勇者の夢

勇者の夢

アルカナ合衆国 ワトソンDC

『ダメだ!ダメだ!危険過ぎる!!……第一にリスクが大き過ぎる。彼はクラーヴェの人工勇者のオリジナルだ。しかもRh OO型では無いか!……全体のおよそ22%……最も多くの人工勇者を生産した最強のオリジナル勇者なんだぞ!?暴走の危険もある。現にシャーロ共産連邦で保護したRh-BB型のオリジナルは暴走し、甚大な被害を出したと報告が上がっているではないか!』

ガヤガヤと騒がしい議会堂で大統領が声を張り上げている。現在の大統領は人間の男性だ。

『幸いにも……どの様な処置も受け付けずに眠り続けていると報告が上がっている。本来ならオリジナル勇者にS級戦犯を適用してもおかしくはない!我が合衆国並びに同盟国軍人間部隊や周辺国の民間人がどれだけ犠牲になったか……。仮に助けられたとしても高度な政治的判断を要求される。特にブリトニア連合王国とランドル・ファラン共和国、シャーロ共産連邦は黙っていないだろう。……大統領としてRh OOオリジナル勇者の存在を秘匿、厳重に魔導プロテクトを掛け、歴史的存在抹消後、封印しておくのが最善だと確信する!』

ガヤガヤ……ガヤガヤ……

『静粛に!……続いて、魔物娘共和党の代表者。反対答弁を。』

次に出てきたのはサキュバスの元老院議員だ。

『彼は先の戦争の被害者でもあるのです!……我々が救わなくてはなりません。もちろんリスクもあります。しかしそれが、世界を牽引するアルカナ合衆国の責任であると確信します。第一次人間大戦での戦勝国の過ちが、先だっての戦争に繋がったのです。また返すのですか?……今こそ寛容を!』

『……もし暴走を引き起こせば、それを機に主神教過激派のテロも起こるかも知れないのだぞ!その責任はどうするのだっ!!』

議論は平行線を辿っていた。その時……

『では……彼の勇者としての力を無力化出来れば良いのですね?』

議会堂の扉が開き、そこから子供の声が聞こえてきた。

『『国母様!!』』

国母と呼ばれた真っ白な悪魔の子供はゆっくりと議会堂の中央まで進み、優雅に一礼すると言葉をつづけた。

『人と魔物娘の虹の国に相応しい、人間と魔物娘の対等なる議論、嬉しく思います。やはり……この国を魔物娘主導の魔物国ではなく、人と魔物娘が対等たる人魔中立国にして良かった。心からそう思います。』

『先程、国母様は無力化と仰いましたが可能なのですか?』

『はい。本題に入りましょう。コホン……今回、人工勇者のオリジナルについて、わたくしのシークレットサービスが独自の情報網を使い調べ上げました。その報告によると、発見、保護された12人のオリジナル勇者の内、4人は暴走を引き起こしていません。4例共に家族や親しい友人、恋人がオリジナルを説得し、精神的なケアを行なっています。結果としてオリジナル勇者の暴走を引き起こす大きな要因の一つに、憎しみや怒り、悲しみ等の負の感情がトリガーになっている事がわかりました。』

『しかし、国母殿下。報告によれば件のオリジナル勇者の家族は……』

『はい。残念ながら彼の家族はクラーヴェ社会労働党によってアウシュヴァイツ・ユタ人収容所にて処分されていたようです。本当に……本当に残念です。が……彼の想い人と思しき幼馴染だった女性が戦前、我が国に亡命した記録があり、紆余曲折の後、魔物化処置を行い、移民として合衆国国籍を取得。43年8月から従軍医師としてアルカナ合衆国軍に従軍。現在ロストアンジェロ市にて市民として生活してる事がわかりました。』

『なんと……』

『彼女にオリジナル勇者の話を持ちかけた所……非常に協力的な態度を示して下さいました。しかも彼女はナイトメアになっていました。本当に奇跡的です。これで眠り続ける彼に何かしらのコンタクトを試みる事が可能です。』

『アルカナ様、質問をお許しください。……主神の加護は魔法や魔力の影響を殆ど受け付け無いのでは?いかにナイトメアでも対処は難しいと愚考します。』

『そちらも既に手を回してあります。現在、魔王軍サバト魔法技術開発研究局カルミナ国支部からお越し下さいました、バルフォア博士とキャサリン博士が対応中です。』

『では……彼を救えるのですね?』

幼い容姿の白い悪魔は首を縦に振った。

『まだ可能性の域は出ません。しかし、眠り姫ならぬ眠り勇者が親しい間柄の彼女の呼びかけに応えてくれる可能性は十分あると判断します。愛こそが世界を救うのです(キラッ!……魔王の娘、リリムたるわたくし、ロード・アルカナの名により、建国より3度目の合衆国憲法第0号……国母号を発動します。彼を救いましょう。見捨ててはなりません。……全責はわたくしにあります。証人をお願いします。』

その場にいた議員が次々と手を上げ、集計の結果、国
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