「おクメ、こちらにおいで」半七の声に女房のクメは胡坐を組んで座る半七の傍に腰を下ろして、凭れるようにしなだれ掛かった。
うなぎの魔物である彼女の下半身はとぐろを巻きながら、ズルズルと濡れた音を立てている。半七はクメの耳元にそっと囁きかけた。
「俺がお前のその這いずる音が好きだと言ったら、嫌かい」
「まあ、お前さまったら……」クメは恥ずかしそうに微笑むものの、うなぎの尾は嬉しそうに跳ねる。「お好きなのはこちらだけ?」クメの尾が半七の背中を撫ぜた。
「まさか」
着物の合わせから半七の手が差し入れられると、クメは恍惚のため息を零した。柔らかいが張りのあるクメの肌はぬらぬらとしていて、半七の手は滑らかに表面をすべる。
まさぐる内にクメのほんのりと上気した身体は熱を持ち、抜けるような白い肌に赤みが差す。
クメは編み上げた髪を解いた。艶とした黒髪がうねるように垂れ下がると、清廉なクメの面差しに妖艶さが浮かぶ。それがクメの伴侶にしか見せぬ姿であった。
「あ…っ、あ……、おまえさま」
クメの肌から滲む粘液に半七の指は濡れそぼり、まるで舐るように這う半七の手に反応して、クメは切なげに喘いだ。身動ぎするとしだいに帯紐が緩み、着物が着崩れていく。
魔物の娘は衣服を好まぬ者も多いが、クメは人の世に紛れて生きるのに従って着物を着る事を好んだ。そうした方が、襟元から覗くうなじや胸元に半七が惹きつけられることも知っていた。
何しろ彼は、クメと一緒になるまで女の手を握ったこともないような堅物で、初めて会って話した時も、クメのしどけない姿に顔を赤くして固く目を瞑ったまま「頼むからこれを着てくれ」と自分の羽織を脱いでよこす有様だったものだから、今でも情を交わす時以外で、肌を剥き出しにした姿でいると居心地の悪そうな顔を浮かべるのだ。
「うふふ」思い出してクメはうっそりと笑う。
「どうかしたかい」
「なんだかはじめて出会った時のことを思い出しました」
「ふうん。あの時、笑うような事があったかな」
「いいえ。ただ懐かしゅうなったのですよ」
ほんの一時、夫婦は見つめ合った。瞳を覗き込めば、あの頃と何一つ変わらぬ互いの心を感じ取り、どちらともなく唇を寄せ合い貪るように舌を絡めあう。
口を離すと粘りのある唾液が糸を引いてお互いを繋ぐ。それはなんとも二人の劣情を煽るのだった。
半七の手がたっぷりとしたクメの胸を持ち上げるようにして愛撫する。ヌルヌルとして掴みにくい乳房は半七の手の中で滑るが、それでいて不思議と吸い付くような感触がするのだった。
「ああ、あ、ぁ、はあ」
半七の首に手を回してクメは声を上げて身悶えた。ますます粘り気を帯びた乳房を捏ね回してやると、トロンとした目は情欲に染まり、開いた唇からあられもない嬌声を漏らす。
「はう、う…、あ、ああっ、あ、おまえさま」
身をくねらせてクメは半七に縋り付き、その首を赤い舌でネロリと舐めた。うなぎの尾が半七の身体に絡みつくように迫ると、半七は優しくその尾を撫でてやるのだった。
そのまま手をクメの腰のあたりへと辿らせていくと、突き出たヒレがあり半七は柔柔とヒレの根本を握ったり、ヒダを撫でる。そこは特に敏感な場所で、クメは一層声を上げた。
「ゃ、あ、ヒレは……ッ、ああんっ、擦られると、だめっ、あ」
「ヒレを擦られると、どう感じるんだい」
「あっ、おまえさまの手でっ、触れられると、じんじんしちゃうのぉ」
「そうか。軽く触れているつもりなんだが、お前の反応が可愛くてつい手が伸びてしまう」
「あっ、あっ、ああ…っ!」
堪えきれなくなったのか、クメの身体が半七の腕からすり抜けそうになる。気がついた半七は掴んでいたヒレから手を離してやった。
クメは恥じ入ったような顔をして、半七の身体に尾を巻きつかせた。それはまるで離れないように自身を結びつけようとしているみたいだった。
「……ぁ…はう」
「クメ、もう少し身体を浮かせておくれ」
声も絶え絶えなクメは小さく頷き、言われた通りにすると、半七の頭に覆いかぶさるように抱きついた。
その胸は半七の顔に押し付けられ、たゆんと揺れる乳房が半七の眼前にさらされる。
期待に震える乳房の片方に手を這わせると、もう片方には口を近づけて肌から滲み出る粘液を舐め取り舌に絡ませてから、ぷっくりとした乳首に吸い付いた。
「あんっ」クメの身体が小さく跳ねる。
乳首を口に含んだまま舌先で転がすと、口に含んだ粘液が唾液と溶け合いへばりつくような感触をもたらすのだった。それが堪らないのか、クメは尾の先まで震えを走らせた。
しかし、クメの粘液を口に入れた半七の身体もまた、煮えたぎるような熱い欲望が湧き上がる。
「っ、はぁ、ぁ、っふあ、あっ、んん」
半七は胸
[3]
次へ
[7]
TOP[0]
投票 [*]
感想