時忘れの歌
僕、ジェレミー・ジェンキンス10歳は退屈している。
春の主聖祭の季節になると、毎年家族で湖の別荘ですごす。今年も例外に漏れずに別荘にやってきた。
ここでの遊びは広い湖の野原を走ったり、馬に乗って遠出をしたり、野うさぎを追ったり、別荘の庭で隠したお祝い用のカラフルなタマゴを姉さんと一緒に探したり。でも学校の友達と遊んだほうがよっぽど楽しかったりする。
だってお父さんとお母さんは集まった親戚や、お世話になっている人達への挨拶に大忙し。だから全然かまってくれない。主聖祭がはじまると退屈になる。
おまけにお父さんとお母さんが忙しい間は家庭教師がやってきて勉強をしなきゃいけない。
たくさん勉強して立派な貴族になりなさい。
と口酸っぱく言われている。耳にタコができそうだ。
『ジェレミーくん?聞いてますか!』
とか何とか考えていると先生に早速怒られてしまった。先生はランドル国の出身で歴史と音楽の若い教師だ。
『はい、先生ー』
『よろしい。では、53ページを開いて...近代史の項、クラーヴェ無血革命は...』
。
。
。
さて
そろそろ姉さんがピアノの練習を始める時間だ。
♪ ♪♪ ♪
#9836;〜
ほらきた
先生はあからさまにソワソワしだした。
『ゴホン…ジェレミーくん。近代史53ページから、60ページまでを復習しましょう。しばらく自習とします。後でノートを見ますからね!』
『はい、先生ー』
先生は鼻歌まじりでドアを開けて出て行ってしまった。全く、わかりやすいったらない。まぁ、僕は遊べる時間が増えたからいいんだけど。
というわけで、僕は皆んなに見つからないように窓から抜け出して遊びに出かけた。
野原を走ったり、大きな声で叫んだり、寝転んだり、そんな感じで別荘近くの湖や野原や森を探検していた。
そうして暫く遊んで、お腹が減ったので、お昼を食べに別荘に帰った。すると綺麗な歌が聴こえてきた。別荘の裏庭の方だ。
歌が聴こえる方に行くと僕と同い年か、少し年上の女の子がいた。今まで見たどんな娘より綺麗だった。大きな日傘をさし、金色の長い髪を風になびかせて、聴いた事ないけど、何だか懐かしい不思議な歌を歌っていた。
‘‘華咲く乙女は歌うよ
ラン リン ラン リンドン♪
白い頬に紅をのせ
桜色の唇で
華咲く乙女は歌うよ
ラン リン ラン リンドン♪
金色の髪をなびかせて
恋する瞳で歌うよ
華咲く乙女は歌うよ
ラン リン ラン リンドン♪
時を忘れた華咲く乙女
愛する人待つ少女のままで
乙女は歌うよ ラン リンドン♪”
『?…だあれ?』
『あっ、ごめん。びっくりさせちゃった?僕はジェレミー。君はだあれ?とっても綺麗な声だね!』
『〜//////』
そう声をかけると少女は走って行ってしまった。
かわいい娘だなぁ…
あの娘と遊べなくて残念。別荘に戻って、お昼ご飯を食べた後に、僕はお父さんに呼び出された。
『ジェレミー、こっちに来なさい。』
『はい、お父さん。』
近くにいくと、夫婦なのかな?凄く綺麗な女の人と格好の良い男の人がお父さんとお母さんと話していた。この人達も日傘をさしている。都会で流行してるのかな?
『ジェレミー、此方の方はローゼンベルク伯爵夫妻だ。ご挨拶なさい。』
『はい、お父さん。…こんにちは、ローゼンベルクさん、僕はジェレミー・ジェンキンスです。』
挨拶をすると、女の人が僕の手を取って握手をしてくれた。
『まぁ、よく出来たお利口さんね。私はエーリカ・ヴァン・ローゼンベルク伯爵よ。始めまして。』
『あれ?エーリカさんは伯爵の婦人ではないんですか?』
『ふふふふ…ええ、私が現ローゼンベルク家当主ですの。』
そうすると後ろにいた男の人が僕の手を取って握手をした。
『僕はエーリカのお婿さんなんだよ。始めまして、ジェレミー君。ヨーゼフです。』
『そうでしたか。すみませんでした。』
『いいんだよ。ふむ…君は賢くて素直な子供だね。男爵さんは良い息子さんを持った。』
ヨーゼフさんは、僕の頭を撫でてくれた。
『さあ、恥ずかしがってないで出ておいで。』
エーリカさんのドレスに隠れていた女の子が出てきた。さっき裏庭で歌を歌っていた女の子だ。
『さ、ジェレミー君に挨拶なさい。』
エーリカさんがポン…と女の子な背中を押した。
『…は…始めまして、ビアンカです。さっきは…いきなり逃げてごめんなさい。』
『ううん。全然!』
お父さんは笑いながら僕の背中を叩いた。
『なんだ、もう知り合いだったのか。ちょうどいい。お父さん達は大事な話があるから、2人で遊んで来なさい。』
『はい!お父さん。…いこ!!』
『う、うん
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