見つけ愛

見つけ愛





僕がそれを見つけたのはクリスマス・イヴの夜だった。




6ヶ月前…………


『ゴメンね、仕事で忙しくて……』

そう言っていた僕の彼女はこの間偶然街で見かけた時、知らない男と腕を組んで楽しそうに歩いていた。

どうやら浮気をしていたらしい。もしかしたら、きっとずっと前からそうなっていたのかもしれない。

それを本人に確かめる勇気も無く、僕はただ『お仕事頑張ってね。』と曖昧な笑顔と当り障りの無い言葉を彼女に送ったのだった。

どうしてだろう?

何がいけなかったのだろうか?

僕が何か彼女に対して悪い事をしたのだろうか?

彼女を愛してあげられなかったのだろうか?

そんな考えが頭の中をぐるぐると
#65532;蠢いて、胸をドロドロと気持ちの悪い何かが蝕んでいく。

僕は本当に彼女が好きだった。

誠実を尽くした。

ただただ……愛していた。

真綿で首を締め付けられるような不安から逃れる為に僕は仕事に打ち込んだ。

彼女は相変わらず忙しいらしい。殆ど顔を見ていない。

そうして暫く経った秋の頃、お別れのメールが届いた。

それを見ても何も感じない。

もう……疲れてしまって涙も出なかった。

仕事……仕事……仕事……。

そうして現実から逃避をしている間に、今年もこの季節がやって来た。

……やって来てしまった。

夕方5時に会社が終わる。街には人や人と魔物娘の恋人達で溢れていて、きらめく色鮮やかなイルミネーションは彼、彼女等を祝福している。

僕の傍らにもう彼女はいない。

行き交う人々の足音は僕を遠くへ追い越して行くようで。人々は皆幸せそうな笑顔を浮べている。

街頭で聖歌隊に歌われるクリスマスの歌は仕事で疲れ切った僕には耳障りなだけで、暖かい蝋燭の光は意味を成さずに、寒さばかりが僕の心に残るばかりだった。

夕方を告げる教会の鐘の音が聴こえる。

僕には嘆きの門を叩いているように聴こえる。

愛せば愛するほどそれは遠くに行って、大切にすればするほど壊れていってしまった。

フラフラと当ても無く幸せの街を彷徨い、せっかくだから安売りのチキンとケーキでも買って帰ろうかと思ったら、いつの間にか知らない路地に入り込んでしまった。

そんな時だった。

風変わりな雑貨屋を見つけた。

"風変わりな雑貨店"

そう書かれた今にも傾きそうな看板にクリスマス用の電飾が飾り付けられていて、店先にはツリーもある。嫌に軋む扉を開けて入るとそこはがらんとしていて、店の真ん中にポツリとある脚の長い椅子には可愛らしいアンティークドールが眠るように腰掛けていた。

人形にしては大きくて、亜麻色の髪が天使の羽のようで、整った優しそうな顔をして、それから白いドレスを着ている。

相当な高級品だと思う。

『……お気に召しましたやろか?』

まじまじと見ていると後ろから声がした。ドキリとして振り返ると、この店の主人だろうか?和服に羽織り姿の女性……いや、タヌキの尻尾が見えているから魔物娘さんか?とにかく店の主人が居た。

『あ、はい。とても綺麗で、つい見入ってしまいました。』

『ありがとおすなぁ〜。その娘も喜んではりますわぁ〜。せやけど、ようこそおいでやすぅ〜風変わりな雑貨店へ。』

『あの…………』

『あぁ、雑貨店と言うても、今売り物はそこんあるアンティークドールだけや〜。この季節でっしゃろ?おかげさんで忙しくさせてもろてて、せやからウチとしても稼ぎ時やさかい、商品はもちろん、机やろ、キャビネットやろ、陳列棚に、レジまで売れるモノは売らせてもろて。』

店の主人は僕の心中を読むようにそう言った。

いや、しかし、レジまで売ったのは問題では?商魂たくましいというかなんというか……

『……その娘はなぁ、長〜い間売れ残っております。せやから、もしお客はんが気に入って頂けたんやったら、いかがやろ?その娘を買っては頂けませんやろか?』

と、店内をぐるぐる歩き回りながら店の主人はそう続けた。

『えっと……その、お値段は?』

僕の言葉に対して、店の主人はどこに仕舞い込んでいたのだろうか?大きい電卓を取り出して何やらカタカタと計算し始めた。

『こないな感じでいかがでっしゃろ?』

うわっ!た、高い!!そんなお金……いやちょっと待てよ?……ある……か。ここ暫く仕事仕事で殆ど給料に手を付けていない。加えて冬のボーナスもある。出せなくは無いけど、痛い出費になりそうだ。

『今なら、メンテナンス一式に専用ケースをお付けします!』

あれ?いつの間にやら買う方向で話が進んで?

『更に!世間様はせっかくのクリスマス・イヴ言うもんやさかい!3割引かせてもろて……くりあらんす言うんやろか?在庫処分の割引きを合わせてもろて……これでいかがでっしゃ
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