性なる夜に……

「よし……完璧な計画だ」

綿密に書き込まれた計画書を手に、少女は満足げにほくそ笑んだ。

「これで明日は……ふふふふふふ」

頭の中で何を妄想しているのか、少女の頬はだらしなく緩み、黒い尻尾をぱたぱたと振っている。

そう、少女は人間ではない。

褐色の肌に艶やかな黒い髪、ぴんと立ったウルフ種特有の三角耳と黒い毛に覆われた、思わずもふもふしたくなる獣の手足。ややツリ目気味だが、それがマイナス要因にならず、強気で魅力的に見える整った顔立ち。

彼女の名前はルナ。アヌビスというウルフ種の魔物娘だ。マミーやスフィンクスを従え、偉大なるファラオの眠る遺跡を守護する者。

「明日こそ、アイツと……ロイと結ばれるんだ……!」

ロイとは、彼女が守護する遺跡に侵入してきた、砂漠地帯に接する国の騎士見習いの少年だ。
反魔物国家である彼の国は、半年ほど前にこの遺跡の魔物娘を討伐するために騎士団を派遣したが、幾多のトラップと魔物娘たちの迎撃により、一人残らず捕虜となってしまった。
その中でもロイは、反魔物国家に属していたにも関わらず魔物娘への忌避感があまり無く(辺境の村の孤児出身で魔物娘をよく目撃していたため)、遺跡の魔物娘たちとすぐに打ち解けたこともあって、ルナは彼を気に入り、自分の仕事の補佐を手伝ってもらうことがよくあった。

ルナとしてはロイを自分の夫にしたいと常々考えてきたのだが、様々な障害(良い雰囲気の時に限って現れる侵入者、スフィンクスの駆け落ちによる配置変更、etc)のせいで、今の今まで結ばれる事は無かった。

「だが、明日は……『くりすます』という聖なる日には絶対……!!」

ロイの国では、明日は『くりすます』という特別な日であるらしい。何でも、とても神聖な日で、恋人同士が結ばれるのに最適な日である、ということをロイの国がある地方に住んでいる魔物娘に聞いていた。

「失敗は許されない。絶対に……!」




















翌日、ロイはルナに食事に招かれていた。一羽丸ごと焼いた鳥に、色鮮やかなサラダ、さらには巨大なショートケーキも用意してあった。

「す、すごいごちそうですね。何かありました?」

ロイは明らかに困惑していた。

「何って……お前の国では『くりすます』という日にこういった物を食べるのだろう?」

「くりすます……ああ、確かに今日はクリスマスでしたね。ですが、孤児でしたから、こういう祝い事とは無縁で……」

申し訳なさそうに頭を掻くロイ。生きることに必死だったロイは、こんな豪華なごちそうを口にしたことはなかったのだ。

「そ、そうか……すまなかった。そんなこと、全然考えてなくて……」

喜んでくれるとばかり思っていたルナは、想定外のロイの言葉に項垂れてしまった。尻尾も申し訳なさそうにしゅんと垂れ下がってしまっている。

「いえ。こんなごちそうを用意してくれて、すごく嬉しいです。ありがとうございました」

「う、うむ。そうか。そう言ってもらえて嬉しいぞ。ではさっそく食べよう。冷めてしまっては台無しだからな」

ロイの一言で気を取り直したルナは、ロイと共に食事を始めた。





















「ふぅ、とってもおいしかったですね」

「うむ、私も用意した甲斐があるというものだ」

二人は用意してあった料理を食べ終え、最後のケーキを口に運んでいた。
ロイの口に消えていくケーキを見ながら、ルナは計画が順調に進んでいることに満足していた。このケーキには砂糖の代わりにアルラウネの蜜がたっぷりと使われており、滋養強壮に持ってこいなのだ。
さらに、二人のいる部屋には魔界ハーブのお香が焚かれており、男女が交わるのにふさわしい空間と化していた。

そして、ルナは最後のアイテムを取り出した。

「では、最後にこれを飲もう。取り寄せるのに手間がかかったんだぞ」

それは、陶酔の果実のワイン。それも下に付いている実から抽出した、上物のワインだ。
これを口にすると心地いい陶酔感が味わえ、目の前の雌しか目に入らなくなってしまうのだ。
ワインをグラスに注ぎ、ロイに渡す。が、ロイはグラスを置いてしまった。

「どうした? せっかく取り寄せたんだから飲んでくれ」

ルナは促すが、ロイはグラスを手にせず、真剣な顔でルナを見つめた。

「いえ、酔ってしまいますから、先に言います」

ロイは一度深呼吸して、









「ルナさん、あなたを愛しています。結婚してください」









「……え?」

ルナは一瞬何を言われたのか理解できなかったが、すぐに意味を理解し、顔が沸騰したように真っ赤になった。

「そ、そそそそそそそそれって……………!!!」

「何度でも言います。結婚してください」

顔はトマトのように
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