柔らかくて、甘くて、暖かくて、どきどきする。
ハグは好きな人と三十秒間するだけでストレスがなくなるらしいけど、そんなことは研究するまでもない事だと思う。これを口実にいっぱい抱きしめたり抱きしめられたりしたかったのかな。それならわかる。
「……ふふ。鷹見くん、すっごいどきどきしてるね。どう?」
「爆発しそう……」
「爆弾なの?ふふふ、鷹見くん爆弾だね」
ベッドに腰掛けながら、立ってるはるさんの腰に抱きついてる。頭の上にはるさんの大きな胸が乗っかってる重量感はあるけど、残念なことに胸の柔らかさを十分に感じ取るのは頭には荷が重かった。
その代わり、はるさんが後頭部を優しく撫で付けてくれているのには敏感だった。髪を梳くように上から下へ流れていくはるさんの青くて細くてやわっこい指。背筋がぞくぞくするのに、なんだかとても安心する。胎内回帰願望ってやつか。
「鷹見くん、猫っ毛だね。茶色に染めたりとかはしない?」
「しない、と、思う……してほしかったらするけど」
「ん、しなくていーよ。それも鷹見くんの良さの一つなのです」
「ん……」
お返しってわけじゃないけど、はるさんの髪を指で触ってみる。彼女の髪は長いから、ちょっと腕を腰から上に動かすだけで簡単に見つかった。
「すごいサラサラしてる……なんだろ」
「髪ですねー」
「そうじゃなくて……なんか。サラサラでふわふわな……シルクみたいな」
「えへへ、すーぱーりっちしゃいん?」
「ああー……」
ああいう感じだ。髪の毛一本一本が水のように流れていって、それなのに手に持つとふんわりしてる。あんまり触ってるのもよくなさそうなので、髪から手を離す。
再度彼女の腰に腕を回す。なんていうか、こうしてるとはるさんを独占してる気になる。彼女は俺のものだって、誰も見てないけど。
「私だって、女の子だから。髪の毛は命だもんね」
「なるほどなぁ……」
もん。可愛い。
会話が途切れ、彼女が頭を撫でてくる音と二人の呼吸と、自分の鼓動だけが室内で聞こえるものになる。きっと今、すごいだらしない顔をしてるだろうな。めちゃくちゃ幸せだ。このまま死にそう。幸福死しそう。
そんなことを思ってると。
ぎゅるる。
額をくっつけてるところから、可愛らしい音が鳴った。
「……お腹すいた?」
「……わりと」
はるさんのお腹に顔を埋めたまま聞けば、恥ずかしげなはるさんの返事。ちらりと横目で壁にかけてある時計を見ると、もう夕飯時だった。え、そんなにずっとくっついてたのか。ちょっとビビる。時が加速してるんじゃないかと思った。いや、確かに天国に行きそうだったけどさ。
今の時刻を知ったことでなんだか自分までお腹が減ってきて、はるさんのお腹から頭を離して立ち上がろうとして。
「だーめ」
「え?夕飯――」
「もうちょっとだけ」
はるさんに肩を軽く抑えられて、再びベッドに座り直す。そうすると今度は、はるさんの方からきゅっと抱きしめてくる。はるさんもベッドに両膝をついて、座りながら抱き合う形。胸の間ではるさんの形の良い巨乳がぐにぐに押し付けられて、俺の動きが固まる。鼻孔に入り込んでくるはるさんの匂いが、余計に意識させてくる。
こっちが顔を真っ赤にしてるというのに、はるさんはお構いなしに顎をこちらの肩につけて両腕を背中に回してきて。くっついてる、って感じがする。イチャついてる。すごいイチャついてる。
「あったかい。ん、鷹見くん爆弾が爆発しそう」
「さっきからずっと、秒読みっつーか……」
「ふふ。幸せ?」
「めちゃくちゃ幸せ」
「よしよし……」
そうしてまた、はるさんは後頭部を撫で付けてくる。はるさんのグラマーなお尻がこっちの膝の上に置かれていることに気づいて、ああこれやばいな、と漠然と理解した。これ、たぶん、夕飯は後回しになってしまう。
家に帰ってきてああ言われて抱きしめて、しばらくして落ち着いてとりあえず荷物を部屋に置いて。それから、どうしてこうなったんだっけ。やばい、マジでこうなったきっかけが思い出せなくなってる。危ない薬なんじゃないか、幸せっていうのは。
でも、まあ。自分は男であって、男はこういう状況に対してはバカみたいに素直だ。さっきから生唾が止まらない。
「ね」
急に身体を離して、半ば膝立ちで見下ろしてくるはるさん。
はるさんの声の雰囲気が切り替わってる。湿ったような、絡みついてくるような声。そういう、あれな雰囲気を醸し出してる声。
「……したい?」
頭をがつんと殴られた気がした。気がしただけで、実際は自分が勝手に身体を揺らしただけだけど、でもそれくらいの衝撃が今の一言にはあった。くすくすとはるさんは笑う。恥ずかしい。
エロ本とかでそういう描写は見たことあるけど、実際言われて
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5 6..
10]
[7]
TOP [9]
目次[0]
投票 [*]
感想[#]
メール登録