かち、こち、かち、こち。
無機質な時計の音。
「すぅ……んふ……すー……」
耳元に聞こえるくすぐったい寝息。
薄暗い室内。カーテンの隙間から少しだけ差し込む陽。
シーツのぬくもり。横幅二人分に膨らんだ掛け布団。
隣で気持ちよさそうによだれを垂らす、実の姉。
「むへ……すふー……くー……種子島……」
黒豹のような耳と手足に、サソリのそれを十倍禍々しくしたような尻尾、サキュバスと同じようなコウモリ羽。マンティコア、と呼ばれる魔物娘。ついでに言うとおっぱいと尻がでかくて常に薄着。性格が最悪な上にブラコン。それが実姉。
で、がっしりと腹や腰をホールドされて抱き枕にされている。動けない。
「……………………」
現在時刻、十三時二十八分。
グッド昼ーニング、おそようございます。お腹からそんな挨拶が鳴った気がした。
それではいつもの行きましょう。息を大きく吸って、
「はよ起きろやクソ姉貴ィィ――――――ッ!!」
「でけぇ声出すなうるせェェ――――――ッ!!」
毎週恒例、家でぐーたらする休日が始まった。
☆
ブランチを食べ終わって十四時。
することもなしにソファに寝転がってテレビを流し見していると、まだ眠たげな表情で姉が近寄ってきて同じように寝転がる。俺の上に。
「重」
「ザコ」
「デブ」
「ボンキュッボンで辛いわー」
俺の胸に顔を擦り付けて耳をぴこぴこ動かして、モーニングスターみたいな尻尾がゆらゆら揺れる。薄いタンクトップ越しに胸が押しつけられてるけど、性欲よりは眠気のほうが強くてまだ反応しない。外出するとき以外の姉は基本的に下着姿で、今は「どこで売ってんのそれ」って聞きたくなるくらいきわどいショーツを履いてる。
エロい格好だけど、死ぬほど姉とセックスしまくったせいで裸も見慣れてるし、いつの間にかこういう服装は布がある分だけ普通だなと思うようになった。
そうして姉をぼーっと見つめてると、でかいあくびをテレビへ。つられてあくびを出しながら、姉と同じように視線をテレビへと戻す。暇そうにこっちをつつく、姉の爪。
「構えよ」
「だるい」
「つまんな。キスしよ」
「なんで」
「いいから」
大きな肉球が俺の頬をぐいとひっぱり、顔が無理矢理に姉の方に。
特に拒否することもなく、柔らかな唇を受け入れる。
音を立てず重ねるだけなのに、温かさがゆったりと浸透してくる。
一度口を離しても、すぐにまた押しつけてくる。欲深い姉が二度や三度のキスで満足するはずもない。十五分ほどキスし続けて、姉はようやく顔を離す。僅かに赤らんだ頬。獣爪で愛おしそうになぞられる、艶のある唇。
得も言われぬ恥ずかしさがあって、テレビに目を逸らす。
「……ブラコン」
「うっせ。シスコン」
「どこが」
「好きだろ」
「うーん……カレー並みに」
「シスコン」
「ばーか。ブラコン」
俺の首に顔を埋めて、ぐりぐりと頭を動かす姉。猫がにおいつけてる時っぽい。しょうがなく背中をぽんぽん叩いてやると、尻尾が嬉しそうにくねくねダンスし始めた。
「なあ」
「なんだよ」
「濡れそうなんだけど」
「ちゃんと洗濯しろよ」
「……なんで昼はダメなんだよ」
「ヤり始めると姉ちゃん夕飯忘れるだろ」
「たしかに」
「飯食って風呂入ったらって毎日言ってんじゃん」
「んー……」
不服そうな息を漏らしながら、首筋に小さくキスしてくる。
そのくすぐったさから逃げるように顔を巡らせて、またテレビに目が行く。
「んんー……構えって」
「セックスしたいだけだろ」
「当たり前だろ」
「恥じらいを持て」
「今更すぎんだろばーか。半勃起で我慢してるのわかってんだぞ」
「そりゃあ……」
また姉を見て、じっと睨んできているその顔を眺める。
この世に二人といない、自分だけの姉。姉弟の禁断の恋、なんてクソみたいなもんじゃない。そもそも魔物娘に近親相姦なんて概念はない。あるのはただ、男と女。そういう点で言えば目の前の姉は最高に魅力的な女性で。むしろ抑え込めてることを褒めるべき。
そんなようなことを言うと負けた気がするので、何も言わない。
「……なんだよ。黙んなよ」
「ゲームでもしろよ」
「やなこった。オマエで遊ぶ」
「ブラコン」
「褒めんな」
こっちの両腕を取って、包むように姉を抱えさせられる。
ぴー、と音が鳴るくらい勢いよく鼻で吸って、すごく満足そうに息を吐く姉。においフェチというか、こういう系の魔物娘はにおい重視というか。そういうアレな性分だから、前に洗濯前の俺のパンツを吸ったり舐めたりしゃぶったりしてたこともあった。
俺も似たようなもんだけど。汗がしみこんだ服を思う存分嗅がせてもらったりわざわざ吸湿性の高い服を買ってやって着てもらったり
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