リベンジマッチ
世界共通の文化の1つであるスポーツ。中でもボクシングは最も歴史があるものの1つだ。たとえ、この世界から戦争が無くなっても、人間と魔物娘は殴り合いを辞めないだろう。
新天地アルカナ大陸に西の大陸から人々と魔物娘が渡り、人間と魔物娘の自由の国アルカナ合衆国が独立して久しい、聖歴 並びに人魔歴1951年。
時は正にボクシングの戦国時代!!
人間のW.H.B.C(ワールド・ヒューマンズ・ボクシング・カップ)
魔物娘とインキュバスのW.M.B.C(ワールド・モンスターズ・ボクシング・カップ)
その統一リーグであるW.H.and.M.B.C(ワールド・ヒューマンズ・アンド・モンスターズ・ボクシング・カップ)は正にボクシングの夢の舞台である。
『号外だよー!!号外だよー!!』
摩天楼の片隅、ニュー・シャテリアシティにあるポストマン・ストリート。ハンティングキャップをかぶった男の子が1人。そばかすが可愛らしい。小さな身体にはとても釣り合わない新聞の束がぎっしりと詰まった大きなポストバッグを肩に下げ、手には小銭入れを握りしめ、大きな声を張り上げている。
『坊や。1つおくれ。』
『へい!まいどー!』
『おーい、ボウズ!こっちもだ!』
『はいサー!1ダラーだよー!』
『頑張れよボーイ』チャリン♪(25センツのチップ)
『わぁ!ありがとうございます!』
飛ぶように売れる新聞と、どんどん軽くなっていくバッグ。それと反比例するように代金箱とチップでずっしり重くなる小銭入れを見て新聞売りの男の子は嬉しそうにしている。
男の子が配る号外の見出しはこうだ
“
ニュー・シャテリアタイムス 号外
帰ってきたアビゲイル。3R1:28秒、KO勝利!ランキング1位に。不屈の闘志と勝利への執念!!タイトル戦間近!!!
”
『おぉ!勝った!アビゲイルがランキング1位だって!』
『これは盛り上がる!』
『お前はどっちに賭ける?俺はホセだ!』
『手堅いな。俺はアビゲイルKO勝利の大穴だ。男ならドンと張れ!!』
ニュー・シャテリアタイムスだけではない。ワトソン・ポストもザ・ライアンジャーナルも、はたまた遠くジパングのヒノモト・マガジンまで注目している。
今、合衆国中がボクシングに夢中だ。
アビゲイルはプロ復帰戦ヘレン・アームストロングを見事に倒し、ミドル級ランカー戦に乗り出した。地道な努力を重ね、格上相手に勝利を収め、遂にはランキング1位になり、チャンピオンへの優先的な挑戦権を獲得した。
一方、チャンピオンのホセは淡々と防衛戦をこなし、危なげなく王座にのさばり続けた。ランキングが激しく入り乱れるボクシング戦国時代の中で長期政権を維持し、数々の死線を潜り抜けた。圧倒的な戦略、戦術、ディフェンス能力に更に磨きをかけ、弱点らしい弱点が見当たらない。もはや魔物娘から見ても化け物じみた強さを感じさせるほどに成長している。『リングの騎士』と呼ばれた彼はいつしか『リングの勇者』と呼ばれていた。
W.H.and.M.B.Cミドル級はアビゲイル参戦で大荒れに荒れ、上位ランキング保持者をチャンピオンとアビゲイルで食い潰した形になった。その結果、アビゲイルを除外したタイトルマッチの権利を持つ1位〜10位までの上位ランキング保持者は、繰り上がりで順位を上げた実力の無い下位選手ばかりとなった。最早、両者の闘いは避けられない状況だ。
この2人の選手は今や新聞で見ない日が無いほどで、人々はこのビッグマッチを今か今かと待っている。TVショーでも、ラジオでも、当然の様に話題となった。
アビゲイルが1位になって程なく、彼女とアレクサンドリア・ジムは挑戦権を行使。ホセが所属するフラッテラ・ボクシングクラブはそれを承諾。遂にチャンピオンのホームタウンであるサン・フランシスカ市にてタイトルマッチのスケジュールが組まれた。
それから、1カ月後のニュー・シャテリア市……
“只今より、W.H.and.M.B.Cミドル級タイトルマッチの記者会見を行います。”
新聞記者とカメラマンが放つストロボカメラのフラッシュの中、両陣営が席に着いた。
“では、リベンジマッチとなるチャレンジャー、意気込みをどうぞ。”
『……タイトルマッチは1週間後にチャンピオンのホームタウン……サン・フランシスカで行なわれる。ニュー・シャテリアへの土産代わりに奪われたベルトを返してもらう。』
おおぉ……
“チャンピオン!いかがでしょうか?一言お願いします。”
『……申し訳ないが、セニョリータがサン・フランシスカから土産を持ち帰ることは無いだろう。俺はいつもと同じように“仕事”を片付けて家路につくだけだ。願くば、この試合でアルカナ合衆国の全ての方々
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