首なし騎士の断頭台 下

首なし騎士の断頭台 下







注意: 生首のデュラハンがチキチキされます。心が海の様に広い紳士淑女の皆様のみお進みください。
























生首を掲げ、民衆に見せつける。女勇者は断頭台の露と消えたのだ。落ちた魔界銀の刃が歓喜に震える愚かな民衆を嘲笑うようにギラリと白昼の太陽を浴びて冷たく光っている。

『さぁ、目覚めよヒルダ……ヒルダ・ベルリオーズ……』

私が呼びかけるとヒルダの生首は蕩けた顔で笑い、魔力が溢れ出し、自らの髪を亜麻色から夜色に染め上げていく。勇者の証しであった金色の瞳は今やアメジストの様な紫色に禍々しく染まっている。

ザッ!!カッ!!

絨毯の横に並んでいた兵士達が一斉に首を外し、左脇下に抱え、銃剣が付いたライフルを顔の前に掲げ敬礼をした。……そう、この処刑を守護していたのは通称首なし軍団のディュラハンの兵士達。彼女達は全員、元勇者だ。つまり全員、首なし騎士の断頭台で首を切られている。

首なし騎士の断頭台……それは魔界銀で作られ、その刃にはびっしりと強力な魔法陣術式が施されている。処された者を強制的に不死者デュラハンにする術式だ。刃が生体に触れた瞬間、魔法が発動し対象をデュラハンに変える。デュラハン供は股同様に首が緩い。だからギロチンを落とした瞬間に首が落ちる。正にデュラハン製造機と言う素晴らしい代物だ。そうは思わんかね?


"おめでとう!おめでとう!"

"新しい仲間だ〜"

"首なし軍団にようこそー♪"

"歓迎するわぁ!"

"いいなぁ〜!首切り直ぐに旦那様と一緒かー"

"恵まれてますよねー♪"

"ベンジャミン様の粋な計らいね!"

"ロマンティックだわぁ……"

"私も黒衣の聖者様に首を切られたかった〜"

"早く戦場で旦那様が欲しいわー"

"""キャハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!"""


首のない兵士達は新たな同胞の誕生に敬意を表している。その厳しい様子とは対照的に彼女達の頭のあった場所からは人の顔を形取る桃色の靄のようなガスの様なものがユラユラと立ち上り、祝福を謳う。こいつ等は首を落とすと頭まで緩くなるようだ。

ヘクトールは訳が解らないと言う様子で、目の前の常軌を逸した光景に怯え、口をパクパクさせている。

私はダフネに命じて台を置き、目隠しを巻かせ、ヒルダの生首をその上に置く。

『おめでとう。今日はお前の誕生日だ。』

『あははは……あひゃ……いひっ……』

未だ幸せそうに蕩けた顔で笑っている。余程気持ち良かったのだろう。

『ダフネ……アレを持ってこい』

『はい。旦那様……』

ゴリッ……ガン"!!!

『あびゃあ!!??』

ビクン!ビクン!

『うおぇ!……お''ろ''ろ''ろろろろろろ』

ベシャッ……

少々苛立ちを覚えた私は愛しの従僕であるダフネから渡された魔界銀の金槌を握り、同じく魔界銀で出来た釘を生首の脳天に思い切り打ち込んだ。すると、未だ断頭台に固定されたヒルダの身体は痙攣し、ションベンを漏らし、生首の口から泡を吐き出した。それらを見ていた闘技場の民衆は笑い賛美を我々に送りつけた。

『おはようヒルダ。気分はどうだ?』

『さ、さい……こう……れすぅ……うぷっ……わたし?どうなって……?あはぁ♪』

『お前は私に首を落とされ、魔物娘デュラハンに生まれ変わった。ククク……喜べ、アン・デットだ。私は殺しても死なない身体を、老う事のない美しさを、そして永遠の命をお前に与えた。』

『そ、そんらの……しゅしん……らまがぁ……しゅしん……さまがぁ……おゆるしに……らならい……』

まだ主神と言うか……主神の祝福とは呪いのようだ。それを受けるのが勇者……か。少し哀れんでやらん事もない。

しかしまぁ、このまま主神様!主神様!……と言われるとなるとヘクトールも可愛そうだ。デュラハンになったのに魂が胴体から出ていないのはまだ主神への信仰と彼女自身の強靭な精神力と理性が壁になっているせいだろう。

司教の称号を持つ者として、迷える仔羊を導いてやらねばなぁ……

私は自身の右手親指にある国家拷問官の証しである魔界銀の指輪を高く掲げる。

『我、"黒衣の聖者" は国家拷問官、堕落神教会司教の権限の下に禁魔魔法魔術、禁道具仕様権並びに異端審問権を発動する!』

"発動を承認します♪"

国母カタリナ様直々に承認を得た。なんと私に幕屋から手を振って下さった。気楽な事だ。

『さぁ、自分自身に正直になりなさい。お前の欲望を、渇望を、堕落神はお喜びになるだろう。』

ゴリ……

『しゅしん……さまぁ……わた……わたしは……』

ガン!!ガン!!

『へぐぅ!??ぶひゃらぁっ!!?』

ビクン、ビクン!ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガ
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