蕎麦屋で饂飩を喰う話


 「先輩、最近話題に成ってる美味い蕎麦屋って知ってるかい?」

 突然、高校時代の後輩からこんなメールが来た、正直出不精で面倒事を嫌う我だが、『蕎麦屋』の単語に興味が湧いた。

 「いや、知らん」

 「OK先輩、何でも彼女持ちだと行けないようだから俺等の代わりに行ってちょーよ」

 「場所は?」

 「病院へ向う路地裏の何時も鴉が襲ってくるロー○ンの近くの出狐狸亭ってトコだからよろしゅー」

 「了解、では近日行くとしよう」

 〜三日後〜

 「先輩!蕎麦どうだった?」

 「蕎麦?何だソレ?」

 「出狐狸亭の事だよ先輩、もう痴呆が始まったかい?」

 「ああ、ダルイから忘れとった(´・ω・`)、OK、三日以内には行く」

 「たのんま、先輩」

 で、遂に目的の出狐狸亭に到着した…、しかし、サイレント・ヒルにチェーン店を構えるとは、何とも無謀な…。

 店の外装を見た感じ、こじんまりとした店構えだが奥が広く成って居るな、三階建てを立てるとは団体客でも狙った作りか、ソレでも100坪強の広さはかなり羽振りが良いようだな、では…。

 「御免」

 「「いらっしゃいませ〜、空いている奥の席へどうぞ〜」」

 イカした三角帽子の鍔を持ち暖簾を潜り抜け顔を上げるとょぅι゛ょな稲荷と前方確認が容易そうな刑部狸が笑顔の接客で迎えたのに対し、一瞬怯んだ我が居る。

 『此処は…?孔明の罠か…?!』

 胸板にじわりと汗を流しながら警戒をしたが平素の態度は崩さず、可愛らしい手で指し示された奥の席へと着く事とした。

 「お客様ー?魔物娘のお店は初めてですか?」

 「ええ、…んっ!メニューを見せて貰えるかな?」

 一瞬、世を忍ぶ仮の営業マンの口調に戻りそうな自分を押し止め、至って普通の装いで品書きを求めると「はい!」とょぅι゛ょな稲荷が元気良く若干厚めのメニュー表を手渡す、その間にテキパキと作業がし易い胸の刑部狸がテーブルを拭き、お冷を置いてそそくさと次のテーブルを拭く。

 「ふむ、何か御奨めのメニューとかは…、ぶっ!い、いや何でもない」

 「ああ、それなら二ページ目の…、お客様?大丈夫ですか?」

 何気無くサラリと読み流した一ページに続き、薦められるまま二ページ目を開いて其処に踊る単語に思わず吹く、なんせ『妊娠うどん』だの『ぶっかけ親子丼』だの明らかに狙っているネーミングで吹かない方がどうかしておる。

 「あ〜〜〜、コレはトッピングとか出来るのかね?」

 「はい!たぬきと天麩羅ときつねと卵と親子丼とぶっかけなら出来ます!御薦めは妊娠きつねうどんですよ!」

 「ふむ、では一寸メニューをゆっくり見たいから、決まったら呼ぶで良いかな?」

 「はい!」とニコやかにょぅι゛ょ稲荷が離れるのを確認して、再度品書きを確認する、わかめ蕎麦・うどんや天麩羅蕎麦・うどんと海鮮丼や鮪丼が普通にある一ページ目とは違い、二ページ目のネーミングは明らかにネタとして狙っている物ばかりで見返す度に吹きそうになる。

 暫く眺めたが、腹が減っているのと好奇心から『妊娠月見うどん、たぬきときつねとわかめトッピング』を注文した、この時、一瞬接客にあたったょぅι゛ょ稲荷は可愛い眉を寄せたが『分かりました!』と元気良く注文を取り厨房へとオーダーを置きに行った。

 ややあって出てきたのは鰊と卵、揚げ玉と御揚げに若芽が乗った至って普通のうどんであった。

 猫舌の為、小さな茶碗を貸してもらい、全ての具材を満遍無く掻き混ぜて小さな茶碗で食べる様はいつもの事だから恥ずかしくはない。

 味は出汁が利き、京風のサッパリ味だがうどんに負けず確りと味を主張しておった、そして、甘辛く煮出した御揚げは強く自己主張はしないが決して味が負けているのではなく、つゆと絶妙な味わいを奏でていた、更にその味を揚げ玉と若芽が強弱をつけ、また炙り焼きの鰊も脂が乗っているが臭みは無く骨も柔らかく調理され一杯食べきった頃にはもう一口欲しい余韻を持たせていた。

 「妊娠月見うどん300円+たぬき30円+きつね30円+わかめ30円…、締めて390円か、もう一杯何か食うか」

 気を良くした我は『ミニ親子丼』を追加した、この時たぬきかきつねの親子丼と言う一寸変わった選択肢を突きつけられたが、何と無くょぅι゛ょ稲荷が可愛かったので『きつねで』と答えたら上機嫌でオーダーを厨房に伝えに行った。

 極論から言えばこの親子丼も美味かった、何故か敷かれた御揚げの上に卵とじ鶏肉が良い出汁を出し、御揚げと掛けられた出汁とのハーモニーが米の重たさを忘れ、口に運ぶのを楽しみに感じる程であった。

 だが、悲しいかな美味い物はどうしても終わりが来てしまう、終焉の時は皿が空に成るか、喰っている者が満腹に成るか、或いは両
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