弟は姉に逆らえない

 お姉ちゃんと俺の仲は、悪くない方だと思う。
 八歳も歳が離れてるけど、俺が今年で中学一年生になったことを自分のことみたいに喜んでくれたし、いつも誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントをくれる。お姉ちゃんが暇なときは遊んでくれるし、漫画の貸し借りだったりアニメを一緒に見てくれたりもする。
 日常的にスキンシップをしたりもして、はたから見たら悪くないどころかすごく仲の良い姉弟なのかもしれない。ただ、一緒に出かけたりすると親子に見られることばっかりだ。俺の顔は父親似でお姉ちゃんの顔は母親似だから、歳の差もあって姉弟に見えないのは当然なんだけど。

 そう、歳が離れているから親子に見られることも、ある。そうじゃないときだってある。
 一緒にご飯を食べに行けば「カップル様用の割り引きが」とか「カップルでご来店されたお客様にはこちらのメニューも」とか言われ、手を繋いで一緒に外を歩いてるだけで知らないウィル・オ・ウィスプさんに嫉妬されたりユニコーンさんにすごい形相で舌打ちされたり、なにかと誤解されてしまう。
 そうしてその度に、お姉ちゃんは少しだけ頬を赤らめて、困惑しつつも満更でもなさそうに微笑みながらこっちを見下ろしてくる。
 こんなの、意識しないわけない。

 うちの家族は白澤という種族で、牛角と尻尾と、太腿から下に獣毛が生えてて蹄があるのがお母さんとお姉ちゃんの特徴だ。お父さんは普通の人間種族だし、俺もちょっと両耳の上にでっぱりがあるだけの人間らしい。
 白澤は記憶力がとても良くて、なんでも知ってるなんて言われてる。頭の回転も良いから、お姉ちゃんはあらゆることをテキパキとこなしていく。俺は残念ながら人間だから、なんでも知ってるわけじゃないのがちょっと悲しい。
 でも、別に、そういうのは大したことじゃない。問題なのは、お姉ちゃんのスタイルがすごいこと。
 大きな胸とやわらかそうなお腹、普段は尻尾に隠れて見えないけどお尻もむちむちしてる。歩く度に胸がゆさゆさって重そうに揺れてたり、尻尾や太腿の毛やスカートで守られてるお尻が油断してるときにちらって見えたり、とにかくすごい。これらも白澤って種族の特徴の一つだとか。
 それにお姉ちゃんは暑がりだから、お風呂あがりや夏のときはすっごく目に悪い格好をしてる。バスタオル一枚で家の中をうろついたり、ぴちぴちしたインナーだけで家の中でくつろいでたり。それでもお姉ちゃんは平気そうな顔でいるし、お父さんお母さんも気にしてない。だからきっと、俺だけがお姉ちゃんを意識しすぎてるだけなんだと思う。
 でも、そう思っても気になってしまう。お姉ちゃんはすごく優しいし頼りになるし、勉強でわからないところがあってもお姉ちゃんに聞けばわかりやすく教えてくれる。辛いことがあったら慰めてくれるし、喧嘩してもすぐに仲直りできる。仲の良い姉弟関係だから、接する距離も近い。間違ってるのに、お姉ちゃんのことが気になってしまう。

 そうやってお姉ちゃんのことが気になるたびに、ちんこが大きくなってうずうずする。これの意味は知ってるし、どうすればいいかも知ってる。
 初めてするまでは、そういうことは彼女ができて彼女からされるんだって友達から聞いてたし、実際に彼女できた奴がクラスですごく自慢してた。俺は別に、同じ年の女なんかガキっぽくて興味ないから、心底どうでもよかった。まあいつかはそういうこともあるんだろうなって、ぼんやり考えながら冷やかしてた。
 でも、今は違う。これはダメなことだって、いけないことだってわかってはいても、どうしてもお姉ちゃんのことが気になってしまう。だって、お姉ちゃんのことが好きだから。


「……はぁ」

 また増えたゴミ箱の中のティッシュに向けて部屋用消臭スプレーを吹き付けながら、ぐるぐると同じことばっかり考える。
 お姉ちゃんのことが好きで、えっちなこともしてみたい。でも家族だから、それはいけないことだ。そんなことをしたらお姉ちゃんの迷惑になっちゃうし、仲が悪くなるかもしれない。お父さんお母さんに怒られるかもしれない。だからオナニーで済ませて、お姉ちゃんにバレないようにするしかない。
 いつかきっと、お姉ちゃん以上に好きな人が出てくる。その人と仲良くなって付き合って、結婚するんだろうな。お姉ちゃんにだって、好きな人がいるかもしれない。お姉ちゃんは誰にでも優しくて物知りだから、俺と同じようにお姉ちゃんのことが好きな人も多いはずだ。
 お姉ちゃんはもう二十歳で、そろそろ誰かと付き合ってスピード結婚してもおかしくない。その未来の旦那さんにも迷惑になる。

「やだなぁ……どこにも行ってほしくない……」

 俺以外誰もいない部屋で、ベッドの上に寝転びながら呟く。こんなことを言っても、なにも変わらない。でもいつかはと思うと
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