早く正確に作家への耳に届くようになり、それと同時に作家からも読者へと意見を伝える事ができるようになった。
更には読者間での積極的な交流も行われ、それまで興味を持たなかった人間を引き込む、興味を抱かせるという面ではインターネットがもたらした恩恵は途轍もなく大きいものだろう。
その一方で、作家に対して誰が言ったかも分からない、根拠のない噂、間違った解釈、作家への中傷と言ったあらゆる情報がろ過されず、そのまま届けられているという一面もある。
それは作家に限らずあらゆる界隈の進化を止める、と魔界出身のネットワーク技術者であるラタトスクのローズマリー・キャンベル氏は警鐘を鳴らす。
ローズマリー氏は、世界のデジタル化は人の弱さを助長しそれぞれだけに都合の良い『真実』の生成を加速しているとし、『真実』を脅かす者は理論ではなく感情で排除に向かう現在の状態は緩やかに世界を終わらせる、と極めて強い表現で現在のインターネット社会を批判した。

世界を終わらせる、とまでは行かなくとも近年はインターネットが火種となった炎上騒動が数多く存在し、自らが執筆した作品の読者に対して「猿はファントムになれない」等と書き込んだ「禁じられたロミオ」の作家の例などは記憶に新しい。
今の我々は、インターネットを使うよりはインターネットに使われている、振り回されているという表現の方が相応しいのではないだろうか。
この過ぎた力とも言える情報社会との向き合い方について、かつてのディストピア作品のようにAIに保護者をして貰う、というのはあまりに情けない話だ。
我々は今一度、ネットワーク社会について考え直す時期に来ているのかも知れない。
18/01/30 23:16更新 / ナコタス
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