きっと今頃世間のカップルは、遊園地だとか温泉だとか山登りだとか動物園水族館植物園歴史館エトセトラ、そういったレジャーを満喫してる最中なんだろう。なんたって、年に一度の春のゴールデンウィーク真っ最中だから。
別にそういうのが羨ましくて僻んでるわけじゃない。ご多分に漏れず、俺にも先月にとうとう恋人が出来た。
「……」
うつ伏せで寝そべりながら撮り溜めされたアニメを流し見る、全身が真っ白の女性。確かに存在するはずの彼女は、あるもので覆われた部分以外は朧げに揺れるのみ。
彼女は一反木綿という妖怪……というより、魔物娘だ。魔物娘はだいたい人間離れした種族で、怪力だったり魔法を扱えたりするものだが、彼女の特異な部分は「布が彼女の肉体」という部分にある。
フローリングの上でカーペットみたいにぺたーんと敷かれている布を辿っていくと彼女の豊かな胸で布が押し広げられている部分に突き当たり、そこから上に登っていけば彼女の頭が布で形成されている事実がやってくる。
布自体が彼女の本体であり、女性的な部分は布によって表層に出てくる。つまりこのペラッペラなのが俺の彼女というわけだ。すごい、自分でもわけわからなくなってきた。でもそうなんだ。
もちろん彼女はれっきとした女性だし、魔物娘だ。身体が布ってだけ。女性的な柔らかさと最高級クラスの布の手触りを同時に味わえる、ちょっと特殊な恋人。
試しに、指で彼女の脇腹があるべき部分をつついてみようとする。そこは布に覆われているわけではなく、ただちょっとなんか目を凝らしてみるともやもやしたものがあるようなないような、っていう感じの部分。
普通の恋人ならぐにぐにと肉の感触が味わえるだろうが、彼女は一反木綿。俺の指は空を切り、なんかもやもやしてるのも変化しない。
そこで俺は床にぺたりと垂れている布をつまみとり、足があるであろう部分にかけてみる。すると、今までそこにはもやもやしかなかったというのに、初めからそうだったんじゃないかってくらい自然に、布が彼女のふとももを形勢する。
つついてみる。
「ん」
返ってきたのはちょっとの反応と、むにむにした柔らかい脂肪の弾力、なめらかな布の手触り。
布がかかってない場所は本当になにもなく、手応えは布でしかありえない。確かに彼女はそこにいて、けれどこっちは彼女の布の上から触ることでしか確かな存在として彼女を認識できない。
一反の木綿が彼女の全て。不満はない。むしろめちゃくちゃ興奮する。
布を引っ張って、彼女の身体に被せるようにしてみる意思表示をすると、彼女は特に拒否せず布を動かし、今度は全身がしっかりと形勢される。
頭部はもちろんのこと、程よく肉の乗った背中、美しいカーブから見事な丘を築き上げる魅惑のヒップ。腰回りの肉付きはありとあらゆる男性を虜に出来るもので、ふとももだって見惚れてしまう艶かしさ。太っているわけでも痩せているわけでもなく、最大限恋人の好みに合わせようとされた、自分だけの恋人だ。
彼女は魔力によって布で女体を表すので、それこそもっと幼くしたりもっと円熟させたり、貧相にも豊満にもできる。こんなのが恋人じゃ、浮気なんて考える暇もない。
で、なんで背面を象らせたかったのか。彼女はアニメから興味をなくし、こっちにぼーっと目を向けてきていた。こっちとしても実際は大した理由じゃなくて、まあちょっと今日のお尻の形を確認しただけだ。
「布はそのままで。立ってもらっていいかな」
「んー」
いいのか悪いのかよくわからん返答をもらって、彼女はのそのそと立ち上がった。おお、ぴっちりと身体のラインに沿って布が張り付いてる。普段は吹き流し状態だからわからなかったけど、こういうこともできるのか。
そう、この布は彼女の肉体ではあるけど、実はかなりいろいろ融通が利く。なんてったって魔力が込められているのだ。魔力自体万能だから、そりゃあもうすごく万能。
例えば、こういうお願いだってできてしまえる。
「スパッツの上にミニスカートって感じで、お願い」
「ほ」
たったこれだけの言葉で、一瞬で彼女は腰にスカートを形勢し、その下にスパッツでぴっちりと彼女の身体を示した。
その分、足回りの布がなくなってゴーストみたいにふよふよ浮いてる感じになったが、それもまたよし。
真っ白なフリフリの可愛らしいミニスカート。そこからちょっと顔を上げると何も着用していない素肌(布)の背中。それと興味深そうにじーっと見下ろしてくる彼女の顔。うむ。
それでまあ、なにがしたかったのかっていうと。
「んん……」
ミニスカートの中に頭を突っ込み、腰にしがみつき、お尻に顔を埋めた。
あっ、これやばい。死んだ。幸せで死んだ。
エロ動画で被写体を全身映す際に、こう……ローアン
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